フィニッシュラインに向けてハンドルを投げ込むフルーネウェーヘン、ヴィヴィアーニ、ガビリア、クリストフ。世界選手権を見据えるスプリンターたちの接戦はクイックステップフロアーズの未来を背負う23歳ガビリアの勝利で幕を閉じた。


太陽がさすマンスフィールドをスタートしていく太陽がさすマンスフィールドをスタートしていく photo:Kei Tsuji / TDWsport
逃げグループを形成するマーク・マクナリー(イギリス、マディソンジェネシス)ら逃げグループを形成するマーク・マクナリー(イギリス、マディソンジェネシス)ら photo:Kei Tsuji / TDWsport失格処分を受けたブライアン・ルイス(アメリカ、サイレンス・プロサイクリング)とジェームス・ローズリーウィリアムズ(イギリス、バイクチャンネル・キャニオン)失格処分を受けたブライアン・ルイス(アメリカ、サイレンス・プロサイクリング)とジェームス・ローズリーウィリアムズ(イギリス、バイクチャンネル・キャニオン) photo:Kei Tsuji / TDWsport

クライマーが飛び出すような登りもなければ、集団を破壊するような風も吹かず。ツアー・オブ・ブリテンは4日連続で世界選手権に備えるスプリンターたちにチャンスを用意した。イングランド中部ノッティンガムシャーのマンスフィールドからニューアーク・オン・トレントまでの164.7kmは3級山岳が1つ設定されただけのフラットコース。雨と晴れを交互に繰り返す気まぐれな空の下、レースはミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)らのアタックで始まった。

総合優勝候補の一角でもあるクウィアトコウスキーのアタックはすぐさま吸収され、継続的なアタック合戦の末にマーク・マクナリー(イギリス、マディソンジェネシス)やジェイコブ・スコット(イギリス、アンポスト・チェーンリアクション)ら5名が抜け出すことに成功。ノッティンガムシャーの緑豊かな丘でタイム差を広げにかかった。

遅れてカウンターアタックを仕掛けたブライアン・ルイス(アメリカ、サイレンス・プロサイクリング)とジェームス・ローズリーウィリアムズ(イギリス、バイクチャンネル・キャニオン)が追走グループを形成して先頭グループに迫る。しかし、アタックの際に車道ではなく歩道を通ってポジションを上げたとしてUCIコミッセールは両者に失格処分を下している。

オリカ・スコットとカチューシャ・アルペシン、ディメンションデータの集団牽引によってタイム差は3分30秒を行ったり来たり。3つあるスプリントポイントはマクナリーがすべて先頭通過。3級山岳を先頭通過したスコットは山岳賞のトップに立っている。

逃げグループを追走するルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・スコット)逃げグループを追走するルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport
オリカ・スコットとカチューシャ・アルペシンがメイン集団を牽引するオリカ・スコットとカチューシャ・アルペシンがメイン集団を牽引する photo:Kei Tsuji / TDWsport
楽しげに談笑しながら走るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)とトニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)楽しげに談笑しながら走るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)とトニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) photo:Kei Tsuji / TDWsport
残り20kmを2分リードで逃げる5名残り20kmを2分リードで逃げる5名 photo:Kei Tsuji / TDWsport

タイム差が縮まりつつある中、フィニッシュまで45kmを残したところでコーナー出口外側に駐車していた車両に多くの選手が衝突する形で集団落車が発生する。集団前方で発生したこの落車にはカチューシャ・アルペシン、BMCレーシング、オリカ・スコットといった主要チームの選手が多く巻き込まれ、怪我を負ったブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)がリタイアを余儀なくされている。なお、グランツールとは異なりツアー・オブ・ブリテンの交通規制は最小限に抑えられており、レース通過の5分ほど前までコースは一般車両にも解放された状態。主催者は問題の車両がその場所に駐車していたことについて原因究明中としている。

ここまで早めに逃げグループを吸収してしまうステージが続いたが、この日は先頭5名が粘った。残り20km地点で2分あったタイム差は、いわゆる10km/1分の法に則って残り10kmでジャスト1分に。逃げ切りの可能性も浮上したが、徐々に勢いが落ちる先頭5名と勢いづくスプリンターチームのスピード差は歴然。結局逃げは残り3kmで吸収され、大集団によるスプリントに持ち込まれることに。

チームスカイ(キリエンカ、クウィアトコウスキー、ドゥール、ヴィヴィアーニ)やクイックステップフロアーズ(ジルベール、スティバル、リケーゼ、ガビリア)が人数を揃えたものの、テクニカルコーナーが続くフィニッシュ手前で隊列を崩してしまう。代わって残り1kmアーチ通過とともにロジャー・クルーゲ(ドイツ、オリカ・スコット)がカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)を引き連れて先頭へ。しかしそのままエーススプリンターを解き放つには距離が長すぎた。

