2017/02/25(土) - 09:01
レーサーを中心に、厚い支持を受けるカナディアンブランド、サーヴェロ。現代のカーボンロードのセオリーを作り上げたリーディングブランドの一つである同社のフラッグシップモデルが、今回インプレッションするS5だ。細部に手を入れられ、さらなる熟成を遂げた3年目のスーパーバイクの真実に迫ろう。
サーヴェロといえば、ロードレースやタイムトライアル、トラックからトライアスロンなど、多くのサイクルスポーツにおいてトップレベルで活躍してきたハイパフォーマンスブランドだ。そのラインアップには生粋のレースバイクのみが揃い、競技にフォーカスするストイックなブランドであることが如実に表れている。
創業自体は1995年と、ヨーロッパの歴史あるブランドと比べれば若いと言えるサーヴェロであるが、レーサーにとっての評価は勝るとも劣らない。チームCSCに始まり、サーヴェロテストチーム、ガーミン・シャープ、MTNキュベカ、ディメンションデータと、途切れることなくプロチームをサポートし続けてきた中で、グランツールやモニュメントをはじめとした多くの勝利を挙げてきた。
しかし、サーヴェロがレースシーンに携わり続けているのは、それらの勝利によるマーケティングやコマーシャルだけを目的としているのではない。トップレベルのライダーたちと緊密な関係を築き、彼らからのフィードバックを製品開発に用いることで、より速く、より勝てるバイクを開発することが最も大きなプライオリティを占めている。
さて、レースへの熱い情熱を燃やすカナディアンブランドを一躍有名にしたのが、当時画期的だったエアロロード「ソロイスト」シリーズだ。タイムトライアルバイクにのみ用いられてきたNACA翼断面形状のチューブをロードレーサーに持ち込んだ、エポックメイキングなバイクは、その後のロードレーサーに多大な影響を与えてきた。
その後カーボン化され、「S」シリーズへと名前を変えながら、進化を続けてきたサーヴェロのエアロロードだが、2012年にデビューした初代「S5」は、よりタイムトライアルバイク然としたフォルムを与えられ、プロトン最速のエアロロードとして、当時供給していたガーミン・シャープの選手とともに勝利を量産してきた。
それから3年、S5はフルモデルチェンジを果たした現行モデルに。優れたエアロダイナミクスと走行性能に更なる磨きをかけ、より洗練されたバイクとして進化を果たした。中でも大きな変更が加えられたのは、フロントセクションだ。細身だったフロントフォークは、よりボリュームが与えられ、剛性、エアロダイナミクス、快適性にハンドリングといった、走行に関わる基本性能を大幅に向上させた。
先代S5が先鞭をつけ、今では他社も追随することとなった、トップチューブとダウンチューブ、フォーククラウンが流れるように繋がるインテグレートデザインは、より大胆に設計されており整流効果も大幅に向上した。そして、更なるエアロダイナミクスを追い求め、サーヴェロは新たに「SYSTEM THINKING」というアプローチを採用した。
これは、バイク単体での空力を追い求めるのではなく、ライダーが乗った走行状態を一つの系として想定したCFD解析を行った上で、フレーム、ホイール、ハンドルといった各パーツ毎のエアロダイナミクスを算出するという設計手法。この解析の中でサーヴェロはハンドルバーに着目する。なんと空気抵抗全体の30%を生み出している原因であることを突き止め、この抵抗を削減すべく専用エアロハンドルを開発したのだ。完成車に標準でアッセンブルされるこの専用ハンドルの効果はすさまじく、トータルで従来モデルと比較して21.3Wの出力低減に成功しているという。
数々の先進的な設計によって、当代随一のエアロバイクとして完成したS5だが、2017年モデルでは更なる改良が加えられている。見た目にもわかりやすいのは、シートポストの改良だろう。従来はヤグラ部分まで翼断面形状のエアロピラーが用意されてきたが、より高い快適性を得るべく、ヤグラ部分が板バネのような形状へと変更されている。
そしてもう一つが、タイヤクリアランスの増加だ。従来は25cまでの対応だったが、28cのタイヤまで装着できるようにリア三角が拡幅されている。タイヤクリアランスを広げつつペダリングフィールを維持するために、綿密な設計が行われているため、走行性能はそのままに太いタイヤの恩恵を受けることが可能となった。
究極のエアロロードとして確固たる地位を得ながらも、その進化の歩みを止めないサーヴェロ S5。今回インプレッションしたバイクは、ワイヤレス電動コンポのスラム RED eTapにエンヴィのSES4.5を組み合わせている。それでは早速インプレッションに移ろう。
