イタリアの名門ブランド、カレラのエントリーグレードカーボンロードとして昨年デビューした「ER-01」。エンデュランス要素とレーシング要素を併せ持ったこのバイクに、18年モデルとして新規追加されたディスクブレーキモデルをインプレッションした。



カレラ ER-01 DISCカレラ ER-01 DISC (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
イタリア・ロンバルディア州に本拠地を置くカレラ・ポディウム社。エディ・メルクスやフェリーチェ・ジモンディなど、伝説的な選手たちと共にヨーロッパのロードレース全盛期を支えたダビデ・ボイファヴァ氏を中心に1989年に創業されたブランドである。競技志向の強いブランドの方向性もあり、カレラジーンズチームを始めとしたプロチームとの繋がりも強く、現在までに500を超えるレース勝利数を誇る歴史を持つ。

90年代には同社バイクを駆る”海賊”マルコ・パンターニや、”ディアブロ”クラウディオ・キアプッチによるグランツールでの活躍を受け、一躍レーシングブランドとしての地位を確立したカレラ。その後も世界に先駆けカーボンバックのアルミフレームを開発したり、近年で言えば独創的なフレーム形状を用いた「フィブラ」を発表したりするなど、革新的なシステムやデザインを積極的に取り入れてきた。

緩く内側にカーブを描く湾曲したシートステー緩く内側にカーブを描く湾曲したシートステー ダウンチューブ裏にも大きくブランドロゴが入るダウンチューブ裏にも大きくブランドロゴが入る 細身でストレート形状のフォークを採用。ブレーキケーブルもフォーク内部を通る細身でストレート形状のフォークを採用。ブレーキケーブルもフォーク内部を通る

そんなカレラが次に注目したのが昨今熱を上げるディスクブレーキだ。レーシングロードを数多くラインアップする同社だが、18年モデルでは2車種にディスクブレーキ仕様が新規追加。1つはハイエンドバイクの「AR-01 DISC」、そしてもう1つが今回インプレッションを行った「ER-01 DISC」である。

ベースとなるのは昨年デビューしたばかりとなる、ブランド史上初のエンデュランスロード「ER-01」。Endurance(エンデュランス)とRacing(レーシング)の頭文字を取ってモデル名としたバイクとなり、カレラらしいレーシーな性能はそのままに、長距離走行でもストレスの少ない乗り味を実現したモデルである。

横には張り出さない形状の滑らかなチューブ集合部横には張り出さない形状の滑らかなチューブ集合部 直線状のトップチューブは断面が四角状から丸状へ変化するデザイン直線状のトップチューブは断面が四角状から丸状へ変化するデザイン
BBはメンテナンス性の高いスレッドタイプBBはメンテナンス性の高いスレッドタイプ フラットマウントが採用されたエンド部はカーボン一体成型となるフラットマウントが採用されたエンド部はカーボン一体成型となる

フレームの大きな特徴としては、長いヘッドチューブや、大きくスローピングした短めのトップチューブ、長いシートステーといったエンデュランスジオメトリーが採用されていること。それにより、ライダーに負担のないライディングポジションを可能とし、快適なライドをもたらす設計となっている。また、長距離ライドでのストレスを減らすべく28cのワイドタイヤまで装着可能なクリアランスも確保。加えて長めのホイールベースとすることで直進安定性も高めている。

フレーム素材にはミドルグレードカーボンのT700を使用。カーボングレードを落とすことでフレームが硬すぎない剛性感を生み出し、ロングライドでも疲れにくい踏み味を発揮するとともに、素材疲労を少なくし耐久性を上げることで長期に渡る使用にも向いたエントリーバイクらしい性能を獲得している。製造過程もこだわっており、エントリーモデルながら自社でカーボン積層から行うことで高い品質も保証している。

トップチューブ上部には各テクノロジーを示すアイコンが記されるトップチューブ上部には各テクノロジーを示すアイコンが記される 電動コンポーネントの場合シフトワイヤー用のホールは1つ使用しない電動コンポーネントの場合シフトワイヤー用のホールは1つ使用しない

