2017/11/13(月) - 14:27
残り5kmを切ってなお20人以上が残る異例の展開となった今年のツール・ド・おきなわ男子チャンピオンレース。最後に勝負を決めたのは佐野淳哉のロングスパートだった。女子国際レース、ジュニア国際レースと合わせ詳細をレポートする。
今年最後の大一番となるツール・ド・おきなわ。今年29回目の開催となる日本最南端のレースは、シーズンの締めくくりとしてプロ・アマ問わず定着している。
本土では晴れも多かった11月12日だが、沖縄は曇り。最高気温は25℃ほどまで上がったが、強めの風の影響で肌寒さを感じるほど。予報では雨の可能性もあったが、幸い全てのレースがゴールするまで雨粒が落ちてくることはなかった。
男子チャンピオンレース210km
UCI1.2クラスとして行われた最高峰の男子チャンピオンロードレースには、国内外17チームの80人が出走。まだ薄暗い午前6時45分にスタートした集団は、沖縄本島の西海岸沿いに北上していく。
名護市街を抜けてリアルスタートが切られた直後、下りでニコラス・マリーニ(NIPPOヴィーニファンティーニ)がするすると前に出る。追従する選手がいないと見るや、そのまま独走を開始。その後、普久原奨(沖縄選抜)、重満丈(鹿屋体育大学)岸崇仁(那須ブラーゼン)らを含む5人の追走集団が形成され、先行するマリーニに合流して6人の逃げ集団が形成される。メイン集団はルーマニアナショナルチームなどがコントロールするが、ペースアップを図るチームが無いことから、差は一気に16分まで開く。
与那の登り1回目の山岳賞を普久原奨(沖縄選抜)が先頭通過。その後も6人は逃げ続け、沖縄本島北端を回って2回目の与那の登りへ。登り始めてすぐにマリーニが遅れ、逃げ集団は5人。メイン集団のペースアップもあって差は縮まり始めるものの、5人はそのまま逃げ続ける。2回目の山岳賞も普久原が先頭通過して下りに入るとメイン集団との差は9分、やがて2分へと一気に縮まる。
逃げ集団では岸ら2人が遅れる一方、普久原、重満ら3人が粘る。しかし150km付近で吸収され、レースは振り出しに戻る。
東海岸沿いに出るとアップダウンを利用してのアタック合戦が始まる。しかしレース終盤に向けて各チーム共逃げを許さず、集団は縦長に伸びた状態が続く。残り30kmを前に集団はなお30人以上を残していたが、冨尾大地(鹿屋体育大学)の飛び出しを追う展開の中で20人ほどに絞られる。その後もアタック合戦が続き、数名が先行する場面もあるものの、下りと平坦部分で後続が追いつく展開が繰り返される。
残り10kmを前に、登り区間でベンジャミ・プラデス(チーム右京)が仕掛けるものの決定打とはならず。残り5kmの「イオン坂」では、スプリント勝負を嫌う西薗良太(ブリヂストンアンカー)や増田成幸(宇都宮ブリッツェン)らがアタックするが決まらず。カウンターアタックに出た石橋学(ブリヂストンアンカー)も吸収され、残り1kmへ。
「このままスプリントだろうなという雰囲気の中で、勝つならこういうやり方しか無かった」と言う佐野淳哉がアタック。牽制する集団をよそに一気に差を広げる。ゴールまで残り500mのストレートに佐野が先頭で姿を現す。後方で横に広がりスプリントする集団が追いつかないことを確認した佐野は右腕を高々と挙げて雄叫びと共にゴール。何度もガッツポーズを繰り返した。
「最後まで残るつもりではいましたが、自分が勝つよりもホセ(ビセンテ)とアイラン(フェルナンデス)に同調して動くことで、他のチームが動けば自分が反応するという方針でした。僕自身が率先してアタックするというよりも、逃げて動けたら行くというつもりでした。
西薗選手や雨澤(毅明・宇都宮ブリッツェン)選手らは積極的にレースをしていて、終盤にベンジャミ選手と西薗選手が登りで先行した時は登坂力が足りずについて行けませんでした。それでも展開に恵まれ、自分の力量をうまく活かして最後まで持って行けた事が今日の勝因だと思います」と、レースを振り返る佐野。
