2017/05/15(月) - 03:05
1級山岳ブロックハウスでナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が他を圧倒。ミラノまで2週間を残し、キンタナがマリアローザを獲得した。
大会2回目の休息日前日、第9ステージには1級山岳ブロックハウス(全長13.6km/平均8.4%)の山頂フィニッシュが登場した。ブロックハウスはイタリア半島の背骨を形成するアペニン山脈に位置する標高1,665mの山で、10%前後の急勾配が延々と続く。第4ステージの1級山岳エトナ山よりも難易度が格段に高い今大会2回目の山頂フィニッシュだ。
アブルッツォ州らしい丘の上の町モンテネーロ・ディ・ビザッチャをスタート後、アドリア海に向かうダウンヒルで9名が先行を開始する。しかし逃げに選手を乗せたいチームが集団のペースを上げたためタイム差は広がらない。カウンターアタックを仕掛けて追走グループを形成したピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)ら3名を先頭グループに合流させたいキャノンデール・ドラパックがメイン集団のペースを上げ続けた。
「追走しているロランを待たなければ逃げを吸収してしまうぞ」というキャノンデール・ドラパックの無言のメッセージが届いたかどうかは定かではないが、ロランら3名は無事先頭に追いつき、逃げグループは12名まで人数を増やした。しかし逃げグループのリードは2分30秒以上に広がらない。総合で5分04秒遅れのマッテーオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼール)が逃げに乗ったことも影響し、モビスターが集団先頭に立ってコントロールを開始した。
モビスターがフルメンバーで牽引するメイン集団は先頭グループとのタイム差を詰め、残り22km地点で早くも逃げを飲み込む。1級山岳ブロックハウスの登り口に向かってハイスピードでポジション争いを繰り広げたメイン集団。いよいよ本格的な山岳バトルが始まると思われたその刹那、残り14km地点で沿道の白線上に停止した警察バイクにウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)が接触して落車してしまう。連鎖的にケルデルマンに後続が突っ込み、集団落車が発生した。
集団前方で落車が発生したため、ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)やミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)といった有力どころが巻き込まれてしまう。チームスカイはエース2名だけでなく合計5〜6名が地面に叩きつけられた。
しばらく立ち上がれず、再スタートに時間を要したトーマスはこの日だけで5分遅れでフィニッシュしている。実質的に総合争いから脱落したトーマスはレース後に「道幅いっぱいに広がって位置取りしている中で、突然警察のモトがコース上に止まっていた。起こってはいけない事故が起こってしまった。本当に馬鹿げている」と怒りを露わにする。ランダは27分遅れでフィニッシュしており、チームスカイのダブルエースが揃って脱落。イェーツは4分39秒遅れでフィニッシュし、指を骨折したケルデルマンはリタイアを余儀なくされた。
落車の影響を受けなかったモビスターを先頭にメイン集団は登坂距離13.6kmの1級山岳ブロックハウスの登坂を開始。本格的な登りが始まるとメイン集団は瞬く間に人数を減らし、残り9km地点で約15名ほどに絞られた精鋭集団からマリアローザのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)が脱落した。
頂上まで7kmを切ると、ウィネル・アナコナ(コロンビア)とアンドレイ・アマドール(コスタリカ)のアシストを得たキンタナがアタックをスタートさせる。ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)がすぐさま反応して食らいついたものの、断続的にアタックを繰り出すキンタナが最大勾配14%の残り5km地点でついに独走を開始。
軽快なダンシングで急勾配の登りを進んだキンタナに対し、2番手を走るピノからニーバリが遅れをとる。一方、キンタナのアタックに反応せずペースを刻んだトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)とバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)がポジションを上げ、ニーバリを抜いてピノに合流。デュムラン、モレマ、ピノの3名が追走グループを形成した。
先頭キンタナのハイペースは最後まで落ちず、残り2km地点でモレマを引き離した2番手ピノとデュムランを24秒引き離してフィニッシュ。ピノとデュムランに続いてモレマが41秒差、そしてニーバリが1分差でフィニッシュラインを切った。
「チームメイトと自分の力で勝利を掴み取ったことにこの上ない喜びを感じている。すべてが作戦通りだった」。徹底的なコントロールから攻撃まで完璧にレースを進めたキンタナがステージ優勝を飾るとともにマリアローザも同時に手にした。
第10ステージの個人TTを前に、キンタナは総合2位ピノから28秒、総合3位デュムランから30秒のリードを得ている。「TTスペシャリストたちからリードを奪うことができたけど、まだジロは長い。今日素晴らしい走りで驚かせたデュムランとの30秒差が充分なのかそれとも足りないのか、数日かけて様子を見たい。とにかく今調子が良いことが一番大事なんだ」と、マリアローザを着て記者会見に臨んだキンタナは落ち着いて語った。
ジロ・デ・イタリア2017第9ステージ結果
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 3h44'51"
2位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +24"
3位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
4位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +41"
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +1'00"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +1'18"
7位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ) +2'02"
8位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +2'14"
9位 セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、エフデジ) +2'28"
10位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +2'35"
12位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) +2'43"
15位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +3'30"
17位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +3'46"
23位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +4'39"
29位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +5'08"
マリアローザ 個人総合成績
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 42h06'09"
2位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +28"
3位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) +30"
4位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +51"
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +1'10"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +1'28"
7位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +2'28"
8位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +2'45"
9位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +2'53"
10位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) +3'06"
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 191pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 160pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 129pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 44pts
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 35pts
3位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) 27pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) 42h08'54"
2位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +45"
3位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) +2'01"
チーム総合成績
1位 モビスター 126h26'41"
2位 アスタナ +6'15"
3位 UAEチームエミレーツ +7'57"
