2017/10/11(水) - 09:37
イタリアのサイクルパーツブランド、FSAが満を持して放つ新型セミワイヤレスコンポーネント「K-Force WE」。スラムRED eTapに続く無線電動変速を採用し、かつバッテリーとの有線接続により長時間駆動を実現した注目の製品をテストした。
ハンドル、ステム、シートポストからクランク、ブレーキまであらゆるサイクルパーツを手がけてきた総合ブランド、FSA。創業から20年に満たない新興メーカーながら、高い性能を有したパーツ群によって世界トッププロ選手らを長きに渡りサポートしてきた。他社に先駆けカーボンクランクをリリースしたり、今では普通となったコンパクトクランクやコンパクト形状のドロップハンドルを世に広めたりといった功績も、同ブランドを語る上では外せないエピソードだろう。
常に最先端のトレンドを追求するFSAが次なる一手として繰り出してきたのが、今回紹介する「K-Force WE」である。同社初となる変速系統グループセットとなるこの製品は、研究開発に約5年、実地テストでさらに2年という長い時間を費やしたFSAの意欲作。
2年前にはすでにプロトタイプの形まで完成しており、ワールドツアーレース会場にて目撃情報も流れていた製品だけに、いつ発売となるのか注目していたユーザーも多いことだろう。昨年のユーロバイクでは製品版の正式発表も行われ、そこから約1年を経てようやく国内にも入荷が始まることとなる。
K-Force WEの大きな特徴は、WE(Wireless Electronicの略)の名が示す通り無線電動シフトを採用した点だろう。スラムのRED eTapに続く世界で第2のワイヤレスシフトコンポーネントとなる。シフターとディレイラーをワイヤーやケーブルで繋ぐ必要がないため、インストール作業をより簡略化できるとともに、電源となるバッテリーは大容量かつ有線で接続する方式をとることで、より長い駆動時間を可能としている。無線と有線のメリットを併せ持った、世界初となる”セミワイヤレス”方式をFSAは選択したという訳だ。
シフトブレーキレバーも同社独自の形状を採用する。シフトスイッチは上下に繋がった単一の形状をしており、それぞれの方向に倒し込むことで変速操作を行う構造に。上下どちらのスイッチでシフトアップ/ダウンかはカスタマイズできる仕様となっている。もちろん長押しによる連続変速も可能だ。指先で上下スイッチの判別をし易いよう表面に異なるパターンが入る工夫も施されている。
FSAは汎用性の高いANT+を通信規格として採用することで、パソコンやスマートフォン、サイクルコンピューター等とも連携させることが可能となる。シフターの電源はコンビニ等でも販売しているコイン型のCR2032電池を使用する。
レバーやブラケット自体の形状も曲線を多用したエルゴノミックなデザインとすることで握りやすさを追求。レバー自体も長さの異なるスタンダードとコンパクトの2種類が用意され、手のサイズに合わせ選択できることも大きなポイントだ。ブラケットフードにも随所にライン状の凹凸を設けることでグリップを高めている。
シフターからの変速信号を受信したり、電源のON/OFFを行ったりするコンポーネントのブレインとなるのがフロントディレイラーだ。変速のためのモーター以外にもシステム全体のコントロールボックスをフロントディレイラー本体に収納しており、四角い箱型のデザインとなるのが特徴である。
本体上部には電源ボタンとセッティング用ボタンの2つが装備され、その隣にはコンポーネントの状態を4色のカラー別で示してくれるLEDランプも配されている。バッテリー残量もこちらで確認することが可能だ。また、変速のためのガイドプレートは他社に準拠した形状が採用されている。
リアディレイラーもフロントディレイラーと統一感のある黒いボックス状のルックスを採用。内部にモーターギアを搭載しており、静かな動作音と正確なシフトをもたらす。標準で32Tまで対応となるケージはカーボン素材でできており、プーリーも肉抜きが施されることで軽量化に対しても抜け目はない。
バッテリーは細長い筒状を採用し、シマノDi2と同様にシートポスト内部に装備する。そこから前後ディレイラーへ向かってフレーム内部を這わせケーブルを配線。一度の充電で約4000~6000kmの走行が可能とされ、その駆動時間の長さは電動コンポーネントの中でも随一となっている。シートポスト等外すことなくリアディレイラー側のケーブルをチャージャーへ繋ぐことで充電も可能だ。
販売はこれら変速系統のパーツに加え、同社のハイエンドであるK-Forceグレードのクランクとブレーキ、スプロケやチェーン、その他小物を合わせたフルセットにて行われる。価格は380,000円(税抜)。今回は同製品のデモ機を搭載したBMCのGF02と、タイムSCYLONの試乗車にてテストを行った。それでは、インプレッションに移ろう。
