2017/05/18(木) - 04:08
獲得標高差3,700mの山岳ステージで12名の逃げ切り決まる。1日中アタックを繰り返したオマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)が最終スプリントで自身初のグランツールステージ優勝を飾った。
トスカーナ州の観光都市フィレンツェを見下ろすミケランジェロ広場をスタートする第11ステージ。断続的に2級山岳コンスーマ峠(全長15.9km/平均6.1%)、3級山岳カッラ峠(全長16km/平均5.3%)、3級山岳カルナイオ峠(全長11.4km/平均4.5%)、2級山岳モンテ・フマイオーロ(全長23.1km/平均3.7%)というアペニン山脈の4つの峠を越えるステージで、1日の獲得標高差は3,700mに及ぶ。
山頂フィニッシュではないものの、2級山岳モンテ・フマイオーロ通過後にテクニカルなダウンヒルが登場するなど最後まで気が抜けない。この第11ステージを「今年のジロで最も危険なステージ」と警戒する選手もいたほど。序盤からアタックが止まないハイスピードな進行となったため、逃げ、集団、グルペットのいずれの選手にとってもタフなレースとなった。
フィレンツェをスタートしてすぐ始まった2級山岳コンスーマ峠の登りで延々とアタックが繰り返され、集団後方では早くもスプリンターを含むグルペットが形成される。脱落者の中にはティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)の姿も。ヴァンガーデレンはこの日だけで20分以上のタイムを失い、完全に総合争いから脱落した。
2級山岳コンスーマ峠通過後、40km地点ではようやく25名の先頭グループが形成された。ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)やピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)といったすでに総合順を下げているオールラウンダーの他、総合9位/2分16秒遅れのアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)や総合12位タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)、総合15位ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)、総合18位ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)、総合19位マキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル)が先行を開始。大逃げが決まれば総合逆転が起こりかねない危険な逃げのため、マリアローザを守る立場のサンウェブが早めに集団コントロールを開始した。
人数過多による協調体制の欠如を嫌ったランダとフライレがもう一段アタックを仕掛け、2人で先行しながら3級山岳カッラ峠と3級山岳カルナイオ峠を立て続けにクリアしていく。先頭2名から2分遅れで追走23名、5分遅れでサンウェブ率いるメイン集団という位置関係のままレースは後半に入った。
登坂力を生かして逃げ続けた2人のバスククライマー(ランダとフライレ)だったが、フィニッシュまで41kmを残して追走グループに吸収される。こうして22名(3名脱落)に人数を増やした先頭グループがメイン集団に対して3分のリードを保ったまま最後の2級山岳モンテ・フマイオーロに突入。ステージ優勝をかけた戦いが始まった。
登りを進むうちに人数を減らしていく先頭グループとメイン集団。ロランとコスタ、ローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)の3名が先頭で活発な動きを見せ、その中からロランが単独で抜け出すことに成功する。ロランに単独で追い付いたフライレを先頭に2級山岳モンテ・フマイオーロをクリアした。
2分半後方のメイン集団ではエフデジ、トレック・セガフレード、そしてバーレーン・メリダがペースを作り、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)がアタックを繰り出すとステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)とゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が脱落する。続いて強力なアタックを仕掛けたティボー・ピノ(フランス、エフデジ)がライバルたちを振り切って2級山岳モンテ・フマイオーロを通過した。
マリアローザのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)はライバルたちの動きに目を光らせながら頂上を越え、下りで何度か加速したニーバリにも先行を許さない。単独で飛び出していたピノも吸収され、結果的に総合上位陣(48秒遅れたクライスヴァイクとトーマスを除く)は一塊でバーニョ・ディ・ロマーニャのフィニッシュにたどり着くことになる。
ステージ優勝に向けてひた走るロランとフライレに、追走グループからアタックしたコスタが合流して先頭は3名。下り区間を終えてそのまま3名によるスプリント争いに持ち込まれると思われたが、残り2kmを切ってからカンゲルトやカタルド、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)らが合流して先頭は8名に。緩い登り勾配の最終ストレートでマッチスプリントが繰り広げられ、序盤からアタックを繰り返していたフライレが先着した。
「信じられない1日だ。これ以上何も望めないと思えるような日になった」。フィニッシュ後に状況を理解するために頭を抱え、うずくまっていたフライレは喜びを爆発させた。フライレはカハルーラル時代の2015年にブエルタ・ア・エスパーニャとブエルタ・アル・パイスバスコで山岳賞を獲得。ディメンションデータに移籍した2016年も再びブエルタで山岳賞に輝いている。直前のツール・ド・ヨークシャーではチームメイトをアシストしながら総合2位に入っていた。
グランツールのステージ初優勝を飾ったフライレは「ずっと待ち焦がれていた勝利。ジロは小さい頃から夢見ていたレースであり、間違いなくキャリア最大の勝利だ」と喜ぶ。この日だけで山岳ポイントを35ポイント量産したフライレは山岳賞首位のヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)とポイント差無しの2位に浮上している。
強力なメンバーが逃げ切ったため総合成績にも変動が発生。アマドールが総合9位から総合6位に、カンゲルトが総合12位から総合8位に、カタルドが総合15位から総合11位に、コスタが総合18位から総合15位に順位を上げることに成功している。デュムランは直近のライバルたちからタイム差を失うことなくマリアローザを守っている。
ジロ・デ・イタリア2017第11ステージ結果
1位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 4h23'14"
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)
3位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)
4位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)
5位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)
