2016/10/22(土) - 09:26
イタリアの老舗バイクブランドであるグエルチョッティより、ハイエンドモデル「ECLIPSE64-14」をインプレッション。他に類を見ない独創的な設計やオートクレーブ製法、3種類の厳選されたカーボンによって運動性能を高めた創業50周年記念モデルをテストした。
グエルチョッティ ECLIPSE64-14 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
自転車ビジネスのグローバル化が進む今もなお、イタリアには数多くのバイクブランドが本社や生産拠点を置いている。ロードレース先進国の1つである同国において、半世紀以上に渡ってレーシングバイクを造り続けてきたのが、ミラノにあるGuerciotti(グエルチョッティ)だ。同社の創業は1964年のこと。兄イタロと弟パオロのグエルチョッティ兄弟が、ミラノに構えた敷地面積20平米ほどの小さなショップが、その始まりである。
グエルチョッティ兄弟は、シクロクロス選手として競技生活を送りながらショップを切り盛りし、ビジネスを拡大していった。1975年には店舗を拡張すると共に、レーシングバイクの生産に乗り出し、同時期にプロチームへの機材供給を開始する。そして1979年、弟パオロがイタリア代表として地元開催のシクロクロス世界選手権に出場したことや、ジロとブエルタの覇者であるジョンヴァニ・バッタリン(イタリア)などの有力ライダーが使用したことも手伝い、グエルチョッティはレースブランドとしての地位を確立していく。
ECLIPSE64-14は、ブランド創業50周年を記念して誕生した1台だ
クロスカーボンを最表層に配し、高級感を演出
安定感高いハンドリングを支えるフロントフォーク
以降現在に至るまで、ロードとシクロクロスの両カテゴリーで、様々なビッグチームがグエルチョッティのバイクを駆り、世界選手権を初めとした数多くのレースで勝利してきた。ロードレースシーンでは現在、大ベテランのダヴィデ・レベッリン(イタリア)らを擁するUCIプロコンチネンタルチームのCCCスプランディ・ポルコウィチェをサポートしている。
さて、今回インプレッションを行うのは、CCCスプランディ・ポルコウィチェも使用するフラッグシップモデルの「ECLIPSE64-14(イクリプス64-14)」。ブランド創業50周年を記念して2014年に誕生した1台で、半世紀の間に培ってきたテクノロジーやノウハウが惜しみなくつぎ込まれているという。
ひと目見ただけでそれと分かる独特なフォルムのフレームには、3K T300J、UD M30S、T700Gという3種類のカーボンを適材適所で配置している。同じくイタリアを拠点とするハンドメイドモーターサイクルメーカー「BIMOTA(ビモータ)」から協力を得ることでコスト増を抑えながら、製法にこだわり走行性能を高めている。
、モノコック構造の利点を活かしたシートチューブ集合部の造形
トップチューブからヘッドにかけては、リブを設けたかのように一部を張り出すことで、横剛性を強化
ヘッドチューブ周りはインテグレーテッドデザインによって、パズルのごとく隙間を減らし、空気抵抗の低減を図った
高い剛性感を生み出すダウンチューブ
まず、「ECLIPSE64-14」はモノコック構造であるが、他ブランドのモノコックフレームとは異なり、正真正銘の単一構造体として製作されている。一般的に「モノコック構造」を謳うカーボンフレームでは、予め成型しておいた前三角と後三角を繋ぎ合わせている。これは製造コストを抑えるためだが、必ずしも最高の走行性能を得ることはできない。一方、ECLIPSE64-14では、製造時の手間を惜しむことなく一切の継ぎ目を排除することで、素材のポテンシャルを最大限に引き出している。
フレームの成型工程では、巨大な窯の中で原料となるプレプリグを高温に熱し、極めて高い圧力を与えることで強度低下の原因となる部材内の気泡を最小限に抑える「オートクレーブ」という製法を採用している。レーシングカーや航空宇宙産業といった最先端の分野で用いられる製法により、ECLIPSE64-14はプロユースに対応する耐久性と剛性を実現した。
スムーズなルーティングを実現するワイヤー受けの作り込みは、老舗ブランドならでは
軽量化のためにリアエンドまでカーボンで成型されている一方で、クイックレバーやハブと接触する面にはアルミプレートを配置
