2017/04/06(木) - 15:16
スプリンターのためのクラシックとして知られるシュヘルデプライスがベルギー・フランドル地方で開催。ベルギー国内最後のレースとなるトム・ボーネンのために大会は大きく変わった。レースはマルセル・キッテルが5度目の勝利を果たし大会最多勝記録を達成した。
今年で第105回の開催を迎えるシュヘルデプライスは、毎年ロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベに挟まれた水曜日に開催される伝統あるクラシックレース。UCIのレースカテゴリーはUCIワールドツアーの一つ下のHC(超級)だが、ロンド(1913年初開催)よりも歴史が古く、フランドル地方の中で最古のロードレースとされる。レースを主催するのはロンドやオンループ・ヘット・ニュースブラッドやドワーズ・ドール・フラーンデレン、ヘント〜ウェヴェルヘム、ブラバンツペイルと同じ「フランダース・クラシックス」だ。
■ボーネンのためのフェアウェルレース 故郷モルがスタートに
今年、レースコースには大きな変更が加わえられた。このレースがパリ〜ルーベ前の最後のレースとなるトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップフロアーズ)のホームタウンであるモルがスタート地点となったのだ。例年のスタート地点だったアントワープから東に60km。これがベルギー国内で走る最後のレースとなるボーネンのために、人口3万3千人のこの小さな町にスタート地点を変更したのだ。
スタート前のチームプレゼンテーションにおいても、ステージはボーネンのためのフェアウェルセレモニーの場となった。13歳の頃にロンドを観て自転車レースに目覚めてから、ジュニア時代より地元の人々の期待を集める活躍を続けてきたボーネン。その成長を見守り、支援してきた人たちの挨拶が続く。町からは今までの活躍に対する感謝を込めた記念品が贈られた。町の英雄に、モルじゅうの住民たちが機会をつくったのだ。ボーネンは、伝統の大会がコースを変更するほどのベルギーの国民的ヒーローであることがよくわかるエピソードだ。
3日前のロンド・ファン・フラーンデレンで落車したペーター・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)とオリバー・ナーセン(アージェードゥーゼル)もスタートする。このレースはパリ~ルーベに出場する選手たちの調整レースとしての役割も担っているのだ。
モルからのニュートラル走行を経て、町の中心から9.5km離れたボーネンの祖父レイモンド・ボーネンさんの自宅前が0kmの公式スタート地点となった。コース沿道でレイモンドおじいちゃんがスタートフラッグを振り、レースはスタート。プロトンは運河や湖に恵まれた美しい街の郊外をぐるりと周り、再びモル中心部を通過する小周回が設定された。23km地点ではボーネンの自宅前を通過。レース序盤はボーネンのためのパレードとなった。沿道のあちこちに、TOMMEKE(トメケ=ボーネンの愛称)、BEDANKT(感謝)TOM などのメッセージが掲げられた。
逃げ集団もメイン集団もクルーズモードに入り、その差は約5分ほどで前後する。こういった展開は近年のシュヘルデプライスの典型的なもの。向かうフィニッシュ地点は変わらずシュコーテンの街で、最後の周回サーキット3周も従来どおり。大部分今までとまったく違う新コースを走りながらも、平野部の続くアントウェルペン州だけにこのコース変更もレース展開には大きく影響しないようだ。
晴れたものの約11℃ほどと気温が低かったこの日、ウェアを脱ぎ着する選手たちが受け渡しのために頻繁にサポートカーを往復する。またパリ~ルーベに備えパヴェ用のタイヤやディスクブレーキ仕様のバイクを慣らす目的の選手も多くみられた。
レースはシュコーテンの街に設置されたフィニッシュ地点をいったん通過すると、16.8km周回を3周回する。距離が短く難易度も低いながらもパヴェ区間「ブロークストラート」も3度通過することになる。ここまで逃げた7人とメイン集団の差は1分40秒と、大集団が容易にコントロールできる範囲内。残り19kmで逃げは集団に飲み込まれた。
ラスト8kmでクイックステップフロアーズが前に集まる。パヴェで前を引いたゼネク・スティバルに続き、ボーネンが力強いペダリングで集団を牽引するハイペースをつくった。サンウェブ、FDJ、ボーラ・ハンスグローエらが抵抗を試みるが、ボーネンとパリ~ルーベを睨んだチーム構成でも脚の揃ったクイックステップ勢は強さを見せた。
ペースが上がり続けるラスト4kmの集団前方で落車が発生。10人ほどの選手がクラッシュしたが、その影響を受けたのがアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)。転倒は免れたものの戦線を離脱してしまう。そしてサガンもチームの先頭を引きを終えると、リスクを避けるためにスローダウンした。
