2017/05/20(土) - 13:04
標高2000mオーバーの高地で争われた24kmの個人TT。若きジョナサン・ディッベン(イギリス、チームスカイ)が一番時計をマークし、ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)が失速したラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)に代わって総合首位に躍進した。
ツアー・オブ・カリフォルア(UCIワールドツアー)総合争いもいよいよ大詰め。「南カリフォルニアのサイクリング首都」を公言する、ビッグベアー・レイク半周を往復する24kmで個人タイムトライアルが行われた。湖畔を駆け抜けるだけあってコースそのものはオールフラット、かつテクニカルコーナーも少ないが、問題は標高が2000mオーバーであること。高地順応力も試される30分の戦いが総合成績の明暗を分けた。
序盤に好走したのは、今年からUAEチームエミレーツでプロデビューを飾っている20歳のフィリッポ・ガンナ(イタリア)。最終的にステージ5位となるガンナの28分48秒43には「序盤に慎重すぎてしまった」というTTスペシャリストのマチェイ・ボドナール(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)やマーティン・エルミガー(スイス、BMCレーシング)もおよそ2秒届かず、イタリアU23TT選手権で1位、ヨーロッパU23選手権でも2位銀メダルと頭角と表しているガンナが長くホットシートをキープした。
均衡を破ったのは、総合65位、58番手スタートのジョナサン・ディッベン(イギリス、チームスカイ)だった。序盤から快調なペースを刻んだディッベンはガンナを21秒上回る28分27秒(平均スピード50.615km/h)でゴール。チームウィギンズからステップアップした23歳のタイムには終盤にスタートした総合勢も敵わず、「クラシックレースが好き」と言うディッベンが嬉しいキャリア初勝利を掴み取る。
安全に走り切ることを目標にしたというポイント賞リーダーのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は7位に食い込み、総合10位のヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)はステージ11位に入る好走で総合6位へとジャンプアップ。トップタイム更新を目指した総合6位のブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)はディッベンに7秒届かなかったものの、総合4位浮上に成功した。
総合上位勢が順当に駒を進める一方、運に見放されたのが総合5位&ヤングライダー賞首位につけるラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ)だった。スタート台から出発する際にディスクホイールが破損したためノーマルバイクへの交換を強いられ、後にディープリムに変更したTTバイクに戻すべく再びストップ。これが影響したか1分55秒遅れのステージ49位で終えたため、総合9位ダウン、そしてヤングライダー賞も8秒差でタオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)に首位を明け渡してしまう。
TTを得意とする先日優勝者アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)はステージ3位に入り、タイムを落としたイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)を抜いて総合3位に。総合で6秒前につける2位ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)もタランスキーから2秒遅れと好走し、続く総合リーダーラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)の到着を待った。
しかしマイカのタイムは伸びなかった。総合優勝を目指したマイカだったが「全力を尽くしたけどコンディションがそこまで良くなかった。今シーズン初めて個人TTを走ったことも理由かもしれない」とディッベンから59秒、ベネットから41秒遅れでフィニッシュしたため、総合逆転が発生。「レース中は無線がよく聞こえなくて順位を把握していなかったけれど、突然監督が叫ぶ声が聞こえ状況を把握した」というベネットが最終日を前にして35秒差の首位に躍進した。
2012年にレディオシャックでプロ入りし、キャノンデールからロットNLユンボと渡り歩いてきた27歳のベネット。これまで総合一桁に入りつつ、優勝経験の無かった27歳が初のタイトルに向けて大きなチャンスを掴む結果となった。
ツアー・オブ・カリフォルニア2017第6ステージ結果
1位 ジョナサン・ディッベン(イギリス、チームスカイ) 28’27”
2位 ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング) +07”
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック) +16”
4位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) +18”
5位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、UAEチームエミレーツ) +21”
6位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ)
7位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) +23”
8位 マチェイ・ボドナール(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
9位 マーティン・エルミガー(スイス、BMCレーシング) +25”
10位 ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) +27”
個人総合成績
1位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 20h16’48”
2位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +35’
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック) +36”
4位 ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング) +45”
5位 イアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ) +1’00”
6位 ヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) +1’54”
7位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ) +2’12”
8位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) +2’15”
9位 ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ) +2’20”
10位 アイマル・スベルディア(スペイン、トレック・セガフレード) +3’14”
ポイント賞
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 41pts
2位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 31pts
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 28pts
山岳賞
1位 ダニエル・ハラミーリョ(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア) 38pts
2位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 25pts
3位 エヴァン・ホフマン(アメリカ、ラリーサイクリング) 25pts
ヤングライダー賞
1位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ) 20h19’00”
2位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) +03”
3位 ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ) +08”
チーム総合成績