ユアンの発射台役クルーゲが失速するとともに、一時はバラけていたゼネク・スティバル(チェコ)とマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)、フェルナンド・ガビリア(コロンビア)の隊列が再び連結して先頭に立つ。最終的に残り200mでリケーゼに解き放たれたガビリアが腰を上げると、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)とアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)、そして後方からディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)が追撃した。

リケーゼに発射されたフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)が先頭に立つリケーゼに発射されたフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)が先頭に立つ photo:Kei Tsuji / TDWsport
フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)に並ぶエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)に並ぶエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
フルーネウェーヘン、ヴィヴィアーニ、ガビリア、クリストフが横並びでフィニッシュラインへフルーネウェーヘン、ヴィヴィアーニ、ガビリア、クリストフが横並びでフィニッシュラインへ photo:Kei Tsuji / TDWsport
ハンドルを投げ込んでフィニッシュするフルーネウェーヘン、ヴィヴィアーニ、ガビリア、クリストフハンドルを投げ込んでフィニッシュするフルーネウェーヘン、ヴィヴィアーニ、ガビリア、クリストフ photo:Kei Tsuji / TDWsport

ここまでステージ5位、3位、20位と、惜しいところで勝利を逃していたガビリアが先頭を譲らなかった。横に並んでハンドルを投げ込んだフルーネウェーヘンとヴィヴィアーニ、クリストフを振り切ったガビリアが先着。マルセル・キッテル(ドイツ)の移籍によって来季ベルギーチームの単独エーススプリンターを担う23歳がシーズン9勝目を飾った。

初のグランツール出場となった5月のジロ・デ・イタリアでステージ4勝を飾り、ポイント賞に輝いたガビリア。短い休養期間を経て7月のライドロンドン・サリークラシックでレースに復帰する予定だったが、地元コロンビア・メデジンでのトレーニング中にガビリアは怪我を負ってしまう。スプリントトレーニング中に突然外れたペダルで脹脛を打ち、手術での除去が必要な血腫ができたため戦線を離脱していた。

「自分にとってもチームにとっても素晴らしい1日になった。しばらく左脚の故障に悩まされていたので、これはジロのステージ優勝以来の(4ヶ月ぶりの)勝利。怪我からのハードワークを経て、カムバックを果たして再び勝利したことにホッとしている」。ガビリアはレース後の記者会見でそう語った(チーム2年目のガビリアは英語力が大幅に向上しているが、記者会見は通訳を通してスペイン語で行われる)。

僅差のステージ2位に入ったヴィヴィアーニはユアンとタイム差なしの総合1位に返り咲き。ヴィヴィアーニは再びグリーンジャージを手にしているが、翌日の個人タイムトライアルで首位を明け渡す可能性が高い。トニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)やプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)、シュテファン・キュング(スイス、BMCレーシング)、アレックス・ドーセット(イギリス、モビスター)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)、クウィアトコウスキーといったTTスペシャリストたちが総合優勝をかけて平坦な16.2kmコースに挑む。

ステージ1勝目を飾ったフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)ステージ1勝目を飾ったフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport再びグリーンジャージを手にしたエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)再びグリーンジャージを手にしたエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport

ステージ成績
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 3:43:31
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
3位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)
4位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
5位 アラン・バナセク(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)
6位 アンドレア・パスクアロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール)
7位 ハリー・タンフィールド(イギリス、バイクチャンネル・キャニオン)
8位 エンゾ・ワウテルス(ベルギー、ロット・ソウダル)
9位 ニコラス・マース(ベルギー、ロット・ソウダル)
10位 ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)
個人総合成績
1位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) 17:38:05
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)
3位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 0:00:06
4位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) 0:00:07
5位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン) 0:00:12
6位 カロル・ドマガルスキー(ポーランド、ワンプロサイクリング) 0:00:14
7位 シルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング) 0:00:15
8位 カミル・グラデク(ポーランド、ワンプロサイクリング)
9位 ラース・ボーム(オランダ、アスタナ) 0:00:18
10位 リチャード・ハンドリー(イギリス、マディソンジェネシス) 0:00:19
ポイント賞
1位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) 51pts
2位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン) 49pts
3位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 43pts
山岳賞
1位 ジェイコブ・スコット(イギリス、アンポスト・チェーンリアクション) 26pts
2位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドル) 25pts
3位  ルーカス・オウシアン(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコウィチェ) 21pts
チーム総合成績
1位 クイックステップフロアーズ 52:55:15
2位 カチューシャ・アルペシン
3位 ロット・ソウダル

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