ー インプレッション
「ロードバイクとしての基本性能が高く仕上げられたエアロロード」山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
見ての通りスーパーエアロバイクといった風貌ですので、上級者向けのバイクかなと構えて乗ると、いたって普通の乗り心地で、見た目以上に乗りやすいバイクに仕上がっており驚きました。平地はもちろん、登りもびっくりするほどスイスイ進むためオールラウンドに使えるバイクだと思います。
フレーム剛性は硬すぎず柔らすぎずのニュートラルな味付けですが、ジオメトリー的にリアバックが詰まっていることもあってか、入力した力をはじき出すような加速感があります。ある程度のギアをかけるとフレームのエアロ効果も相まって、一気にスピードが伸びる性格ですね。
乗り心地は非常に良いです。衝撃が来てもバイクが上に跳ねる感覚が少なく、前に進む力によって消されていく様に感じますので、エアロバイクにありがちな乗り心地の悪さはありません。ですので、エアロなルックスに惚れて購入しても身構えることなく普段から乗ることができる扱いやすさを持ち合わせています。
マイナーチェンジにあたってシートポストが変更されていますが、サドルの取り付け方法がシンプルになり、旧型のものより前後角度の調整がし易いですね。またボトルケージの取り付け穴が3つ付いており、取り付け位置が選べるので、エアロボトルやロングボトルを使いやすいのも良いと思います。
今回のインプレバイクに装着されていたホイールは剛性が高く、S5のしなりを推進力に変える特性に上手く合わさって一緒に加速していくため相性が非常に良かったです。逆に剛性の低いホイールを使用するとフレームの加速感が損なわれてしまい勿体ないですね。ですので、せっかくハイカラなフレームですからホイール自体も最新の高剛性なディープリムホイールを使用するのがベストな選択だと思います。
高い空力性能を有していますので、単独走になるトライアスロンで使用するのもいいと思います。最近はオリンピックディスタンス等でDHバーを使用しない場合もあるかと思いますので、ドロップハンドルで高いエアロダイナミクスを発揮できるこのマシンはそういったシーンにも最適ですね。ブレーキもヘッドパーツも特殊な規格を採用していないので、海外へ輪行するために分解したとしても、現地でちゃんと組める仕様なのも使い勝手が良いと思います。
今まで試乗やインプレッション等で何度もサーヴェロのバイクに乗ってきましたが、どのモデルも良いと感じます。サーヴェロというとエアロモデルだったり、オールラウンドモデルだったりと様々なモデルがありますが、どれもロードバイクとしての基本性能が高く、良いバイクが多い印象を受けますね。今回のS5もエアロバイクというジャンルに括らずロードバイクとして素晴らしい仕上がりになっていると感じます。
サーヴェロ S5(完成車/フレームセット)
メインコンポーネント:スラムRED eTAP、シマノULTEGRA Di2
ヘッドセット:FSA IS2 1-1/8 x 1-3/8”
クランク:スラムRED(RED eTAP仕様)、ローター3D+ IN-POWER(ULTEGRA Di2仕様)
ホイール:エンヴィSES3.4(RED eTAP仕様、ULTEGRA Di2仕様)
ハンドル:Cervélo Aero AB04(RED eTAP仕様、ULTEGRA Di2仕様)
サイズ:48、51、54、56
カラー:ブラック/レッド
価 格:スラム RED eTap 完成車 1,420,000円(税抜)
シマノ ULTEGRA Di2 完成車 1,280,000円(税抜)
フレームセット 650,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
長野県飯田市にあるブレアサイクリング店主。ブリヂストンアンカーのサテライトチームに所属したのち、渡仏。自転車競技の本場であるフランスでのレース活動経験を生かして、南信州の地で自転車の楽しさを伝えている。サイクルスポーツ誌主催の最速店長選手権の初代優勝者でもあり、走れる店長として高い認知度を誇っている。オリジナルサイクルジャージ”GRIDE”の企画販売も手掛けており、オンラインストアで全国から注文が可能だ。
CWレコメンドショップページ
ブレアサイクリングHP
ウェア協力:rh+
