2017/01/13(金) - 20:08
1月15日、オーストラリアでUCIワールドツアー第1戦にあたるツアー・ダウンアンダーが開幕する。真夏の南オーストラリア州を駆け抜けるシーズン初戦のコースと出場選手をチェック。いよいよ2017年シーズンが動き出す。
オーストラリア最大のUCIレース ウィランガヒルで決着
今年で18回目の開催を迎えるサントス・ツアー・ダウンアンダー。南オーストラリア州に根付いたロードレースとして産声をあげ、2008年にUCI(国際自転車競技連合)のトップレースカテゴリーであるUCIプロツアーレース(現在UCIワールドツアーレース)入りを果たした。長年UCIが推し進める「ロードレースの国際化」の象徴とも言える。
世界トップレースであると同時に、南オーストラリア州にとっても一大イベントである今大会。同州の観光局がバックアップし、アデレードを中心に様々な付随イベントが開催される。毎年4万人のサイクリストがアデレードに訪れ、レース観戦とイベント参加を楽しんでいる。
「ダウンアンダー(Down Under)」は、元々イギリスから見て地球の裏側にあるオーストラリアやニュージーランドを指す言葉。ヨーロッパ在住の選手たちは長時間のフライトを経てオーストラリア大陸に乗り込む。
大きな気温差に慣れ、10時間近い時差を解消するために多くの選手たちが時間に余裕をもって現地入りしている。南半球オーストラリアは今がまさに夏の盛りで、連日気温が40度を超える年もしばしば。なお、日本との時差は+1.5時間(現在はサマータイム)だ。
アデレード近郊には大きな山脈が無く、大会の最標高地点も標高500m程度と低い。海沿いの平野部や、ワインの産地として世界的に有名なバロッサバレー、クレアバレー、アデレードヒルズと呼ばれる丘陵地帯がコースの大部分を占めている。
スプリンター向きの平坦ステージが多く設定されているため、伝統的にマッチョなスプリンターたちが総合争いを繰り広げるのが通例だった。しかし、ここ数年は山岳ステージの重要度が上がっているため、総合上位にはグランツールで総合争いに絡むようなオールラウンダーたちが名前を連ねている。
8日間にわたる大会は1月15日にアデレード市街地で行なわれるUCI非公認の顔見せクリテリウム「ピープルズチョイス・クラシック」で幕開ける。初日からトップスプリンターたちがバトルを繰り広げられるはずだ。
総合争いは、KOMパラコーム(平均8.8%/全長1.6km)の山頂フィニッシュが設定された第2ステージと、大会最大の難所であるKOMオールドウィランガヒル(平均7.5%/全長3.0km)にフィニッシュする第5ステージで決する。例年よりも山岳ステージの難易度が低く、ステージがそれぞれ10kmほど長い印象。最終日はアデレード市内で行われる平坦ステージだ。
ツアー・ダウンアンダー2016ステージリスト
1月15日(日)ピープルズ・チョイス・クラシック アデレード市街地コース 50.6km
1月17日(火)第1ステージ アンレー〜リンドック 145km
1月18日(水)第2ステージ スターリング〜パラコーム 148.5km
1月19日(木)第3ステージ グレネルグ〜ヴィクターハーバー 144km
1月20日(金)第4ステージ ノーウッド〜キャンベルタウン 149.5km
1月21日(土)第5ステージ マクラーレンヴェール〜ウィランガヒル 151.5km
1月22日(日)第6ステージ アデレード市街地コース 90km
サガンが優勝候補?好調なオーストラリア勢の活躍に期待
すべてのUCIワールドチームが勢ぞろいするUCIワールドツアー初戦。2017年は同時期のツール・ド・サンルイスが開催中止となり(別イベントのブエルタ・デ・サンフアンは開催)、直後にUCIワールドツアー2戦カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースが開催されることも影響し、例年よりも豪華なラインアップがオーストラリアに揃う。
注目は何と言っても世界チャンピオンのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が7年ぶりに出場すること。リクイガスでのプロ入り直後に出場した2010年大会でサガンはランス・アームストロング(アメリカ)らと初日から逃げて周囲を驚かせ、ウィランガヒルのクイーンステージで4位に。落車によって総合では下位に沈んだが、強烈なインパクトをデビュー戦で残した。
サガンは大会の目玉選手として早めに現地入りしている。UCIプロコンチネンタルチームから昇格したボーラ・ハンスグローエに初勝利をもたらすべく、集団スプリントで果敢に勝利を狙ってくるだろう。
大会ディレクターのマイク・ターター氏は「サガンは総合争いにも絡む」と期待を込めるが、そのためにはサガンは登坂時間6分ほどのKOMオールドウィランガヒルで一流クライマーたちに食らいつく必要がある。平坦ステージでボーナスタイムを稼ぐことができれば総合優勝のチャンスは十分にある。サガンが本調子でない場合は2016年総合4位のジェイ・マッカーシー(オーストラリア)がエースを担うことになるだろう。
