2009/11/20(金) - 00:22
2009ツール・ド・フランスでアルベルト・コンタドールやランス・アームストロングの熱い走りを支えたMadone6シリーズが、2010モデルとして登場した。全体で150gの軽量化を施しながら、ヘッドまわりの強度は17%も向上しているという新型Madone。その実力は想像以上のものだった。
アルベルト・コンタドールやランス・アームストロングを始めとするアスタナチームのメインバイクとしてあまりにも有名なトレック Madone6シリーズであるが、その名声は何も彼ら優れたレーサー達だけが作り上げたものではない。Madone自身が優れた資質を秘めているからこそ、世界中のバイクファンが賞賛し続けているのである。
2010年モデルのMadone6シリーズは、さらなる進化を遂げた。OCLVレッドのフレームには「OCLV2」という新技術が投入され、軽量化と高剛性化を同時に実現しているのだ。2つのカーボンラグを余分な厚みを増すことなくオーバーラップさせる「ステップジョイントテクノロジー」、軍事/航空用素材であるHex MCを使用して、BBのベアリング受けをカーボンフレームの一部として成形した「ネットモールディング製法」、カーボン繊維に対するレジンの配合比率を正確に制御する「レジンライト」など、他社がマネをできない先進の機能が満載である。
フォークとシートマストはデザインを刷新した。これまでフォーク上部に取り付けられていたカバーが省略され、より滑らかで美しいデザインを手に入れている。重量的にも2009年のフォークより30gの軽量化を達成し、横方向の剛性を20%アップさせている。シートマストはこれまでのエアロ形状からラウンド形状となり、30gの軽量化を実現するとともに、縦方向の柔軟性を47%改善している。また、ラウンド形状のシートマストにより、エアロ形状の時にはサドルクランプ部で調整していた左右の角度を、シートマストのクランプにより簡単に調整できるようになった。細かなことではあるが、大きな改善点である。
デュオトラップセンサーをフレーム内部に組み込み、ボントレガーを始めとしてガーミン、パワータップ、SRMなど、共通規格であるANT+に対応したセンサーが内蔵可能となった。外観的にシンプルでスマートになるのはもちろんのこと、空気抵抗の低減という点においても大幅な進歩をしたと言えるだろう。
また、新ケーブルシステムの採用により、シフト、ブレーキともにワイヤーの抵抗が小さくなり、淀みないシフティングとブレーキングを可能にしている。さらにシマノDi2電動変速器に対応したバッテリーマウントやケーブルストップも装備し、Di2ファンにもありがたい設計となっている。
さて、この新しくなったマドン6シリーズを、酸いも甘いも噛み分けたインプレライダー両氏はどう評価したのだろうか? さっそくインプレをお届けしよう。
― インプレッション
「現在考えうるパーフェクトレーサーだ!」 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
まず、踏み出しからスーッと加速していくフィーリングに驚いた。こんなに軽い踏み出しのバイクは他に経験したことがない。続いて低速からのダッシュ、中速からのダッシュなど、色々なシチュエーションを想定して走り込んでみたが、あらゆる速度領域において素晴らしい加速感を見せてくれた。本当に素晴らしいフィーリングのバイクだ。
中でも感心したのが、ダンシング時の伸びの良さである。ちょっとした上りでダンシングをしてグイグイ踏み込むと、まったくパワーをムダにすることなく推進力に変換してくれることを感じ取れる。実に気持ちよく上ってくれるバイクだ。
ハンドリングも軽快で、ものすごく良い! コーナリングでは思い通りのラインで曲がることができ、高速の下りでも安定しているし、クイックなハンドリングも得意だ。この点に関しても、文句のつけようがない。
この手のレーシングバイクとしては、振動吸収性も良い方だ。乗っていて、路面の凹凸が気になるようなことはなかった。素晴らしい味付けである。
強いて難点を挙げるとすれば、ワイヤー類の処理が個人的にあまり好きではない。内蔵処理などせず、普通のワイヤー処理をした方が良かったと思う。またシートマストの処理もあまり意味を感じない。普通のインテグラルシートポストにした方が、ずっと合理的であるように思う。
また、アッセンブルされていたボントレガーのカーボンホイールの音鳴りが少々気になった。おそらくスポークがリム穴部で擦れてた音が空洞部で反響しているせいだと思うが、まあ慣れてしまえば愛嬌といったところか。
これら難点はあるものの、このバイクの素晴らしさからみれば、本当に些細なことだ。とにかく、この性能の素晴らしさには圧倒される。
個人的にはトレックが特に好きなブランドという訳ではないので、手放しで誉めるのはちょっと悔しいのだが、それでもこの高性能は認めざるを得ない。現在考え得るパーフェクトレーサーだと言うことができる。
用途としてはやはりレースが一番だが、ツーリングで使ってもこの高性能は十分に生きるはずだ。このバイクに乗って文句が出る人なんていないんじゃないだろうか?
