2017/09/07(木) - 22:05
9月8日から始まる第31回ツール・ド・北海道。今年は函館を拠点とする3ステージで最終フィニッシュは函館山頂上というサプライズが用意された。昨年覇者の宇都宮ブリッツェン増田成幸はじめNIPPOヴィーニファンティーニやチーム右京など20チームがしのぎを削る。
ツール・ド・北海道2017 概要
第1ステージ 9月8日(金)162km 函館競輪場~江差町~北斗市
第2ステージ 9月9日(土)185km 北斗市~松前町~木古内町
第3ステージ 9月10日(日)77km 函館競輪場~函館山山頂、最終表彰式
大学生が出られる貴重なステージレース
今年で第31回を数える伝統のツール・ド・北海道は北の大地を舞台にしたステージレースとして数々の名勝負を繰り広げてきた。また学連登録の大学が出場するのも特色で、今年は鹿屋体育大学、京都産業大学、日本大学、中央大学そして地元の北海道大学が出場する。過去には当時鹿屋体育大学の山本元喜、黒枝士揮の2人が計3勝を挙げている。
この方針は若手育成のために大学生のステージレースを行うことも当初の大会主旨の一つだったためで、現在でもこのツール・ド・北海道出場権を得るための戦いが年間通じて行われている(前年インカレロード+当年チームTT+当年個人選ロードの合計成績)。またここ数年は各チームへU26世代の選手を登用するよう要請しているため個人新人賞の設定は無く、U26団体時間賞がある。
初の函館滞在型レース
今年のコースの特徴は函館滞在型であることだ。7年ぶりの道南地方での開催となったが31年の歴史でも1か所滞在型は初のことだ。北海道最南端地域でのレースは、半島を巧みに使ったコース設定で海岸線や内陸の山間を通るもの。最も大きなトピックは最終フィニッシュ地点が函館山山頂であることだ。ツール・ド・北海道関係者の悲願が達成されたもので、本来は車や観光客でにぎわう日曜日の昼間数時間を自転車ロードレースのために封鎖することに驚く。
コースは3日間通じておおむね平坦基調で、低いながらも山岳の設定がある。しかしその位置やフィニッシュまでの残り距離などが絶妙であり、低いからと言って決して侮れないものだ。全体距離も長くはないが、多くのチーム関係者が今年は小集団のフィニッシュになるのではと予想するのはこのためだ。3日間のステージレースは一度の失敗が命取りになる。見方を変えれば一度の大きな成功があればそれをキープできる可能性もまた高い。昨年の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)の総合優勝がその例だ。
第1ステージ 9月8日(金)162km 函館競輪場~江差町~北斗市
函館競輪場をスタートしまずは函館湾沿いを通る。背景には最終日に上る函館山が見えるはずだ。北海道新幹線の停車駅である木古内町から内陸へ入りホットスポット、そして江差町から日本海側を北上する。厚沢部町から東へ進路を取り2つのKOMを経て北斗町の運動公園へフィニッシュする。
おおむね平坦で海岸沿いが1/3、そして2つのKOMの設定が絶妙だ。それは終盤にあり一つ目は直線状の上りでパワークライム、2つめは短いものの特に下りがテクニカルで下り切ってから10kmでフィニッシュ。2つのKOMで攻撃すれば30秒から1分差をつけることは可能。最終の函館山勝負に持ち込みたくないチームあるいはアドバンテージを持っておきたいチームが必ずや攻撃する。まして第1ステージだ。小集団のスプリントになる可能性がある。
第2ステージ 9月9日(土)185km 北斗市~松前町~木古内町
前日のフィニッシュ地点をスタートし一路南下、JR青函トンネルのあたりから海岸沿いの道をひたすら走る。北海道最南端の白神岬、日本最北端の城下町である松前町でホットスポット、さらに日本海側を上ノ国町まで北上し前日の往路を反対普方向へ走り木古内駅前でフィニッシュする。
コースのじつに2/3は海岸沿いでそこでの風向きによって展開が大きく変わる。風がそれほど強いものでなければ集団でのスプリントとなるだろう。いっぽうで風が強いと小集団での逃げ切りとなり、また千切れたら復帰できないコースのため後方は打ち切りとの戦いになる。
