標高2000mオーバーの高地で争われた24kmの個人TT。若きジョナサン・ディッベン(イギリス、チームスカイ)が一番時計をマークし、ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)が失速したラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)に代わって総合首位に躍進した。



トップタイムをマークしたジョナサン・ディッベン(イギリス、チームスカイ)トップタイムをマークしたジョナサン・ディッベン(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos
ステージ2位、総合も4位に上げたブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)ステージ2位、総合も4位に上げたブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング) photo:www.amgentourofcalifornia.com16秒遅れのステージ3位と好走したアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)16秒遅れのステージ3位と好走したアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック) photo:www.amgentourofcalifornia.com

ツアー・オブ・カリフォルア(UCIワールドツアー)総合争いもいよいよ大詰め。「南カリフォルニアのサイクリング首都」を公言する、ビッグベアー・レイク半周を往復する24kmで個人タイムトライアルが行われた。湖畔を駆け抜けるだけあってコースそのものはオールフラット、かつテクニカルコーナーも少ないが、問題は標高が2000mオーバーであること。高地順応力も試される30分の戦いが総合成績の明暗を分けた。

序盤に好走したのは、今年からUAEチームエミレーツでプロデビューを飾っている20歳のフィリッポ・ガンナ(イタリア)。最終的にステージ5位となるガンナの28分48秒43には「序盤に慎重すぎてしまった」というTTスペシャリストのマチェイ・ボドナール(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)やマーティン・エルミガー(スイス、BMCレーシング)もおよそ2秒届かず、イタリアU23TT選手権で1位、ヨーロッパU23選手権でも2位銀メダルと頭角と表しているガンナが長くホットシートをキープした。

均衡を破ったのは、総合65位、58番手スタートのジョナサン・ディッベン(イギリス、チームスカイ)だった。序盤から快調なペースを刻んだディッベンはガンナを21秒上回る28分27秒(平均スピード50.615km/h)でゴール。チームウィギンズからステップアップした23歳のタイムには終盤にスタートした総合勢も敵わず、「クラシックレースが好き」と言うディッベンが嬉しいキャリア初勝利を掴み取る。

ステージ4位に入る好走を見せたジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)ステージ4位に入る好走を見せたジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) photo:CorVos
機材トラブルも重なりヤングライダー賞を明け渡したラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ)機材トラブルも重なりヤングライダー賞を明け渡したラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ) photo:www.amgentourofcalifornia.com波に乗れないラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)は59秒遅れ波に乗れないラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)は59秒遅れ photo:www.amgentourofcalifornia.com


安全に走り切ることを目標にしたというポイント賞リーダーのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は7位に食い込み、総合10位のヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)はステージ11位に入る好走で総合6位へとジャンプアップ。トップタイム更新を目指した総合6位のブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)はディッベンに7秒届かなかったものの、総合4位浮上に成功した。

総合上位勢が順当に駒を進める一方、運に見放されたのが総合5位&ヤングライダー賞首位につけるラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ)だった。スタート台から出発する際にディスクホイールが破損したためノーマルバイクへの交換を強いられ、後にディープリムに変更したTTバイクに戻すべく再びストップ。これが影響したか1分55秒遅れのステージ49位で終えたため、総合9位ダウン、そしてヤングライダー賞も8秒差でタオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)に首位を明け渡してしまう。

タイムを大きく落としたロベルト・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)タイムを大きく落としたロベルト・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:www.amgentourofcalifornia.com総合5位にダウンしたイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)総合5位にダウンしたイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ) photo:www.amgentourofcalifornia.com


TTを得意とする先日優勝者アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)はステージ3位に入り、タイムを落としたイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)を抜いて総合3位に。総合で6秒前につける2位ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)もタランスキーから2秒遅れと好走し、続く総合リーダーラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)の到着を待った。

しかしマイカのタイムは伸びなかった。総合優勝を目指したマイカだったが「全力を尽くしたけどコンディションがそこまで良くなかった。今シーズン初めて個人TTを走ったことも理由かもしれない」とディッベンから59秒、ベネットから41秒遅れでフィニッシュしたため、総合逆転が発生。「レース中は無線がよく聞こえなくて順位を把握していなかったけれど、突然監督が叫ぶ声が聞こえ状況を把握した」というベネットが最終日を前にして35秒差の首位に躍進した。

59秒遅れたラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)は首位を明け渡す59秒遅れたラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)は首位を明け渡す photo:www.amgentourofcalifornia.comステージ優勝を飾ったジョナサン・ディッベン(イギリス、チームスカイ)ステージ優勝を飾ったジョナサン・ディッベン(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos

35秒差で総合首位に躍進したジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)35秒差で総合首位に躍進したジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) photo:CorVos
2012年にレディオシャックでプロ入りし、キャノンデールからロットNLユンボと渡り歩いてきた27歳のベネット。これまで総合一桁に入りつつ、優勝経験の無かった27歳が初のタイトルに向けて大きなチャンスを掴む結果となった。



ツアー・オブ・カリフォルニア2017第6ステージ結果
1位 ジョナサン・ディッベン(イギリス、チームスカイ)         28’27”
2位 ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)       +07”
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック) +16”
4位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)       +18”
5位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、UAEチームエミレーツ)        +21”
6位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ)
7位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)        +23”
8位 マチェイ・ボドナール(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
9位 マーティン・エルミガー(スイス、BMCレーシング)          +25”
10位 ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)        +27”

個人総合成績
1位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)     20h16’48”
2位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)        +35’
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック) +36”
4位 ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)       +45”
5位 イアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)            +1’00”
6位 ヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) +1’54”
7位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)          +2’12”
8位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ)               +2’15”
9位 ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ)     +2’20”
10位 アイマル・スベルディア(スペイン、トレック・セガフレード)     +3’14”

ポイント賞
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)       41pts
2位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)      31pts
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)      28pts

山岳賞
1位 ダニエル・ハラミーリョ(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)   38pts
2位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)      25pts
3位 エヴァン・ホフマン(アメリカ、ラリーサイクリング)        25pts

ヤングライダー賞
1位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)        20h19’00”
2位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ)               +03”
3位 ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ)      +08”

チーム総合成績
1位 チームスカイ                          60h56’56”
2位 BMCレーシング                           +5’22”
3位 コフィディス・ソルシオンクレディ                  +18’10”   

text:So.Isobe

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