ロンドン中心部リージェントストリートの緩斜面スプリントでカレイブ・ユアン(オリカ・バイクエクスチェンジ)が勝利。スティーブ・クミングス(ディメンションデータ)がチームに大会連覇をもたらした。



ロンドン中心部のトラファルガー広場を駆け抜けるロンドン中心部のトラファルガー広場を駆け抜ける photo:Kei Tsuji
リージェントストリートをスタートする選手たちリージェントストリートをスタートする選手たち photo:Kei Tsuji逃げるテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)ら4名逃げるテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)ら4名 photo:Kei Tsuji


逃げるテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)ら4名逃げるテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)ら4名 photo:Kei Tsuji8日間にわたって開催されたツアー・オブ・ブリテンを締めくくるのは人口700万人の大都市ロンドンを舞台にしたクリテリウム的な平坦レース。市内中心部を大々的に規制し、6.2kmの周回コース(16周:全長100km)が作られた。

チームメイトに守られて走るスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)チームメイトに守られて走るスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ) photo:Kei Tsujiまさにロンドンの心臓部とも言えるピカデリーサーカスやトラファルガースクエア、官庁が立ち並ぶホワイトホールを経て、リーゼントの語源となったリージェントストリートでフィニッシュを迎える。ポールモールからクリミア戦争記念碑を右に曲がり、ウォーターループレイスからリージェントストリートに向かう最終ストレートは勾配2%ほどの登り基調だ。

現役最後のロードレースを走るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ)現役最後のロードレースを走るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ) photo:Kei Tsuji「イギリスだから悪天候なのは仕方ない」という定型文が1週間繰り返されたが、最終日のロンドンの空は青く晴れ渡った。

気温25度を超える暑さの中、スプリント賞トップのヤスパー・ボーフンハス(オランダ、アンポスト・チェーンリアクション)がジャージキープのためにファーストアタックを仕掛ける。ボーフンハスにはトーマス・スチュアート(イギリス、マディソンジェネシス)、ガブリエル・クライ(イギリス、イギリスナショナルチーム)、そしてテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)が飛びついた。

例年スプリンターの活躍が目立つツアー・オブ・ブリテンだが、今年は逃げ切りが決まるパターンが多く、本格的なスプリントに持ち込まれたのは2ステージのみ。それだけにスプリンターチームのモチベーションは高い。ディメンションデータに加えてロット・ソウダルやエティックス・クイックステップがメイン集団のコントロールに参加する。逃げグループとのタイム差が1分を超えることはなかった。

中間スプリントを連取したボーフンハスが仕事を終えて下がると先頭はスチュアート、クライ、フィニーの3名に。タイム差が縮まり続ける中、「イギリスの自転車への愛とエネルギーを感じた」というフィニーが諦めずにアタックしたものの、最終周回を前に逃げは全て引き戻された。



ピカデリーサーカスからリージェントストリートに入るプロトンピカデリーサーカスからリージェントストリートに入るプロトン photo:Kei Tsuji
観光地ピカデリーサーカスを駆け抜ける観光地ピカデリーサーカスを駆け抜ける photo:Kei Tsuji


リージェントストリートを駆けるテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)らリージェントストリートを駆けるテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)ら photo:Kei Tsuji今回出場しているエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)、そしてチームウィギンズのメンバーの多くはリオ五輪トラックレースの影響で長距離ロードレースにまだ順応できていない状態。

粘り強く逃げ続けるテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)ら粘り強く逃げ続けるテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)ら photo:Kei Tsujiとは言え1ヶ月後のUCIロード世界選手権が平坦コースで行われるため、アルカンシェルを狙うスプリンターたちはここで乗り込んで起きたいところ。「早くロードレースに身体をシフトしなければならない。今日はその重要なテストだ」と語っていたヴィヴィアーニ擁するチームスカイがハイスピードでメイン集団を牽引して最終周回を駆け抜ける。