フレームの随所に、オリジナリティあふれる設計を見てとることができる。トップチューブからヘッドにかけては、リブのように一部を張り出すことで、横剛性を強化している。トップチューブのヘッド側断面積を拡大したことと合わせて、ねじれを抑えハンドリングの安定性を高めた。ヘッドチューブ、ダウンチューブ、そしてフォークはインテグレーテッドデザインによって、パズルのごとく隙間を減らし空気抵抗の低減を図っている。
ヘッド周りと同じくBB周辺も、リブを設けたような形状によって剛性を強化。BB86規格の採用により目一杯拡幅されたBBシェルや、マッシブなダウンチューブ及びチェーンステーと合わせて、ペダリング効率を高めており、ライダーのパワーをくまなく推進力へと変換してくれる。
シートステー集合部は、モノコック構造の利点を活かした複雑な造形となっている。快適性を担うのはリア三角で、ブレーキ取付部付近が屈折した細身のシートステーや、Fメカ台座付近でベンドしたシートチューブが衝撃吸収性に貢献。また、シートクランプも独自の構造となっている。フレーム内部に入る長いスリーブによって面接触でシートポストを支える「LSS」システムにより、確実な固定を可能とした。
イタリアンブランドのバイクらしい華やかな仕上がりのグラフィック
振動吸収性を担う細身のシートステー
振動吸収性に貢献するシートチューブ根元のベンド
細部にわたって、こだわった設計がされているのもこのバイクの特徴だ。軽量化のためにリアエンドまでカーボンで成型されている一方で、クイックレバーやハブと接触する面にはアルミプレートを配置し、信頼性を高めた。ケーブルはシフト、ブレーキ共に内蔵としながら、操作に必要な力を抑えるべく、フリクションロスが最小限になるように設計されている。
販売はフレームセットで行われ、サイズはXS、S、M、Lの4種類が用意される。重量はフレーム単体が970g、フォーク単体が420g。体重制限は100kg。カラーは、細やかで均一なカーボンのクロスに、明るいオレンジをのせたCCCスプランディ・ポルコウィチェのチーム仕様が国内展開される。
老舗イタリアンブランドならではのこだわりを随所に感じさせるグエルチョッティのフラッグシップモデル「ECLIPSE64-14」はどのような走りを魅せるのだろうか。早速インプレッションをお伝えしよう。
ー インプレッション
「イタリアンバイクらしい安定感 長距離レースが得意な1台」藤岡徹也(シルベストサイクル)
いい自転車ですね。速度域が高くても低くても、シッティングでもダンシングでも、バランスが良く、ワンランク上の自転車だと感じました。グエルチョッティといえば、知る人ぞ知るブランドですが、同じイタリアということもあり、私が選手時代に使用していたコルナゴにも似た印象を覚えました。
例えば走り慣れない道で、コーナーの先にいきなり穴ぼこが現れた時のように、回避するために急な動作をしなくてはならないシーンでは、自分自身が少しパニックになってしまうことがあります。しかし、そういった時でもバイクがどっしりと安定を保ってくれるため安心できます。スリッピーな雨の日も不安を覚えにくいのではないでしょうか。
「イタリアンバイクらしい安定感 長距離レースが得意な1台」藤岡徹也(シルベストサイクル)
安定感があるからといって運動性能が犠牲になっているということはなく、登りでダンシングすれば前へ前へと進んでくれますし、脚を止めてからの減速感も少ない。恐らくはジオメトリーに秘訣があり、やや長めのフロントセンターで、性能バランスを取っているのでしょう。まさにイタリアンバイクといった乗り味です。
剛性感があり、ハイパワーで踏み込んでも、ちゃんと受け止めて推進力に変換してくれるあたりは完璧にレースバイクですね。高ケイデンスよりも、ハイトルクで踏んだ時のほうがよく進んでくれます。それでいて、脚への反発が少ないため、ロングライドにも良いでしょうし、一人で淡々と走るサイクリングも気持ち良いでしょう。玄人好みな乗り味です。
レースで使うのならば、大集団スプリントというよりも、消耗戦が得意で、小集団でのアタック合戦やスプリントで決着するようなレースが得意でしょう。脚残りが良いので、体力が消耗してきてからのスプリントもバッチリ反応してくれるでしょう。レースの種別的には、短距離クリテリウムというよりも、ツール・ド・おきなわのような長距離レースで真価を発揮してくれる1台です。荒れていたり、滑りやすい路面でもバイクがフラフラせず、ドシッと安定してくれるので、ギチギチに密集した集団の中でも精神的に疲労せずに済みますし、その分、勝負どころに向けて体力を温存できますね。