5勝目のかかったマルセル・キッテルはクイックステップのチームメイトたちに護られ、フィニッシュへと向かう。長い直線の最後はマッテオ・トレンティン(イタリア)がキッテルをパーフェクトに牽引した。
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)が最後まで抵抗するが、キッテルは余裕をもってスプリントを制した。
2015年は病気のため欠場したが、2012、2013、2014、2016年にもこのシュヘルデプライスに勝っているキッテルはこの勝利が5勝目で、大会最多勝記録となる。
「リビングルームに飾るシュヘルデのトロフィーがまたひとつ増えた。チームワークは素晴らしかった。ボーネンが最後は強く、彼に助けてもらったことは嬉しいね。サバティーニは落車してしまったけど、最後はトレンティンがとてもスマートにリードしてくれた。このレースは大好きなレースの一つなんだ。ここスコーテンで素晴らしい観客たちの前で勝って記録をつくれたのは本当に嬉しい」とキッテルは言う。また、この後のスケジュールとしてはジロ・デ・イタリアはスキップし、ツアー・オブ・カリフォルニアへ出場。そしてツール・ド・フランスに照準を併せていくと話した。
シュヘルデプライス2017リザルト
1位 マルセル・キッテル(ドイツ・クイックステップフロアーズ) 4h35'25"
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)+0"
3位 ナセル・ブアニ(フランス・コフィディス)
4位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)
5位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
6位 ルディ・バルビエ(フランス、アージェーデュゼール・ラモンディアール)
7位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)
8位 マルク・サロー(フランス、FDJ)
9位 ラモン・シンケルダム(オランダ、チームサンウェブ)
10位 ヨナス・ファンヘネヒテン(ベルギー、コフィディス)
photo&text:Makoto.AYANO in Gent, Belgium
今年で第105回の開催を迎えるシュヘルデプライスは、毎年ロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベに挟まれた水曜日に開催される伝統あるクラシックレース。UCIのレースカテゴリーはUCIワールドツアーの一つ下のHC(超級)だが、ロンド(1913年初開催)よりも歴史が古く、フランドル地方の中で最古のロードレースとされる。レースを主催するのはロンドやオンループ・ヘット・ニュースブラッドやドワーズ・ドール・フラーンデレン、ヘント〜ウェヴェルヘム、ブラバンツペイルと同じ「フランダース・クラシックス」だ。
■ボーネンのためのフェアウェルレース 故郷モルがスタートに
今年、レースコースには大きな変更が加わえられた。このレースがパリ〜ルーベ前の最後のレースとなるトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップフロアーズ)のホームタウンであるモルがスタート地点となったのだ。例年のスタート地点だったアントワープから東に60km。これがベルギー国内で走る最後のレースとなるボーネンのために、人口3万3千人のこの小さな町にスタート地点を変更したのだ。
スタート前のチームプレゼンテーションにおいても、ステージはボーネンのためのフェアウェルセレモニーの場となった。13歳の頃にロンドを観て自転車レースに目覚めてから、ジュニア時代より地元の人々の期待を集める活躍を続けてきたボーネン。その成長を見守り、支援してきた人たちの挨拶が続く。町からは今までの活躍に対する感謝を込めた記念品が贈られた。町の英雄に、モルじゅうの住民たちが機会をつくったのだ。ボーネンは、伝統の大会がコースを変更するほどのベルギーの国民的ヒーローであることがよくわかるエピソードだ。
3日前のロンド・ファン・フラーンデレンで落車したペーター・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)とオリバー・ナーセン(アージェードゥーゼル)もスタートする。このレースはパリ~ルーベに出場する選手たちの調整レースとしての役割も担っているのだ。