第3ステージ 9月10日(日)77km 函館競輪場~函館山山頂
函館競輪場をスタートし函館空港をくぐって山間部に入りKOMを経て海岸線に出る。一路函館市内方面へ西進し函館護国神社前から函館山登山道路を上りきってフィニッシュだ。函館山登山道は下の電車道からだと距離4.8kmで標高差320mを上る。時間にして11分ほど、クライマーが活躍するには短く、中距離スピード系の選手にはやや長い。
クライマーが有利ではあるが、数人が頂上まで競い合う展開が予想される。前ステージまでのタイム差がこの上りだけで大きく入れ替わるだろう。あるいはそれを嫌うチームによってスタート早々に攻撃を仕掛け小集団のまま逃げ切る可能性もまた高い。距離が77kmと短いだけに一瞬のミスも許されない緊張感のあるステージだ。
国内外20チーム98人が戦う
今年参加するのはプロコンチネンタルチームとしてNIPPOヴィーニファンティーニ、コンチネンタルチームとして海外からセントジョージコンチネンタルサイクリングチーム、トレンガヌサイクリングチーム、セブンイレブンロードバイクフィリピンズ。国内はチーム右京、宇都宮ブリッツェン、マトリックスパワータグ、ブリヂストンアンカー、キナンサイクリングチーム、愛三工業レーシングチーム、シマノレーシング、那須ブラーゼン、インタープロサイクリングアカデミーが出場。大学チームとして韓国体育大学校、鹿屋体育大学、京都産業大学、日本大学、中央大学、北海道大学そして地域チームとして北海道地域選抜チームが出場する。
プロコンチネンタルチーム、コンチネンタルチームは
まずは誰もがエースになりうるNIPPOヴィーニファンティーニが挙げられる。上りのエースに中根英登、さらにオールラウンドに戦える昨年2位のピエールパオロ・デネグリら4人がチャンスをうかがい隙を見せない編成だ。
そしてディフェンディングチャンピオンの増田成幸(宇都宮ブリッツェン)の出場が注目だ。まだバセドウ病の加療中だが、5日前に渡良瀬遊水地で開催されたJプロツアーのタイムトライアルチャンピオンシップで4位に入りその力は健在。
今や海外を主戦場とするチーム右京は全日本チャンピオンの畑中勇介、上りでのエゴイツ・フェルナンデスが有力選手。マトリックスパワータグは佐野淳哉、土井雪広、ホセ・ビセンテ・トリビオ、吉田隼人とオールラウンドに高い戦力を持つ。ブリヂストンアンカーは復帰した初山翔、西薗良太、ダミアン・モニエらで総合力としてトップレベル。キナンサイクリングチームは上りで最強のマルコス・ガルシア中心にトマ・ルバ、山本元喜ら盤石の布陣。
愛三工業レーシングチームは早川朋宏とU23アジアチャンピオンで世界選U23ロードに出る岡本隼らでステージ、総合ともに狙える。シマノレーシングは今シーズン好調の入部正太朗、全日本2年連続3位の木村圭佑、スプリントの水谷翔らが注目。那須ブラーゼンは昨年の本大会で大逆転目指して激走した吉岡直哉を中心にスプリントの下島将輝らで団結して戦う。初参加のインタープロサイクリングアカデミーは2週間前の都道府県大会で3位の水野恭兵、若手の吉田悠人、中田拓也らで戦う。
大学生チームは
大学生では日本大学をまず挙げよう。5日前のインカレで総合優勝したが、ロードを制した武山晃輔と同3位の草場啓吾、200mハロン10秒302の学連記録を樹立した沢田桂太郎らの戦いぶりが見どころ。鹿屋体育大学は世界選手権ロード出場の山本大喜、インカレロード2位の冨尾大地、スプリンターの黒枝咲哉らで戦う。京都産業大学は中井唯晶、曽我部厚誠らが出場、中央大学は今村駿介、尾形尚彦らでステージ優勝を狙う。大学勢は北海道大学とともに団体のU26賞を狙うのも目標だ。
有力視されるのは
今年のコース設定から有力視されるのはチームとしてはNIPPOヴィーニファンティーニ、チーム右京、マトリックスパワータグ、ブリヂストンアンカーらで、個人の注目選手はマルコス・ガルシア、増田成幸、畑中勇介、エドガー・ノハレス(セブンイレブン)、中根英登、ホセ・ビセンテ・トリビオ、西薗良太、吉岡直哉、沢田桂太郎、岡本隼、今村駿介らだ。特に函館山でマルコス・ガルシアが、スプリント勝負で沢田の10秒302の脚が爆発するか注目だ。
