2010/01/19(火) - 18:35
2008年大会覇者のアンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)が、伸びのあるスプリントでツアー・ダウンアンダー第1ステージ制覇。寡黙なパワフルスプリンターは、自身2度目の総合優勝に向けて好スタートを切った。
2010年プロツアーカレンダーの開幕を告げる第1ステージは、アデレード北部に広がるクレア・バレーとバロッサ・バレーという二大ワイン産地を結ぶ141km。一帯にはなだらかな丘陵地帯が広がっており、コースは緩いアップダウンを繰り返す。
ゴールの27km手前には今大会最初の山岳ポイント、メングラーズ・ヒルの上りが登場。しかしスプリンターの脚を止めるような難易度ではない。誰もが認めるスプリンター向きの平坦ステージだ。
快晴のクレアの街をスタートしたのは総勢132名の選手たち。ニュートラルゾーンを走行後、ゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)のアタックでレースはスタートした。
その直後に発生した落車には多くの選手が巻き込まれた。アルカンシェルを着るカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)もその一人。幸いエヴァンスを含め全ての選手が大きな怪我も無くレースに復帰している。
落車の影響によってイサギーレは2分のリードを稼ぎ出したが、44km地点と74km地点に中間スプリントポイントが控えているため集団は落ち着かない。結局イサギーレは集団に引き戻され、続いて4名が飛び出した。
ジリジリと照らす太陽の下、逃げを試みたのはU23世界チャンピオンのロメン・シカール(フランス、エウスカルテル)、マルティン・コーラー(スイス、BMCレーシングチーム)、ビエル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)、ティモシー・ロー(オーストラリア、チームUniSA)。ここからシカールが脱落して3名が先行すると、ようやくレースは落ち着きを取り戻した。
平均年齢22歳(コーラー24歳、カドリ23歳、ロー20歳)のフレッシュな逃げは、メイン集団から最大9分45秒のリード。2つのスプリントポイントはコーラーが獲得した。
チームHTC・コロンビアがメイン集団のコントロールを開始するとタイム差は縮まり、この日最大の難所であるメングラーズ・ヒル(ゴール27km手前)に差し掛かる頃には2分に。平均勾配8.16%・登坂距離1.9kmのこの上りで逃げグループから飛び出したローは、大声援に押されるように頂上を先頭で通過した。
レディオシャック勢がペースを上げてメングラーズ・ヒルを進んだメイン集団は、ゴールまで20kmを残して逃げていた3名をキャッチ。ローハン・デニス(オーストラリア、チームUniSA)とトーマス・ローレッガー(ドイツ、チームミルラム)のカウンターアタックは不発に終わった。
やがてゴールまでの平坦区間に入ると、ハイスピードで進むメイン集団からマシュー・ウィルソン(オーストラリア、ガーミン・トランジションズ)がアタック。2004年のオーストラリアチャンピオンのアタックが失敗すると、今度はジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・トランジションズ)がカウンター。しかしいずれもスプリンターチームに飲み込まれた。
トレインを組んでポジション争いを繰り広げたのは、リクイガス、チームスカイ、チームHTC・コロンビア。ラスト2kmを切るとリクイガスが先頭に立つも、エーススプリンターのジャコポ・グアルニーリ(イタリア)がライバルに埋もれて後退してしまう。
完全に主導権を握るチームが現れないままラスト1kmを通過し、最後は混戦のスプリント勝負へ。ライバルたちの後方からスプリントを開始したグライペルが、外側から勢い良く加速して先頭に。ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)の追い上げは届かず、グライペルが力強いガッツポーズでゴールを駆け抜けた。
「先ずは1勝。とりあえずチームの目標は達成された。明日からチームはより責任感ある走りを強いられる」。昨年ディフェンディングチャンピオンとしてレースに挑みながらも、第2ステージで落車してレースを去ったグライペルは、シーズン初勝利の喜びを噛み締めるように静かに語る。
「他のチームが協力しなかったから、チームHTC・コロンビアが一日中レースをコントロールしていた。逃げを吸収するためにベアト(グラブシュ)が牽き続けてくれたんだ。チームとして格の違いを見せつけたと思う。チームのメンバー全員が表彰台に上るべきだ」。
昨シーズンのスプリントを席巻したコロンビアトレインが完調とは言えなかったが、自らのパワフルなスプリントで初勝利を掴んだグライペル。マッチョな腕をオレンジのリーダージャージに押し込んだ。
2008年大会覇者が成功を収める一方で、失敗に終わったのは2009年大会覇者。メングラーズ・ヒルでメイン集団が二つに分断され、アラン・デーヴィス(オーストラリア、アスタナ)を含む39名が後方に取り残された。
「無線が故障していて、チーム内でのコミュニケーションにトラブルが発生していたんだ。チームメイトは僕が後方に取り残されていることに気付かずに、集団のペースを上げ始めた。完全に後方に取り残されてしまった」。メイン集団から8分32秒遅れでゴールしたデーヴィス。連覇の夢は早くも潰えた。
