2016/09/07(水) - 05:40
比較的難易度が低く、スプリンター向きと思われたツアー・オブ・ブリテン第3ステージ。序盤から逃げた地元イングランドのイアン・スタナード(チームスカイ)がスプリンターチームの計画を狂わす独走勝利を飾った。
ミドルウィックの街を駆け抜けるプロトン photo:Kei Tsuji
子供を焦らせながらなかなかハイタッチしないテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji
逃げを見送ったメイン集団が田園風景の中を進む photo:Kei Tsuji
ツアー・オブ・ブリテン2016第3ステージ image:Tour of Britainイングランド北西部のチェシャー州を駆けるブリテン第3ステージ。コングルトンからナッツフォードまでの179.4kmコースの前半はほぼフラット。後半にかけて2級、1級、1級とカテゴリー山岳が連続するため獲得標高差は2,146mに達する。
スタート直後に形成されたイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)を含む逃げ photo:Kei Tsuji冷たい霧雨に包まれた前日とは打って変わって、この日は朝からポカポカとした陽気に包まれた。スコットランドでの開幕からすでにグレートブリテン島を数百キロ南下したことも手伝って最高気温も25度まで上昇。この日は朝から晩まで雨に降られなかった。
スタジエール(研修生)としてエティックス・クイックステップで走っているアドリアン・コスタ(アメリカ)は前日の落車の影響でDNS。2年連続ジュニア世界選手権個人タイムトライアルで銀メダルを獲得し、ツール・ド・ブルターニュ総合優勝、ツアー・オブ・ユタ総合2位、ツール・ド・ラヴニール総合3位という成績を残す19歳が今大会2人目のリタイアとなる。
開始直後の田舎道で集団から抜け出したのはイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)、クリスティアン・ハウス(イギリス、ワンプロサイクリング)、グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール)、マット・クロンショー(イギリス、マディソン・ジェネシス)という4名。しばらくメイン集団から単発的なカウンターアタックがかかったものの、50km/h前後で巡航する先頭グループに追いつく選手は現れなかった。
観客が詰めかけた街中を駆け抜けていく photo:Kei Tsuji
リーダージャージを着て走るジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
カヴェンディッシュを中心に集団前方を固めるディメンションデータ photo:Kei Tsuji
1級山岳を先頭で登るイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
山岳ポイントを狙って飛び出すニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) photo:Kei Tsuji集団先頭でペースをコントロールしたエティックス・クイックステップに逃げ吸収の意志はなく、スタナードら4名のリードは瞬く間に7分まで広がる。集団牽引にはディメンションデータも加わったものの、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)のスプリント狙いではなく総合2位スティーブ・クミングス(イギリス)の総合ポジションを守るための意思表示。その後も積極的に集団を率いるスプリンターチームは現れなかった。
リーダージャージを含むメイン集団が比較的ゆっくり登りを進む photo:Kei Tsujiカヴェンディッシュは「1チーム6名のブリテンでは総合狙いかスプリント狙いのどちらかを選択しなければならない。両方を追い求めると両方を失ってしまう可能性もある。ディメンションデータはスティーブの総合優勝が第一目標。逃げグループとのタイム差が6分まで広がった時点で、集団スプリントにならないことが明らかだった」と語る。
独走でフィニッシュするイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji同様にカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は「スタナードという強力な選手が逃げ、スプリンターチームが積極的に追わない時点でゲームオーバーだった。やはり1チームの人数が少ないので、逃げを捕まえるための集団牽引に全ての力を使うのはリスクが大きすぎる」とコメント。スプリンター向きのステージでありながら、先頭4名の逃げきりが事実上容認された。
スプリントでクリスティアン・ハウス(イギリス、ワンプロサイクリング)を下したグラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール)がステージ2位 photo:Kei Tsuji普段はアシストとして長時間集団を牽引することの多いスタナードが、この日最後の1級山岳キャット・アンド・フィドル通過後にアタック。全員イギリス人で構成された逃げグループの中から抜け出したスタナードは、追走するブリッグスとハウスを引き離し、さらにメイン集団から7分以上のリードを維持したままフィニッシュまでの平坦路を駆け抜ける。
5分43秒遅れの集団先頭でスプリントするニコラ・ルッフォニ(イタリア、バルディアーニCSF)とダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ) photo:Kei Tsujiイングランド東部のエセックス出身で、現在はマンチェスターに住むスタナードが馴染みのあるチェシャー州の幹線道路を快走。最終的にブリッグスとハウスを1分46秒引き離し、ナッツフォードのタットンパークに引かれたフィニッシュラインに飛び込んだ。
エーススプリンターを務めるエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)が初日の落車で膝を痛めたこともあり、逃げで展開を作り出したチームスカイ。スタナードは「地元を走るコースへのモチベーションは高かった。今日は何としても逃げに乗りたかった」とコメントする。
オンループ・ニュースブラッドで2勝し、今年のパリ〜ルーベとE3ハレルベークでそれぞれ3位に入っているスタナード。「逃げ切り勝利はいつだって素晴らしい。ましてや独走なんて特別だ。山岳を乗り切った時点でまだタイム差が5分以上あったので、逃げ切りは確実だった。常にタイム差を聞きながら走り、最後まで落ち着いて走った。コースの沿道にはたくさんの観客が詰めかけていて、大きな声援を受けたよ」。
連日スプリントで上位に絡むラモン・シンケルダム(オランダ、ジャイアント・アルペシン)にポイント賞ジャージが移ったことを除いて、総合成績や山岳賞、スプリント賞に変動はなし。ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)の攻撃を防ぎきったシャンドロ・ムーリセ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)が1ポイント差で山岳賞ジャージを守っている。ジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、エティックス・クイックステップ)が引き続き黄色いリーダージャージを着て獲得標高差4,200mオーバーの第4ステージを走る。
ステージ優勝を飾ったイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
平穏な1日を終え、リーダージャージを守ったジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
ツアー・オブ・ブリテン2016第3ステージ結果
1位 イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ) 4h14’12”
2位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール) +1’46”
3位 クリスティアン・ハウス(イギリス、ワンプロサイクリング)
4位 ニコラ・ルッフォニ(イタリア、バルディアーニCSF) +5’43”
5位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)
6位 ラモン・シンケルダム(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
7位 クリストファー・レイサム(イギリス、チームウィギンズ)
8位 リック・ツァベル(ドイツ、BMCレーシング)
9位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ドラパック)
10位 ルーカ・メスゲツ(スロベニア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
個人総合成績
1位 ジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、エティックス・クイックステップ) 12h53’15”
2位 スティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ) +06”
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +1’04”