text&photo:Kei Tsuji in Blockhaus, Italy
大会2回目の休息日前日、第9ステージには1級山岳ブロックハウス(全長13.6km/平均8.4%)の山頂フィニッシュが登場した。ブロックハウスはイタリア半島の背骨を形成するアペニン山脈に位置する標高1,665mの山で、10%前後の急勾配が延々と続く。第4ステージの1級山岳エトナ山よりも難易度が格段に高い今大会2回目の山頂フィニッシュだ。
アブルッツォ州らしい丘の上の町モンテネーロ・ディ・ビザッチャをスタート後、アドリア海に向かうダウンヒルで9名が先行を開始する。しかし逃げに選手を乗せたいチームが集団のペースを上げたためタイム差は広がらない。カウンターアタックを仕掛けて追走グループを形成したピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)ら3名を先頭グループに合流させたいキャノンデール・ドラパックがメイン集団のペースを上げ続けた。
「追走しているロランを待たなければ逃げを吸収してしまうぞ」というキャノンデール・ドラパックの無言のメッセージが届いたかどうかは定かではないが、ロランら3名は無事先頭に追いつき、逃げグループは12名まで人数を増やした。しかし逃げグループのリードは2分30秒以上に広がらない。総合で5分04秒遅れのマッテーオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼール)が逃げに乗ったことも影響し、モビスターが集団先頭に立ってコントロールを開始した。
モビスターがフルメンバーで牽引するメイン集団は先頭グループとのタイム差を詰め、残り22km地点で早くも逃げを飲み込む。1級山岳ブロックハウスの登り口に向かってハイスピードでポジション争いを繰り広げたメイン集団。いよいよ本格的な山岳バトルが始まると思われたその刹那、残り14km地点で沿道の白線上に停止した警察バイクにウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)が接触して落車してしまう。連鎖的にケルデルマンに後続が突っ込み、集団落車が発生した。
集団前方で落車が発生したため、ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)やミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)といった有力どころが巻き込まれてしまう。チームスカイはエース2名だけでなく合計5〜6名が地面に叩きつけられた。
しばらく立ち上がれず、再スタートに時間を要したトーマスはこの日だけで5分遅れでフィニッシュしている。実質的に総合争いから脱落したトーマスはレース後に「道幅いっぱいに広がって位置取りしている中で、突然警察のモトがコース上に止まっていた。起こってはいけない事故が起こってしまった。本当に馬鹿げている」と怒りを露わにする。ランダは27分遅れでフィニッシュしており、チームスカイのダブルエースが揃って脱落。イェーツは4分39秒遅れでフィニッシュし、指を骨折したケルデルマンはリタイアを余儀なくされた。
落車の影響を受けなかったモビスターを先頭にメイン集団は登坂距離13.6kmの1級山岳ブロックハウスの登坂を開始。本格的な登りが始まるとメイン集団は瞬く間に人数を減らし、残り9km地点で約15名ほどに絞られた精鋭集団からマリアローザのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)が脱落した。
頂上まで7kmを切ると、ウィネル・アナコナ(コロンビア)とアンドレイ・アマドール(コスタリカ)のアシストを得たキンタナがアタックをスタートさせる。ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)がすぐさま反応して食らいついたものの、断続的にアタックを繰り出すキンタナが最大勾配14%の残り5km地点でついに独走を開始。
軽快なダンシングで急勾配の登りを進んだキンタナに対し、2番手を走るピノからニーバリが遅れをとる。一方、キンタナのアタックに反応せずペースを刻んだトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)とバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)がポジションを上げ、ニーバリを抜いてピノに合流。デュムラン、モレマ、ピノの3名が追走グループを形成した。
先頭キンタナのハイペースは最後まで落ちず、残り2km地点でモレマを引き離した2番手ピノとデュムランを24秒引き離してフィニッシュ。ピノとデュムランに続いてモレマが41秒差、そしてニーバリが1分差でフィニッシュラインを切った。
「チームメイトと自分の力で勝利を掴み取ったことにこの上ない喜びを感じている。すべてが作戦通りだった」。徹底的なコントロールから攻撃まで完璧にレースを進めたキンタナがステージ優勝を飾るとともにマリアローザも同時に手にした。
第10ステージの個人TTを前に、キンタナは総合2位ピノから28秒、総合3位デュムランから30秒のリードを得ている。「TTスペシャリストたちからリードを奪うことができたけど、まだジロは長い。今日素晴らしい走りで驚かせたデュムランとの30秒差が充分なのかそれとも足りないのか、数日かけて様子を見たい。とにかく今調子が良いことが一番大事なんだ」と、マリアローザを着て記者会見に臨んだキンタナは落ち着いて語った。
ジロ・デ・イタリア2017第9ステージ結果
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 3h44'51"
2位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +24"
3位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
4位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +41"
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +1'00"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +1'18"
7位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ) +2'02"
8位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +2'14"
9位 セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、エフデジ) +2'28"
10位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +2'35"
12位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) +2'43"
15位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +3'30"
17位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +3'46"
23位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +4'39"
29位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +5'08"
マリアローザ 個人総合成績
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 42h06'09"
2位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) +28"
3位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) +30"
4位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +51"
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +1'10"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール) +1'28"
7位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) +2'28"
8位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +2'45"
9位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) +2'53"
10位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) +3'06"
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 191pts
2位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 160pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 129pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 44pts
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 35pts
3位 ティボー・ピノ(フランス、エフデジ) 27pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) 42h08'54"
2位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +45"
3位 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) +2'01"
チーム総合成績
1位 モビスター 126h26'41"
2位 アスタナ +6'15"
3位 UAEチームエミレーツ +7'57"
text&photo:Kei Tsuji in Blockhaus, Italy
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