勾配3%の緩斜面でのフィリップ・ジルベールのアタックは封じ込められ、再びスプリンターたちの勝負に持ち込まれたツアー・オブ・ブリテン第3ステージ。雨と風の1日を勝利で締めくくったカレイブ・ユアンがリーダージャージを取り戻した。


リーダージャージのエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)らが雨のスタートライン最前列に並ぶリーダージャージのエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)らが雨のスタートライン最前列に並ぶ photo:Kei Tsuji / TDWsportグリーンジャージを着て登場したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)グリーンジャージを着て登場したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport全員イギリス人で構成された逃げグループ全員イギリス人で構成された逃げグループ photo:Kei Tsuji / TDWsport
チームスカイとオリカ・スコットがメイン集団を牽引するチームスカイとオリカ・スコットがメイン集団を牽引する photo:Kei Tsuji / TDWsport
ブリテン第3ステージはイングランド中部のリンカンシャー地方に広がる平野部を駆け抜ける。スカンソープの街の郊外を複雑に駆ける176.9kmコースは獲得標高差が1,000mに満たないフラットレイアウトだが、天候の悪化によってタフなレースが展開された。

スタート直後に形成されたのはメンバーが全員イギリス人という5名の逃げグループ。3カ所ずつ設定されたスプリントポイントと山岳ポイントでは、チームメイトにアシストされたグラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドル)がポイントを連取する。連日の逃げが功を奏し、ブリッグスは山岳賞とスプリント賞のトップに立っている。

風力発電の風車が立ち並ぶ平野だけにこの日の敵は風。小刻みに進路を変えるコースは明らかに風を意識した設計で、集団は常に風に警戒しながら逃げを追う。メイン集団の牽引を担ったのはグリーンジャージを擁するチームスカイとオリカ・スコット。ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)がアシストとして長時間集団の先頭で風を受け続けた。ツール・ド・フランス第9ステージで落車リタイアし、このブリテンが復帰戦のトーマスはエースの座をミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)に託している。

ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)率いるメイン集団ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)率いるメイン集団 photo:Kei Tsuji / TDWsport
高速で流れる雲を背にプロトンが進む高速で流れる雲を背にプロトンが進む photo:Kei Tsuji / TDWsport
チームメイトに守られるエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)チームメイトに守られるエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport長時間にわたってメイン集団の先頭を引いたロブ・パワー(オーストラリア、オリカ・スコット)とゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)長時間にわたってメイン集団の先頭を引いたロブ・パワー(オーストラリア、オリカ・スコット)とゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
チームスカイを先頭に追い風に乗って進むメイン集団チームスカイを先頭に追い風に乗って進むメイン集団 photo:Kei Tsuji / TDWsport
ヴィヴィアーニのためにこの日も集団牽引するタオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)ヴィヴィアーニのためにこの日も集団牽引するタオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport追い風に乗って逃げる5名追い風に乗って逃げる5名 photo:Kei Tsuji / TDWsport
降りしきる雨の中を走るカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)降りしきる雨の中を走るカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport
逃げグループは残り11kmで吸収され、断続的に繰り返されるカウンターアタックもスプリンターチームによって封じ込められる。チームスカイ、BMCレーシング、ディメンションデータ、オリカ・スコット、ロットNLユンボにCCCスプランディ・ポルコウィチェも加わってポジション争い。ステージ後半にかけて叩きつけるように降った雨は上がり、今大会3回目の集団スプリントが繰り広げられることに。

残り2kmからコースは登り基調となり、高低差40m、勾配3〜4%の緩斜面がフィニッシュラインまで続いている。トーマスと同じく怪我明けのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)がアシストとして集団をリードして緩斜面をハイスピード巡行。残り1kmでゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)とミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)がアタックさながらの加速を見せると集団は縦に長く伸びた。

