2017/09/01(金) - 03:05
ロット・ソウダル第3の逃げ屋トーマス・マルチンスキーがブエルタ第12ステージで2勝目をマーク。アルベルト・コンタドールがアタックを成功させた一方で、2度落車したクリストファー・フルームはライバルたちから20秒のタイムを失った。
雨の2日間を終え、ブエルタに暑さと太陽が戻ってきた。年間平均325日が晴れというアンダルシア州らしい太陽に照らされたスタート地点は、前夜にアクアブルースポートのチームバスが放火の被害にあったというニュースで持ちきり。廃車となったチームバスの代わりに急遽手配した観光バスに乗ってアイルランドのUCIプロコンチネンタルチームの選手たちはスタートに到着した。
アンダルシア州の海岸線を西に向かい、後半にかけて1級山岳レオン峠(長さ17.4km/平均4.9%)と2級山岳トルカル峠(長さ7.6km/平均7.0%)を越えるレイアウトは完全に逃げ向き。そのためこの日もスタート直後から熾烈なアタック合戦が繰り広げられる。気温30度オーバーの暑い海岸線を走るうち、スタートから1時間が経ってようやく14名が先行を開始した。
総合リーダーチームのチームスカイに逃げを捕まえる理由はなく、タイム差は拡大の一途をたどる。集団スプリントに持ち込みたいスプリンターチームが集団コントロールに加わることはなく、早い段階で事実上14名の逃げ切りが容認された。悪天候が続いた影響もあり、この日はセルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ)とジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)がスタートせず。さらにホルヘ・アルカス(スペイン、モビスター)とレナード・ホフステッド(オランダ、サンウェブ)もレースを降りている。
第14ステージの逃げメンバー
エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
ホセ・ロハス(スペイン、モビスター)
パウェル・ポリャンスキー(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
アンドレアス・シリンガー(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
ジュリアン・デュヴァル(フランス、アージェードゥーゼール)
ブレンダン・カンティ(オーストラリア、キャノンデール・ドラパック)
ミカエル・モルコフ(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)
スタフ・クレメント(オランダ、ロットNLユンボ)
ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
トーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル)
オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)
アントニー・ペレス(フランス、コフィディス)
ダビ・アローヨ(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA)
ピーター・コニング(オランダ、アクアブルースポート)
13チームの選手で構成された14名の逃げ。ステージ優勝を飾っていない16チームのうち11チームが逃げに選手を送り込むことに成功する。すでにステージ4勝を飾っているクイックステップフロアーズやステージ2勝のアスタナは逃げに選手を送り込まず。レース中盤にタイム差が7分を超えてもなおチームスカイがメイン集団の先頭で淡々としたペースを作り、1級山岳レオン峠の登りが始まっても状況は変わらなかった。
1級山岳レオン峠を先頭通過したロハスは山岳賞ランキングの3位に浮上。逃げグループからは下りを利用してモルコフが飛び出したものの、続く2級山岳トルカル峠までに他の逃げメンバーによって吸収される。メイン集団が9分後方に控える状況のまま、アンダルシア特有の乾燥した岩山を登る長さ7.6kmの2級山岳トルカル峠が始まる。カンティのアタックにフライレとマルチンスキー、ロハス、ポリャンスキーが食らいつき、そこからさらに加速したマルチンスキーが頂上まで4kmを残して独走に持ち込んだ。
第6ステージで逃げグループ内のスプリントを制して優勝している33歳が独走を開始。同ステージで2位だったポリャンスキーやフライレ、ロハス、カンティ、クレメントの5名が追走グループを形成したものの、その視界から赤いロットジャージが離れていく。追走グループを引き離す圧倒的な登坂力を見せたマルチンスキーが1分のリードで2級山岳トルカル峠をクリアし、フィニッシュ地点アンテケラに至るダウンヒルに突入した。
チームスカイのコントロール下に置かれた9分遅れのメイン集団では、総合9位のアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)が再び動いた。総合11位のニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング)と力を合わせてメイン集団から抜け出した3度の総合優勝者(2008年、2012年、2014年)コンタドールは、ダンシングを多用して総合ライバルたちを引き離しにかかる。ロッシュはハイペースに対応できずに脱落。コンタドールは30秒のリードを築いて2級山岳トルカル峠を登りきり、逃げグループから下がってきたトゥーンスにアシストされながら下りをこなした。
コンタドールが攻撃を成功させた一方で、マイヨロホを着るクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)が下り区間で落車した。前輪が壊れたためスペアバイクで再スタートしたフルームは直後のコーナーで再び落車。2度の落車に見舞われたフルームにはミケル・ニエベ(スペイン)とワウト・プールス(オランダ)が寄り添ったものの、1分前を走るコンタドールと30秒前を走るメイン集団とのタイム差が縮まらない。
追走グループを52秒振り切り、ステージ2勝目を示すVサインでフィニッシュしたマルチンスキーから遅れること7分25秒でコンタドールがフィニッシュ。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)ら総合上位陣を含むメイン集団は7分47秒遅れ、フルームは8分07秒遅れでフィニッシュした。
「独走だったので勝利を堪能する時間が長かったこともあり、1勝目よりも感動が大きい。グランツールで独走勝利を飾るのが子供の頃からの夢だった。今日、夢がかなった」と、マルチンスキーは流暢なスペイン語でインタビューに答える。「ずっと脚の調子が良い状態だったので今日も挑戦することにした。逃げに乗るために100回はアタックしたと思う。逃げグループに入った時点で『今日は俺のものだ』と思った」。デヘントとハンセンに続くロット・ソウダルの「逃げ屋」が鮮やかな2勝目を飾った。