かつての強さを取り戻せたのでは?との問いには「まだまだだと思いますが、以前は無かった強さが身についた気がするので、それを活かしていきたいです。今年は前半が良くなかったので、来年はシーズンを通して安定させたいですね」と、来年の目標を交えて語った。
一方、序盤からおよそ150kmの逃げに乗り、山岳賞を取った普久原は「勝負するつもりでいましたが、集団の雰囲気が行けそうな感じだったので逃げにチャレンジしました。6人で逃げている時は協調して回し、最後に3人になった時も行けるところまで行こうと話していました。結果として山岳賞を取れたのは嬉しいです。
やはり地元沖縄でのレースなので、沖縄県勢として表彰台に乗る事は使命であると考えています。このレースから次の若い世代が育ってくれることも期待したいです」と、地元レースを走る意義を語った。
女子国際ロードレース 100km
女子国際ロードレースは、沖縄本島北端の奥をスタートし、与那の登りを1回通過して名護にゴールする100km。与那の登りを過ぎるまでに、昨年2位で今年のチームTT世界選優勝メンバーのエレン・ファンダイク(WTC de アムステル)、女子全日本ロードチャンピオンの與那嶺恵理(FDJ)、中井彩子(鹿屋体育大学)の3人が残る。残り10kmで中井が遅れ、ファンダイクと與那嶺のマッチレースに。最後はスプリント勝負になり、僅差でファンダイクが優勝した。
「昨年も僅差で2位だったけれど、今年は勝ててとても嬉しい。おきなわのコースはとてもハードだから、昨年も3人が残る展開になったけれど、最後は2人になった。恵理はとても強かったから最後まで気が抜けなかった」と、ファンダイクはコメント。
ジュニア国際レース 140km
ジュニア国際レースは、国頭村をスタートして与那の登りを2回通過し、名護にゴールする140km。2回目の与那の登りの後、細田悠太(南大隅高校)が単独で逃げるも、残り20km付近で吸収。最後は13人のスプリント勝負となり、逃げていた細田が優勝した。
細田は「捕まるなら残り10km手前の羽地ダムを過ぎてからと考えていましたが、その前で捕まってしまったので、そこからは脚が辛かったです。でも登りさえついて行ければ足が回復出来ると思っていたので、攣りそうな脚を揉みながら登りました。
最後のスプリントは自分が思っていたよりも早いタイミングで出てしまったので、すぐ後ろに来ていると思って後ろを見る余裕がありませんでした。でもスプリントになったら勝てる自信はあったので、自分を信じて踏み切りました。
次の目標は3月の高校選抜です。ロードもトラックも全部勝つつもりで行きます」と、語った。
今年最後の大一番となるツール・ド・おきなわ。今年29回目の開催となる日本最南端のレースは、シーズンの締めくくりとしてプロ・アマ問わず定着している。
本土では晴れも多かった11月12日だが、沖縄は曇り。最高気温は25℃ほどまで上がったが、強めの風の影響で肌寒さを感じるほど。予報では雨の可能性もあったが、幸い全てのレースがゴールするまで雨粒が落ちてくることはなかった。
男子チャンピオンレース210km
UCI1.2クラスとして行われた最高峰の男子チャンピオンロードレースには、国内外17チームの80人が出走。まだ薄暗い午前6時45分にスタートした集団は、沖縄本島の西海岸沿いに北上していく。
名護市街を抜けてリアルスタートが切られた直後、下りでニコラス・マリーニ(NIPPOヴィーニファンティーニ)がするすると前に出る。追従する選手がいないと見るや、そのまま独走を開始。その後、普久原奨(沖縄選抜)、重満丈(鹿屋体育大学)岸崇仁(那須ブラーゼン)らを含む5人の追走集団が形成され、先行するマリーニに合流して6人の逃げ集団が形成される。メイン集団はルーマニアナショナルチームなどがコントロールするが、ペースアップを図るチームが無いことから、差は一気に16分まで開く。
