全日本学生選手権のタイムトライアル種目が、6月3日・4日の2日間に渡り行われた。チームタイムトライアルは中央大学が5年ぶりの優勝。個人タイムトライアルは、男子は鹿屋体育大学の山本大喜、女子は筑波大学の梶原悠未が優勝した。



2日間とも好天に恵まれた利根川河川敷。遠方には筑波山が見える2日間とも好天に恵まれた利根川河川敷。遠方には筑波山が見える
昨年チームTT優勝の鹿屋体育大学から優勝カップの返還昨年チームTT優勝の鹿屋体育大学から優勝カップの返還 中央大学の直井駿太が選手宣誓中央大学の直井駿太が選手宣誓


インカレと並び、大学生が目標とする大会「全日本学生選手権」。ロード種目は、チームタイムトライアル(以下チームTT)、個人タイムトライアル(以下個人TT)、個人ロードレースの3種目で行われる。このうち、タイムトライアル2種目が6月3日と4日に、個人ロードレースは10日と11日に行われる。

3日はチームTT、4日は男女の個人TTが行われた。特にチームTTは大学対抗となる事と、ツール・ド・北海道の出場権を獲得するためのポイントがかかっている事から、各校力を入れてくる種目だ。

会場は埼玉県北部にある加須(かぞ)市と羽生(はにゅう)市にまたがる利根川河川敷の管理用道路。ゆるやかなカーブはあるものの、折り返しを除けばほぼ直線と言って良いフラットな往復31.2kmのコースだ。(ちなみに、利根川の土手を使用したサイクリングロードがあるが、このコースはそれとは別。普段は工事用車両などが通るための道で、立入禁止である。)

チームタイムトライアルは中央大学が5年ぶりの優勝

広々とした利根川河川敷のコース広々とした利根川河川敷のコース
チームTT優勝の中央大学チームTT優勝の中央大学
チームTTには22校が出場。各校4人でコースを2往復する63.2kmのタイムを争う。昨年大会の順位順に、優勝した鹿屋体育大学から2分間隔でスタート。後半は1分間隔でのスタートとなる。

最初の1往復で、2番目スタートの京都産業大学が鹿屋体育大学に対して30秒ほどリードして2往復目に入る。この2校の争いになるかと思われたが、10番目にスタートした中央大学が京都産業大学のタイムをさらに約30秒上回るタイムで2往復目に入る。

中央大学は1分前にスタートした早稲田大学、さらには2分前にスタートした法政大学も抜いてゴール。最後は3人になったものの、4人で走りきった京都産業大学に対して1分28秒差、昨年優勝の鹿屋体育大学に対しては2分近い大差をつけて優勝した。平均スピード49.1km/hは、2014年に鹿屋体育大学(石橋学、徳田鍛造、徳田優、山本元喜)が記録した48.61km/hを上回るペースだ。

昨年優勝の鹿屋体育大学は3位に沈む昨年優勝の鹿屋体育大学は3位に沈む 最後まで4人揃って走った京都産業大学が2位最後まで4人揃って走った京都産業大学が2位


チームTT 表彰式チームTT 表彰式 優勝した中央大学のメンバーとOBで記念撮影優勝した中央大学のメンバーとOBで記念撮影


中央大学の今村駿介は「練習でもしっかり高いスピードで走れていたので、みんなできれいに走りきれば勝てるだろうと考えていました。なので特に作戦は立てずに臨みました。後半に3人になったのは予定外でしたが、大きなトラブルなく走りきったので良かったと思っています。」と、メンバーを代表して優勝の感想を語った。
チームタイムトライアル 結果
1位 中央大学(原井・高橋・今村・直井) 1時間17分14秒 49.1km/h
2位 京都産業大学(中井・松下・曽我部・吉岡) +1分28秒
3位 鹿屋体育大学(山本・松本・阿部・徳田) +1分55秒
4位 朝日大学(佐々木・安達・高橋・永田) +1分58秒
5位 日本大学(草場・沢田・小嶋・池西) +2分53秒
6位 順天堂大学(蠣崎・原・石原・岡野) +4分6秒


個人タイムトライアル男子 山本大喜が2年ぶりの優勝

個人TT男子 低い姿勢でスタートする山本大喜(鹿屋体育大学)後ろに見えるのは筑波山個人TT男子 低い姿勢でスタートする山本大喜(鹿屋体育大学)後ろに見えるのは筑波山
個人TT男子 2位 石原悠希(順天堂大学)個人TT男子 2位 石原悠希(順天堂大学) 個人TT男子 3位 今村駿介(中央大学)個人TT男子 3位 今村駿介(中央大学)