6位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)
7位 ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)
8位 シモーネ・ペティッリ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
9位 マキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル) +03"
10位 ローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)
11位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
12位 ユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼール)
マリアローザ 個人総合成績
1位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 47h22'07"
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +2'23"
3位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +2'38"
4位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +2'40"
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +2'47"
6位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +3'05"
7位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +3'56"
8位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ) +3'59"
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +4'05"
10位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +4'17"
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 191pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 160pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 129pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 44pts
2位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 44pts
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 35pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) 47h26'03"
2位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +2'23"
3位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +3'02"
チーム総合成績
1位 モビスター 142h20'40"
2位 アスタナ +3'30"
3位 UAEチームエミレーツ +9'42"
text&photo:Kei Tsuji in Bagno di Romagna, Italy
トスカーナ州の観光都市フィレンツェを見下ろすミケランジェロ広場をスタートする第11ステージ。断続的に2級山岳コンスーマ峠(全長15.9km/平均6.1%)、3級山岳カッラ峠(全長16km/平均5.3%)、3級山岳カルナイオ峠(全長11.4km/平均4.5%)、2級山岳モンテ・フマイオーロ(全長23.1km/平均3.7%)というアペニン山脈の4つの峠を越えるステージで、1日の獲得標高差は3,700mに及ぶ。
山頂フィニッシュではないものの、2級山岳モンテ・フマイオーロ通過後にテクニカルなダウンヒルが登場するなど最後まで気が抜けない。この第11ステージを「今年のジロで最も危険なステージ」と警戒する選手もいたほど。序盤からアタックが止まないハイスピードな進行となったため、逃げ、集団、グルペットのいずれの選手にとってもタフなレースとなった。
フィレンツェをスタートしてすぐ始まった2級山岳コンスーマ峠の登りで延々とアタックが繰り返され、集団後方では早くもスプリンターを含むグルペットが形成される。脱落者の中にはティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)の姿も。ヴァンガーデレンはこの日だけで20分以上のタイムを失い、完全に総合争いから脱落した。
2級山岳コンスーマ峠通過後、40km地点ではようやく25名の先頭グループが形成された。ミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)やピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)といったすでに総合順を下げているオールラウンダーの他、総合9位/2分16秒遅れのアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)や総合12位タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)、総合15位ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)、総合18位ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)、総合19位マキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル)が先行を開始。大逃げが決まれば総合逆転が起こりかねない危険な逃げのため、マリアローザを守る立場のサンウェブが早めに集団コントロールを開始した。
人数過多による協調体制の欠如を嫌ったランダとフライレがもう一段アタックを仕掛け、2人で先行しながら3級山岳カッラ峠と3級山岳カルナイオ峠を立て続けにクリアしていく。先頭2名から2分遅れで追走23名、5分遅れでサンウェブ率いるメイン集団という位置関係のままレースは後半に入った。
登坂力を生かして逃げ続けた2人のバスククライマー(ランダとフライレ)だったが、フィニッシュまで41kmを残して追走グループに吸収される。こうして22名(3名脱落)に人数を増やした先頭グループがメイン集団に対して3分のリードを保ったまま最後の2級山岳モンテ・フマイオーロに突入。ステージ優勝をかけた戦いが始まった。
登りを進むうちに人数を減らしていく先頭グループとメイン集団。ロランとコスタ、ローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)の3名が先頭で活発な動きを見せ、その中からロランが単独で抜け出すことに成功する。ロランに単独で追い付いたフライレを先頭に2級山岳モンテ・フマイオーロをクリアした。