「あらゆる性能を満たしたドリームバイク」 三上和志(サイクルハウス ミカミ)
乗った瞬間からフワッと進むバイクだ。「あれっ? まだペダルに力を入れていないのに!」という感じだ。こんなに踏み出しの軽いバイクは他にないだろう。中→高速の伸びも素晴らしく、伸びやかにスピードに乗ってくれる。まるで背中を押されているかのような印象だった。
続いてコーナーを攻めてみたが、高速コーナーでもラインの修正が思いのままだし、クイックなハンドル操作もたやすくできる。なのに安定感も十分にあって、実に不思議なバイクだ。相反する要素をこんなに高次元で両立させていることに驚きを隠せなかった。
加速の良さからして、振動吸収性にはまったく期待していなかったのに、この点に関しても素晴らしい性能を発揮してくれた。ハイエンドのレーシングバイクとしては、振動吸収性もかなり良い部類に入る。ハイスピードの下りコーナーやフルブレーキングなどでは、フォークがしなやかに路面に吸い付いてくれて、何ら緊張感を強いられることがないのだ。
個人的な好みから言うと、付属していたボントレガーのカーボン用ブレーキシューのフィーリングがあまり好きではなかった。高速では良いのだが、低速時のコントロールがちょっとダルな印象だったのだ。私ならスイスストップのシューに交換するだろう。
プロジェクトワンでカラーリングが思いのままにオーダーできるという点も素晴らしい。趣味の自転車として、これはとても重要な部分だ。小さなメーカーにもできないことを、大メーカーのトレックができてしまうということに驚かされる。
BBのベアリングの精度なんかも本当にスゴイ! レースから週末のロングライドまで、サーキットでのエンデューロからヒルクライムまで、誰が乗っても文句が出ないだろう。あらゆる性能を完璧に満たしたドリームバイクである。あまりにも優等生過ぎで逆にオモシロくないとも言えるが、とにかく乗っていて楽しいバイクだ。
このバイクを買うだけの経済的な余裕のある人ならば、これを買っておけば間違いない!
