2017/04/20(木) - 07:56
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が前人未到のラ・フレーシュ・ワロンヌ4連覇。最大勾配26%の「ユイの壁」を最速で駆け上がった36歳が自身5度目のフレーシュ制覇を果たした。
ベルギーのワロン地域を駆け抜けるラ・フレーシュ・ワロンヌが4月19日(水)に開催された。好天に見舞われたものの気温は低め。バンシュをスタートしてしばらくすると、先頭ではニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)を含む6名の逃げが形成された。
おもにモビスターがメイン集団の先頭に立って逃げグループとのタイム差をコントロール。別府史之(トレック・セガフレード)と新城幸也(バーレーン・メリダ)も集団前方をキープし、それぞれエースをサポートする。合計3回通過する「ユイの壁(ミュール・ド・ユイ:1300m/9.6%)」を越えて周回コース(全長29km x 2周)に入ると、タイム差は1分にまで縮まった。
周回コースには「ユイの壁」の他にもコート・デレッフ(2100m/5%)とコート・ド・シュラーブ(1300m/8.1%)が設定されており、フィニッシュまで45kmを残したコート・デレッフでアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)がアタックするとメイン集団は活性化。デマルキのアタックはモビスター勢のチェックによって封じ込められる。
続くコート・ド・シュラーブで序盤からの逃げが吸収されると再びデマルキが動いた。これまでのクラシックレースと同様にBMCレーシングが早めに仕掛けてライバルチームの様子を伺う展開。独走に持ち込んだデマルキは2回目の「ユイの壁」をクリアしていく。
すると、20秒先を走るデマルキに向かって、「ユイの壁」の頂上通過後にボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)がカウンターアタック。24歳のルクセンブルクチャンピオンは残り25km地点で先頭デマルキにジョインし、メイン集団に対して30秒リードをもってタンデム走行を開始した。
やがてデマルキを振り切ったユンゲルスがTTポジションで快走。ユンゲルスはメイン集団とのタイム差をむしろ広げる走りを見せ、50秒リードでコート・ド・シュラーブに挑む。ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)らのアタックによって人数を減らしたメイン集団にタイム差を詰められながらも、ユンゲルスは30秒リードのまま残り5.5km地点のコート・ド・シュラーブ頂上を越えた。
独走逃げ切りに注目が集まったが、激しくポジション争いを繰り広げるメイン集団の勢いがユンゲルスのリードを奪った。チームスカイやモビスターを先頭にハイスピードで最後の「ユイの壁」に突入したメイン集団が先頭ユンゲルスをキャッチ。フィニッシュラインに至る最大勾配26%の激坂バトルが始まった。力走したユンゲルスは「勢いよく飛び出したものの、まだまだフレッシュな選手が多く集団内にいたので、フィニッシュまで逃げ切ることは不可能だった。結果には結びつかなかったものの、脚の調子には満足しているし、このアルデンヌでの走りはジロ・デ・イタリアにつながると思う」とコメントしている。
最も勾配のある連続ヘアピンを前にバルベルデが先頭に立ち、ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)やミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)らと横並びで激坂を駆け上がる。フィニッシュまで200mを残したタイミングで最初に仕掛けたのは20歳ダヴィ・ゴデュ(フランス、エフデジ)。プロ1年目のルーキーのアタックに、バルベルデが迷うことなく反応した。
残り150mで踏み直し、ゴデュの後ろから爆発的な加速を開始したバルベルデに対抗できる選手はいなかった。勾配を感じさせない安定したフォームで踏むバルベルデがライバルたちを大きく引き離す。「今日はアレハンドロ(バルベルデ)の番手につける作戦だったけど、位置取りが悪くて後方からの追い上げを強いられた」というダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)が2番手に浮上したが、早々に勝利を確信したバルベルデはフィニッシュラインを前に両手を広げた。
2006年に初勝利を飾り、2014年から3年連続優勝を果たしていたバルベルデが大会4連覇&5度目の優勝。「多くの選手が一つの勝利を目指して競り合う中から抜け出すのは簡単なことじゃない。この勝利は身体的な強さと精神的な自信、そしてチームのサポートの賜物。強力なライバルたちをリスペクトしながらも、自分のコンディションには絶対の自信があった。正直に言って、このコースは自分のために作られたんじゃないかと思うほど自分向きなんだ」というバルベルデがライバルたちを寄せ付けなかった。