ピュアスプリンターたちが登りに苦しむ中、残り600mでアタックを成功させたのはフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)。ベルギー代表としてロード世界選手権への出場が決まっているツアー・オブ・ブリテン初出場のジルベールが登りで一気にリードを広げる。

ステージ優勝に向けて突き進んだジルベールだったが、オリカ・スコットのリードアウトトレインが先行を許さない。ルカ・メズゲッツ(スロベニア、オリカ・スコット)がジルベールを捉えると同時に、その後ろからカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)がスプリントを開始した。

独特の低いポジションでもがき切ったユアンがエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)とアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)を振り切ってハンドルを投げ込んで先着。スプリントに絡んだ選手のSTRAVAデータによると、選手たちは42〜45km/hで緩斜面を駆け上がり、勾配が緩んだ残り200mからさらに加速。最終的にスプリントのトップスピードは60km/hに達している。

コーナーのイン側を突き進むカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)コーナーのイン側を突き進むカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport
スプリントで競り合うエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)、カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)スプリントで競り合うエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)、カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ハンドルを投げ込むエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)とカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)ハンドルを投げ込むエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)とカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport
接戦を制したカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)接戦を制したカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport
「今日は悪天候に苦しめられたけど、チームはスタートからずっと集団先頭で状況をコントロール。ジルベールがアタックした時、(リードアウト役の)ルカ・メズゲッツを信頼して彼に追走を託した。彼がアタックを封じ込め、その時点で自分もすでに出し切った状態に近かったけどスプリントを開始。出し切りながらもエディ(ボアッソンハーゲン)を振り切ることができてよかったよ」。第1ステージに続く今大会2勝目で、ボーナスタイムによりグリーンジャージを奪取したユアンは僅差のスプリントを振り返る。

残る5ステージのうち、個人タイムトライアルの第5ステージを除く4ステージがスプリント向き。総合優勝の野望について質問を受けたユアンは「最初から総合成績は狙っていない」とバッサリ。「仮に個人タイムトライアル以外のステージで全勝してボーナスタイムを獲得してアレックス・ドーセットらから1分のリードを得ていても、総合争いでは太刀打ちできない」と語っている。

ステージ7位に終わり、グリーンジャージを明け渡したヴィヴィアーニは「風が予想よりも吹かなかったけど、雨も降ったし、苦手な寒いコンディションの中でのレースだった。太陽が燦々と照るようなコンディションが得意なので、今日のような冷たくて濡れた日は調子が出ないんだ」と打ち明ける。第3ステージを終えて、ユアンから6秒差の総合2位にヴィヴィアーニ、7秒差の総合3位にボアッソンハーゲンがつけている。

ステージ2勝目を飾ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)ステージ2勝目を飾ったカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsportグリーンジャージを再び手にしたカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)グリーンジャージを再び手にしたカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsport

ステージ成績
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 4:04:05
2位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)
3位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)
4位 ブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、JLTコンドル)
5位 マッズウルス・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)
6位 アンドレア・パスクアロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール)
7位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
8位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)
9位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、モビスター)
10位 ニコラス・マース(ベルギー、ロット・ソウダル)
個人総合成績
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 13:54:34
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) 0:00:06
3位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) 0:00:07
4位 カロル・ドマガルスキー(ポーランド、ワンプロサイクリング) 0:00:14
5位 シルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシング) 0:00:15
6位 カミル・グラデク(ポーランド、ワンプロサイクリング)
7位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン) 0:00:16
8位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)
9位 ラース・ボーム(オランダ、アスタナ) 0:00:18
10位 ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ) 0:00:20
ポイント賞
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 42pts
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) 37pts
3位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン) 36pts
山岳賞
1位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドル) 25pts
2位 ジェイコブ・スコット(イギリス、アンポスト・チェーンリアクション) 22pts
3位  ルーカス・オウシアン(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコウィチェ) 21pts
チーム総合成績
1位 カチューシャ・アルペシン 41:44:42
2位 クイックステップフロアーズ
3位 ロット・ソウダル

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