また、走行性能とは別のところですが、カラーリングや全体の仕上げはイタリアンブランドらしい華やかさで、多いに所有欲を満たしてくれます。乗り味に納得して購入するという方、ルックスに一目惚れして購入するという方も、どちらのパターンもありそうです。
価格は、他のイタリアンバイクと比べると抑えめですが、イタリアンバイクが欲しいという方にも満足して頂ける乗り味とオーラがあります。独自のシートクランプは、専用工具が必要とあって扱いにくい面もありますが、面で固定するため、フレームとシートポストの双方に負担が少ないという点は評価できますし、バイクの個性の1つにもなっていますね。
「高馬力MT車の様な加速感を持つ、上質なイタリアンバイク」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
上質で、イタリアンバイクらしい1台ですね。踏み込んだ際の感触は、高馬力のMT車でうまくシフトをつなげられた時の「ガンガンガン」という加速感に似ています。フレンチブランドのバイクがCVT的にスーッと伸びていくのに対し、ECLIPSE 64-14は踏み込んだ際の加速感が分かりやすいのです。
「高馬力MT車の様な加速感を持つ、上質なイタリアンバイク」杉山友則(Bicicletta IL CUORE) 力の受け止め方が独特で、非真円ギアを使用したときのように下死点ですっと抜けてくれる印象がありました。クランクの位置的に力を掛けられるところではぐっと進んでくれますし、力を掛けられない下死点付近でも、バイクが前に進み続けてくれます。恐らくはリア三角の造形がペダリングに良い影響を与えているのでしょう。硬すぎない一方で、横方向のウィップもしっかりコントロールできており、ハンガー剛性は絶妙です。
下死点での抜けの良さは、トルクを掛けている時も変わらりません。スプリント的な走りに加え、巡航的な走りも得意とするところで、平地や下りでアウターxトップをしっかり踏むことができます。登りは、高回転でペダルを回しながらのシッティングも良いのですが、トルクを掛けながらでもヨレずに進んでくれました。快適性も良好で、身体に伝わる衝撃の角を丸めてくれるため、長距離レースでも脚を残せるでしょう。
今回の試乗車は適正サイズよりも小さかったため、ハンドリングが多少クイックにも感じましたが、適正サイズならばニュートラルに感じられるはず。フロント周りの剛性感がしっかりとしており、ヘッド周りがヨレることも突っ張ることもありません。思い通りに倒し込むことができ、路面の障害を避ける際や、ラインを読み間違えた時の咄嗟の動作にもきっちり反応してくれます。
試乗車はDURA-ACEで組まれていましたが、ブレーキングパワーもしっかりと受け止めてくれてました。また、エアロ系フレームではないものの、トップチューブからシートチューブにかけての造形が、空気抵抗の低減に効いているような印象があります。
総じて、どんなレースシーンでもこなしてくれる、まさしくオールラウンダーですね。登りのフィーリングが良いことから、アップダウンのあるコースが最も得意とするところでしょうが、平地でも重いギアを踏み切れるので、平坦なレースにも良いでしょう。まさにオールラウンダーと呼ぶにふさわしい一台です。プロやエリートアマはもちろんのこと、レースビギナーでも性能を引き出すことができる懐の深さがあります。
各社のフラッグシップと同様の価格ですが、1台でなんでもこなせるバイクがほしいと言う方にはおすすめ。イタリアンバイクが好きという方なら満足できるはずですし、単に伝統的というだけではなく、古くからのイタリアンバイクの良さを継承しながらも、さらに進化した走りが味わえます。
グエルチョッティ ECLIPSE64-14 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
グエルチョッティ ECLIPSE64-14(フレームセット)
フレーム素材:3K T300J Carbon / UD M30S Carbon / T700G Carbon
フォーク素材:Carbon Monocoque
ヘッド規格:1-1/8 - 1-1/4
BB規格:Press Fit BB86
シートポスト径:27.2mm
シートクランプ径:専用(専用工具付属)
FD台座:直付
サイズ:XS、S、M、L
重 量:フレーム970g/フォーク420g
体重制限:100kg
価 格:540,000円(税別)
インプレッションライダーのプロフィール
藤岡徹也(シルベストサイクル) 藤岡徹也(シルベストサイクル)