「想像よりずっと良い結末になった」と喜ぶのは、総合トップ10の選手たちから22秒奪ったコンタドール。総合順位は9位のままだが、総合3位チャベスまでのタイム差を1分にまで縮めている。「良い友人であるロッシュと話して一緒にアタックした。逃げていたチームメイト(トゥーンス)に追いついて、全力でライバルを引き離したんだ。ブエルタは最後の最後まで戦い続けたい」。
落車によって膝から流血し、ショーツを破りながらフィニッシュしたフルームは「もっと深刻な状況になりえたのでホッとしている。落車は2回とも前輪のスリップが原因。チームメイトのおかげで、たった20秒のタイムロスで済んだことを喜びたい」と前向きに結果を受け入れる。総合1位フルームと総合2位ニーバリのタイム差は1分を割り込んで59秒に。広がりつつあった総合タイム差がここに来て縮まった。
雨の2日間を終え、ブエルタに暑さと太陽が戻ってきた。年間平均325日が晴れというアンダルシア州らしい太陽に照らされたスタート地点は、前夜にアクアブルースポートのチームバスが放火の被害にあったというニュースで持ちきり。廃車となったチームバスの代わりに急遽手配した観光バスに乗ってアイルランドのUCIプロコンチネンタルチームの選手たちはスタートに到着した。
アンダルシア州の海岸線を西に向かい、後半にかけて1級山岳レオン峠(長さ17.4km/平均4.9%)と2級山岳トルカル峠(長さ7.6km/平均7.0%)を越えるレイアウトは完全に逃げ向き。そのためこの日もスタート直後から熾烈なアタック合戦が繰り広げられる。気温30度オーバーの暑い海岸線を走るうち、スタートから1時間が経ってようやく14名が先行を開始した。
総合リーダーチームのチームスカイに逃げを捕まえる理由はなく、タイム差は拡大の一途をたどる。集団スプリントに持ち込みたいスプリンターチームが集団コントロールに加わることはなく、早い段階で事実上14名の逃げ切りが容認された。悪天候が続いた影響もあり、この日はセルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ)とジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)がスタートせず。さらにホルヘ・アルカス(スペイン、モビスター)とレナード・ホフステッド(オランダ、サンウェブ)もレースを降りている。
第14ステージの逃げメンバー
エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
ホセ・ロハス(スペイン、モビスター)
パウェル・ポリャンスキー(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
アンドレアス・シリンガー(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
ジュリアン・デュヴァル(フランス、アージェードゥーゼール)
ブレンダン・カンティ(オーストラリア、キャノンデール・ドラパック)
ミカエル・モルコフ(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)
スタフ・クレメント(オランダ、ロットNLユンボ)
ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
トーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル)
オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)
アントニー・ペレス(フランス、コフィディス)
ダビ・アローヨ(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA)
ピーター・コニング(オランダ、アクアブルースポート)
13チームの選手で構成された14名の逃げ。ステージ優勝を飾っていない16チームのうち11チームが逃げに選手を送り込むことに成功する。すでにステージ4勝を飾っているクイックステップフロアーズやステージ2勝のアスタナは逃げに選手を送り込まず。レース中盤にタイム差が7分を超えてもなおチームスカイがメイン集団の先頭で淡々としたペースを作り、1級山岳レオン峠の登りが始まっても状況は変わらなかった。
1級山岳レオン峠を先頭通過したロハスは山岳賞ランキングの3位に浮上。逃げグループからは下りを利用してモルコフが飛び出したものの、続く2級山岳トルカル峠までに他の逃げメンバーによって吸収される。メイン集団が9分後方に控える状況のまま、アンダルシア特有の乾燥した岩山を登る長さ7.6kmの2級山岳トルカル峠が始まる。カンティのアタックにフライレとマルチンスキー、ロハス、ポリャンスキーが食らいつき、そこからさらに加速したマルチンスキーが頂上まで4kmを残して独走に持ち込んだ。
第6ステージで逃げグループ内のスプリントを制して優勝している33歳が独走を開始。同ステージで2位だったポリャンスキーやフライレ、ロハス、カンティ、クレメントの5名が追走グループを形成したものの、その視界から赤いロットジャージが離れていく。追走グループを引き離す圧倒的な登坂力を見せたマルチンスキーが1分のリードで2級山岳トルカル峠をクリアし、フィニッシュ地点アンテケラに至るダウンヒルに突入した。
チームスカイのコントロール下に置かれた9分遅れのメイン集団では、総合9位のアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)が再び動いた。総合11位のニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング)と力を合わせてメイン集団から抜け出した3度の総合優勝者(2008年、2012年、2014年)コンタドールは、ダンシングを多用して総合ライバルたちを引き離しにかかる。ロッシュはハイペースに対応できずに脱落。コンタドールは30秒のリードを築いて2級山岳トルカル峠を登りきり、逃げグループから下がってきたトゥーンスにアシストされながら下りをこなした。
コンタドールが攻撃を成功させた一方で、マイヨロホを着るクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)が下り区間で落車した。前輪が壊れたためスペアバイクで再スタートしたフルームは直後のコーナーで再び落車。2度の落車に見舞われたフルームにはミケル・ニエベ(スペイン)とワウト・プールス(オランダ)が寄り添ったものの、1分前を走るコンタドールと30秒前を走るメイン集団とのタイム差が縮まらない。
追走グループを52秒振り切り、ステージ2勝目を示すVサインでフィニッシュしたマルチンスキーから遅れること7分25秒でコンタドールがフィニッシュ。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)ら総合上位陣を含むメイン集団は7分47秒遅れ、フルームは8分07秒遅れでフィニッシュした。