2分半後方のメイン集団ではエフデジ、トレック・セガフレード、そしてバーレーン・メリダがペースを作り、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)がアタックを繰り出すとステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)とゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が脱落する。続いて強力なアタックを仕掛けたティボー・ピノ(フランス、エフデジ)がライバルたちを振り切って2級山岳モンテ・フマイオーロを通過した。
マリアローザのトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)はライバルたちの動きに目を光らせながら頂上を越え、下りで何度か加速したニーバリにも先行を許さない。単独で飛び出していたピノも吸収され、結果的に総合上位陣(48秒遅れたクライスヴァイクとトーマスを除く)は一塊でバーニョ・ディ・ロマーニャのフィニッシュにたどり着くことになる。
ステージ優勝に向けてひた走るロランとフライレに、追走グループからアタックしたコスタが合流して先頭は3名。下り区間を終えてそのまま3名によるスプリント争いに持ち込まれると思われたが、残り2kmを切ってからカンゲルトやカタルド、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)らが合流して先頭は8名に。緩い登り勾配の最終ストレートでマッチスプリントが繰り広げられ、序盤からアタックを繰り返していたフライレが先着した。
「信じられない1日だ。これ以上何も望めないと思えるような日になった」。フィニッシュ後に状況を理解するために頭を抱え、うずくまっていたフライレは喜びを爆発させた。フライレはカハルーラル時代の2015年にブエルタ・ア・エスパーニャとブエルタ・アル・パイスバスコで山岳賞を獲得。ディメンションデータに移籍した2016年も再びブエルタで山岳賞に輝いている。直前のツール・ド・ヨークシャーではチームメイトをアシストしながら総合2位に入っていた。
グランツールのステージ初優勝を飾ったフライレは「ずっと待ち焦がれていた勝利。ジロは小さい頃から夢見ていたレースであり、間違いなくキャリア最大の勝利だ」と喜ぶ。この日だけで山岳ポイントを35ポイント量産したフライレは山岳賞首位のヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)とポイント差無しの2位に浮上している。
強力なメンバーが逃げ切ったため総合成績にも変動が発生。アマドールが総合9位から総合6位に、カンゲルトが総合12位から総合8位に、カタルドが総合15位から総合11位に、コスタが総合18位から総合15位に順位を上げることに成功している。デュムランは直近のライバルたちからタイム差を失うことなくマリアローザを守っている。
ジロ・デ・イタリア2017第11ステージ結果
1位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 4h23'14"
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)
3位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)
4位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)
5位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)
6位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)
7位 ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)
8位 シモーネ・ペティッリ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
9位 マキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ソウダル) +03"
10位 ローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)
11位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
12位 ユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼール)
マリアローザ 個人総合成績
1位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 47h22'07"
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +2'23"
3位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +2'38"
4位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +2'40"
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +2'47"
6位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +3'05"
7位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +3'56"
8位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ) +3'59"
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +4'05"
10位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +4'17"
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 191pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 160pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 129pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 44pts
2位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) 44pts
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 35pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) 47h26'03"
2位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +2'23"
3位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +3'02"
チーム総合成績
1位 モビスター 142h20'40"
2位 アスタナ +3'30"
3位 UAEチームエミレーツ +9'42"
text&photo:Kei Tsuji in Bagno di Romagna, Italy
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