エティックス・クイックステップが集団コントロールを開始エティックス・クイックステップが集団コントロールを開始 photo:Kei Tsuji主導権を奪ったロット・ソウダルが先頭に立ち、残り1kmからイェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)がアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)のためにリードアウト。しかしコーナーの立ち上がりでグライペルが意図的にペースダウンする。瞬時に距離を広げたデブシェールがそのままロングスパートに持ち込んだ。

先行したイェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)を捉えるカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)ら先行したイェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)を捉えるカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)ら photo:Kei Tsuji最終コーナーを先頭で抜けたデブシェールと、慌てて追撃スプリントするスプリンターたち。リードを得ていたデブシェールだったが、登り勾配の最終ストレートで徐々にスピードを失っていく。デブシェールは後方から弾丸のように飛んできたユアンやディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)にパスされる。オランダチャンピオンとの競り合いで、ユアンが勝利した。

ブリテン最終ステージを制したカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)ブリテン最終ステージを制したカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ) photo:Kei Tsuji「最終周回はコーナーを抜けるたびにスプリントの繰り返し。最終的にロット・ソウダルが複雑な戦略で挑んできた。どうしてかは分からないけど、グライペルはこのブリテンでスプリントを狙わないらしく、デブシェールに先行させる作戦だった。幸い彼に追いつくことができてよかったよ」と、今シーズン5勝目を飾ったユアン。身長165cmの小柄な22歳は着実にその力を伸ばしている。

「オリカはまだステージ0勝だったので、最後のチャンスに賭けたかった。リオ五輪トラックレースからロードレースに復帰した選手たちは長距離ステージで苦しんでいたものの、今日のような短いステージなら対応可能だった。彼らが勝利に導いてくれた。この勝利はシーズン後半に向けての起爆剤になるよ」。

平坦コースでタイム差はつかず、イエローヘルメットを被ってロンドン市街地を駆け抜けたスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)が総合優勝。2008年と2011年に総合2位を経験しているブリテンで初めてその頂点に立った。ディメンションデータとしては大会連覇を達成。

スタート前に少しナーバスな表情を見せていたクミングスはレースを終えて「ようやく笑ってこの勝利を堪能できる。フィニッシュラインを通過するまでひと時も油断できなかった。トラブルを避けるために力を尽くしてくれたチームメイトに感謝している」とコメントしている。



念願のステージ優勝を果たしたカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)念願のステージ優勝を果たしたカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ) photo:Kei Tsuji敢闘賞を獲得したテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)敢闘賞を獲得したテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji
総合表彰台 3位ドゥムラン、1位クミングス、2位デニス総合表彰台 3位ドゥムラン、1位クミングス、2位デニス photo:Kei Tsuji


ツアー・オブ・ブリテン2016第8ステージ結果
1位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)    2h09’24”
2位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
3位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)
4位 ボーイ・ファンポッペル(オランダ、トレック・セガフレード)
5位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
6位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
7位 ダニエル・マクレー(イギリス、イギリスナショナルチーム)
8位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ワンプロサイクリング)
9位 ニコラ・ルッフォニ(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 パオロ・シミオン(イタリア、バルディアーニCSF)

個人総合成績
1位 スティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)       31h30’45”
2位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)            +26”
3位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)          +38”
4位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)            +1’02”
5位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ドラパック)    +1’21”
6位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)            +1’26”
7位 シャンドロ・ムーリセ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)      +1’48”
8位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)               +1’52”
9位 ジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、エティックス・クイックステップ)   +2’12”
10位 ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード)         +2’32”

ポイント賞
1位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)         53pts
2位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)            47pts
3位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)     41pts

山岳賞
1位 シャンドロ・ムーリセ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)       60pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)             42pts
3位 ミゲル・ベニトディエス(スペイン、カハルーラル)             27pts

スプリント賞
1位 ヤスパー・ボーフンハス(オランダ、アンポスト・チェーンリアクション)   24pts
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)             12pts
3位 ジョナサン・マケヴォイ(イギリス、NFTO)                 10pts

チーム総合成績
1位 チームスカイ                              94h43’33”
2位 ワンティ・グループグベルト                       +1’17”
3位 エティックス・クイックステップ                     +2’15”

text&photo:Kei Tsuji in London, United Kingdom

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