text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANO
サーヴェロといえば、ロードレースやタイムトライアル、トラックからトライアスロンなど、多くのサイクルスポーツにおいてトップレベルで活躍してきたハイパフォーマンスブランドだ。そのラインアップには生粋のレースバイクのみが揃い、競技にフォーカスするストイックなブランドであることが如実に表れている。
創業自体は1995年と、ヨーロッパの歴史あるブランドと比べれば若いと言えるサーヴェロであるが、レーサーにとっての評価は勝るとも劣らない。チームCSCに始まり、サーヴェロテストチーム、ガーミン・シャープ、MTNキュベカ、ディメンションデータと、途切れることなくプロチームをサポートし続けてきた中で、グランツールやモニュメントをはじめとした多くの勝利を挙げてきた。
しかし、サーヴェロがレースシーンに携わり続けているのは、それらの勝利によるマーケティングやコマーシャルだけを目的としているのではない。トップレベルのライダーたちと緊密な関係を築き、彼らからのフィードバックを製品開発に用いることで、より速く、より勝てるバイクを開発することが最も大きなプライオリティを占めている。
さて、レースへの熱い情熱を燃やすカナディアンブランドを一躍有名にしたのが、当時画期的だったエアロロード「ソロイスト」シリーズだ。タイムトライアルバイクにのみ用いられてきたNACA翼断面形状のチューブをロードレーサーに持ち込んだ、エポックメイキングなバイクは、その後のロードレーサーに多大な影響を与えてきた。
その後カーボン化され、「S」シリーズへと名前を変えながら、進化を続けてきたサーヴェロのエアロロードだが、2012年にデビューした初代「S5」は、よりタイムトライアルバイク然としたフォルムを与えられ、プロトン最速のエアロロードとして、当時供給していたガーミン・シャープの選手とともに勝利を量産してきた。
それから3年、S5はフルモデルチェンジを果たした現行モデルに。優れたエアロダイナミクスと走行性能に更なる磨きをかけ、より洗練されたバイクとして進化を果たした。中でも大きな変更が加えられたのは、フロントセクションだ。細身だったフロントフォークは、よりボリュームが与えられ、剛性、エアロダイナミクス、快適性にハンドリングといった、走行に関わる基本性能を大幅に向上させた。
先代S5が先鞭をつけ、今では他社も追随することとなった、トップチューブとダウンチューブ、フォーククラウンが流れるように繋がるインテグレートデザインは、より大胆に設計されており整流効果も大幅に向上した。そして、更なるエアロダイナミクスを追い求め、サーヴェロは新たに「SYSTEM THINKING」というアプローチを採用した。
これは、バイク単体での空力を追い求めるのではなく、ライダーが乗った走行状態を一つの系として想定したCFD解析を行った上で、フレーム、ホイール、ハンドルといった各パーツ毎のエアロダイナミクスを算出するという設計手法。この解析の中でサーヴェロはハンドルバーに着目する。なんと空気抵抗全体の30%を生み出している原因であることを突き止め、この抵抗を削減すべく専用エアロハンドルを開発したのだ。完成車に標準でアッセンブルされるこの専用ハンドルの効果はすさまじく、トータルで従来モデルと比較して21.3Wの出力低減に成功しているという。
数々の先進的な設計によって、当代随一のエアロバイクとして完成したS5だが、2017年モデルでは更なる改良が加えられている。見た目にもわかりやすいのは、シートポストの改良だろう。従来はヤグラ部分まで翼断面形状のエアロピラーが用意されてきたが、より高い快適性を得るべく、ヤグラ部分が板バネのような形状へと変更されている。
そしてもう一つが、タイヤクリアランスの増加だ。従来は25cまでの対応だったが、28cのタイヤまで装着できるようにリア三角が拡幅されている。タイヤクリアランスを広げつつペダリングフィールを維持するために、綿密な設計が行われているため、走行性能はそのままに太いタイヤの恩恵を受けることが可能となった。
究極のエアロロードとして確固たる地位を得ながらも、その進化の歩みを止めないサーヴェロ S5。今回インプレッションしたバイクは、ワイヤレス電動コンポのスラム RED eTapにエンヴィのSES4.5を組み合わせている。それでは早速インプレッションに移ろう。
ー インプレッション
「ロードバイクとしての基本性能が高く仕上げられたエアロロード」山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