ER-01 DISCではディスクブレーキに対応させるために、ベースとなったキャリパーブレーキモデルからフロントフォークとリア三角の形状をアップデート。ややベンドしボリュームもあったブレード形状のフォークは、細身のストレート状へと変更されている。チェーンステーもディスクブレーキの強い制動力に対応するためやや太くなり剛性を確保、シートステーは内側に緩くカーブを描く湾曲した形状とすることで最適化されている。

シートステーにはキャリパーブレーキモデル同様のブリッジが配されるシートステーにはキャリパーブレーキモデル同様のブリッジが配される Di2ケーブルやシフトワイヤーはダウンチューブ上部からフレーム内にアクセスDi2ケーブルやシフトワイヤーはダウンチューブ上部からフレーム内にアクセス 長めのヘッドチューブを採用し、アップライトなポジションを実現する長めのヘッドチューブを採用し、アップライトなポジションを実現する

エントリーグレードながらケーブル類はフル内装、かつ電動コンポーネント対応としたのも大きなポイント。ディスクブレーキに関しては、もはやスタンダードとなったフラットマウントかつ前後12mmスルーアクスル仕様。フレームセットのみでの販売となり、価格はキャリパーブレーキモデルにやや上乗せされるものの128,000円(税抜)と十分コストパフォーマンスの高いモデルとなっている。

今回はコンポーネントにシマノアルテグラDi2、ホイールはカンパニョーロゾンダDBをアッセンブルしたテストバイクを使用。往年のレーシングブランドが打ち出すエントリーディスクロードを2人のインプレライダーはどう見るのか。それではインプレッションに移ろう。



ー インプレッション

「素直な反応性、加速性でストレスの少ないバイク」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)

カレラらしい質実剛健さを感じる剛性感のあるフレームですね。エントリーグレードながら各部のつくりはしっかりしていて、フロント周りもリア三角も力が逃げるような感覚はありません。ヘッドチューブが長めのエンデュランスモデルですが、快適性が高いというよりは至ってレーシーな乗り味だと感じましたね。

「素直な反応性、加速性でストレスの少ないバイク」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)「素直な反応性、加速性でストレスの少ないバイク」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
踏み込んだ時の反応性は非常に良いです。BB周りが上位モデルと比べてそこまで硬く作られていないため、逆に小さい力で漕いだ時に軽く反応してくれるフレームですね。踏み出しの軽さや低速からの加速が楽しめる味付けになっていると思います。エントリーユーザーが乗り始めた時に一番楽しめる低速から中速域、40km/hくらいまでの加速が気持ちのよい性能に仕上がっています。

エントリーグレードらしいやや重めの車重に反して、登りも軽く進んでいきます。剛性がしっかりしている分ペダリングの許容範囲が広く、どんな漕ぎ方をしても推進力に繋がる感覚が味わえますね。ただ、レースでのアタックのような重いギアをかけてガツンと踏んでいく走りには、ややフレームが負けてしまう部分がありました。

イタリアンバイクらしく直進安定性は高めで、ステアリングはナチュラルだけれどもハンドリングはクイック気味といったところ。ディスクブレーキに対応させたフレームの硬さのせいなのか、路面からの振動はあまりカットしてくれずリアからの突き上げも多少感じてしまいますね。ですが、その難点を補って余るほどの走行性能は持ち合わせていると思います。

また、肝心のブレーキ制動力にはフレームもしっかり対応しています。そのためブレーキフィーリングも違和感のないもので、キャリパーブレーキモデルから乗り換えても安心できる操作性を発揮します。天候や路面状況にシビアにならないブレーキングが可能なので、トレーニングバイクとして使うのも良いですし、ロードバイクが初めてという人にも安全なバイクとして乗れることでしょう。

今回23cのタイヤでテストしたのですが、やや乗り心地の悪さを感じたところなので、ぜひ25c以上のタイヤを合わせることをオススメします。フレーム自体が素直に進んでくれるため、ロングライドやグランフォンドにおいてもストレスが少なく走れるバイクとして活躍すると思いますね。