ステージダイジェストムービー
ツアー・ダウンアンダー2010第1ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)3h15'30"
2位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)
3位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
4位 ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム)
5位 グレゴリー・ヘンダーソン(オーストラリア、チームスカイ)
6位 バーデン・クック(オーストラリア、サクソバンク)
7位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)
8位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
10位 ヴァレリー・ドミトリエフ(カザフスタン、アスタナ)
個人総合成績
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)3h15'20"
2位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)+04"
3位 マルティン・コーラー(スイス、BMCレーシングチーム)
4位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+06"
5位 ビエル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)
6位 ティモシー・ロー(オーストラリア、チームUniSA)+08"
7位 ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム)+10"
8位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)
9位 バーデン・クック(オーストラリア、サクソバンク)
10位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)
スプリント賞
マルティン・コーラー(スイス、BMCレーシングチーム)
山岳賞
ティモシー・ロー(オーストラリア、チームUniSA)
新人賞
マルティン・コーラー(スイス、BMCレーシングチーム)
チーム総合成績
アージェードゥーゼル
text:Kei Tsuji
photo:Kei Tsuji, www.tourdownunder.com.au
2010年プロツアーカレンダーの開幕を告げる第1ステージは、アデレード北部に広がるクレア・バレーとバロッサ・バレーという二大ワイン産地を結ぶ141km。一帯にはなだらかな丘陵地帯が広がっており、コースは緩いアップダウンを繰り返す。
ゴールの27km手前には今大会最初の山岳ポイント、メングラーズ・ヒルの上りが登場。しかしスプリンターの脚を止めるような難易度ではない。誰もが認めるスプリンター向きの平坦ステージだ。
快晴のクレアの街をスタートしたのは総勢132名の選手たち。ニュートラルゾーンを走行後、ゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)のアタックでレースはスタートした。
その直後に発生した落車には多くの選手が巻き込まれた。アルカンシェルを着るカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)もその一人。幸いエヴァンスを含め全ての選手が大きな怪我も無くレースに復帰している。
落車の影響によってイサギーレは2分のリードを稼ぎ出したが、44km地点と74km地点に中間スプリントポイントが控えているため集団は落ち着かない。結局イサギーレは集団に引き戻され、続いて4名が飛び出した。
ジリジリと照らす太陽の下、逃げを試みたのはU23世界チャンピオンのロメン・シカール(フランス、エウスカルテル)、マルティン・コーラー(スイス、BMCレーシングチーム)、ビエル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)、ティモシー・ロー(オーストラリア、チームUniSA)。ここからシカールが脱落して3名が先行すると、ようやくレースは落ち着きを取り戻した。
平均年齢22歳(コーラー24歳、カドリ23歳、ロー20歳)のフレッシュな逃げは、メイン集団から最大9分45秒のリード。2つのスプリントポイントはコーラーが獲得した。
チームHTC・コロンビアがメイン集団のコントロールを開始するとタイム差は縮まり、この日最大の難所であるメングラーズ・ヒル(ゴール27km手前)に差し掛かる頃には2分に。平均勾配8.16%・登坂距離1.9kmのこの上りで逃げグループから飛び出したローは、大声援に押されるように頂上を先頭で通過した。
レディオシャック勢がペースを上げてメングラーズ・ヒルを進んだメイン集団は、ゴールまで20kmを残して逃げていた3名をキャッチ。ローハン・デニス(オーストラリア、チームUniSA)とトーマス・ローレッガー(ドイツ、チームミルラム)のカウンターアタックは不発に終わった。
