2017/05/03(水) - 09:04
リオオリンピックMTB XCOでニノ・シューターの金メダルを支えたスコット。そのハイエンドXC用フルサスモデル、SPARKにセミファットタイヤを組み合わせたトレイルバイク、SPARK PLUSが登場した。レーシングフレームの設計をそのままに、「楽しさ」を追求したプレミアムバイクをインプレッション。
ここ数年のクロスカントリーレースシーンに君臨する王者といえば、スイスのニノ・シューターを置いて他にはいないだろう。5度に渡って世界選手権を制し、昨年ブラジルのリオデジャネイロで行われたオリンピックでも金メダルを獲得したトップレーサーだ。
その走りを支え続けてきたのが、シューターと同郷のスイスブランドであるスコットだ。今年、XCレーシングモデルを全面刷新したスコットのフルサスモデルがSPARKである。前モデルより多くの改良が加えられたSPARKだが、外見上のもっとも大きな変更点はサスペンションユニットのリンク方式だ。
前作ではトップチューブにマウントされていたリアのショックユニットは、今作では縦置き式へと変更された。ボトムブラケット直上に設置されたサスペンションマウントを補強するためのカーボンレイアップによって、ハンガー部やメインピボット周辺の剛性強化を同時に達成した。
そして、新型SPARKの性能を大幅に押し上げるために用意されたコアテクノロジーが「トラニオンマウント」と呼ばれる新たなリアショックユニットのマウント規格である。従来のリアショックユニットがエンドアイを通して一本のボルトでマウントされるのに対し、トラニオンマウントはボディ側面に2つのアイレットを設けることでフレーム及びリンクにマウントするというもの。
このマウント形式の採用によって、得られるメリットは大きく3つ。1つはマウントの幅広化によるねじれ剛性の向上。2つ目はショックの設計自由度の向上、そして3つ目はより長いストローク量の獲得だ。従来のリアショックと上下マウント間の距離は同じだが、エンドアイの廃止によってデッドスペースがなくなったことにより、ストローク量を増やすことが可能となったのだ。
これらのメリットを活かすことで、XCレースマシンとして飛躍的な進化を遂げた新型SPARK。その基本設計はそのままに、セミファットタイヤを装備したのが、SPARK PLUSである。優れたペダリング効率やハンドリングを持つレーシングバイクの性能をトレイルライドの楽しみへとつなげた極上のアドベンチャーバイクである。
フロントトライアングルはスコットの誇るIMFカーボンを使用する一方、リアスイングアームはアルミ製となっている。これはスコットのフルサスセミファットバイクに共通する特徴。ホイールシステムの重量増加に対応するための素材採用となっているのだろう。
トレイルライドを楽しむためのバイクらしく、ドロッパーシートポストも標準装備している。安定した動作に定評のあるFOXのTransferを採用し、スムーズなポジションチェンジが可能となる。ドライブトレインはシマノXTで、フロントはダブル仕様となっている。
更に、スコットオリジナルのリモートロックアウトシステム「Twinloc」を採用。前後のサスペンションの動きを一つのレバーでコントロールすることが出来るようになっており、登りから下りまでシチュエーションに合わせたセッティングへと瞬時に変更できる。
レーシングバイクのエッセンスをセミファットタイヤで包んだ極上のトレイルバイク、スコット SPARK 710 PLUS。贅沢極まりないこの一台は、どんなシチュエーションで輝くのか。早速、インプレッションに移ろう。
ー インプレッション
「フルサス×プラス規格により幅広いシチュエーションで楽しめるバイクに」鈴木祐一(RiseRide)
めちゃくちゃ面白くって、楽しいバイクですね。フロント130mm、リア120mmというサスペンションの組み合わせは、どんな場所でもストローク量が足りなくなることはありませんし、逆に大きすぎてサスを動作させるのに体力が足りない、ということもありません。2.8インチというプラス規格のタイヤとも相まって実際の数値以上にストローク量があるように感じますし、そういったちょうど良さが、こういった自転車が現在流行ってきている理由でもあるんです。
SPARK 710 PLUSで一番印象的だったことは、前後ブースト規格であること、そしてトラニオンマウントとしたことでのリアの剛性が旧世代に比べて圧倒的に高まっている点。ねじれが抑えられているフィーリングが強く、リアサスが付いているのにハードテイルに乗っているかのようなリジット感を楽しめました。これまで一般的な下り系フルサスバイクはリアの挙動の掴みやすさ、取り回し、滑っている感じなどが0.5テンポくらい遅れていたように感じていたのですが、SPARK 710 PLUSではそうした遅れが最小限に留められているんです。この下側の剛性を高めたマウントは特に荒れ地を走った時、ジャンプを跳んだ後の着地などでの暴れを抑えてくれるため、まさに狙い通りの性能が出ているのかな、と考えました。
フレームをカーボン化することのメリットなのですが、フロントサスのストローク量が130mm程度あると、どうしてもハンドル高が上がってしまい、ポジション出しに苦労することがあるのですが、アルミに対してカーボンは強度が出せるため、ヘッドチューブが短くとも剛性が出るんですね。スパークのヘッドチューブは短く設定されているので、これはカーボンであることのメリットが出ている部分。更にブースト規格がプラスされているので、完成車として、そしてトータルパッケージとしてバランスと完成度が非常に高いのです。