4位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ) +1’08”
5位 シャンドロ・ムーリセ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)
6位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)
7位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ドラパック) +1’12”
8位 ギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループグベルト)
9位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
10位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) +1’16”
ポイント賞
1位 ラモン・シンケルダム(オランダ、ジャイアント・アルペシン) 23pts
2位 ニコラ・ルッフォニ(イタリア、バルディアーニCSF) 22pts
3位 クリストファー・レイサム(イギリス、チームウィギンズ) 17pts
山岳賞
1位 シャンドロ・ムーリセ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト) 33pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) 32pts
3位 クリスティアン・ハウス(イギリス、ワンプロサイクリング) 26pts
スプリント賞
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 9pts
2位 ヤスパー・ボーフンハス(オランダ、アンポスト・チェーンリアクション) 9pts
3位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール) 6pts
チーム総合成績
1位 エティックス・クイックステップ 38h45’46”
2位 ワンティ・グループグベルト +1’00”
3位 チームスカイ +2’49”
text&photo:Kei Tsuji in Manchester, United Kingdom
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スタジエール(研修生)としてエティックス・クイックステップで走っているアドリアン・コスタ(アメリカ)は前日の落車の影響でDNS。2年連続ジュニア世界選手権個人タイムトライアルで銀メダルを獲得し、ツール・ド・ブルターニュ総合優勝、ツアー・オブ・ユタ総合2位、ツール・ド・ラヴニール総合3位という成績を残す19歳が今大会2人目のリタイアとなる。
開始直後の田舎道で集団から抜け出したのはイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)、クリスティアン・ハウス(イギリス、ワンプロサイクリング)、グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール)、マット・クロンショー(イギリス、マディソン・ジェネシス)という4名。しばらくメイン集団から単発的なカウンターアタックがかかったものの、50km/h前後で巡航する先頭グループに追いつく選手は現れなかった。
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エーススプリンターを務めるエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)が初日の落車で膝を痛めたこともあり、逃げで展開を作り出したチームスカイ。スタナードは「地元を走るコースへのモチベーションは高かった。今日は何としても逃げに乗りたかった」とコメントする。
オンループ・ニュースブラッドで2勝し、今年のパリ〜ルーベとE3ハレルベークでそれぞれ3位に入っているスタナード。「逃げ切り勝利はいつだって素晴らしい。ましてや独走なんて特別だ。山岳を乗り切った時点でまだタイム差が5分以上あったので、逃げ切りは確実だった。常にタイム差を聞きながら走り、最後まで落ち着いて走った。コースの沿道にはたくさんの観客が詰めかけていて、大きな声援を受けたよ」。
連日スプリントで上位に絡むラモン・シンケルダム(オランダ、ジャイアント・アルペシン)にポイント賞ジャージが移ったことを除いて、総合成績や山岳賞、スプリント賞に変動はなし。ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)の攻撃を防ぎきったシャンドロ・ムーリセ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)が1ポイント差で山岳賞ジャージを守っている。ジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、エティックス・クイックステップ)が引き続き黄色いリーダージャージを着て獲得標高差4,200mオーバーの第4ステージを走る。
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ツアー・オブ・ブリテン2016第3ステージ結果
1位 イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ) 4h14’12”
2位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール) +1’46”
3位 クリスティアン・ハウス(イギリス、ワンプロサイクリング)
4位 ニコラ・ルッフォニ(イタリア、バルディアーニCSF) +5’43”
5位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)
6位 ラモン・シンケルダム(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
7位 クリストファー・レイサム(イギリス、チームウィギンズ)
8位 リック・ツァベル(ドイツ、BMCレーシング)
9位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ドラパック)
10位 ルーカ・メスゲツ(スロベニア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
個人総合成績
1位 ジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、エティックス・クイックステップ) 12h53’15”
2位 スティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ) +06”
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +1’04”
4位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ) +1’08”
5位 シャンドロ・ムーリセ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)
6位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)
7位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ドラパック) +1’12”
8位 ギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループグベルト)
9位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
10位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) +1’16”
ポイント賞
1位 ラモン・シンケルダム(オランダ、ジャイアント・アルペシン) 23pts
2位 ニコラ・ルッフォニ(イタリア、バルディアーニCSF) 22pts
3位 クリストファー・レイサム(イギリス、チームウィギンズ) 17pts
山岳賞
1位 シャンドロ・ムーリセ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト) 33pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) 32pts
3位 クリスティアン・ハウス(イギリス、ワンプロサイクリング) 26pts
スプリント賞
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 9pts
2位 ヤスパー・ボーフンハス(オランダ、アンポスト・チェーンリアクション) 9pts
3位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール) 6pts
チーム総合成績
1位 エティックス・クイックステップ 38h45’46”
2位 ワンティ・グループグベルト +1’00”
3位 チームスカイ +2’49”
text&photo:Kei Tsuji in Manchester, United Kingdom
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