2017/01/29(日) - 21:04
チャベスがアタックし、ポートがアタックし、フルームが追いかける。グランツールレーサーによる競演は小集団スプリントに持ち込まれ、サンウェブのアルントが第3代カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースの覇者に輝いた。
青い空に青いオーストラリア国旗 photo:Kei Tsuji
選手のパワーやスピード、ケイデンス、心拍を発信するVELONの機器 photo:Kei Tsuji
今シーズン初顔合わせのクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)とリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji
バーウォンヘッズを抜け、グレートオーシャンロードに入る photo:Kei Tsuji「オーストラリア史上最も成功したサイクリスト」と称えられるカデル・エヴァンスの引退レースとして2015年に初開催されたカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース。第3回大会はUCIワールドツアー入りしたことで世界的な注目度が大幅にアップした。
グレートオーシャンロードを走る選手たち photo:Kei Tsujiサントス・ツアー・ダウンアンダーの翌週に開催されることから、温暖な気候を利用したトレーニングを兼ねて連戦出場するUCIワールドチームも多い。第3回大会には13のUCIワールドチームが出場(全18チームのうちUAEアブダビ、バーレーン、アスタナ、モビスター、FDJが欠場)。
終盤まで集団に身をひそめるクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiなお、2017年に新たに加わったUCIワールドツアー10レースに関しては、大会側がすべてのUCIワールドチームに招待を送る必要がある一方で、出場するか否かはチーム側の判断に委ねられている。
オリカ・スコットやBMCレーシングが集団コントロールを担う photo:Kei Tsujiその名の通り、レースはヴィクトリア州(州都はメルボルン)が誇る観光地グレートオーシャンロードを走る。エヴァンスが居を構えるバーウォンヘッズから、サーファーが浮かぶビーチを横目にトーキーの街を抜けてアングルシーまで。
オーシャンロードを離れてジーロングに戻る行程は前日の女子レースと共通だが、男子レースはそこから全長20kmの周回を3周。2010年のUCIロード世界選手権(フースホフト優勝&新城9位)で使用した周回コースに登りを1つ追加した厳しいアップダウンコースだ。
レースディレクターが旗を振るや否や身長204cmのコナー・ドゥーン(アイルランド、アクアブルースポーツ)がファーストアタック。ここにアンヘル・ビシオソ(スペイン、カチューシャ)、アレックス・ポーター(オーストラリア、オーストラリアナショナルチーム)、キリル・スヴェスニコフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)が追いつくと、メイン集団は30km/h以下の低速巡行を開始した。
タイム差が10分を超えたところでようやくBMCレーシングやオリカ・スコット、ディメンションデータが集団先頭へ。焦ることなくタイム差を詰めながら、詰めすぎないように調整しながら、ほぼ動きがないままジーロングの街に戻ってきた。
好天に恵まれた第3回大会 photo:Kei Tsuji
サーフィンスポットとして知られるベルズビーチを背に走る photo:Kei Tsuji
アンヘル・ビシオソ(スペイン、カチューシャ)ら4名が逃げる photo:Kei Tsuji
コースのあちこちにオーストラリア国旗がなびく photo:Kei Tsuji
2周目のチャランブラクレッセントで飛び出したマイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)とセバスティアン・エナオ(コロンビア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji合計3周する20kmの周回コースには「チャランブラクレッセント(全長1.4km/平均7%/最大20%)」と「クイーンズパーク(全長400m/平均7%/最大20%)」「ハイランドストリート(全長600m/平均5.5%/最大10%)」という3つの登りが登場する。
人数を揃えたまま最終周回に入る photo:Kei Tsuji周回コースに入ってペースが上がったメイン集団に対し、逃げグループのリードは風前の灯火。アタックもかかるメイン集団は2周目に入ったところで逃げを吸収。そこからアタックの応酬が続いた。
最終周回のチャランブラクレッセントで飛び出したケニー・エリッソンド(フランス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)やセバスティアン・エナオ(コロンビア、チームスカイ)といったサブエース級選手たちが「チャランブラクレッセント」で飛び出したが、決定的なリードを奪えないまま吸収される。集団は例年より人数を揃えた状態で最終周回に入る。
平坦路でチャンスをうかがうリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji最終周回の「チャランブラクレッセント」で今度はケニー・エリッソンド(フランス、チームスカイ)が仕掛けたが決まらない。25名ほど人数を残した状態で集団は「クイーンズパーク」の登りに突入。急勾配の登りを生かしたセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)やエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)のアタックによって集団は崩壊した。
キャメロン・マイヤー(オーストラリア、オーストラリアナショナルチーム)が先頭で最終ストレートに姿を現わす photo:Kei Tsuji登りでエナオやチャベス、リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)ら6名が抜け出したものの、平坦路で後続が追いついて集団は25名。そのまま「ハイランドストリート」を乗り越えて、フィニッシュまでの6km平坦区間に入る。
クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)も加わったアタックと牽制の末に、残り4kmでポートが勢い良く飛び出した。オーストラリアTTチャンピオンにも輝いているダウンアンダー覇者が5秒リードで独走。「登りで勝負が決まらなかったのでアタックする他に方法がなかった。それほどまでにこのレースで勝ちたかった」と語るポートをツール覇者のフルームが追いかけるという刺激的な展開。
フルームのアシストとしての牽引によってポートは残り1.5kmで吸収される。続くジャック・バウアー(ニュージーランド、クイックステップフロアーズ)のカウンターアタックも決まらないまま残り1km。すると、残り800mでキャメロン・マイヤー(オーストラリア、オーストラリアナショナルチーム)が勢い良く抜け出した。トラック世界選手権で6回チャンピオンに輝いているマイヤーがそのスピードを生かして飛び立った。