モルからのニュートラル走行を経て、町の中心から9.5km離れたボーネンの祖父レイモンド・ボーネンさんの自宅前が0kmの公式スタート地点となった。コース沿道でレイモンドおじいちゃんがスタートフラッグを振り、レースはスタート。プロトンは運河や湖に恵まれた美しい街の郊外をぐるりと周り、再びモル中心部を通過する小周回が設定された。23km地点ではボーネンの自宅前を通過。レース序盤はボーネンのためのパレードとなった。沿道のあちこちに、TOMMEKE(トメケ=ボーネンの愛称)、BEDANKT(感謝)TOM などのメッセージが掲げられた。
逃げ集団もメイン集団もクルーズモードに入り、その差は約5分ほどで前後する。こういった展開は近年のシュヘルデプライスの典型的なもの。向かうフィニッシュ地点は変わらずシュコーテンの街で、最後の周回サーキット3周も従来どおり。大部分今までとまったく違う新コースを走りながらも、平野部の続くアントウェルペン州だけにこのコース変更もレース展開には大きく影響しないようだ。
晴れたものの約11℃ほどと気温が低かったこの日、ウェアを脱ぎ着する選手たちが受け渡しのために頻繁にサポートカーを往復する。またパリ~ルーベに備えパヴェ用のタイヤやディスクブレーキ仕様のバイクを慣らす目的の選手も多くみられた。
レースはシュコーテンの街に設置されたフィニッシュ地点をいったん通過すると、16.8km周回を3周回する。距離が短く難易度も低いながらもパヴェ区間「ブロークストラート」も3度通過することになる。ここまで逃げた7人とメイン集団の差は1分40秒と、大集団が容易にコントロールできる範囲内。残り19kmで逃げは集団に飲み込まれた。
ラスト8kmでクイックステップフロアーズが前に集まる。パヴェで前を引いたゼネク・スティバルに続き、ボーネンが力強いペダリングで集団を牽引するハイペースをつくった。サンウェブ、FDJ、ボーラ・ハンスグローエらが抵抗を試みるが、ボーネンとパリ~ルーベを睨んだチーム構成でも脚の揃ったクイックステップ勢は強さを見せた。
ペースが上がり続けるラスト4kmの集団前方で落車が発生。10人ほどの選手がクラッシュしたが、その影響を受けたのがアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)。転倒は免れたものの戦線を離脱してしまう。そしてサガンもチームの先頭を引きを終えると、リスクを避けるためにスローダウンした。
5勝目のかかったマルセル・キッテルはクイックステップのチームメイトたちに護られ、フィニッシュへと向かう。長い直線の最後はマッテオ・トレンティン(イタリア)がキッテルをパーフェクトに牽引した。
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)が最後まで抵抗するが、キッテルは余裕をもってスプリントを制した。
2015年は病気のため欠場したが、2012、2013、2014、2016年にもこのシュヘルデプライスに勝っているキッテルはこの勝利が5勝目で、大会最多勝記録となる。
「リビングルームに飾るシュヘルデのトロフィーがまたひとつ増えた。チームワークは素晴らしかった。ボーネンが最後は強く、彼に助けてもらったことは嬉しいね。サバティーニは落車してしまったけど、最後はトレンティンがとてもスマートにリードしてくれた。このレースは大好きなレースの一つなんだ。ここスコーテンで素晴らしい観客たちの前で勝って記録をつくれたのは本当に嬉しい」とキッテルは言う。また、この後のスケジュールとしてはジロ・デ・イタリアはスキップし、ツアー・オブ・カリフォルニアへ出場。そしてツール・ド・フランスに照準を併せていくと話した。
シュヘルデプライス2017リザルト
1位 マルセル・キッテル(ドイツ・クイックステップフロアーズ) 4h35'25"
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)+0"
3位 ナセル・ブアニ(フランス・コフィディス)
4位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)
5位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
6位 ルディ・バルビエ(フランス、アージェーデュゼール・ラモンディアール)
7位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)
8位 マルク・サロー(フランス、FDJ)
9位 ラモン・シンケルダム(オランダ、チームサンウェブ)
10位 ヨナス・ファンヘネヒテン(ベルギー、コフィディス)
photo&text:Makoto.AYANO in Gent, Belgium
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