与那の登り1回目の山岳賞を普久原奨(沖縄選抜)が先頭通過。その後も6人は逃げ続け、沖縄本島北端を回って2回目の与那の登りへ。登り始めてすぐにマリーニが遅れ、逃げ集団は5人。メイン集団のペースアップもあって差は縮まり始めるものの、5人はそのまま逃げ続ける。2回目の山岳賞も普久原が先頭通過して下りに入るとメイン集団との差は9分、やがて2分へと一気に縮まる。
逃げ集団では岸ら2人が遅れる一方、普久原、重満ら3人が粘る。しかし150km付近で吸収され、レースは振り出しに戻る。
東海岸沿いに出るとアップダウンを利用してのアタック合戦が始まる。しかしレース終盤に向けて各チーム共逃げを許さず、集団は縦長に伸びた状態が続く。残り30kmを前に集団はなお30人以上を残していたが、冨尾大地(鹿屋体育大学)の飛び出しを追う展開の中で20人ほどに絞られる。その後もアタック合戦が続き、数名が先行する場面もあるものの、下りと平坦部分で後続が追いつく展開が繰り返される。
残り10kmを前に、登り区間でベンジャミ・プラデス(チーム右京)が仕掛けるものの決定打とはならず。残り5kmの「イオン坂」では、スプリント勝負を嫌う西薗良太(ブリヂストンアンカー)や増田成幸(宇都宮ブリッツェン)らがアタックするが決まらず。カウンターアタックに出た石橋学(ブリヂストンアンカー)も吸収され、残り1kmへ。
「このままスプリントだろうなという雰囲気の中で、勝つならこういうやり方しか無かった」と言う佐野淳哉がアタック。牽制する集団をよそに一気に差を広げる。ゴールまで残り500mのストレートに佐野が先頭で姿を現す。後方で横に広がりスプリントする集団が追いつかないことを確認した佐野は右腕を高々と挙げて雄叫びと共にゴール。何度もガッツポーズを繰り返した。
「最後まで残るつもりではいましたが、自分が勝つよりもホセ(ビセンテ)とアイラン(フェルナンデス)に同調して動くことで、他のチームが動けば自分が反応するという方針でした。僕自身が率先してアタックするというよりも、逃げて動けたら行くというつもりでした。
西薗選手や雨澤(毅明・宇都宮ブリッツェン)選手らは積極的にレースをしていて、終盤にベンジャミ選手と西薗選手が登りで先行した時は登坂力が足りずについて行けませんでした。それでも展開に恵まれ、自分の力量をうまく活かして最後まで持って行けた事が今日の勝因だと思います」と、レースを振り返る佐野。
かつての強さを取り戻せたのでは?との問いには「まだまだだと思いますが、以前は無かった強さが身についた気がするので、それを活かしていきたいです。今年は前半が良くなかったので、来年はシーズンを通して安定させたいですね」と、来年の目標を交えて語った。
一方、序盤からおよそ150kmの逃げに乗り、山岳賞を取った普久原は「勝負するつもりでいましたが、集団の雰囲気が行けそうな感じだったので逃げにチャレンジしました。6人で逃げている時は協調して回し、最後に3人になった時も行けるところまで行こうと話していました。結果として山岳賞を取れたのは嬉しいです。
やはり地元沖縄でのレースなので、沖縄県勢として表彰台に乗る事は使命であると考えています。このレースから次の若い世代が育ってくれることも期待したいです」と、地元レースを走る意義を語った。
女子国際ロードレース 100km
女子国際ロードレースは、沖縄本島北端の奥をスタートし、与那の登りを1回通過して名護にゴールする100km。与那の登りを過ぎるまでに、昨年2位で今年のチームTT世界選優勝メンバーのエレン・ファンダイク(WTC de アムステル)、女子全日本ロードチャンピオンの與那嶺恵理(FDJ)、中井彩子(鹿屋体育大学)の3人が残る。残り10kmで中井が遅れ、ファンダイクと與那嶺のマッチレースに。最後はスプリント勝負になり、僅差でファンダイクが優勝した。
