2016/11/23(水) - 09:01
カーボンホイールを始めとしたレーシングパーツを展開するスイスブランドのエドコより、ビンディングペダルが登場。本体を円弧状にスライドさせることで、足裏の外側や膝への負担を低減すると同時に、高効率を実現したエルゴノミックデザインの「3AX」を紹介しよう。
エドコ 3AXペダル (c)edco.ch
ビンディングペダルが普及し初めてから約30年。様々な形状/機構の製品が世に送り出されてきたが「ペダル軸と踏み面が水平」という点に関してはどれも共通である。しかし、今回紹介する「3AX」の開発者達は長らく変わらなかったペダルの掟に疑問を持った。
ある調査によれば、96%の人は内向きか外向きに足裏を傾斜させる傾向があるという。実際に、大抵の使い古された靴は、内側か外側のどちらかに偏って削れている。普段生活する中で支障になることは少ないが、ペダリング中においては、足裏の傾き(カント角)に合わせようとした膝や足首に不自然な力が掛かり、各部を故障させてしまうことも。また、痛みを覚えずとパワーロスに繋がっているという。
一般的にはクリート/シューズの間にスペーサーを挟んだりするが、「3AX」ペダルでは、独自機構により踏み面自体を円弧状に4°(左右2°ずつ)スライドさせることでカント角を補正。スライド後はスプリングによってセンタリングされる。なお、他のビンディングと同様に踏み面を回転させるようにもフロートする(最大で9°/左右4.5°ずつ)。
円弧状に4°(左右2°ずつ)スライドさせることでカント角を補正 (c)3axcycling.com
足裏の圧力分布を見る。左のSPD-SLに対して、右の3AXは圧力分布が均等化している (c)3axcycling.com
ルックKeo互換のオリジナルクリートが付属 (c)トライスポーツ
クリートや取り付けボルトなどが付属する (c)edco.ch
「3AX」をシマノSPD-SLと比較した所、大きく3つの点が改善されていたという。1点目は効率。体重の2.5倍のパワーでペダリングしたところ、シマノSPD-SLを使用した場合と比較して、3AXを使用した場合には酸素摂取量が平均3.3%低減。筋電計の結果を合わせると、5.47%の出力効率向上に相当し、少ない力でより高い推進力を得ることが可能となった。
2点目は膝の動きで、オランダのHague Universityがハイスピードカメラを用いて膝の左右のぶれを観察したところ、SPD-SLに対して振れ幅が平均17%低減。3点目は足裏の圧力分布で、SPD-SLでは小指球近辺に集中していた圧力が、3AXでは拇指球近辺とほぼ均等に。膝や足裏の怪我のリスクが軽減されている。
開発に際しては30名のサイクリストから成るテストチームを作り、熱心なアマチュアから現役プロライダーまで、幅広い層からフィードバックを収集。そして、オランダ屈指のエンジニアリングカンパニー「TGSグループ」の協力を得ることで性能に磨きを掛けていったという。
ペダル本体は強度に優れるアルミ合金製で、CNC加工により成形。粉体塗装により耐久性を高めている。組み合わせるアクスルはスチール製。左右ペア重量は388gとなっている。クリートはオリジナル品が付属するが、入手性高いルックKeoでも代用することができる。取り扱いはトライスポーツが行う。
ー インプレッション
「脚に優しくかつ出力の向上も見込める革新的なペダル」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
膝を故障して以来、ペダリング時に痛みが出ないペダルを求めて各社製品を使ってきましたがこのペダルは良いですね。これに替えてから400kmほど乗りましたが、全く痛みが出ません。そればかりか力の伝達が良くなり出力も上がる感覚がありました。
「脚に優しくかつ出力の向上も見込める革新的なペダル」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
私のペダリングは真っ直ぐでなくある点で外に振れるような癖があるため、ペダルには横に逃しがきくものを求めてきました。様々なペダルを試しましたが、ほとんどのペダルで痛みが出てしまい、最終的に自分の脚にはタイムのペダルしか合いませんでしたね。他にも合うものを探していて、今回この「edco 3AX」の購入に至りましたが結果的に大成功でした。
左右に2°ずつ揺れる構造と、フロート角7°と大きく動くクリートにより自由度が広がり、良い意味で自然なペダリングが行なえます。足首や膝等の各関節が無理のない角度で踏み込めるようになるため、負担が少なく脚に優しいのだと感じます。左右に角度を変えるだけなので、シューズが横に動いてしまう感覚もなく、ストレスフリーで違和感のないペダリングができますね。