また、プラス規格はどうしてもホイール外周部の重さが気になるのですが、SPARK 710 PLUSに関してはジオメトリーの設定によるものか、ハンドリングやブレーキング時のダルさを感じにくい。物理的な重さを感じさせない、つまりプラスにすることでのストレスを感じにくいので、他社に対して優位と言えそうです。
手元に装備されたTwinlocシステムもすごく好印象でした。サスのクラウンやリアサスまで手を伸ばして調整するのは面倒くさいし、それを片手で一気に操作できるシステムは何をどう考えても便利です。アップダウンが続くような場所では素早く切り替えができるため、面倒くさがってサボっていた調整をきちんと行うようになるでしょうし、それはつまりバイクの性能を最大限引き出せるということです。
走り面でのSPARK 710 PLUS一番の魅力は、サスペンションのストローク、プラス規格のタイヤ、そしてブースト規格の組み合わせによる下りの走破性です。もちろんエンデューロやパーク遊びにはもってこいなのですが、登りが重すぎることも全くありませんし、29erの軽いホイールと軽いタイヤを組み合わせれば、王滝の長く荒れた登りなどでは良く走ってくれると思うんですね。
MTBを気持ち良く楽しむことって、MTBスキルを上達する上での最大の近道なんです。26インチのリアリジッドバイク(=難しいバイク)でテクニックを磨くというストイックな方法もあるにはあるのですが、フルサス+プラス規格のスパークは幅広いシチュエーションで楽しさを感じることができるバイクです。どんな場所でも楽しめるバイクですから、最初の一台に選んで、スキルを伸ばしていく相棒にするのも良い付き合い方かもしれませんね。
スコット SPARK 710 PLUS
フレーム:フロント HMFカーボン+リア 6011アルミ合金
フォーク:FOX 34 Float Performance Elite Air FIT4
アッセンブルパーツ:シンクロス
コンポーネント:シマノXT
リムタイプ:チューブレスレディ
ハブ:BOOST規格
サイズ:S、M、L
重量:12.8kg
価格:625,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木祐一(RiseRide)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。シクロクロスやMTBなど、各種レースにも参戦している。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライドHP
ウェア協力:アソス
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
ここ数年のクロスカントリーレースシーンに君臨する王者といえば、スイスのニノ・シューターを置いて他にはいないだろう。5度に渡って世界選手権を制し、昨年ブラジルのリオデジャネイロで行われたオリンピックでも金メダルを獲得したトップレーサーだ。
その走りを支え続けてきたのが、シューターと同郷のスイスブランドであるスコットだ。今年、XCレーシングモデルを全面刷新したスコットのフルサスモデルがSPARKである。前モデルより多くの改良が加えられたSPARKだが、外見上のもっとも大きな変更点はサスペンションユニットのリンク方式だ。
前作ではトップチューブにマウントされていたリアのショックユニットは、今作では縦置き式へと変更された。ボトムブラケット直上に設置されたサスペンションマウントを補強するためのカーボンレイアップによって、ハンガー部やメインピボット周辺の剛性強化を同時に達成した。
そして、新型SPARKの性能を大幅に押し上げるために用意されたコアテクノロジーが「トラニオンマウント」と呼ばれる新たなリアショックユニットのマウント規格である。従来のリアショックユニットがエンドアイを通して一本のボルトでマウントされるのに対し、トラニオンマウントはボディ側面に2つのアイレットを設けることでフレーム及びリンクにマウントするというもの。
このマウント形式の採用によって、得られるメリットは大きく3つ。1つはマウントの幅広化によるねじれ剛性の向上。2つ目はショックの設計自由度の向上、そして3つ目はより長いストローク量の獲得だ。従来のリアショックと上下マウント間の距離は同じだが、エンドアイの廃止によってデッドスペースがなくなったことにより、ストローク量を増やすことが可能となったのだ。
これらのメリットを活かすことで、XCレースマシンとして飛躍的な進化を遂げた新型SPARK。その基本設計はそのままに、セミファットタイヤを装備したのが、SPARK PLUSである。優れたペダリング効率やハンドリングを持つレーシングバイクの性能をトレイルライドの楽しみへとつなげた極上のアドベンチャーバイクである。
フロントトライアングルはスコットの誇るIMFカーボンを使用する一方、リアスイングアームはアルミ製となっている。これはスコットのフルサスセミファットバイクに共通する特徴。ホイールシステムの重量増加に対応するための素材採用となっているのだろう。
トレイルライドを楽しむためのバイクらしく、ドロッパーシートポストも標準装備している。安定した動作に定評のあるFOXのTransferを採用し、スムーズなポジションチェンジが可能となる。ドライブトレインはシマノXTで、フロントはダブル仕様となっている。