「独走だったので勝利を堪能する時間が長かったこともあり、1勝目よりも感動が大きい。グランツールで独走勝利を飾るのが子供の頃からの夢だった。今日、夢がかなった」と、マルチンスキーは流暢なスペイン語でインタビューに答える。「ずっと脚の調子が良い状態だったので今日も挑戦することにした。逃げに乗るために100回はアタックしたと思う。逃げグループに入った時点で『今日は俺のものだ』と思った」。デヘントとハンセンに続くロット・ソウダルの「逃げ屋」が鮮やかな2勝目を飾った。
「想像よりずっと良い結末になった」と喜ぶのは、総合トップ10の選手たちから22秒奪ったコンタドール。総合順位は9位のままだが、総合3位チャベスまでのタイム差を1分にまで縮めている。「良い友人であるロッシュと話して一緒にアタックした。逃げていたチームメイト(トゥーンス)に追いついて、全力でライバルを引き離したんだ。ブエルタは最後の最後まで戦い続けたい」。
落車によって膝から流血し、ショーツを破りながらフィニッシュしたフルームは「もっと深刻な状況になりえたのでホッとしている。落車は2回とも前輪のスリップが原因。チームメイトのおかげで、たった20秒のタイムロスで済んだことを喜びたい」と前向きに結果を受け入れる。総合1位フルームと総合2位ニーバリのタイム差は1分を割り込んで59秒に。広がりつつあった総合タイム差がここに来て縮まった。
ステージ成績
1位 | トーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル) | 3:56:45 |
2位 | オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) | 0:00:52 |
3位 | ホセ・ロハス(スペイン、モビスター) | |
4位 | パウェル・ポリャンスキー(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | |
5位 | スタフ・クレメント(オランダ、ロットNLユンボ) | |
6位 | ブレンダン・カンティ(オーストラリア、キャノンデール・ドラパック) | 0:01:42 |
7位 | アントニー・ペレス(フランス、コフィディス) | 0:02:50 |
8位 | ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | |
9位 | アンドレアス・シリンガー(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
10位 | ダビ・アローヨ(スペイン、カハルーラル・セグロスRGA) | 0:03:00 |
13位 | アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) | 0:07:25 |
17位 | ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 0:07:47 |
32位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 0:08:07 |
DNF | ホルヘ・アルカス(スペイン、モビスター) | |
DNF | レナード・ホフステッド(オランダ、サンウェブ) | |
DNS | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) | |
DNS | セルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ) | |
敢闘賞 | オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 49:22:53 |
2位 | ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 0:00:59 |
3位 | エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット) | 0:02:13 |
4位 | ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ) | 0:02:16 |
5位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | 0:02:17 |
6位 | イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) | 0:02:18 |
7位 | ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) | 0:02:37 |
8位 | マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック) | 0:02:41 |
9位 | アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) | 0:03:13 |
10位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:03:51 |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | マッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ) | 78pts |
2位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 75pts |
3位 | パウェル・ポリャンスキー(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 58pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 | ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) | 38pts |
2位 | ホセ・ロハス(スペイン、モビスター) | 27pts |
3位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 21pts |
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 6pts |
2位 | エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) | 24pts |
3位 | ホセ・ロハス(スペイン、モビスター) | 27pts |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 147:36:48 |
2位 | アスタナ | 0:02:49 |
3位 | チームスカイ | 0:09:40 |
text:Kei Tsuji
Amazon.co.jp