― インプレッション
奥村:シマノ、スラム、カンパニョーロに加わる新たなコンポーネントということで、こういった製品が出て来るのは純粋に面白いですね。3大メーカーが市場を席巻しているにも関わらず、業界に切り込んでくる姿勢には頼もしさを感じますし、「こんな新しいものが出てきた!」「どんな方式で変速してくれるんだろう?」と興味が湧いて楽しくなってきます。
錦織:そうですね。既に市場にはほぼ完成したシステムを持つ3つのメーカーがいるわけですから、そこに新たな製品をリリースしていくのはブランドとして大きな夢の一つと言えるのではないでしょうか。総合コンポーネントメーカーとして、FSAのパーツのみでバイクを組み上げられるんだとアピールするためにも、このK-Force WEの登場は必要なステップだと思いますね。
実際の製品を見ていくと、シマノ等と同様のシフトスイッチ位置ながら独自の上下に分かれたボタン配置で、変速のタッチにはやや慣れが必要だと思います。下ハンドルを持ったときには下の変速スイッチが押しやすく、反対にブラケットを上から浅く握っている際には上の変速スイッチが届きやすい。指先のアクセスを配慮した配置となっており、ボタンに対する距離感は考えられているなと感じる部分です。
奥村:各シフトスイッチはフロント/リア、シフトアップ/ダウンがアプリにてカスタマイズできるとのことで、普段からシマノのコンポーネントを使用している人なら左レバーにフロントディレイラー、右レバーにリアディレイラーを割り当てれば、特に混乱することはないと思います。
今回デモ機ということもありレバーのリーチ調整機構が実装されておらず、手の小さな私では下ハンドルを握った際にブレーキをかけるのがやや難しかった。この点は製品版でどう改善されるのか期待したいところです。女性等比較的手の小さなライダーが扱うのであれば、調整は必須かもしれませんね。
錦織:そうですね。レバーブラケットのサイズも手の大きさに合わせた2種類が揃うとのことなので、そこでの調整も合わせ自分にマッチしたサイズ感で使いたいですね。ですがスイッチ位置もハンドルに手を置いた時に押しやすいよう考え込まれていますし、レバー形状も指掛かりが良いエルゴノミックな形状が使われている。ブラケットフードもグリップしやすいようなパターンを配置し、握り込みやすいようにしているなど評価できる点は大いにあるでしょう。もちろん改良すべき点が無いと言えば嘘になりますが。
奥村:変速性能に関しては特に問題はありませんでしたが、シマノDi2など他の電動コンポーネントと比較すると若干動きがもたつくような場面もありました。そこはまだ発展途上と言えるかもしれませんね。しかし、リアディレイラーの形状などはなかなか斬新で攻めたデザインで格好いいですね。
錦織:またシステム全体を見ると、ディレイラーをシフターと分離し、バッテリーとは有線で繋ぐ独特のセミワイヤレス方式は理にかなっていますね。ワイヤー類が一番混み合うハンドル周りを無線化することで、昨今のエアロフレームやトータルインテグレーション化が進むフレームにも対応することができますし、バッテリーを一元化することで駆動時間を伸ばす事ができます。
奥村:クランクは太めでマッシブな見た目が良いですね。クランクセットに関しては従来からラインアップしていた事もあり作りに不安な部分もなく、しっかりとした踏み心地のある剛性感となっています。レースレベルのパワー入力に対しても、受け止めて推進力に繋がるような硬さやパワー伝達性を感じました。
錦織:クランクセットは既に単品で流通している物ですので、チェーンリングの変速性能や剛性、強度などについては高い完成度を持っています。ブレーキキャリパーに関しても必要十分な制動力を有しており、高速域でブレーキングするようなシーンでもアーチやリンク部がガタつくような事はありません。軽量なカーボンアームを採用していますが剛性はしっかり担保されていますね。またブレーキのアジャスター部分が長く取ってあるため、ライダーの好みに応じてレバーの引き具合を細かく調整できるのも良いですね。
グループセットとして完璧に完成したものかと言われたら、残念ながらその域には達していないでしょう。しかし、調整やメンテナンスの手間もかからず、扱う上でクセもないような何もかもが完璧に仕上がっている、でもメーカーとしての思想や哲学が主張されないコンポーネントが良い物なのかというと、そうではないと思います。
無味無臭の完成された製品が蔓延るここ最近の自転車パーツ市場において、シマノやスラム、カンパニョーロといった既存のブランドに対するアンチテーゼとして、FSAのやる気と自転車にかける情熱を評価したいところです。いわばユーザー達のFSA愛が試されているといって良いでしょう。