シルベストサイクルみのおキューズモール店で店長を務める28歳。プロロードレーサーとしてマトリックスやNIPPOに所属し国内外のレースを転戦。ツール・ド・フクオカでは優勝、ツール・ド・熊野の個人TTで2位などの実績を持つ。今もシルベストの一員として実業団レースに参戦中。スタッフとして乗り方や最適なアイテムの提案、走行会を通じて「自転車の楽しさを伝える」ことをモットーに活動している。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
杉山友則(Bicicletta IL CUORE) 杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
東京都台東区のBicicletta IL CUORE 下谷本店店長。ダミアーノ・クネゴがジュニアチャンピオンだったころからクネゴのファンだという、自他ともに認めるミーハー系自転車乗り。グエルチョッティやコルナゴ、ルックなどヨーロピアンブランドへの造詣が深い。ショップ店長としては、ユーザーがサイクルライフを楽しめる遊び方の提案を心がけている。
CWレコメンドショップページ
ショップHP
![グエルチョッティ ECLIPSE64-14](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/1-impre2016oct-393.jpg)
自転車ビジネスのグローバル化が進む今もなお、イタリアには数多くのバイクブランドが本社や生産拠点を置いている。ロードレース先進国の1つである同国において、半世紀以上に渡ってレーシングバイクを造り続けてきたのが、ミラノにあるGuerciotti(グエルチョッティ)だ。同社の創業は1964年のこと。兄イタロと弟パオロのグエルチョッティ兄弟が、ミラノに構えた敷地面積20平米ほどの小さなショップが、その始まりである。
グエルチョッティ兄弟は、シクロクロス選手として競技生活を送りながらショップを切り盛りし、ビジネスを拡大していった。1975年には店舗を拡張すると共に、レーシングバイクの生産に乗り出し、同時期にプロチームへの機材供給を開始する。そして1979年、弟パオロがイタリア代表として地元開催のシクロクロス世界選手権に出場したことや、ジロとブエルタの覇者であるジョンヴァニ・バッタリン(イタリア)などの有力ライダーが使用したことも手伝い、グエルチョッティはレースブランドとしての地位を確立していく。
![ECLIPSE64-14は、ブランド創業50周年を記念して誕生した1台だ](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/2-impre2016oct-410.jpg)
![クロスカーボンを最表層に配し、高級感を演出](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/3-impre2016oct-429.jpg)
![安定感高いハンドリングを支えるフロントフォーク](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/4-impre2016oct-403.jpg)
以降現在に至るまで、ロードとシクロクロスの両カテゴリーで、様々なビッグチームがグエルチョッティのバイクを駆り、世界選手権を初めとした数多くのレースで勝利してきた。ロードレースシーンでは現在、大ベテランのダヴィデ・レベッリン(イタリア)らを擁するUCIプロコンチネンタルチームのCCCスプランディ・ポルコウィチェをサポートしている。
さて、今回インプレッションを行うのは、CCCスプランディ・ポルコウィチェも使用するフラッグシップモデルの「ECLIPSE64-14(イクリプス64-14)」。ブランド創業50周年を記念して2014年に誕生した1台で、半世紀の間に培ってきたテクノロジーやノウハウが惜しみなくつぎ込まれているという。
ひと目見ただけでそれと分かる独特なフォルムのフレームには、3K T300J、UD M30S、T700Gという3種類のカーボンを適材適所で配置している。同じくイタリアを拠点とするハンドメイドモーターサイクルメーカー「BIMOTA(ビモータ)」から協力を得ることでコスト増を抑えながら、製法にこだわり走行性能を高めている。
![、モノコック構造の利点を活かしたシートチューブ集合部の造形](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/5-impre2016oct-433.jpg)
