その動きはまさに職人芸。人数を揃えたクイックステップトレインから発射されたマルセル・キッテル(ドイツ)がツアー・オブ・カリフォルニア初日に圧勝。並みいる強豪を蹴散らしリーダージャージを手中に収めた。女子レースのダイジェストレポートも併せて紹介します。



大会VIPと握手するペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)大会VIPと握手するペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:www.amgentourofcalifornia.comスタートラインに並ぶマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)スタートラインに並ぶマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ) photo:www.amgentourofcalifornia.com

サクラメントのダウンタウンからレースはスタートサクラメントのダウンタウンからレースはスタート photo:www.amgentourofcalifornia.com
「全米最大級のステージレース」ツアー・オブ・カリフォルニア(UCIワールドツアー)がいよいよスタート。開幕ホストシティはカリフォルニア州が州都を置くサクラメントが務め、ダウンタウンをスタートしておよそ80kmを南下し、Uターンして市街地に戻る167.5kmのド平坦コースが用意された。

100%スプリント勝負が見込まれる中、果敢に逃げたのは「(チームスポンサーの)アソスとダグホイヤーがジャージスポンサーに付いているヤングライダー賞ジャージが何としても欲しかった」と言うフローリス・ヘルツ(オランダ、BMCレーシング)と、ベン・ウォルフ(アメリカ、ジェリーベリーp/bマキシス)、ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)、そしてシャルル・プラネット(フランス、ノボ ノルディスク)という4名。

先を急ぐ4名はタイム差をじわじわと広げていったものの、メイン集団ではスプリントを狙うクイックステップフロアーズらが徹底マークを行ったため、リードは最大でも2分半止まり。1日を通じて2分前後の間隔を保ちながらフィニッシュまでの距離を消化していった。

逃げるジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)ら逃げるジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)ら photo:www.amgentourofcalifornia.comクイックステップフロアーズやカチューシャ・アルペシンが徹底的にコントロールクイックステップフロアーズやカチューシャ・アルペシンが徹底的にコントロール photo:www.amgentourofcalifornia.com


中間スプリントでは狙い通りヘルツがボーナスタイムを獲り、最終的にヤングライダー賞獲得に成功する。残り70km付近の横風区間ではクイックステップフロアーズが分断作戦を試みたものの、他に同調するチームが現れなかったため不発に終わった。

この動きで逃げる4名との間隔が詰まり、30km以上を残してその差は30秒ほど。単独走に持ち込んだウォルフの抵抗むなしく、残り10km地点でレースの主導権はペースを上げ続けるメイン集団に移行する。

暫くはチームスカイやカチューシャ・アルペシン、チームサンウェブらが主導権を奪い合っていたものの、残り3km地点から発進したクイックステップフロアーズ列車に肩を並べるチームは現れず。アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)を連れたリック・ツァベル(ドイツ)によるペースアップもキッテルの最終発射台ファビオ・サバティーニ(イタリア)によって封じられ、満を持してキッテルが出発。筋書き通りのスプリントで突き進むキッテルに、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)もエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)も対応できなかった。

圧倒的なスプリントを披露したマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)圧倒的なスプリントを披露したマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ) photo:CorVos
賞品のイラストを眺めるマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)とペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)賞品のイラストを眺めるマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)とペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:www.amgentourofcalifornia.comリーダージャージに袖を通すマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)リーダージャージに袖を通すマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ) photo:www.amgentourofcalifornia.com


力強いガッツポーズでキャリア80勝目、そしてクイックステップフロアーズ移籍後20勝目を挙げたキッテルは「開幕ステージを勝利で飾れるなんてハッピー。リーダージャージはボーナスさ。温かく迎えてくれるファンや素晴らしい天気、そしてもちろんステージ優勝と素晴らしい1日を楽しむことができた。チームとして素晴らしいスタートが切れたし、完璧な仕事ぶりで僕をサポートしてくれたチームを誇りに思う」とコメント。表彰台でイエロージャージに袖を通し、パーフェクトな1日を締めくくった。



4日間の女子レースはファンデルブレゲンが総合優勝

5月11日から男子レースに先立って開催されていた4日間の女子レース(正式名称:Amgen Breakaway from Heart Disease Women's Race empowered with SRAM)の模様をダイジェストで紹介しよう。

カリフォルニア女子レースはUCIワールドツアーカレンダーに唯一組み込まれた北米レースであり、初日はタホ湖周辺のアップダウンを使ったコースで争われた。最後の登坂勝負で前年度覇者の全米王者メーガン・グアルニエ(アメリカ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)が勝利し幸先良いスタートを切る。

第1ステージ メーガン・グアルニエ(アメリカ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)がステージ優勝第1ステージ メーガン・グアルニエ(アメリカ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)がステージ優勝 photo:www.amgentourofcalifornia.com第2ステージ アンナ・ファンデルブレゲン(オランダ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)との一騎打ちを制したケイティ・ホール(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア・プロサイクリング・ウィメンズ)第2ステージ アンナ・ファンデルブレゲン(オランダ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)との一騎打ちを制したケイティ・ホール(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア・プロサイクリング・ウィメンズ) photo:www.amgentourofcalifornia.com

第3ステージ 集団スプリントを制したコリン・リヴェラ(アメリカ、サンウェブ)第3ステージ 集団スプリントを制したコリン・リヴェラ(アメリカ、サンウェブ) photo:CorVos第4ステージ 中間スプリントのボーナスタイムで優勝を決めたアンナ・ファンデルブレゲン(オランダ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)第4ステージ 中間スプリントのボーナスタイムで優勝を決めたアンナ・ファンデルブレゲン(オランダ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム) photo:CorVos