1位 チームスカイ 60h56’56”
2位 BMCレーシング +5’22”
3位 コフィディス・ソルシオンクレディ +18’10”
text:So.Isobe
ツアー・オブ・カリフォルア(UCIワールドツアー)総合争いもいよいよ大詰め。「南カリフォルニアのサイクリング首都」を公言する、ビッグベアー・レイク半周を往復する24kmで個人タイムトライアルが行われた。湖畔を駆け抜けるだけあってコースそのものはオールフラット、かつテクニカルコーナーも少ないが、問題は標高が2000mオーバーであること。高地順応力も試される30分の戦いが総合成績の明暗を分けた。
序盤に好走したのは、今年からUAEチームエミレーツでプロデビューを飾っている20歳のフィリッポ・ガンナ(イタリア)。最終的にステージ5位となるガンナの28分48秒43には「序盤に慎重すぎてしまった」というTTスペシャリストのマチェイ・ボドナール(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)やマーティン・エルミガー(スイス、BMCレーシング)もおよそ2秒届かず、イタリアU23TT選手権で1位、ヨーロッパU23選手権でも2位銀メダルと頭角と表しているガンナが長くホットシートをキープした。
均衡を破ったのは、総合65位、58番手スタートのジョナサン・ディッベン(イギリス、チームスカイ)だった。序盤から快調なペースを刻んだディッベンはガンナを21秒上回る28分27秒(平均スピード50.615km/h)でゴール。チームウィギンズからステップアップした23歳のタイムには終盤にスタートした総合勢も敵わず、「クラシックレースが好き」と言うディッベンが嬉しいキャリア初勝利を掴み取る。
安全に走り切ることを目標にしたというポイント賞リーダーのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は7位に食い込み、総合10位のヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)はステージ11位に入る好走で総合6位へとジャンプアップ。トップタイム更新を目指した総合6位のブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)はディッベンに7秒届かなかったものの、総合4位浮上に成功した。
総合上位勢が順当に駒を進める一方、運に見放されたのが総合5位&ヤングライダー賞首位につけるラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ)だった。スタート台から出発する際にディスクホイールが破損したためノーマルバイクへの交換を強いられ、後にディープリムに変更したTTバイクに戻すべく再びストップ。これが影響したか1分55秒遅れのステージ49位で終えたため、総合9位ダウン、そしてヤングライダー賞も8秒差でタオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)に首位を明け渡してしまう。
TTを得意とする先日優勝者アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)はステージ3位に入り、タイムを落としたイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)を抜いて総合3位に。総合で6秒前につける2位ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)もタランスキーから2秒遅れと好走し、続く総合リーダーラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)の到着を待った。
しかしマイカのタイムは伸びなかった。総合優勝を目指したマイカだったが「全力を尽くしたけどコンディションがそこまで良くなかった。今シーズン初めて個人TTを走ったことも理由かもしれない」とディッベンから59秒、ベネットから41秒遅れでフィニッシュしたため、総合逆転が発生。「レース中は無線がよく聞こえなくて順位を把握していなかったけれど、突然監督が叫ぶ声が聞こえ状況を把握した」というベネットが最終日を前にして35秒差の首位に躍進した。
2012年にレディオシャックでプロ入りし、キャノンデールからロットNLユンボと渡り歩いてきた27歳のベネット。これまで総合一桁に入りつつ、優勝経験の無かった27歳が初のタイトルに向けて大きなチャンスを掴む結果となった。
ツアー・オブ・カリフォルニア2017第6ステージ結果
1位 ジョナサン・ディッベン(イギリス、チームスカイ) 28’27”
2位 ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング) +07”
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック) +16”
4位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) +18”
5位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、UAEチームエミレーツ) +21”
6位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ)
7位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) +23”
8位 マチェイ・ボドナール(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
9位 マーティン・エルミガー(スイス、BMCレーシング) +25”
10位 ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) +27”
個人総合成績
1位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 20h16’48”
2位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +35’
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック) +36”
4位 ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング) +45”
5位 イアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ) +1’00”
6位 ヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) +1’54”
7位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ) +2’12”
8位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) +2’15”
9位 ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ) +2’20”
10位 アイマル・スベルディア(スペイン、トレック・セガフレード) +3’14”
ポイント賞
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 41pts
2位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 31pts
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 28pts
山岳賞
1位 ダニエル・ハラミーリョ(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア) 38pts
2位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 25pts
3位 エヴァン・ホフマン(アメリカ、ラリーサイクリング) 25pts
ヤングライダー賞
1位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ) 20h19’00”
2位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) +03”
3位 ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ) +08”
チーム総合成績
1位 チームスカイ 60h56’56”
2位 BMCレーシング +5’22”
3位 コフィディス・ソルシオンクレディ +18’10”
text:So.Isobe
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