![トップチューブからヘッドにかけては、リブを設けたかのように一部を張り出すことで、横剛性を強化](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/6-impre2016oct-398.jpg)
![ヘッドチューブ周りはインテグレーテッドデザインによって、パズルのごとく隙間を減らし、空気抵抗の低減を図った](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/9-impre2016oct-469.jpg)
![高い剛性感を生み出すダウンチューブ](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/8-impre2016oct-402.jpg)
まず、「ECLIPSE64-14」はモノコック構造であるが、他ブランドのモノコックフレームとは異なり、正真正銘の単一構造体として製作されている。一般的に「モノコック構造」を謳うカーボンフレームでは、予め成型しておいた前三角と後三角を繋ぎ合わせている。これは製造コストを抑えるためだが、必ずしも最高の走行性能を得ることはできない。一方、ECLIPSE64-14では、製造時の手間を惜しむことなく一切の継ぎ目を排除することで、素材のポテンシャルを最大限に引き出している。
フレームの成型工程では、巨大な窯の中で原料となるプレプリグを高温に熱し、極めて高い圧力を与えることで強度低下の原因となる部材内の気泡を最小限に抑える「オートクレーブ」という製法を採用している。レーシングカーや航空宇宙産業といった最先端の分野で用いられる製法により、ECLIPSE64-14はプロユースに対応する耐久性と剛性を実現した。
![スムーズなルーティングを実現するワイヤー受けの作り込みは、老舗ブランドならでは](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/7-impre2016oct-454.jpg)
![軽量化のためにリアエンドまでカーボンで成型されている一方で、クイックレバーやハブと接触する面にはアルミプレートを配置](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/10-impre2016oct-442.jpg)
フレームの随所に、オリジナリティあふれる設計を見てとることができる。トップチューブからヘッドにかけては、リブのように一部を張り出すことで、横剛性を強化している。トップチューブのヘッド側断面積を拡大したことと合わせて、ねじれを抑えハンドリングの安定性を高めた。ヘッドチューブ、ダウンチューブ、そしてフォークはインテグレーテッドデザインによって、パズルのごとく隙間を減らし空気抵抗の低減を図っている。
ヘッド周りと同じくBB周辺も、リブを設けたような形状によって剛性を強化。BB86規格の採用により目一杯拡幅されたBBシェルや、マッシブなダウンチューブ及びチェーンステーと合わせて、ペダリング効率を高めており、ライダーのパワーをくまなく推進力へと変換してくれる。
シートステー集合部は、モノコック構造の利点を活かした複雑な造形となっている。快適性を担うのはリア三角で、ブレーキ取付部付近が屈折した細身のシートステーや、Fメカ台座付近でベンドしたシートチューブが衝撃吸収性に貢献。また、シートクランプも独自の構造となっている。フレーム内部に入る長いスリーブによって面接触でシートポストを支える「LSS」システムにより、確実な固定を可能とした。
![イタリアンブランドのバイクらしい華やかな仕上がりのグラフィック](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/11-impre2016oct-406.jpg)
![振動吸収性を担う細身のシートステー](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/12-impre2016oct-448.jpg)
![振動吸収性に貢献するシートチューブ根元のベンド](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/13-impre2016oct-459.jpg)