Madone 6.9
フレーム OCLVレッドカーボン、デュオトラップコンパーチブル
フォーク ボントレガー・レースXXXライト w/E2フルカーボンステアラー
メインコンポ シマノ・デュラエース
ホイール ボントレガー・アイオロス5.0
タイヤ ボントレガー・レースXライトAC 700×23C
ハンドル ボントレガー・レースXXXライト VR OS
ステム ボントレガー・レースXXXライト
サドル ボントレガー・インフォームレースXライト
カラー グロスブラック×グロスホワイト、マットブラック×プラチナム、グロスオニキス×カタリストグリーン、プラシッドブルー×グロスホワイト、グロスカタリストオレンジ×ホワイト(以上金額変更なし)、シグネチャーモデル、プロジェクトワン(以上アップチャージあり)
サイズ 50、52、54、56、58、60、62cm
希望小売価格(税込み) 1,050,000円(デュラエース完成車)
― インプレライダーのプロフィール
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
サイクルポイント オーベスト
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
ウェア協力:マヴィック
アイウェア協力:オークリー・ジャパン
edit:仲沢 隆
photo:綾野 真
アルベルト・コンタドールやランス・アームストロングを始めとするアスタナチームのメインバイクとしてあまりにも有名なトレック Madone6シリーズであるが、その名声は何も彼ら優れたレーサー達だけが作り上げたものではない。Madone自身が優れた資質を秘めているからこそ、世界中のバイクファンが賞賛し続けているのである。
2010年モデルのMadone6シリーズは、さらなる進化を遂げた。OCLVレッドのフレームには「OCLV2」という新技術が投入され、軽量化と高剛性化を同時に実現しているのだ。2つのカーボンラグを余分な厚みを増すことなくオーバーラップさせる「ステップジョイントテクノロジー」、軍事/航空用素材であるHex MCを使用して、BBのベアリング受けをカーボンフレームの一部として成形した「ネットモールディング製法」、カーボン繊維に対するレジンの配合比率を正確に制御する「レジンライト」など、他社がマネをできない先進の機能が満載である。
フォークとシートマストはデザインを刷新した。これまでフォーク上部に取り付けられていたカバーが省略され、より滑らかで美しいデザインを手に入れている。重量的にも2009年のフォークより30gの軽量化を達成し、横方向の剛性を20%アップさせている。シートマストはこれまでのエアロ形状からラウンド形状となり、30gの軽量化を実現するとともに、縦方向の柔軟性を47%改善している。また、ラウンド形状のシートマストにより、エアロ形状の時にはサドルクランプ部で調整していた左右の角度を、シートマストのクランプにより簡単に調整できるようになった。細かなことではあるが、大きな改善点である。
デュオトラップセンサーをフレーム内部に組み込み、ボントレガーを始めとしてガーミン、パワータップ、SRMなど、共通規格であるANT+に対応したセンサーが内蔵可能となった。外観的にシンプルでスマートになるのはもちろんのこと、空気抵抗の低減という点においても大幅な進歩をしたと言えるだろう。
また、新ケーブルシステムの採用により、シフト、ブレーキともにワイヤーの抵抗が小さくなり、淀みないシフティングとブレーキングを可能にしている。さらにシマノDi2電動変速器に対応したバッテリーマウントやケーブルストップも装備し、Di2ファンにもありがたい設計となっている。
さて、この新しくなったマドン6シリーズを、酸いも甘いも噛み分けたインプレライダー両氏はどう評価したのだろうか? さっそくインプレをお届けしよう。
― インプレッション
「現在考えうるパーフェクトレーサーだ!」 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
まず、踏み出しからスーッと加速していくフィーリングに驚いた。こんなに軽い踏み出しのバイクは他に経験したことがない。続いて低速からのダッシュ、中速からのダッシュなど、色々なシチュエーションを想定して走り込んでみたが、あらゆる速度領域において素晴らしい加速感を見せてくれた。本当に素晴らしいフィーリングのバイクだ。
中でも感心したのが、ダンシング時の伸びの良さである。ちょっとした上りでダンシングをしてグイグイ踏み込むと、まったくパワーをムダにすることなく推進力に変換してくれることを感じ取れる。実に気持ちよく上ってくれるバイクだ。
ハンドリングも軽快で、ものすごく良い! コーナリングでは思い通りのラインで曲がることができ、高速の下りでも安定しているし、クイックなハンドリングも得意だ。この点に関しても、文句のつけようがない。
この手のレーシングバイクとしては、振動吸収性も良い方だ。乗っていて、路面の凹凸が気になるようなことはなかった。素晴らしい味付けである。
強いて難点を挙げるとすれば、ワイヤー類の処理が個人的にあまり好きではない。内蔵処理などせず、普通のワイヤー処理をした方が良かったと思う。またシートマストの処理もあまり意味を感じない。普通のインテグラルシートポストにした方が、ずっと合理的であるように思う。
また、アッセンブルされていたボントレガーのカーボンホイールの音鳴りが少々気になった。おそらくスポークがリム穴部で擦れてた音が空洞部で反響しているせいだと思うが、まあ慣れてしまえば愛嬌といったところか。
これら難点はあるものの、このバイクの素晴らしさからみれば、本当に些細なことだ。とにかく、この性能の素晴らしさには圧倒される。
個人的にはトレックが特に好きなブランドという訳ではないので、手放しで誉めるのはちょっと悔しいのだが、それでもこの高性能は認めざるを得ない。現在考え得るパーフェクトレーサーだと言うことができる。
用途としてはやはりレースが一番だが、ツーリングで使ってもこの高性能は十分に生きるはずだ。このバイクに乗って文句が出る人なんていないんじゃないだろうか?
