マルコ・パンターニをはじめとするスター選手の足元を支えてきたイタリアのヴィットリアシューズ。今回紹介するFUSION for speedplayは、モデル名の通りスピードプレイ専用ソールモデルだ。インプレッションとともにお届けする。



ヴィットリアシューズ FUSION for speedplayヴィットリアシューズ FUSION for speedplay
イタリア、ピエモンテ州トリノ近郊のビエッラに拠を構えるヴィットリアシューズ社。イタリア国内でのハンドメイドにこだわり、今でも自社工場で100%生産を行っている数少ないイタリアンシューズブランドの一つだ。

ちなみにヴィットリアシューズ社はタイヤのヴィットリア社とは関係が無い。(ヴィットリアとは「勝利」の意味)。同社の歴史は長く、マルコ・パンターニを筆頭に、ステファン・ロッシュ、ルーカ・パオリーニ、トル・フースホフト、ハンカ・クプファーナゲル、ダニエル・マーティン、そして別府史之ら各国のトップロードレーサーたちに愛されてきた。

近年はNIPPOヴィーニファンティーニにスポンサードし、同チームのメンバー全員がヴィットリアシューズのヘルメットとレーシングシューズとともにレースを闘っている。日本人ライダーが居ることから、選手たちとの協働によりアジア人にとってのフィットについても研究を進めている。

スマートなルックスのFUSION。スピードプレイ専用とされているため、クリート取り付け部分は水平となっているスマートなルックスのFUSION。スピードプレイ専用とされているため、クリート取り付け部分は水平となっている 踵をしっかりとホールドしてくれるヒールカップも装備されている踵をしっかりとホールドしてくれるヒールカップも装備されている

ヴィットリアシューズ独自開発のダイヤル式SSPファスニングクロージャーシステムが採用されたヴィットリアシューズ独自開発のダイヤル式SSPファスニングクロージャーシステムが採用された アッパーはナイロンメッシュとポリエステルブロックアミドが圧接されているアッパーはナイロンメッシュとポリエステルブロックアミドが圧接されている


FUSION for speedplayは、スピードプレイペダルの日本での総代理店となるジェイピースポーツグループのリクエストで生まれたシューズだ。

スピードプレイ専用ソールを備えたレーシングシューズは今までいくつかのブランドにありながらも、そのほとんどが高価なハイエンドモデルばかりだった。しかし同ペダルの日本での評価の高まりを受け、ユーザーが増加しているなか、手頃な価格で購入できるレーシングシューズの存在が無いことがネックだと感じていた同社。

スピードプレイペダルの普及を願うジェイピースポーツグループが、ヴィットリアシューズ社に対してリーズナブルな価格のレースや本格的なライドに使用できるスピードプレイ専用ソールつきのシューズをリクエストして生まれたのがこのシューズである。

タン部分にもクッションが設けられ、クロージャーをきつく締め上げてもストレスとなりにくくしているタン部分にもクッションが設けられ、クロージャーをきつく締め上げてもストレスとなりにくくしている アキレス腱周りにはクッションを配置することで、快適な着用感を実現しているアキレス腱周りにはクッションを配置することで、快適な着用感を実現している

4つ穴のスピードプレイ専用アウターソール。クリートの調整幅も広く取られている4つ穴のスピードプレイ専用アウターソール。クリートの調整幅も広く取られている ベンチレーションホールがシューズ内の蒸れを抑えるベンチレーションホールがシューズ内の蒸れを抑える


専用シューズとすることのメリットは、3つ穴クリートホールから4つ穴に変換させるベースプレートが不要になる点。アウターソールに直接クリートを装着しスタックハイトを11.5mmから8.5mmに短縮することで、ペダリングパワーが効率よくペダルに伝達されるようになる。ペダルを踏み込んだ際のダイレクト感も向上するため、ユーザーの踏力をロス無くペダルに伝えてくれるような感覚を得られるだろう。加えて、ソールとクリートどちらの負担も小さいことが専用ソールの特徴だ。

アッパーはポリエステルブロックアミドをメイン素材とし、ナイロンメッシュを各所に配置したデザイン。この2つの素材は圧着されているため縫い目がなく、ストレスフリーなフィット感を実現している。もちろんメッシュによる通気性も確保している。

ヴィットリアシューズ FUSION for speedplayヴィットリアシューズ FUSION for speedplay
クロージャーシステムはヴィットリアが独自で開発を行い、NIPPOヴィーニファンティーニの選手たちによってテストを行ったという「SSPファスニングクロージャーシステム」。ケブラー素材の小型ローターを採用、ワイヤーには軽量かつ耐久性に優れるダイネルを使用することで、軽量化に成功したダイヤルクロージャーだ。