厳しいことを言ってしまえば、現段階では他社製品と性能を比較してアドバンテージとなるから購入しようという製品ではないでしょう。だからこそ、『僕が1番K-Force WEを上手く使えるんだ』という気持ちになれる人に、このコンポーネントを導入してほしい。このシステムなら自分のバイクが唯一無二の面白いバイクになるだろうという人に進んで購入して欲しいと思います。そして、ここをスタート地点としてどう洗練されていくか注目したいです。
奥村:僕も応援したいと思います。FSAというブランドがトータルコンポーネントブランドになる第一歩ということで、今後に期待したいですね。
FSA K-Force WE
セット内容:
・ワイヤーレスシフト/ブレーキレバーセット(CR2032電池使用)
・電動フロントディレイラー
・電動リアディレイラー(最大対応ギア32T)
・バッテリー
・バッテリーコネクティングケーブル
・充電器
・カセットスプロケット(チタン製、重量:257g)
・クランクセット(BB386EVO規格対応)
・チェーン(5.6mm幅、中空ピン、重量:246g)
・前後キャリパーブレーキ(対応リム幅:18~28mm)
価格:380,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
奥村貴(正屋)
福岡市東区千早の自転車店、正屋千早店の店長を務める。10代半ばからMTBの魅力に取り付かれ、2001年から2006年まではMTBジャパンシリーズのエリートクラスで全国を転戦。現在はロードバイクを中心として、ビギナーの方に自転車の楽しさを伝えるよう活動する一方、若きライダーをサポートするMASAYA YOUNG RIDERS PROGRAMで若手選手の育成に取り組んでいる。
CWレコメンドショップページ
正屋 HP
錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際に海外の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードへ20年以上に渡り連続出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
CWレコメンドショップページ
フォーチュンバイク HP
ウェア協力:カペルミュール
text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
ハンドル、ステム、シートポストからクランク、ブレーキまであらゆるサイクルパーツを手がけてきた総合ブランド、FSA。創業から20年に満たない新興メーカーながら、高い性能を有したパーツ群によって世界トッププロ選手らを長きに渡りサポートしてきた。他社に先駆けカーボンクランクをリリースしたり、今では普通となったコンパクトクランクやコンパクト形状のドロップハンドルを世に広めたりといった功績も、同ブランドを語る上では外せないエピソードだろう。
常に最先端のトレンドを追求するFSAが次なる一手として繰り出してきたのが、今回紹介する「K-Force WE」である。同社初となる変速系統グループセットとなるこの製品は、研究開発に約5年、実地テストでさらに2年という長い時間を費やしたFSAの意欲作。
2年前にはすでにプロトタイプの形まで完成しており、ワールドツアーレース会場にて目撃情報も流れていた製品だけに、いつ発売となるのか注目していたユーザーも多いことだろう。昨年のユーロバイクでは製品版の正式発表も行われ、そこから約1年を経てようやく国内にも入荷が始まることとなる。
K-Force WEの大きな特徴は、WE(Wireless Electronicの略)の名が示す通り無線電動シフトを採用した点だろう。スラムのRED eTapに続く世界で第2のワイヤレスシフトコンポーネントとなる。シフターとディレイラーをワイヤーやケーブルで繋ぐ必要がないため、インストール作業をより簡略化できるとともに、電源となるバッテリーは大容量かつ有線で接続する方式をとることで、より長い駆動時間を可能としている。無線と有線のメリットを併せ持った、世界初となる”セミワイヤレス”方式をFSAは選択したという訳だ。
シフトブレーキレバーも同社独自の形状を採用する。シフトスイッチは上下に繋がった単一の形状をしており、それぞれの方向に倒し込むことで変速操作を行う構造に。上下どちらのスイッチでシフトアップ/ダウンかはカスタマイズできる仕様となっている。もちろん長押しによる連続変速も可能だ。指先で上下スイッチの判別をし易いよう表面に異なるパターンが入る工夫も施されている。
FSAは汎用性の高いANT+を通信規格として採用することで、パソコンやスマートフォン、サイクルコンピューター等とも連携させることが可能となる。シフターの電源はコンビニ等でも販売しているコイン型のCR2032電池を使用する。