1級山岳、そしてゴールが用意された3級山岳に挑む第2ステージではケイティ・ホール(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア・プロサイクリング・ウィメンズ)とアンナ・ファンデルブレゲン(オランダ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)の一騎打ちに。平坦でアタックしたファンデルブレゲンは登坂で力尽き、身軽なダンシングで駆け上がったホールがステージと総合首位を獲得した。

しかしファンデルブレゲンに対するホールのタイム差は僅か3秒。ボーナスタイム逆転が可能な範囲であり、パワーに勝るヨーロッパ王者はコリン・リヴェラ(アメリカ、サンウェブ)が優勝した翌日の中間スプリントで2位に入り1秒差まで詰め寄ることに成功。男子第1ステージと同じコースを使う最終日のクリテリウムでも中間スプリント争いが勃発し、再度2位通過したファンデルブレゲンは総合逆転を達成。怒涛のアルデンヌ3連勝を成し遂げた五輪金メダリストに対してクライマーのホールは太刀打ちできなかった。

アンナ・ファンデルブレゲン(オランダ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)を中心に各章ジャージが並ぶアンナ・ファンデルブレゲン(オランダ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)を中心に各章ジャージが並ぶ photo:CorVos
怒涛の快進撃を続ける27歳のファンデルブレヘンは今期既に5勝目。ナショナル選手権と6月末から開幕するジロ・ローザでもディフェンディングチャンピオンのグアルニエ、エリザベス・ダイグナン(イギリス)らと共にチームの主力を務める予定だという。



ツアー・オブ・カリフォルニア第1ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)        3h45’35”
2位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
3位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
4位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)
5位 ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク、BMCレーシング)
6位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)
7位 ヨナス・ファンへネヒテン(ベルギー、コフィディス)
8位 マルコ・クンプ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
9位 ワウテル・ウィッペルト(オランダ、キャノンデール・ドラパック)
10位 トラヴィス・マケイブ(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)

個人総合成績
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)       3h45’35”
2位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)           +04"
3位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)              +06"
4位 フローリス・ヘルツ(オランダ、BMCレーシング)              +09"
5位 ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)
6位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)           +10"
7位 ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク、BMCレーシング)
8位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)
9位 ヨナス・ファンへネヒテン(ベルギー、コフィディス)
10位 マルコ・クンプ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)

ポイント賞
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)  15pts
2位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)    12pts
3位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)      9pts

ヤングライダー賞
1位 フローリス・ヘルツ(オランダ、BMCレーシング)    3h45'34"
2位 コリン・ジョイス(アメリカ、ラリーサイクリング)      +01"
3位 リック・ツァベル(ドイツ、BMCレーシング)

チーム総合成績
1位 カチューシャ・アルペシン               11h16'49"
2位 ユナイテッドヘルスケア
3位 ボーラ・ハンスグローエ                   +04"



アムジェン・ブレーカウェイフロムハートディズィーズウィメンズレース パワードwithスラム
第1ステージ結果

1位 メーガン・グアルニエ(アメリカ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)   3h03’48”
2位 アンナ・ファンデルブレゲン(オランダ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)
3位 アーレニス・シエラ(キューバ、アスタナ・ウィメンズ・チーム)   
4位 ルス・ウィンダー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)                +10”
5位 クリスタベル・ドーベルヒコック(アメリカ、サイランス・プロサイクリング)

第2ステージ結果
1位 ケイティ・ホール(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア・プロサイクリング・ウィメンズ)3h09’56”
2位 アンナ・ファンデルブレゲン(オランダ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)   +21”
3位 クリスタベル・ドーベルヒコック(アメリカ、サイランス・プロサイクリング)       +37”
4位 ルス・ウィンダー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア・プロサイクリング・ウィメンズ)
5位 メーガン・グアルニエ(アメリカ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)      +49”

第3ステージ結果
1位 コリン・リヴェラ(アメリカ、サンウェブ)            2h55’37”
2位 アーレニス・シエラ(キューバ、アスタナ・ウィメンズ・チーム)
3位 ジョルジア・ブロンジーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ)
4位 バルバラ・グアリスキ(イタリア、キャニオン・スラム)
5位 アミィ・ピーテルス(オランダ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム)

第4ステージ結果
1位 ジョルジア・ブロンジーニ(イタリア、ウィグル・ハイファイブ)  1h38’03”
2位 コリン・リヴェラ(アメリカ、サンウェブ)
3位 クリステン・ワイルド(オランダ、サイランス・プロサイクリング)
4位 ハンナ・バーンズ(アメリカ、キャニオン・スラム)
5位 アーレニス・シエラ(キューバ、アスタナ・ウィメンズ・チーム) 

個人総合成績
1位 アンナ・ファンデルブレゲン(オランダ、ブールス・ドルマンス・サイクリングチーム) 10h47’33”
2位 ケイティ・ホール(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア・プロサイクリング・ウィメンズ)+01”
3位 アーレニス・シエラ(キューバ、アスタナ・ウィメンズ・チーム)           +31”
4位 クリスタベル・ドーベルヒコック(アメリカ、サイランス・プロサイクリング)     +34”
5位 ルス・ウィンダー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア・プロサイクリング・ウィメンズ)+38”

ポイント賞:アーレニス・シエラ(キューバ、アスタナ・ウィメンズ・チーム)
山岳賞:ケイティ・ホール(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア・プロサイクリング・ウィメンズ)
ヤングライダー賞:アーレニス・シエラ(キューバ、アスタナ・ウィメンズ・チーム)
チーム総合成績:ユナイテッドヘルスケア・プロサイクリング・ウィメンズ

text:So.Isobe
photo:www.amgentourofcalifornia.com,CorVos

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