text&photo:Hideaki TAKAGI
ツール・ド・北海道2017 概要
第1ステージ 9月8日(金)162km 函館競輪場~江差町~北斗市
第2ステージ 9月9日(土)185km 北斗市~松前町~木古内町
第3ステージ 9月10日(日)77km 函館競輪場~函館山山頂、最終表彰式
大学生が出られる貴重なステージレース
今年で第31回を数える伝統のツール・ド・北海道は北の大地を舞台にしたステージレースとして数々の名勝負を繰り広げてきた。また学連登録の大学が出場するのも特色で、今年は鹿屋体育大学、京都産業大学、日本大学、中央大学そして地元の北海道大学が出場する。過去には当時鹿屋体育大学の山本元喜、黒枝士揮の2人が計3勝を挙げている。
この方針は若手育成のために大学生のステージレースを行うことも当初の大会主旨の一つだったためで、現在でもこのツール・ド・北海道出場権を得るための戦いが年間通じて行われている(前年インカレロード+当年チームTT+当年個人選ロードの合計成績)。またここ数年は各チームへU26世代の選手を登用するよう要請しているため個人新人賞の設定は無く、U26団体時間賞がある。
初の函館滞在型レース
今年のコースの特徴は函館滞在型であることだ。7年ぶりの道南地方での開催となったが31年の歴史でも1か所滞在型は初のことだ。北海道最南端地域でのレースは、半島を巧みに使ったコース設定で海岸線や内陸の山間を通るもの。最も大きなトピックは最終フィニッシュ地点が函館山山頂であることだ。ツール・ド・北海道関係者の悲願が達成されたもので、本来は車や観光客でにぎわう日曜日の昼間数時間を自転車ロードレースのために封鎖することに驚く。
コースは3日間通じておおむね平坦基調で、低いながらも山岳の設定がある。しかしその位置やフィニッシュまでの残り距離などが絶妙であり、低いからと言って決して侮れないものだ。全体距離も長くはないが、多くのチーム関係者が今年は小集団のフィニッシュになるのではと予想するのはこのためだ。3日間のステージレースは一度の失敗が命取りになる。見方を変えれば一度の大きな成功があればそれをキープできる可能性もまた高い。昨年の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)の総合優勝がその例だ。
第1ステージ 9月8日(金)162km 函館競輪場~江差町~北斗市
函館競輪場をスタートしまずは函館湾沿いを通る。背景には最終日に上る函館山が見えるはずだ。北海道新幹線の停車駅である木古内町から内陸へ入りホットスポット、そして江差町から日本海側を北上する。厚沢部町から東へ進路を取り2つのKOMを経て北斗町の運動公園へフィニッシュする。
おおむね平坦で海岸沿いが1/3、そして2つのKOMの設定が絶妙だ。それは終盤にあり一つ目は直線状の上りでパワークライム、2つめは短いものの特に下りがテクニカルで下り切ってから10kmでフィニッシュ。2つのKOMで攻撃すれば30秒から1分差をつけることは可能。最終の函館山勝負に持ち込みたくないチームあるいはアドバンテージを持っておきたいチームが必ずや攻撃する。まして第1ステージだ。小集団のスプリントになる可能性がある。
第2ステージ 9月9日(土)185km 北斗市~松前町~木古内町
前日のフィニッシュ地点をスタートし一路南下、JR青函トンネルのあたりから海岸沿いの道をひたすら走る。北海道最南端の白神岬、日本最北端の城下町である松前町でホットスポット、さらに日本海側を上ノ国町まで北上し前日の往路を反対普方向へ走り木古内駅前でフィニッシュする。
コースのじつに2/3は海岸沿いでそこでの風向きによって展開が大きく変わる。風がそれほど強いものでなければ集団でのスプリントとなるだろう。いっぽうで風が強いと小集団での逃げ切りとなり、また千切れたら復帰できないコースのため後方は打ち切りとの戦いになる。
第3ステージ 9月10日(日)77km 函館競輪場~函館山山頂