チームTTの翌日は個人タイムトライアル。男子は1往復する31.2kmで行われた。前日同様に朝からよく晴れたが、飛ぶ鳥が流されるほどの強風が吹き続ける1日。往路は向かい風、復路は追い風となるため、往路でいかにペースを維持するかがカギとなった。

男子は、チームTT優勝の原動力となった中央大学の今村が42分19秒を出し、それまでのトップタイムを更新。最後の10人に入り、石原悠希(順天堂大学)が今村のタイムを8秒上回る42分11秒で暫定トップに立つ。最後にスタートした山本大喜(鹿屋体育大学)は、2分前にスタートした眞砂英作(明治大学)を抜き、4分前にスタートした徳田匠(鹿屋体育大学)に迫る勢いでゴール。ただ1人41分台のタイムをタイムをたたき出し、2年ぶり3回目の優勝を決めた。

個人TT男子優勝の山本大喜と鹿屋体育大学メンバー個人TT男子優勝の山本大喜と鹿屋体育大学メンバー
山本は「昨日のチームTTではチーム力で中央大に及ばなかったので、今日の個人TTは絶対に勝つと思って臨みました。風が強かったので追い風になる復路は流れる(スピードが出る)という事は分かっていたので、向かい風の往路でどれだけスピードを落とさずに走れるのかが勝負になると思い、とにかく空力を考えて低いポジションを取るようにしました。タイム的にも2位との差がついたので満足できる結果でした。1年と2年の時に優勝したけれど昨年負けてしまって悔しかったので、大学最後の年にまた勝てて嬉しいです。」と、今回の勝因と優勝の感想を語った。

一方、「途中まで暫定1位だったのでウキウキしていたのですが。」と言う2位の石原。「2位という結果は嬉しいのですが、悔しくもあります。昨年は前日のチームTTで出し切ってしまって個人TTがダメだったので、それに比べると今年は少し成長したのかなとも思います。本当に狙っているのは全日本選手権なので、ここで勝てなかったのは良かったと思う事にします。全日本ではみんなに驚かれるくらいの差をつけて勝ちたいです。」と、次の目標を語った。

個人TT女子 2位以下に2分以上の大差で圧勝した梶原悠未(筑波大学)個人TT女子 2位以下に2分以上の大差で圧勝した梶原悠未(筑波大学)
個人TT女子 2位 古山稀絵(日本体育大学)個人TT女子 2位 古山稀絵(日本体育大学) 個人TT女子 3位 橋本優弥(鹿屋体育大学)個人TT女子 3位 橋本優弥(鹿屋体育大学)


女子は25.2kmで行われ、梶原悠未(筑波大学)が優勝した。出走7人の最後にスタートした梶原は、先にスタートした4人を抜き去って3番目にゴール。2位の古山稀絵(日本体育大学)に2分以上の大差をつけての圧勝だった。

「追い風の区間では差はつかないので、向かい風の区間で差をつけるようにと考え、登りと同じような感覚で踏みました。このコースを走るのは初めてだったのですが、今日の結果は全日本選手権に向けて自信になると思います。」と話す梶原。

個人TT女子優勝 梶原悠未(筑波大学)個人TT女子優勝 梶原悠未(筑波大学)
4月のトラック世界選手権をもってトラックシーズンは一段落したそうで、「連戦で調子を落としてしまった時期もあったけれど、今は調子が上向いている手応えを感じてきている。」と言う。「先週、全日本のコースを試走してきましたが、ロードの登りのリズムとか忘れかけているところもあってきつかったです。あと3週間ありませんが、調子を整えて自分の勝ちパターンが出来るようにしたいです。」と、全日本選手権に向けての意欲を語った。

個人タイムトライアル結果
男子
1位 山本大喜(鹿屋体育大学) 41分9秒629 45.48km/h
2位 石原悠希(順天堂大学) +1分2秒
3位 今村駿介(中央大学) +1分9秒
4位 松本憲斗(鹿屋体育大学) +1分31秒
5位 草場啓吾(日本大学) +2分6秒
6位 中川拳(早稲田大学) +2分8秒
7位 山下祥平(日本体育大学) +2分16秒
8位 孫崎大樹(早稲田大学) +2分18秒
9位 安田開(日本体育大学) +2分25秒
10位 永田吏玖(朝日大学) +2分30秒
女子
1位 梶原悠未(筑波大学) 37分53秒340 39.91km/h
2位 古山稀絵(日本体育大学) +2分3秒
3位 橋本優弥(鹿屋体育大学) +3分7秒
男子普及の部
1位 岡野竜希(順天堂大学) 44分33秒365 42.01km/h
2位 福原周治(京都大学) +0秒23
3位 新田東弥(鹿屋体育大学) +10秒
4位 及川一総(作新学院大学) +29秒
5位 手嶋豊(関西大学) +57秒
6位 沖野浩平(京都大学) +1分55秒
text&photo:Satoru.Katou