足先の動きが大きいため、最初にはめたときはペダルのネジが緩んでクリートがガタついているような、そんな感覚を覚えました。踏み込んだときに外れてしまわないか不安がありましたが、全く逆でしっかりキャッチされたクリートは思い切りスプリントしてもズレることはありません。クリートはちゃんと固定された上で左右に角度を変えてくれます。
「左右に揺れる構造により自動的に適切な角度へ導いてくれる」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
膝に優しいだけでなく、これに慣れてくると従来のペダルでは使えていなかった筋肉を使えているような感触も得られました。左右に揺れる構造により、ペダリング時に自身の最適な角度に合わせてくれ、使われる関節や筋肉が力を発揮しやすいよう引き出してくれる。ペダリングが一瞬止まる上下死点まで余すこと無く力を伝えられる感覚がありました。普段パワーメーターを使っていないので従来との数値比較はできませんが、公式で言う5%の出力向上というのもあながちウソではないのかなと思います。
今まではペダルによって脚の動きが制限されていたものが、本来動きたい角度に可変してくれスムーズな漕ぎ出しを見せてくれます。スプリントの最初の踏み出しなど、ペダリングに変化がかかる際もその違いに気がつくのではないかと思います。シッティングとダンシングの切り替えも大変行いやすく繋ぎの良さを感じました。
自分と同じようにライド中の膝等の関節の痛みに悩んでいる人にはもちろん、レース志向でもっと出力を上げたいという方にもオススメですね。製品の重量や価格といった点がネックではありますが、それを補って余る性能の良さはあると思います。
エドコ 3AX
クリート:ルックKeo互換
ペア重量:388g
付属品:クリート(ルックKeoに互換性あり)、クリートボルト、クリートワッシャー
価 格:34,800円(税別)
インプレッションライダーのプロフィール
杉山友則(Bicicletta IL CUORE) 杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
東京都台東区のBicicletta IL CUORE 下谷本店店長。ダミアーノ・クネゴがジュニアチャンピオンだったころからクネゴのファンだという、自他ともに認めるミーハー系自転車乗り。グエルチョッティやコルナゴ、ルックなどヨーロピアンブランドへの造詣が深い。ショップ店長としては、ユーザーがサイクルライフを楽しめる遊び方の提案を心がけている。
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ショップHP
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ビンディングペダルが普及し初めてから約30年。様々な形状/機構の製品が世に送り出されてきたが「ペダル軸と踏み面が水平」という点に関してはどれも共通である。しかし、今回紹介する「3AX」の開発者達は長らく変わらなかったペダルの掟に疑問を持った。
ある調査によれば、96%の人は内向きか外向きに足裏を傾斜させる傾向があるという。実際に、大抵の使い古された靴は、内側か外側のどちらかに偏って削れている。普段生活する中で支障になることは少ないが、ペダリング中においては、足裏の傾き(カント角)に合わせようとした膝や足首に不自然な力が掛かり、各部を故障させてしまうことも。また、痛みを覚えずとパワーロスに繋がっているという。
一般的にはクリート/シューズの間にスペーサーを挟んだりするが、「3AX」ペダルでは、独自機構により踏み面自体を円弧状に4°(左右2°ずつ)スライドさせることでカント角を補正。スライド後はスプリングによってセンタリングされる。なお、他のビンディングと同様に踏み面を回転させるようにもフロートする(最大で9°/左右4.5°ずつ)。
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「3AX」をシマノSPD-SLと比較した所、大きく3つの点が改善されていたという。1点目は効率。体重の2.5倍のパワーでペダリングしたところ、シマノSPD-SLを使用した場合と比較して、3AXを使用した場合には酸素摂取量が平均3.3%低減。筋電計の結果を合わせると、5.47%の出力効率向上に相当し、少ない力でより高い推進力を得ることが可能となった。