函館競輪場をスタートし函館空港をくぐって山間部に入りKOMを経て海岸線に出る。一路函館市内方面へ西進し函館護国神社前から函館山登山道路を上りきってフィニッシュだ。函館山登山道は下の電車道からだと距離4.8kmで標高差320mを上る。時間にして11分ほど、クライマーが活躍するには短く、中距離スピード系の選手にはやや長い。
クライマーが有利ではあるが、数人が頂上まで競い合う展開が予想される。前ステージまでのタイム差がこの上りだけで大きく入れ替わるだろう。あるいはそれを嫌うチームによってスタート早々に攻撃を仕掛け小集団のまま逃げ切る可能性もまた高い。距離が77kmと短いだけに一瞬のミスも許されない緊張感のあるステージだ。
国内外20チーム98人が戦う
今年参加するのはプロコンチネンタルチームとしてNIPPOヴィーニファンティーニ、コンチネンタルチームとして海外からセントジョージコンチネンタルサイクリングチーム、トレンガヌサイクリングチーム、セブンイレブンロードバイクフィリピンズ。国内はチーム右京、宇都宮ブリッツェン、マトリックスパワータグ、ブリヂストンアンカー、キナンサイクリングチーム、愛三工業レーシングチーム、シマノレーシング、那須ブラーゼン、インタープロサイクリングアカデミーが出場。大学チームとして韓国体育大学校、鹿屋体育大学、京都産業大学、日本大学、中央大学、北海道大学そして地域チームとして北海道地域選抜チームが出場する。
プロコンチネンタルチーム、コンチネンタルチームは
まずは誰もがエースになりうるNIPPOヴィーニファンティーニが挙げられる。上りのエースに中根英登、さらにオールラウンドに戦える昨年2位のピエールパオロ・デネグリら4人がチャンスをうかがい隙を見せない編成だ。
そしてディフェンディングチャンピオンの増田成幸(宇都宮ブリッツェン)の出場が注目だ。まだバセドウ病の加療中だが、5日前に渡良瀬遊水地で開催されたJプロツアーのタイムトライアルチャンピオンシップで4位に入りその力は健在。
今や海外を主戦場とするチーム右京は全日本チャンピオンの畑中勇介、上りでのエゴイツ・フェルナンデスが有力選手。マトリックスパワータグは佐野淳哉、土井雪広、ホセ・ビセンテ・トリビオ、吉田隼人とオールラウンドに高い戦力を持つ。ブリヂストンアンカーは復帰した初山翔、西薗良太、ダミアン・モニエらで総合力としてトップレベル。キナンサイクリングチームは上りで最強のマルコス・ガルシア中心にトマ・ルバ、山本元喜ら盤石の布陣。
愛三工業レーシングチームは早川朋宏とU23アジアチャンピオンで世界選U23ロードに出る岡本隼らでステージ、総合ともに狙える。シマノレーシングは今シーズン好調の入部正太朗、全日本2年連続3位の木村圭佑、スプリントの水谷翔らが注目。那須ブラーゼンは昨年の本大会で大逆転目指して激走した吉岡直哉を中心にスプリントの下島将輝らで団結して戦う。初参加のインタープロサイクリングアカデミーは2週間前の都道府県大会で3位の水野恭兵、若手の吉田悠人、中田拓也らで戦う。
大学生チームは
大学生では日本大学をまず挙げよう。5日前のインカレで総合優勝したが、ロードを制した武山晃輔と同3位の草場啓吾、200mハロン10秒302の学連記録を樹立した沢田桂太郎らの戦いぶりが見どころ。鹿屋体育大学は世界選手権ロード出場の山本大喜、インカレロード2位の冨尾大地、スプリンターの黒枝咲哉らで戦う。京都産業大学は中井唯晶、曽我部厚誠らが出場、中央大学は今村駿介、尾形尚彦らでステージ優勝を狙う。大学勢は北海道大学とともに団体のU26賞を狙うのも目標だ。
有力視されるのは
今年のコース設定から有力視されるのはチームとしてはNIPPOヴィーニファンティーニ、チーム右京、マトリックスパワータグ、ブリヂストンアンカーらで、個人の注目選手はマルコス・ガルシア、増田成幸、畑中勇介、エドガー・ノハレス(セブンイレブン)、中根英登、ホセ・ビセンテ・トリビオ、西薗良太、吉岡直哉、沢田桂太郎、岡本隼、今村駿介らだ。特に函館山でマルコス・ガルシアが、スプリント勝負で沢田の10秒302の脚が爆発するか注目だ。
text&photo:Hideaki TAKAGI
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