4度の大会覇者でディフェンディングチャンピオンのサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・スコット)は今年も総合優勝候補の筆頭だ。しかも2016年のグランツールで大ブレイクしたエステバン・チャベス(コロンビア)を引き連れての出場であり、強力な地元オージーチームのバックアップを受ける。
3年連続でKOMオールドウィランガヒルを制しながら未だ総合優勝の経験がないリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)は、オーストラリアTTチャンピオンのローハン・デニス(オーストラリア)と同ロードチャンピオンのマイルズ・スコットソン(オーストラリア)とともにスタートラインに並ぶ。チーム力でBMCレーシングはオリカ・スコットに肩を並べる存在だと言える。
ゲラント・トーマス(イギリス)とセルジオルイスエナオ(コロンビア)を揃えるチームスカイや、ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ)、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)、ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ロットNL・ユンボ)、ルイス・マインティーズ(南アフリカ、UAEアブダビ)といったオールラウンダーたちも総合優勝候補の一角。例年以上に激しい山岳バトルが繰り広げられるはずだ。
平坦ステージでサガンに挑むのはカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)をはじめとするピュアスプリンターたち。クリテリウムのオーストラリアチャンピオンに輝いているユアンは2016年にステージ2勝の活躍。小柄な身体を生かした強烈な加速がユアンの武器だ。
他にもベン・スウィフト(イギリス、UAEアブダビ)やタイラー・ファラー(アメリカ、ディメンションデータ)、ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)、ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)らがスプリントに絡むことになりそうだ。
実質的なオーストラリア選抜チームであるUniSAオーストラリアからは、2016年に一旦キャリアにピリオドを打ったキャメロン・マイヤーや、チーム右京所属でオーストラリア選手権ロードレース5位のネイサン・アールといったUCIワールドツアー経験者が出場。トップチームに肩を並べる戦力を有している。
text:Kei Tsuji
オーストラリア最大のUCIレース ウィランガヒルで決着
今年で18回目の開催を迎えるサントス・ツアー・ダウンアンダー。南オーストラリア州に根付いたロードレースとして産声をあげ、2008年にUCI(国際自転車競技連合)のトップレースカテゴリーであるUCIプロツアーレース(現在UCIワールドツアーレース)入りを果たした。長年UCIが推し進める「ロードレースの国際化」の象徴とも言える。
世界トップレースであると同時に、南オーストラリア州にとっても一大イベントである今大会。同州の観光局がバックアップし、アデレードを中心に様々な付随イベントが開催される。毎年4万人のサイクリストがアデレードに訪れ、レース観戦とイベント参加を楽しんでいる。
「ダウンアンダー(Down Under)」は、元々イギリスから見て地球の裏側にあるオーストラリアやニュージーランドを指す言葉。ヨーロッパ在住の選手たちは長時間のフライトを経てオーストラリア大陸に乗り込む。
大きな気温差に慣れ、10時間近い時差を解消するために多くの選手たちが時間に余裕をもって現地入りしている。南半球オーストラリアは今がまさに夏の盛りで、連日気温が40度を超える年もしばしば。なお、日本との時差は+1.5時間(現在はサマータイム)だ。
アデレード近郊には大きな山脈が無く、大会の最標高地点も標高500m程度と低い。海沿いの平野部や、ワインの産地として世界的に有名なバロッサバレー、クレアバレー、アデレードヒルズと呼ばれる丘陵地帯がコースの大部分を占めている。
スプリンター向きの平坦ステージが多く設定されているため、伝統的にマッチョなスプリンターたちが総合争いを繰り広げるのが通例だった。しかし、ここ数年は山岳ステージの重要度が上がっているため、総合上位にはグランツールで総合争いに絡むようなオールラウンダーたちが名前を連ねている。
8日間にわたる大会は1月15日にアデレード市街地で行なわれるUCI非公認の顔見せクリテリウム「ピープルズチョイス・クラシック」で幕開ける。初日からトップスプリンターたちがバトルを繰り広げられるはずだ。
総合争いは、KOMパラコーム(平均8.8%/全長1.6km)の山頂フィニッシュが設定された第2ステージと、大会最大の難所であるKOMオールドウィランガヒル(平均7.5%/全長3.0km)にフィニッシュする第5ステージで決する。例年よりも山岳ステージの難易度が低く、ステージがそれぞれ10kmほど長い印象。最終日はアデレード市内で行われる平坦ステージだ。