細部にわたって、こだわった設計がされているのもこのバイクの特徴だ。軽量化のためにリアエンドまでカーボンで成型されている一方で、クイックレバーやハブと接触する面にはアルミプレートを配置し、信頼性を高めた。ケーブルはシフト、ブレーキ共に内蔵としながら、操作に必要な力を抑えるべく、フリクションロスが最小限になるように設計されている。
販売はフレームセットで行われ、サイズはXS、S、M、Lの4種類が用意される。重量はフレーム単体が970g、フォーク単体が420g。体重制限は100kg。カラーは、細やかで均一なカーボンのクロスに、明るいオレンジをのせたCCCスプランディ・ポルコウィチェのチーム仕様が国内展開される。
老舗イタリアンブランドならではのこだわりを随所に感じさせるグエルチョッティのフラッグシップモデル「ECLIPSE64-14」はどのような走りを魅せるのだろうか。早速インプレッションをお伝えしよう。
ー インプレッション
「イタリアンバイクらしい安定感 長距離レースが得意な1台」藤岡徹也(シルベストサイクル)
いい自転車ですね。速度域が高くても低くても、シッティングでもダンシングでも、バランスが良く、ワンランク上の自転車だと感じました。グエルチョッティといえば、知る人ぞ知るブランドですが、同じイタリアということもあり、私が選手時代に使用していたコルナゴにも似た印象を覚えました。
例えば走り慣れない道で、コーナーの先にいきなり穴ぼこが現れた時のように、回避するために急な動作をしなくてはならないシーンでは、自分自身が少しパニックになってしまうことがあります。しかし、そういった時でもバイクがどっしりと安定を保ってくれるため安心できます。スリッピーな雨の日も不安を覚えにくいのではないでしょうか。
![「イタリアンバイクらしい安定感 長距離レースが得意な1台」藤岡徹也(シルベストサイクル)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/impre2016oct-723.jpg)
安定感があるからといって運動性能が犠牲になっているということはなく、登りでダンシングすれば前へ前へと進んでくれますし、脚を止めてからの減速感も少ない。恐らくはジオメトリーに秘訣があり、やや長めのフロントセンターで、性能バランスを取っているのでしょう。まさにイタリアンバイクといった乗り味です。
剛性感があり、ハイパワーで踏み込んでも、ちゃんと受け止めて推進力に変換してくれるあたりは完璧にレースバイクですね。高ケイデンスよりも、ハイトルクで踏んだ時のほうがよく進んでくれます。それでいて、脚への反発が少ないため、ロングライドにも良いでしょうし、一人で淡々と走るサイクリングも気持ち良いでしょう。玄人好みな乗り味です。
レースで使うのならば、大集団スプリントというよりも、消耗戦が得意で、小集団でのアタック合戦やスプリントで決着するようなレースが得意でしょう。脚残りが良いので、体力が消耗してきてからのスプリントもバッチリ反応してくれるでしょう。レースの種別的には、短距離クリテリウムというよりも、ツール・ド・おきなわのような長距離レースで真価を発揮してくれる1台です。荒れていたり、滑りやすい路面でもバイクがフラフラせず、ドシッと安定してくれるので、ギチギチに密集した集団の中でも精神的に疲労せずに済みますし、その分、勝負どころに向けて体力を温存できますね。
また、走行性能とは別のところですが、カラーリングや全体の仕上げはイタリアンブランドらしい華やかさで、多いに所有欲を満たしてくれます。乗り味に納得して購入するという方、ルックスに一目惚れして購入するという方も、どちらのパターンもありそうです。
価格は、他のイタリアンバイクと比べると抑えめですが、イタリアンバイクが欲しいという方にも満足して頂ける乗り味とオーラがあります。独自のシートクランプは、専用工具が必要とあって扱いにくい面もありますが、面で固定するため、フレームとシートポストの双方に負担が少ないという点は評価できますし、バイクの個性の1つにもなっていますね。
「高馬力MT車の様な加速感を持つ、上質なイタリアンバイク」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
上質で、イタリアンバイクらしい1台ですね。踏み込んだ際の感触は、高馬力のMT車でうまくシフトをつなげられた時の「ガンガンガン」という加速感に似ています。フレンチブランドのバイクがCVT的にスーッと伸びていくのに対し、ECLIPSE 64-14は踏み込んだ際の加速感が分かりやすいのです。