「リーズナブルな価格で初めてのディスクロードにもオススメ」吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)

「リーズナブルな価格で初めてのディスクロードにもオススメ」吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)「リーズナブルな価格で初めてのディスクロードにもオススメ」吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所) エンデュランスモデルということですが、想像していたよりもBBあたりに程よい硬さがありレーシング感もしっかりあるバイクです。走りの重さやモッサリとしたネガティブな走行感は全く無く、フロントはややクイックでリアは安定した乗りやすいタイプの性格だと感じました。

トップチューブからシートステーにかけてしなる感覚があり、シートポスト径が太めの31.6mmながら快適性は損なわれていません。ディスクブレーキに対応させたためにフレームエンド部に硬さを感じるところですが、走る上で違和感となることはありませんね。特に登りが進まないような不満となることもなく、走りの性能はエントリーグレードながら十分なものだと思います。

今回タイヤの空気圧を7気圧から乗り始め、徐々に落としていってみたのですが、バイクの乗り味が大きく変わりましたね。ホイールは今回アッセンブルされたゾンダDBのようなアルミホイールで相性は良く、全く問題ありませんが、タイヤに関しては25c以上の太めのものを履かせて、かつ空気圧を上手く調整してあげることでさらに性能を発揮できるのではと思います。ディスクブレーキの制動力と合わせて、下りのライン取りもより楽しくなることでしょう。

フレームセット販売ですが、そもそもの価格が抑えられているので、その他のパーツにお金をかけられるのも嬉しいですね。ディスクブレーキならやはり油圧のタイプをチョイスしたいところです。サイズ展開も広く、女性でも乗れるXXSサイズがラインアップするのはいいですよね。ディスクブレーキの軽いタッチこそ、女性向きなのではと感じます。

カレラと聞くとレーシングバイクで値段が高いイメージがありますが、それがこの価格で手に入るのはいいですよね。フレームの形状等に目新しいところはありませんが、BBもスレッドタイプとメンテナンス性も良く走行性能も十分と、価格で選んでもガッカリしない1台です。遠くへサイクリングする用のサブバイクとしても使えますし、初めてのディスクロードとして体験してみたいという人にもオススメですね。

カレラ ER-01 DISCカレラ ER-01 DISC (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
カレラ ER-01 DISC(フレームセット)
サイズ:XXS、XS、S、M、L、XL
フレーム:カーボン プリプレグ T-700 SC HM M30J HS 60T
フォーク:カーボン FF06 SC SHM 1-1/8 - 1,5”
BB:BSA
フレーム重量:1150g(サイズM)
シートピラー径:31.6mm
価格:128,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

杉山友則(Bicicletta IL CUORE)杉山友則(Bicicletta IL CUORE) 杉山友則(Bicicletta IL CUORE)

東京都台東区のBicicletta IL CUORE 下谷本店店長。ダミアーノ・クネゴがジュニアチャンピオンだったころからクネゴのファンだという、自他ともに認めるミーハー系自転車乗り。グエルチョッティやコルナゴ、ルックなどヨーロピアンブランドへの造詣が深い。ショップ店長としては、ユーザーがサイクルライフを楽しめる遊び方の提案を心がけている。

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吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所) 吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)

名古屋に店舗を構えるワタキ商工株式会社 ニコー製作所の4代目店長を務める。一般企業に勤めてから入社した経験を活かし常に"外側からの視点"に注意を払い、初心者さんが気軽に入店しやすい雰囲気づくりを心がけている。週末にはロードやシクロクロス、トライアスロンなど多岐にわたってイベントを開催し、お客さん同士が仲良くなれるような場を提供している。ショップでは「当たり前のことを当たり前にやる」ことをモットーに作業を行い、お客さんが乗りやすいバイクを提供している。

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ウェア協力:シマノ
ヘルメット協力:ベル

text:Yuto.Murata
photo:Makoto.AYANO
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