「あらゆる性能を満たしたドリームバイク」 三上和志(サイクルハウス ミカミ)
乗った瞬間からフワッと進むバイクだ。「あれっ? まだペダルに力を入れていないのに!」という感じだ。こんなに踏み出しの軽いバイクは他にないだろう。中→高速の伸びも素晴らしく、伸びやかにスピードに乗ってくれる。まるで背中を押されているかのような印象だった。
続いてコーナーを攻めてみたが、高速コーナーでもラインの修正が思いのままだし、クイックなハンドル操作もたやすくできる。なのに安定感も十分にあって、実に不思議なバイクだ。相反する要素をこんなに高次元で両立させていることに驚きを隠せなかった。
加速の良さからして、振動吸収性にはまったく期待していなかったのに、この点に関しても素晴らしい性能を発揮してくれた。ハイエンドのレーシングバイクとしては、振動吸収性もかなり良い部類に入る。ハイスピードの下りコーナーやフルブレーキングなどでは、フォークがしなやかに路面に吸い付いてくれて、何ら緊張感を強いられることがないのだ。
個人的な好みから言うと、付属していたボントレガーのカーボン用ブレーキシューのフィーリングがあまり好きではなかった。高速では良いのだが、低速時のコントロールがちょっとダルな印象だったのだ。私ならスイスストップのシューに交換するだろう。
プロジェクトワンでカラーリングが思いのままにオーダーできるという点も素晴らしい。趣味の自転車として、これはとても重要な部分だ。小さなメーカーにもできないことを、大メーカーのトレックができてしまうということに驚かされる。
BBのベアリングの精度なんかも本当にスゴイ! レースから週末のロングライドまで、サーキットでのエンデューロからヒルクライムまで、誰が乗っても文句が出ないだろう。あらゆる性能を完璧に満たしたドリームバイクである。あまりにも優等生過ぎで逆にオモシロくないとも言えるが、とにかく乗っていて楽しいバイクだ。
このバイクを買うだけの経済的な余裕のある人ならば、これを買っておけば間違いない!
Madone 6.9
フレーム OCLVレッドカーボン、デュオトラップコンパーチブル
フォーク ボントレガー・レースXXXライト w/E2フルカーボンステアラー
メインコンポ シマノ・デュラエース
ホイール ボントレガー・アイオロス5.0
タイヤ ボントレガー・レースXライトAC 700×23C
ハンドル ボントレガー・レースXXXライト VR OS
ステム ボントレガー・レースXXXライト
サドル ボントレガー・インフォームレースXライト
カラー グロスブラック×グロスホワイト、マットブラック×プラチナム、グロスオニキス×カタリストグリーン、プラシッドブルー×グロスホワイト、グロスカタリストオレンジ×ホワイト(以上金額変更なし)、シグネチャーモデル、プロジェクトワン(以上アップチャージあり)
サイズ 50、52、54、56、58、60、62cm
希望小売価格(税込み) 1,050,000円(デュラエース完成車)
― インプレライダーのプロフィール
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
サイクルポイント オーベスト
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
ウェア協力:マヴィック
アイウェア協力:オークリー・ジャパン
edit:仲沢 隆
photo:綾野 真
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