先行したマイヤーと、追撃する集団。歯を食いしばって逃げ続けたマイヤーだったが、その独走は残り50mで終わりを告げる。加速するアルントとサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・スコット)がマイヤーをかわし、ともにハンドルを投げ込んでフィニッシュ。アルントが見せた小さなガッツポーズは、数分後の写真判定によって証明された。
マイヤー、アルント、ゲランスの3名が横並びでフィニッシュへ photo:Kei Tsuji
小集団スプリントを制したニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ) photo:Kei Tsuji「小集団のスプリントに持ち込まれればニキアス・アルントで、そしてクライマーが逃げる展開になればウィルコ・ケルデルマンで勝負する予定だった」というサンウェブの作戦が見事にはまった。
チームメイトと喜ぶニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ) photo:Kei Tsujiアルントは「最終周回の登りは非常に厳しかったものの、苦しみながらも乗り切った甲斐があった。最後はチームがスプリントに持ち込んでくれた。オーストラリア遠征をこんな最高の形で締めくくることができて本当に良かった」とコメント。2016年ジロ・デ・イタリア最終ステージの覇者(ニッツォロ降格による繰り上げ)が自身初のUCIワールドツアーワンデーレース勝利をつかんだ。
惜しくも勝利を逃したゲランスは「誰もチームメイトを残していない中でのスプリントだった。早めに仕掛けたニキアスに反応して、スリップストリームから抜け出そうと踏んだけど届かなかった。もう脚に力は残っていなかった」と、少し呆然とた表情を浮かべながらレース後のインタビューに答える。
フルームは今シーズン初UCIレースを49位でフィニッシュ。フルームは2月1日に開幕するヘラルドサンツアーにも出場する予定だ。
優勝トロフィーを受け取ったニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ) photo:Kei Tsuji
シャンパンファイトするニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)ら photo:Kei Tsuji
カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース2017
1位 ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ) 4h19’15”
2位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
3位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、オーストラリアナショナルチーム)
4位 ホナタン・レストレポ(コロンビア、カチューシャ・アルペシン)
5位 ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)
6位 ペトル・ヴァコッチ(チェコ、クイックステップフロアーズ)
7位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)
8位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、クイックステップフロアーズ)
9位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)
10位 パウル・マルテンス(ドイツ、ロットNLユンボ)
text&photo:Kei Tsuji in Geelong, Australia
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オーシャンロードを離れてジーロングに戻る行程は前日の女子レースと共通だが、男子レースはそこから全長20kmの周回を3周。2010年のUCIロード世界選手権(フースホフト優勝&新城9位)で使用した周回コースに登りを1つ追加した厳しいアップダウンコースだ。
レースディレクターが旗を振るや否や身長204cmのコナー・ドゥーン(アイルランド、アクアブルースポーツ)がファーストアタック。ここにアンヘル・ビシオソ(スペイン、カチューシャ)、アレックス・ポーター(オーストラリア、オーストラリアナショナルチーム)、キリル・スヴェスニコフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)が追いつくと、メイン集団は30km/h以下の低速巡行を開始した。
タイム差が10分を超えたところでようやくBMCレーシングやオリカ・スコット、ディメンションデータが集団先頭へ。焦ることなくタイム差を詰めながら、詰めすぎないように調整しながら、ほぼ動きがないままジーロングの街に戻ってきた。
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フルームのアシストとしての牽引によってポートは残り1.5kmで吸収される。続くジャック・バウアー(ニュージーランド、クイックステップフロアーズ)のカウンターアタックも決まらないまま残り1km。すると、残り800mでキャメロン・マイヤー(オーストラリア、オーストラリアナショナルチーム)が勢い良く抜け出した。トラック世界選手権で6回チャンピオンに輝いているマイヤーがそのスピードを生かして飛び立った。
先行したマイヤーと、追撃する集団。歯を食いしばって逃げ続けたマイヤーだったが、その独走は残り50mで終わりを告げる。加速するアルントとサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・スコット)がマイヤーをかわし、ともにハンドルを投げ込んでフィニッシュ。アルントが見せた小さなガッツポーズは、数分後の写真判定によって証明された。
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カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース2017
1位 ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ) 4h19’15”
2位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
3位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、オーストラリアナショナルチーム)
4位 ホナタン・レストレポ(コロンビア、カチューシャ・アルペシン)
5位 ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)
6位 ペトル・ヴァコッチ(チェコ、クイックステップフロアーズ)
7位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)
8位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、クイックステップフロアーズ)
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10位 パウル・マルテンス(ドイツ、ロットNLユンボ)
text&photo:Kei Tsuji in Geelong, Australia
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