レバーやブラケット自体の形状も曲線を多用したエルゴノミックなデザインとすることで握りやすさを追求。レバー自体も長さの異なるスタンダードとコンパクトの2種類が用意され、手のサイズに合わせ選択できることも大きなポイントだ。ブラケットフードにも随所にライン状の凹凸を設けることでグリップを高めている。
シフターからの変速信号を受信したり、電源のON/OFFを行ったりするコンポーネントのブレインとなるのがフロントディレイラーだ。変速のためのモーター以外にもシステム全体のコントロールボックスをフロントディレイラー本体に収納しており、四角い箱型のデザインとなるのが特徴である。
本体上部には電源ボタンとセッティング用ボタンの2つが装備され、その隣にはコンポーネントの状態を4色のカラー別で示してくれるLEDランプも配されている。バッテリー残量もこちらで確認することが可能だ。また、変速のためのガイドプレートは他社に準拠した形状が採用されている。
リアディレイラーもフロントディレイラーと統一感のある黒いボックス状のルックスを採用。内部にモーターギアを搭載しており、静かな動作音と正確なシフトをもたらす。標準で32Tまで対応となるケージはカーボン素材でできており、プーリーも肉抜きが施されることで軽量化に対しても抜け目はない。
バッテリーは細長い筒状を採用し、シマノDi2と同様にシートポスト内部に装備する。そこから前後ディレイラーへ向かってフレーム内部を這わせケーブルを配線。一度の充電で約4000~6000kmの走行が可能とされ、その駆動時間の長さは電動コンポーネントの中でも随一となっている。シートポスト等外すことなくリアディレイラー側のケーブルをチャージャーへ繋ぐことで充電も可能だ。
販売はこれら変速系統のパーツに加え、同社のハイエンドであるK-Forceグレードのクランクとブレーキ、スプロケやチェーン、その他小物を合わせたフルセットにて行われる。価格は380,000円(税抜)。今回は同製品のデモ機を搭載したBMCのGF02と、タイムSCYLONの試乗車にてテストを行った。それでは、インプレッションに移ろう。
― インプレッション
奥村:シマノ、スラム、カンパニョーロに加わる新たなコンポーネントということで、こういった製品が出て来るのは純粋に面白いですね。3大メーカーが市場を席巻しているにも関わらず、業界に切り込んでくる姿勢には頼もしさを感じますし、「こんな新しいものが出てきた!」「どんな方式で変速してくれるんだろう?」と興味が湧いて楽しくなってきます。
錦織:そうですね。既に市場にはほぼ完成したシステムを持つ3つのメーカーがいるわけですから、そこに新たな製品をリリースしていくのはブランドとして大きな夢の一つと言えるのではないでしょうか。総合コンポーネントメーカーとして、FSAのパーツのみでバイクを組み上げられるんだとアピールするためにも、このK-Force WEの登場は必要なステップだと思いますね。
実際の製品を見ていくと、シマノ等と同様のシフトスイッチ位置ながら独自の上下に分かれたボタン配置で、変速のタッチにはやや慣れが必要だと思います。下ハンドルを持ったときには下の変速スイッチが押しやすく、反対にブラケットを上から浅く握っている際には上の変速スイッチが届きやすい。指先のアクセスを配慮した配置となっており、ボタンに対する距離感は考えられているなと感じる部分です。
奥村:各シフトスイッチはフロント/リア、シフトアップ/ダウンがアプリにてカスタマイズできるとのことで、普段からシマノのコンポーネントを使用している人なら左レバーにフロントディレイラー、右レバーにリアディレイラーを割り当てれば、特に混乱することはないと思います。
今回デモ機ということもありレバーのリーチ調整機構が実装されておらず、手の小さな私では下ハンドルを握った際にブレーキをかけるのがやや難しかった。この点は製品版でどう改善されるのか期待したいところです。女性等比較的手の小さなライダーが扱うのであれば、調整は必須かもしれませんね。
錦織:そうですね。レバーブラケットのサイズも手の大きさに合わせた2種類が揃うとのことなので、そこでの調整も合わせ自分にマッチしたサイズ感で使いたいですね。ですがスイッチ位置もハンドルに手を置いた時に押しやすいよう考え込まれていますし、レバー形状も指掛かりが良いエルゴノミックな形状が使われている。ブラケットフードもグリップしやすいようなパターンを配置し、握り込みやすいようにしているなど評価できる点は大いにあるでしょう。もちろん改良すべき点が無いと言えば嘘になりますが。