「残り50kmを切ってからクイックステップとBMCがアタックを繰り返したものの、モビスターはオリカと協力してタイム差を抑え込んだ。そしてロハスとモレーノのアシストによって完璧な位置でユイの登坂を開始したんだ。状況をコントロール下に置き、自分のペースで走るため、上り中腹にある連続ヘアピンで前に出た。ゴデュのアタックに反応し、そこから躊躇うことなくスプリントを開始。映像では軽々と上って勝利したように見えたかもしれないけど、ユイの激坂はいつだって厳しい。勝利に秘密なんてない。完璧なコンディションに自信を持って、ライバルの攻撃に反応し、最後に仕掛けるだけ。誰も4勝を飾ったことがなかったレースで5勝を記録することができた。この最多勝記録は長く更新されることはないと思う(チーム公式サイト)」。
2016年に4勝目を飾ってエディ・メルクス(ベルギー)らがもつ3勝の記録を塗り替えたバルベルデ。もちろん日曜日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも優勝候補に名前が挙がる。バルベルデは「今週末のリエージュも好きなレースであり、過去に3回勝っている。コンディションは最高とも言える状態だけど、まずはこのフレーシュの勝利を堪能してから次戦のことを考えるよ」とコメントしている。
アシストとして終盤までエースをサポートした新城と別府はそれぞれ102位と153位でフィニッシュ。新城は「周回コースに入ってからはイザギレを良い状態で最後の登りに入れるために動いた。アムステルからしっかり回復することができて、今日は役割を果たすことができ、監督からも評価してもらった(チームユキヤ通信)」と語っている。
ラ・フレーシュ・ワロンヌ2017結果
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 5h15'37"
2位 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ) +01"
3位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシング)
4位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)
5位 ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット)
6位 ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)
7位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)
8位 ルディ・モラール(フランス、エフデジ)
9位 ダヴィ・ゴデュ(フランス、エフデジ)
10位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
102位 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) +2'46"
153位 別府史之(日本、トレック・セガフレード) +12'40"
text:Kei Tsuji
photo:TDWsport
ベルギーのワロン地域を駆け抜けるラ・フレーシュ・ワロンヌが4月19日(水)に開催された。好天に見舞われたものの気温は低め。バンシュをスタートしてしばらくすると、先頭ではニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)を含む6名の逃げが形成された。
おもにモビスターがメイン集団の先頭に立って逃げグループとのタイム差をコントロール。別府史之(トレック・セガフレード)と新城幸也(バーレーン・メリダ)も集団前方をキープし、それぞれエースをサポートする。合計3回通過する「ユイの壁(ミュール・ド・ユイ:1300m/9.6%)」を越えて周回コース(全長29km x 2周)に入ると、タイム差は1分にまで縮まった。
周回コースには「ユイの壁」の他にもコート・デレッフ(2100m/5%)とコート・ド・シュラーブ(1300m/8.1%)が設定されており、フィニッシュまで45kmを残したコート・デレッフでアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)がアタックするとメイン集団は活性化。デマルキのアタックはモビスター勢のチェックによって封じ込められる。
続くコート・ド・シュラーブで序盤からの逃げが吸収されると再びデマルキが動いた。これまでのクラシックレースと同様にBMCレーシングが早めに仕掛けてライバルチームの様子を伺う展開。独走に持ち込んだデマルキは2回目の「ユイの壁」をクリアしていく。
すると、20秒先を走るデマルキに向かって、「ユイの壁」の頂上通過後にボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)がカウンターアタック。24歳のルクセンブルクチャンピオンは残り25km地点で先頭デマルキにジョインし、メイン集団に対して30秒リードをもってタンデム走行を開始した。
やがてデマルキを振り切ったユンゲルスがTTポジションで快走。ユンゲルスはメイン集団とのタイム差をむしろ広げる走りを見せ、50秒リードでコート・ド・シュラーブに挑む。ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)らのアタックによって人数を減らしたメイン集団にタイム差を詰められながらも、ユンゲルスは30秒リードのまま残り5.5km地点のコート・ド・シュラーブ頂上を越えた。