更に、スコットオリジナルのリモートロックアウトシステム「Twinloc」を採用。前後のサスペンションの動きを一つのレバーでコントロールすることが出来るようになっており、登りから下りまでシチュエーションに合わせたセッティングへと瞬時に変更できる。
レーシングバイクのエッセンスをセミファットタイヤで包んだ極上のトレイルバイク、スコット SPARK 710 PLUS。贅沢極まりないこの一台は、どんなシチュエーションで輝くのか。早速、インプレッションに移ろう。
ー インプレッション
「フルサス×プラス規格により幅広いシチュエーションで楽しめるバイクに」鈴木祐一(RiseRide)
めちゃくちゃ面白くって、楽しいバイクですね。フロント130mm、リア120mmというサスペンションの組み合わせは、どんな場所でもストローク量が足りなくなることはありませんし、逆に大きすぎてサスを動作させるのに体力が足りない、ということもありません。2.8インチというプラス規格のタイヤとも相まって実際の数値以上にストローク量があるように感じますし、そういったちょうど良さが、こういった自転車が現在流行ってきている理由でもあるんです。
SPARK 710 PLUSで一番印象的だったことは、前後ブースト規格であること、そしてトラニオンマウントとしたことでのリアの剛性が旧世代に比べて圧倒的に高まっている点。ねじれが抑えられているフィーリングが強く、リアサスが付いているのにハードテイルに乗っているかのようなリジット感を楽しめました。これまで一般的な下り系フルサスバイクはリアの挙動の掴みやすさ、取り回し、滑っている感じなどが0.5テンポくらい遅れていたように感じていたのですが、SPARK 710 PLUSではそうした遅れが最小限に留められているんです。この下側の剛性を高めたマウントは特に荒れ地を走った時、ジャンプを跳んだ後の着地などでの暴れを抑えてくれるため、まさに狙い通りの性能が出ているのかな、と考えました。
フレームをカーボン化することのメリットなのですが、フロントサスのストローク量が130mm程度あると、どうしてもハンドル高が上がってしまい、ポジション出しに苦労することがあるのですが、アルミに対してカーボンは強度が出せるため、ヘッドチューブが短くとも剛性が出るんですね。スパークのヘッドチューブは短く設定されているので、これはカーボンであることのメリットが出ている部分。更にブースト規格がプラスされているので、完成車として、そしてトータルパッケージとしてバランスと完成度が非常に高いのです。
また、プラス規格はどうしてもホイール外周部の重さが気になるのですが、SPARK 710 PLUSに関してはジオメトリーの設定によるものか、ハンドリングやブレーキング時のダルさを感じにくい。物理的な重さを感じさせない、つまりプラスにすることでのストレスを感じにくいので、他社に対して優位と言えそうです。
手元に装備されたTwinlocシステムもすごく好印象でした。サスのクラウンやリアサスまで手を伸ばして調整するのは面倒くさいし、それを片手で一気に操作できるシステムは何をどう考えても便利です。アップダウンが続くような場所では素早く切り替えができるため、面倒くさがってサボっていた調整をきちんと行うようになるでしょうし、それはつまりバイクの性能を最大限引き出せるということです。
走り面でのSPARK 710 PLUS一番の魅力は、サスペンションのストローク、プラス規格のタイヤ、そしてブースト規格の組み合わせによる下りの走破性です。もちろんエンデューロやパーク遊びにはもってこいなのですが、登りが重すぎることも全くありませんし、29erの軽いホイールと軽いタイヤを組み合わせれば、王滝の長く荒れた登りなどでは良く走ってくれると思うんですね。
MTBを気持ち良く楽しむことって、MTBスキルを上達する上での最大の近道なんです。26インチのリアリジッドバイク(=難しいバイク)でテクニックを磨くというストイックな方法もあるにはあるのですが、フルサス+プラス規格のスパークは幅広いシチュエーションで楽しさを感じることができるバイクです。どんな場所でも楽しめるバイクですから、最初の一台に選んで、スキルを伸ばしていく相棒にするのも良い付き合い方かもしれませんね。
スコット SPARK 710 PLUS
フレーム:フロント HMFカーボン+リア 6011アルミ合金
フォーク:FOX 34 Float Performance Elite Air FIT4
アッセンブルパーツ:シンクロス
コンポーネント:シマノXT
リムタイプ:チューブレスレディ
ハブ:BOOST規格
サイズ:S、M、L
重量:12.8kg
価格:625,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木祐一(RiseRide)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。シクロクロスやMTBなど、各種レースにも参戦している。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライドHP
ウェア協力:アソス
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
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