2点目は膝の動きで、オランダのHague Universityがハイスピードカメラを用いて膝の左右のぶれを観察したところ、SPD-SLに対して振れ幅が平均17%低減。3点目は足裏の圧力分布で、SPD-SLでは小指球近辺に集中していた圧力が、3AXでは拇指球近辺とほぼ均等に。膝や足裏の怪我のリスクが軽減されている。
開発に際しては30名のサイクリストから成るテストチームを作り、熱心なアマチュアから現役プロライダーまで、幅広い層からフィードバックを収集。そして、オランダ屈指のエンジニアリングカンパニー「TGSグループ」の協力を得ることで性能に磨きを掛けていったという。
ペダル本体は強度に優れるアルミ合金製で、CNC加工により成形。粉体塗装により耐久性を高めている。組み合わせるアクスルはスチール製。左右ペア重量は388gとなっている。クリートはオリジナル品が付属するが、入手性高いルックKeoでも代用することができる。取り扱いはトライスポーツが行う。
ー インプレッション
「脚に優しくかつ出力の向上も見込める革新的なペダル」杉山友則(Bicicletta IL CUORE)
膝を故障して以来、ペダリング時に痛みが出ないペダルを求めて各社製品を使ってきましたがこのペダルは良いですね。これに替えてから400kmほど乗りましたが、全く痛みが出ません。そればかりか力の伝達が良くなり出力も上がる感覚がありました。
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私のペダリングは真っ直ぐでなくある点で外に振れるような癖があるため、ペダルには横に逃しがきくものを求めてきました。様々なペダルを試しましたが、ほとんどのペダルで痛みが出てしまい、最終的に自分の脚にはタイムのペダルしか合いませんでしたね。他にも合うものを探していて、今回この「edco 3AX」の購入に至りましたが結果的に大成功でした。
左右に2°ずつ揺れる構造と、フロート角7°と大きく動くクリートにより自由度が広がり、良い意味で自然なペダリングが行なえます。足首や膝等の各関節が無理のない角度で踏み込めるようになるため、負担が少なく脚に優しいのだと感じます。左右に角度を変えるだけなので、シューズが横に動いてしまう感覚もなく、ストレスフリーで違和感のないペダリングができますね。
足先の動きが大きいため、最初にはめたときはペダルのネジが緩んでクリートがガタついているような、そんな感覚を覚えました。踏み込んだときに外れてしまわないか不安がありましたが、全く逆でしっかりキャッチされたクリートは思い切りスプリントしてもズレることはありません。クリートはちゃんと固定された上で左右に角度を変えてくれます。
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膝に優しいだけでなく、これに慣れてくると従来のペダルでは使えていなかった筋肉を使えているような感触も得られました。左右に揺れる構造により、ペダリング時に自身の最適な角度に合わせてくれ、使われる関節や筋肉が力を発揮しやすいよう引き出してくれる。ペダリングが一瞬止まる上下死点まで余すこと無く力を伝えられる感覚がありました。普段パワーメーターを使っていないので従来との数値比較はできませんが、公式で言う5%の出力向上というのもあながちウソではないのかなと思います。
今まではペダルによって脚の動きが制限されていたものが、本来動きたい角度に可変してくれスムーズな漕ぎ出しを見せてくれます。スプリントの最初の踏み出しなど、ペダリングに変化がかかる際もその違いに気がつくのではないかと思います。シッティングとダンシングの切り替えも大変行いやすく繋ぎの良さを感じました。
自分と同じようにライド中の膝等の関節の痛みに悩んでいる人にはもちろん、レース志向でもっと出力を上げたいという方にもオススメですね。製品の重量や価格といった点がネックではありますが、それを補って余る性能の良さはあると思います。
エドコ 3AX
クリート:ルックKeo互換
ペア重量:388g
付属品:クリート(ルックKeoに互換性あり)、クリートボルト、クリートワッシャー
価 格:34,800円(税別)
インプレッションライダーのプロフィール
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東京都台東区のBicicletta IL CUORE 下谷本店店長。ダミアーノ・クネゴがジュニアチャンピオンだったころからクネゴのファンだという、自他ともに認めるミーハー系自転車乗り。グエルチョッティやコルナゴ、ルックなどヨーロピアンブランドへの造詣が深い。ショップ店長としては、ユーザーがサイクルライフを楽しめる遊び方の提案を心がけている。
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