やがてゴールまでの平坦区間に入ると、ハイスピードで進むメイン集団からマシュー・ウィルソン(オーストラリア、ガーミン・トランジションズ)がアタック。2004年のオーストラリアチャンピオンのアタックが失敗すると、今度はジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・トランジションズ)がカウンター。しかしいずれもスプリンターチームに飲み込まれた。
トレインを組んでポジション争いを繰り広げたのは、リクイガス、チームスカイ、チームHTC・コロンビア。ラスト2kmを切るとリクイガスが先頭に立つも、エーススプリンターのジャコポ・グアルニーリ(イタリア)がライバルに埋もれて後退してしまう。
完全に主導権を握るチームが現れないままラスト1kmを通過し、最後は混戦のスプリント勝負へ。ライバルたちの後方からスプリントを開始したグライペルが、外側から勢い良く加速して先頭に。ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)の追い上げは届かず、グライペルが力強いガッツポーズでゴールを駆け抜けた。
「先ずは1勝。とりあえずチームの目標は達成された。明日からチームはより責任感ある走りを強いられる」。昨年ディフェンディングチャンピオンとしてレースに挑みながらも、第2ステージで落車してレースを去ったグライペルは、シーズン初勝利の喜びを噛み締めるように静かに語る。
「他のチームが協力しなかったから、チームHTC・コロンビアが一日中レースをコントロールしていた。逃げを吸収するためにベアト(グラブシュ)が牽き続けてくれたんだ。チームとして格の違いを見せつけたと思う。チームのメンバー全員が表彰台に上るべきだ」。
昨シーズンのスプリントを席巻したコロンビアトレインが完調とは言えなかったが、自らのパワフルなスプリントで初勝利を掴んだグライペル。マッチョな腕をオレンジのリーダージャージに押し込んだ。
2008年大会覇者が成功を収める一方で、失敗に終わったのは2009年大会覇者。メングラーズ・ヒルでメイン集団が二つに分断され、アラン・デーヴィス(オーストラリア、アスタナ)を含む39名が後方に取り残された。
「無線が故障していて、チーム内でのコミュニケーションにトラブルが発生していたんだ。チームメイトは僕が後方に取り残されていることに気付かずに、集団のペースを上げ始めた。完全に後方に取り残されてしまった」。メイン集団から8分32秒遅れでゴールしたデーヴィス。連覇の夢は早くも潰えた。
ステージダイジェストムービー
ツアー・ダウンアンダー2010第1ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)3h15'30"
2位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)
3位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
4位 ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム)
5位 グレゴリー・ヘンダーソン(オーストラリア、チームスカイ)
6位 バーデン・クック(オーストラリア、サクソバンク)
7位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)
8位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
10位 ヴァレリー・ドミトリエフ(カザフスタン、アスタナ)
個人総合成績
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)3h15'20"
2位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、レディオシャック)+04"
3位 マルティン・コーラー(スイス、BMCレーシングチーム)
4位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+06"
5位 ビエル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)
6位 ティモシー・ロー(オーストラリア、チームUniSA)+08"
7位 ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム)+10"
8位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)
9位 バーデン・クック(オーストラリア、サクソバンク)
10位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)
スプリント賞
マルティン・コーラー(スイス、BMCレーシングチーム)
山岳賞
ティモシー・ロー(オーストラリア、チームUniSA)
新人賞
マルティン・コーラー(スイス、BMCレーシングチーム)
チーム総合成績
アージェードゥーゼル
text:Kei Tsuji
photo:Kei Tsuji, www.tourdownunder.com.au
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