「昨年も僅差で2位だったけれど、今年は勝ててとても嬉しい。おきなわのコースはとてもハードだから、昨年も3人が残る展開になったけれど、最後は2人になった。恵理はとても強かったから最後まで気が抜けなかった」と、ファンダイクはコメント。
ジュニア国際レース 140km
ジュニア国際レースは、国頭村をスタートして与那の登りを2回通過し、名護にゴールする140km。2回目の与那の登りの後、細田悠太(南大隅高校)が単独で逃げるも、残り20km付近で吸収。最後は13人のスプリント勝負となり、逃げていた細田が優勝した。
細田は「捕まるなら残り10km手前の羽地ダムを過ぎてからと考えていましたが、その前で捕まってしまったので、そこからは脚が辛かったです。でも登りさえついて行ければ足が回復出来ると思っていたので、攣りそうな脚を揉みながら登りました。
最後のスプリントは自分が思っていたよりも早いタイミングで出てしまったので、すぐ後ろに来ていると思って後ろを見る余裕がありませんでした。でもスプリントになったら勝てる自信はあったので、自分を信じて踏み切りました。
次の目標は3月の高校選抜です。ロードもトラックも全部勝つつもりで行きます」と、語った。
ツール・ド・おきなわ2017 国際レース結果
男子チャンピオンロードレース 210km
1位 | 佐野淳哉(マトリックスパワータグ) | 5時間28分48秒 |
2位 | カーズ・ヨルン・コース(WTC de アムステル) | +0秒 |
3位 | 畑中勇介(チーム右京) | |
4位 | ジャイ・クロフォード(キナンサイクリングチーム) | |
5位 | 吉岡直哉(那須ブラーゼン) | |
6位 | プーチョン・ジァウドムシン(タイナショナルチーム) | |
7位 | 中島康晴(キナンサイクリングチーム) | |
8位 | 小森亮平(愛三工業レーシングチーム) | |
9位 | 平塚吉光(チーム右京) | |
10位 | ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ) |
山岳賞:普久原奨(沖縄選抜)
U23賞:ルイス・ライナウ(チームサワーランド)
U23賞:ルイス・ライナウ(チームサワーランド)
女子国際ロードレース 140km
1位 | エレン・ファンダイク(WTC de アムステル) | 3:10:57 |
2位 | 與那嶺恵理(FDJ) | +0秒 |
3位 | 中井彩子(鹿屋体育大学) | +1分42秒 |
4位 | 合田祐美子(BH BIORACER) | +8分43秒 |
5位 | 牧瀬翼 | |
6位 | 樫木祥子(AVENURA AIKOH VICTORIA RACING) | |
7位 | 大堀博美(YOKOSUKA UNO Racing) | +8分44秒 |
8位 | フェデダリン・ソマラ(タイナショナルチーム) | +9分28秒 |
9位 | 金子広美(イナーメ信濃山形・バイクサンド) | +10分8秒 |
10位 | 西加南子(LUMINARIA) | +11分23秒 |
ジュニア国際ロードレース
1位 | 細田悠太(南大隅高校) | 4時間6分0秒 |
2位 | 吉原愛喜(石田高校) | +1秒 |
3位 | 成海大聖(普天間高校) | |
4位 | 古林一夢(南大隅高校) | +2秒 |
5位 | 天野壮悠(千里高校) | |
6位 | ヴィクター・ブローエックス(WTC de アムステル) |
photo:Makoto AYANO,Satoru Kato
text:Satoru Kato
text:Satoru Kato
フォトギャラリー
Amazon.co.jp