エルゴノミックフィッティングコンセプトによってデザインされたFUSION for speedplay。人間工学に基づき作られた形状は快適なフィット感をもたらし、パフォーマンス向上に貢献する。また、FUSION for speedplayは、欧州型の通常モデルに加えてワイドフィットモデルも用意されているため、幅広甲高なユーザーでも着用可能だ。

41サイズで227gという重量の通常モデル41サイズで227gという重量の通常モデル 41サイズで233gというワイドフィットモデル41サイズで233gというワイドフィットモデル


通常モデルとワイドフィットモデルそれぞれ1色ずつの展開。通常モデルは赤ベースのRed/Black、ワイドモデルは黒ベースのBlack/Redだ。重量は通常モデルが227g(実測値)、ワイドモデルが233g(実測値)となっている。価格はいずれも27,600円(税抜)。



ー インプレッション

通常、スピードプレイ専用ソールつきシューズというと各社4万円~ほどと高価なモデルがほとんどで、27,600円(税抜)という価格のシューズは無いというのが現状だ。専用ソールつきシューズのメリットは、3ツ穴シューズにスピードプレイクリートを取り付ける際に必要なアダプター類と、アダプターを取り付けるのに使用するボルトが必要なくなる(写真の一式)ということと、アダプターを介さないためよりダイレクトに踏力を伝えることができることなどが挙げられる。

ヴィットリアシューズ FUSION for speedplayヴィットリアシューズ FUSION for speedplay
スピードプレイペダルを愛用しながらも、筆者は幅広・甲高の足のため、専用ソールのシューズでは足型に合うものが見つからず、シューズは三穴用を使用してきた。それが今回登場したFUSIONは、専用ソールだけでなくワイドフィットモデルのシューズもリリースされたため、使用が可能になった(シディのMEGAタイプとマヴィックのマキシフィットモデルがフィットする足型だ)。

アダプター類やボルトを使用しないことはそのまま軽量化につながる。シューズの軽さにこだわるのが昨今の流れだが、ペダルを含めたトータル重量で考えた場合、これは大きなメリットになる。シューズの位置づけはミドルグレードだが、シューズ重量からそれらの重さを引いた重量が有効だ。

アダプターを用いないで取り付けたクリートはソールにより密着度が増し、それはペダリングした際にも感じることができる。ノーマルクリートの場合はクリート回りの存在感を足裏に感じていたものが、ソールの広い範囲を使ってペダルを踏めるようなダイレクトな感覚になる。アダプターの有無ぶんだけスタックハイトは11.5mmから8.5mmへと短縮されるため、サドルが下がることになるのでその点は留意したい。

シディのMEGAやマヴィックのマキシフィットが最適な筆者でもフィットするFUSIONのワイドモデルシディのMEGAやマヴィックのマキシフィットが最適な筆者でもフィットするFUSIONのワイドモデル スタックハイトが8.5mmとなったことで、ダイレクト感が増したスタックハイトが8.5mmとなったことで、ダイレクト感が増した

スピードプレイ専用とされたFUSIONのアウターソールを採用スピードプレイ専用とされたFUSIONのアウターソールを採用 ベースプレートやボルト類が不必要となるため、軽量化にもつながるベースプレートやボルト類が不必要となるため、軽量化にもつながる


ワイドフィットシューズは、アッパーの甲周りの外周がノーマル版が24.5cmのとき同サイズで25.3cmと、比較して8mmほど外周がワイドになっている。幅広に加えて甲高の自分にはよいフィット感だった。個人差はあるだろうが、甲高の人により合いやすそうだ。

フィットの傾向としては踵のホールドもやや弱めで、最近のハイエンドシューズに有りがちなタイトフィットのようなものではない。このシューズがターゲットとする中級者層にはむしろ適したフィット感だと感じた。

ヴィットリアシューズ社のシューズはUniqueというモデルを以前に履いていたことがあるが、同社のシューズは足に良く馴染む柔らかいアッパーが特徴で、幅の差を越えるフィット許容量があるモデルが多い。

ノブを起こして回転させるダイアルを用いたヴィットリアシューズ独自のクロージャーシステムはワイヤーにダイネルという繊維素材を用い、軽量で扱いやすい。NIPPOチームが使用するトップモデル同様の装備となるので安心できそうだ。(綾野 真/CW編集部)



ヴィットリアシューズ FUSION for speedplay
アッパー:ポリエステルブロックアミド+ナイロン
ソール:UDフルカーボン製(エアーシステム、スピードプレイ専用4穴ソール)
クロージングシステム:SSPファスニングクロージャーシステム
サイズ:40、40.5、41、41.5、42
モデル(カラー):通常フィット(Red/Black)、ワイドフィット(Black/Red)
重量:227g(41サイズ、通常フィット)、233g(41サイズ、ワイドフィット)
価格:27,600円(税抜)



inpression:Makoto.AYANO

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