独走逃げ切りに注目が集まったが、激しくポジション争いを繰り広げるメイン集団の勢いがユンゲルスのリードを奪った。チームスカイやモビスターを先頭にハイスピードで最後の「ユイの壁」に突入したメイン集団が先頭ユンゲルスをキャッチ。フィニッシュラインに至る最大勾配26%の激坂バトルが始まった。力走したユンゲルスは「勢いよく飛び出したものの、まだまだフレッシュな選手が多く集団内にいたので、フィニッシュまで逃げ切ることは不可能だった。結果には結びつかなかったものの、脚の調子には満足しているし、このアルデンヌでの走りはジロ・デ・イタリアにつながると思う」とコメントしている。
最も勾配のある連続ヘアピンを前にバルベルデが先頭に立ち、ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)やミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)らと横並びで激坂を駆け上がる。フィニッシュまで200mを残したタイミングで最初に仕掛けたのは20歳ダヴィ・ゴデュ(フランス、エフデジ)。プロ1年目のルーキーのアタックに、バルベルデが迷うことなく反応した。
残り150mで踏み直し、ゴデュの後ろから爆発的な加速を開始したバルベルデに対抗できる選手はいなかった。勾配を感じさせない安定したフォームで踏むバルベルデがライバルたちを大きく引き離す。「今日はアレハンドロ(バルベルデ)の番手につける作戦だったけど、位置取りが悪くて後方からの追い上げを強いられた」というダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)が2番手に浮上したが、早々に勝利を確信したバルベルデはフィニッシュラインを前に両手を広げた。
2006年に初勝利を飾り、2014年から3年連続優勝を果たしていたバルベルデが大会4連覇&5度目の優勝。「多くの選手が一つの勝利を目指して競り合う中から抜け出すのは簡単なことじゃない。この勝利は身体的な強さと精神的な自信、そしてチームのサポートの賜物。強力なライバルたちをリスペクトしながらも、自分のコンディションには絶対の自信があった。正直に言って、このコースは自分のために作られたんじゃないかと思うほど自分向きなんだ」というバルベルデがライバルたちを寄せ付けなかった。
「残り50kmを切ってからクイックステップとBMCがアタックを繰り返したものの、モビスターはオリカと協力してタイム差を抑え込んだ。そしてロハスとモレーノのアシストによって完璧な位置でユイの登坂を開始したんだ。状況をコントロール下に置き、自分のペースで走るため、上り中腹にある連続ヘアピンで前に出た。ゴデュのアタックに反応し、そこから躊躇うことなくスプリントを開始。映像では軽々と上って勝利したように見えたかもしれないけど、ユイの激坂はいつだって厳しい。勝利に秘密なんてない。完璧なコンディションに自信を持って、ライバルの攻撃に反応し、最後に仕掛けるだけ。誰も4勝を飾ったことがなかったレースで5勝を記録することができた。この最多勝記録は長く更新されることはないと思う(チーム公式サイト)」。
2016年に4勝目を飾ってエディ・メルクス(ベルギー)らがもつ3勝の記録を塗り替えたバルベルデ。もちろん日曜日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも優勝候補に名前が挙がる。バルベルデは「今週末のリエージュも好きなレースであり、過去に3回勝っている。コンディションは最高とも言える状態だけど、まずはこのフレーシュの勝利を堪能してから次戦のことを考えるよ」とコメントしている。
アシストとして終盤までエースをサポートした新城と別府はそれぞれ102位と153位でフィニッシュ。新城は「周回コースに入ってからはイザギレを良い状態で最後の登りに入れるために動いた。アムステルからしっかり回復することができて、今日は役割を果たすことができ、監督からも評価してもらった(チームユキヤ通信)」と語っている。
ラ・フレーシュ・ワロンヌ2017結果
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 5h15'37"
2位 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ) +01"
3位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシング)
4位 セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)
5位 ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット)
6位 ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)
7位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)
8位 ルディ・モラール(フランス、エフデジ)
9位 ダヴィ・ゴデュ(フランス、エフデジ)
10位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
102位 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) +2'46"
153位 別府史之(日本、トレック・セガフレード) +12'40"
text:Kei Tsuji
photo:TDWsport
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