奥村:変速性能に関しては特に問題はありませんでしたが、シマノDi2など他の電動コンポーネントと比較すると若干動きがもたつくような場面もありました。そこはまだ発展途上と言えるかもしれませんね。しかし、リアディレイラーの形状などはなかなか斬新で攻めたデザインで格好いいですね。
錦織:またシステム全体を見ると、ディレイラーをシフターと分離し、バッテリーとは有線で繋ぐ独特のセミワイヤレス方式は理にかなっていますね。ワイヤー類が一番混み合うハンドル周りを無線化することで、昨今のエアロフレームやトータルインテグレーション化が進むフレームにも対応することができますし、バッテリーを一元化することで駆動時間を伸ばす事ができます。
奥村:クランクは太めでマッシブな見た目が良いですね。クランクセットに関しては従来からラインアップしていた事もあり作りに不安な部分もなく、しっかりとした踏み心地のある剛性感となっています。レースレベルのパワー入力に対しても、受け止めて推進力に繋がるような硬さやパワー伝達性を感じました。
錦織:クランクセットは既に単品で流通している物ですので、チェーンリングの変速性能や剛性、強度などについては高い完成度を持っています。ブレーキキャリパーに関しても必要十分な制動力を有しており、高速域でブレーキングするようなシーンでもアーチやリンク部がガタつくような事はありません。軽量なカーボンアームを採用していますが剛性はしっかり担保されていますね。またブレーキのアジャスター部分が長く取ってあるため、ライダーの好みに応じてレバーの引き具合を細かく調整できるのも良いですね。
グループセットとして完璧に完成したものかと言われたら、残念ながらその域には達していないでしょう。しかし、調整やメンテナンスの手間もかからず、扱う上でクセもないような何もかもが完璧に仕上がっている、でもメーカーとしての思想や哲学が主張されないコンポーネントが良い物なのかというと、そうではないと思います。
無味無臭の完成された製品が蔓延るここ最近の自転車パーツ市場において、シマノやスラム、カンパニョーロといった既存のブランドに対するアンチテーゼとして、FSAのやる気と自転車にかける情熱を評価したいところです。いわばユーザー達のFSA愛が試されているといって良いでしょう。
厳しいことを言ってしまえば、現段階では他社製品と性能を比較してアドバンテージとなるから購入しようという製品ではないでしょう。だからこそ、『僕が1番K-Force WEを上手く使えるんだ』という気持ちになれる人に、このコンポーネントを導入してほしい。このシステムなら自分のバイクが唯一無二の面白いバイクになるだろうという人に進んで購入して欲しいと思います。そして、ここをスタート地点としてどう洗練されていくか注目したいです。
奥村:僕も応援したいと思います。FSAというブランドがトータルコンポーネントブランドになる第一歩ということで、今後に期待したいですね。
FSA K-Force WE
セット内容:
・ワイヤーレスシフト/ブレーキレバーセット(CR2032電池使用)
・電動フロントディレイラー
・電動リアディレイラー(最大対応ギア32T)
・バッテリー
・バッテリーコネクティングケーブル
・充電器
・カセットスプロケット(チタン製、重量:257g)
・クランクセット(BB386EVO規格対応)
・チェーン(5.6mm幅、中空ピン、重量:246g)
・前後キャリパーブレーキ(対応リム幅:18~28mm)
価格:380,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
奥村貴(正屋)
福岡市東区千早の自転車店、正屋千早店の店長を務める。10代半ばからMTBの魅力に取り付かれ、2001年から2006年まではMTBジャパンシリーズのエリートクラスで全国を転戦。現在はロードバイクを中心として、ビギナーの方に自転車の楽しさを伝えるよう活動する一方、若きライダーをサポートするMASAYA YOUNG RIDERS PROGRAMで若手選手の育成に取り組んでいる。
CWレコメンドショップページ
正屋 HP
錦織大祐(フォーチュンバイク)
幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際に海外の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードへ20年以上に渡り連続出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。
CWレコメンドショップページ
フォーチュンバイク HP
ウェア協力:カペルミュール
text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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