ツアー・ダウンアンダー2016ステージリスト
1月15日(日)ピープルズ・チョイス・クラシック アデレード市街地コース 50.6km
1月17日(火)第1ステージ アンレー〜リンドック 145km
1月18日(水)第2ステージ スターリング〜パラコーム 148.5km
1月19日(木)第3ステージ グレネルグ〜ヴィクターハーバー 144km
1月20日(金)第4ステージ ノーウッド〜キャンベルタウン 149.5km
1月21日(土)第5ステージ マクラーレンヴェール〜ウィランガヒル 151.5km
1月22日(日)第6ステージ アデレード市街地コース 90km
サガンが優勝候補?好調なオーストラリア勢の活躍に期待
すべてのUCIワールドチームが勢ぞろいするUCIワールドツアー初戦。2017年は同時期のツール・ド・サンルイスが開催中止となり(別イベントのブエルタ・デ・サンフアンは開催)、直後にUCIワールドツアー2戦カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースが開催されることも影響し、例年よりも豪華なラインアップがオーストラリアに揃う。
注目は何と言っても世界チャンピオンのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が7年ぶりに出場すること。リクイガスでのプロ入り直後に出場した2010年大会でサガンはランス・アームストロング(アメリカ)らと初日から逃げて周囲を驚かせ、ウィランガヒルのクイーンステージで4位に。落車によって総合では下位に沈んだが、強烈なインパクトをデビュー戦で残した。
サガンは大会の目玉選手として早めに現地入りしている。UCIプロコンチネンタルチームから昇格したボーラ・ハンスグローエに初勝利をもたらすべく、集団スプリントで果敢に勝利を狙ってくるだろう。
大会ディレクターのマイク・ターター氏は「サガンは総合争いにも絡む」と期待を込めるが、そのためにはサガンは登坂時間6分ほどのKOMオールドウィランガヒルで一流クライマーたちに食らいつく必要がある。平坦ステージでボーナスタイムを稼ぐことができれば総合優勝のチャンスは十分にある。サガンが本調子でない場合は2016年総合4位のジェイ・マッカーシー(オーストラリア)がエースを担うことになるだろう。
4度の大会覇者でディフェンディングチャンピオンのサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・スコット)は今年も総合優勝候補の筆頭だ。しかも2016年のグランツールで大ブレイクしたエステバン・チャベス(コロンビア)を引き連れての出場であり、強力な地元オージーチームのバックアップを受ける。
3年連続でKOMオールドウィランガヒルを制しながら未だ総合優勝の経験がないリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)は、オーストラリアTTチャンピオンのローハン・デニス(オーストラリア)と同ロードチャンピオンのマイルズ・スコットソン(オーストラリア)とともにスタートラインに並ぶ。チーム力でBMCレーシングはオリカ・スコットに肩を並べる存在だと言える。
ゲラント・トーマス(イギリス)とセルジオルイスエナオ(コロンビア)を揃えるチームスカイや、ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ)、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)、ロベルト・ヘーシンク(オランダ、ロットNL・ユンボ)、ルイス・マインティーズ(南アフリカ、UAEアブダビ)といったオールラウンダーたちも総合優勝候補の一角。例年以上に激しい山岳バトルが繰り広げられるはずだ。
平坦ステージでサガンに挑むのはカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)をはじめとするピュアスプリンターたち。クリテリウムのオーストラリアチャンピオンに輝いているユアンは2016年にステージ2勝の活躍。小柄な身体を生かした強烈な加速がユアンの武器だ。
他にもベン・スウィフト(イギリス、UAEアブダビ)やタイラー・ファラー(アメリカ、ディメンションデータ)、ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)、ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)らがスプリントに絡むことになりそうだ。
実質的なオーストラリア選抜チームであるUniSAオーストラリアからは、2016年に一旦キャリアにピリオドを打ったキャメロン・マイヤーや、チーム右京所属でオーストラリア選手権ロードレース5位のネイサン・アールといったUCIワールドツアー経験者が出場。トップチームに肩を並べる戦力を有している。
text:Kei Tsuji
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