見ての通りスーパーエアロバイクといった風貌ですので、上級者向けのバイクかなと構えて乗ると、いたって普通の乗り心地で、見た目以上に乗りやすいバイクに仕上がっており驚きました。平地はもちろん、登りもびっくりするほどスイスイ進むためオールラウンドに使えるバイクだと思います。
フレーム剛性は硬すぎず柔らすぎずのニュートラルな味付けですが、ジオメトリー的にリアバックが詰まっていることもあってか、入力した力をはじき出すような加速感があります。ある程度のギアをかけるとフレームのエアロ効果も相まって、一気にスピードが伸びる性格ですね。
乗り心地は非常に良いです。衝撃が来てもバイクが上に跳ねる感覚が少なく、前に進む力によって消されていく様に感じますので、エアロバイクにありがちな乗り心地の悪さはありません。ですので、エアロなルックスに惚れて購入しても身構えることなく普段から乗ることができる扱いやすさを持ち合わせています。
マイナーチェンジにあたってシートポストが変更されていますが、サドルの取り付け方法がシンプルになり、旧型のものより前後角度の調整がし易いですね。またボトルケージの取り付け穴が3つ付いており、取り付け位置が選べるので、エアロボトルやロングボトルを使いやすいのも良いと思います。
今回のインプレバイクに装着されていたホイールは剛性が高く、S5のしなりを推進力に変える特性に上手く合わさって一緒に加速していくため相性が非常に良かったです。逆に剛性の低いホイールを使用するとフレームの加速感が損なわれてしまい勿体ないですね。ですので、せっかくハイカラなフレームですからホイール自体も最新の高剛性なディープリムホイールを使用するのがベストな選択だと思います。
高い空力性能を有していますので、単独走になるトライアスロンで使用するのもいいと思います。最近はオリンピックディスタンス等でDHバーを使用しない場合もあるかと思いますので、ドロップハンドルで高いエアロダイナミクスを発揮できるこのマシンはそういったシーンにも最適ですね。ブレーキもヘッドパーツも特殊な規格を採用していないので、海外へ輪行するために分解したとしても、現地でちゃんと組める仕様なのも使い勝手が良いと思います。
今まで試乗やインプレッション等で何度もサーヴェロのバイクに乗ってきましたが、どのモデルも良いと感じます。サーヴェロというとエアロモデルだったり、オールラウンドモデルだったりと様々なモデルがありますが、どれもロードバイクとしての基本性能が高く、良いバイクが多い印象を受けますね。今回のS5もエアロバイクというジャンルに括らずロードバイクとして素晴らしい仕上がりになっていると感じます。
サーヴェロ S5(完成車/フレームセット)
メインコンポーネント:スラムRED eTAP、シマノULTEGRA Di2
ヘッドセット:FSA IS2 1-1/8 x 1-3/8”
クランク:スラムRED(RED eTAP仕様)、ローター3D+ IN-POWER(ULTEGRA Di2仕様)
ホイール:エンヴィSES3.4(RED eTAP仕様、ULTEGRA Di2仕様)
ハンドル:Cervélo Aero AB04(RED eTAP仕様、ULTEGRA Di2仕様)
サイズ:48、51、54、56
カラー:ブラック/レッド
価 格:スラム RED eTap 完成車 1,420,000円(税抜)
シマノ ULTEGRA Di2 完成車 1,280,000円(税抜)
フレームセット 650,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
山崎嘉貴(ブレアサイクリング)
長野県飯田市にあるブレアサイクリング店主。ブリヂストンアンカーのサテライトチームに所属したのち、渡仏。自転車競技の本場であるフランスでのレース活動経験を生かして、南信州の地で自転車の楽しさを伝えている。サイクルスポーツ誌主催の最速店長選手権の初代優勝者でもあり、走れる店長として高い認知度を誇っている。オリジナルサイクルジャージ”GRIDE”の企画販売も手掛けており、オンラインストアで全国から注文が可能だ。
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text:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANO
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