![「高馬力MT車の様な加速感を持つ、上質なイタリアンバイク」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/impre2016oct-743.jpg)
下死点での抜けの良さは、トルクを掛けている時も変わらりません。スプリント的な走りに加え、巡航的な走りも得意とするところで、平地や下りでアウターxトップをしっかり踏むことができます。登りは、高回転でペダルを回しながらのシッティングも良いのですが、トルクを掛けながらでもヨレずに進んでくれました。快適性も良好で、身体に伝わる衝撃の角を丸めてくれるため、長距離レースでも脚を残せるでしょう。
今回の試乗車は適正サイズよりも小さかったため、ハンドリングが多少クイックにも感じましたが、適正サイズならばニュートラルに感じられるはず。フロント周りの剛性感がしっかりとしており、ヘッド周りがヨレることも突っ張ることもありません。思い通りに倒し込むことができ、路面の障害を避ける際や、ラインを読み間違えた時の咄嗟の動作にもきっちり反応してくれます。
試乗車はDURA-ACEで組まれていましたが、ブレーキングパワーもしっかりと受け止めてくれてました。また、エアロ系フレームではないものの、トップチューブからシートチューブにかけての造形が、空気抵抗の低減に効いているような印象があります。
総じて、どんなレースシーンでもこなしてくれる、まさしくオールラウンダーですね。登りのフィーリングが良いことから、アップダウンのあるコースが最も得意とするところでしょうが、平地でも重いギアを踏み切れるので、平坦なレースにも良いでしょう。まさにオールラウンダーと呼ぶにふさわしい一台です。プロやエリートアマはもちろんのこと、レースビギナーでも性能を引き出すことができる懐の深さがあります。
各社のフラッグシップと同様の価格ですが、1台でなんでもこなせるバイクがほしいと言う方にはおすすめ。イタリアンバイクが好きという方なら満足できるはずですし、単に伝統的というだけではなく、古くからのイタリアンバイクの良さを継承しながらも、さらに進化した走りが味わえます。
![グエルチョッティ ECLIPSE64-14](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/16-impre2016oct-423.jpg)
グエルチョッティ ECLIPSE64-14(フレームセット)
フレーム素材:3K T300J Carbon / UD M30S Carbon / T700G Carbon
フォーク素材:Carbon Monocoque
ヘッド規格:1-1/8 - 1-1/4
BB規格:Press Fit BB86
シートポスト径:27.2mm
シートクランプ径:専用(専用工具付属)
FD台座:直付
サイズ:XS、S、M、L
重 量:フレーム970g/フォーク420g
体重制限:100kg
価 格:540,000円(税別)
インプレッションライダーのプロフィール
![藤岡徹也(シルベストサイクル)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/13/impre2016oct-633.jpg)
シルベストサイクルみのおキューズモール店で店長を務める28歳。プロロードレーサーとしてマトリックスやNIPPOに所属し国内外のレースを転戦。ツール・ド・フクオカでは優勝、ツール・ド・熊野の個人TTで2位などの実績を持つ。今もシルベストの一員として実業団レースに参戦中。スタッフとして乗り方や最適なアイテムの提案、走行会を通じて「自転車の楽しさを伝える」ことをモットーに活動している。
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ショップHP
![杉山友則(Bicicletta IL CUORE)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2016/10/14/impre2016oct-635.jpg)
東京都台東区のBicicletta IL CUORE 下谷本店店長。ダミアーノ・クネゴがジュニアチャンピオンだったころからクネゴのファンだという、自他ともに認めるミーハー系自転車乗り。グエルチョッティやコルナゴ、ルックなどヨーロピアンブランドへの造詣が深い。ショップ店長としては、ユーザーがサイクルライフを楽しめる遊び方の提案を心がけている。
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