誰もが予想しなかった展開。アルベルト・コンタドールとナイロ・キンタナを含む14名がスタートから逃げ切り、乗り損ねたチームスカイは全滅。キンタナとのタイム差が拡大し、コンタドールは総合順位を4位に上げた。



アラゴン州のサビニャニゴからピレネー山脈に向かう第15ステージアラゴン州のサビニャニゴからピレネー山脈に向かう第15ステージ photo:TDWsport/Kei Tsuji


全力で逃げる先頭14名。マイヨロホのナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)もペースアップに加わる全力で逃げる先頭14名。マイヨロホのナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)もペースアップに加わる photo:TDWsport/Kei Tsuji先行を許してしまったチームスカイやオリカ・バイクエクスチェンジが追走を試みる先行を許してしまったチームスカイやオリカ・バイクエクスチェンジが追走を試みる photo:TDWsport/Kei Tsujiキンタナやコンタドールを自ら追いかけるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)キンタナやコンタドールを自ら追いかけるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport/Kei Tsujiタイム差はみるみる内に開いていくタイム差はみるみる内に開いていく photo:TDWsport/Kei Tsuji積極的に先頭グループを牽くアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)積極的に先頭グループを牽くアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:TDWsport/Kei Tsujiナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が先頭で登りを牽き続けるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が先頭で登りを牽き続ける photo:TDWsport/Kei Tsujiナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)とジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)が頂上を目指すナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)とジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)が頂上を目指す photo:TDWsport/Kei Tsujiアラゴン州のサビニャニゴからピレネー山脈に向かう第15ステージは118.5kmというショートコース。中盤から3級、2級、1級と山岳が続き、最後は登坂距離14.5km、平均勾配4.6%の1級山岳アラモン・フォルミガルを駆け上がってゴールする。アラモン・フォルミガルでの山岳バトルがシナリオだが、この日はスタート直後から全く予想外の展開が待ち受けることとなった。

リアルスタートが切られた直後のアタック合戦に加わったのは総合6位のアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)。これをきっかけにステージ狙いの選手だけでなく総合勢もアタックに乗り、気づけば14名の逃げグループ内にはコンタドールとマイヨロホのナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がそれぞれアシスト2名を従えて加わる状態に。

加えて総合11位ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)、総合14位ダヴィド・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ)、山岳賞ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)、同2位オマル・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)ら先行したいメンバーが多く乗ったことで、先頭14名はフルスロットルで先を急いだ。

この逃げに最も損害を食らったのは、総合2位クリス・フルーム(イギリス)を擁するチームスカイ。誰一人として逃げに乗せることができず、総合5位のレオポルド・ケーニッヒ(チェコ)をさらに後方の集団に残してしまう。

フルームは同じく逃げに乗せることができなかったアスタナやオリカ・バイクエスクチェンジと共に追走を試みたが、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)らモビスターが撹乱したことでペースは上がらない。この動きの中でチームスカイはアシストを消耗させ、メイン集団にはフルームとダビ・ロペスガルシア(スペイン)を残すのみとなってしまった。

90名以上の遅れグループはチームスカイのアシスト勢が追走を試みていたものの、キンタナ・コンタドールグループが全速力で逃げたため、みるみるうちに差が広がり最初の山岳を前にして合流を断念。別府史之(トレック・セガフレード)や新城幸也(ランプレ・メリダ)も含まれたこのグループはグルペットとなり、最終的に53分以上遅れてフィニッシュ。本来であればタイムアウトになるはずだったが、審判団の救済措置により特例で翌日の出走を認められている。

中盤にはフルームグループからはスカイ唯一のアシストだったロペスガルシアが力尽き、いよいよフルームは孤立。しかしミケーレ・スカルポーニ(イタリア)の総合順位を落としたくないアスタナが牽いたことでタイム差は3分で頭打ちになる。

2級山岳コテファブロ峠(12.5km/平均4.3%)ではオリカ・バイクエスクチェンジが総合4位のサイモン・イェーツ(イギリス)をアシストに回し、エステバン・チャベス(コロンビア)の総合3位を守る作戦に打って出る。さらに下りでは総合7位サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)が猛烈なペースアップを行ったことでタイム差は1分45秒にまで短縮した。

しかし下りを終え、1級アラモン・フォルミガルに至る区間では再び先頭グループがギアを入れ替えて猛ダッシュ。これによってリードは再び2分半にまで広がり、そのままの状態で本格的な登りへと突入していった。

徐々に人数を減らしていく先頭グループではキンタナが積極的にペースを上げ、2分差の追走では苦しい走りを見せていたフルームがイェーツと共に遂に脱落。バルベルデやチャベスの先行を許し、キンタナとのタイム差拡大は絶対的なものとなっていく。

一方のキンタナ、コンタドール、ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)の3名となっていた先頭では残り1.6kmでキンタナがペースを上げ、コンタドールが脱落。残る2名はそのままフィニッシュに到達し、最後はブランビッラが先着しステージ優勝を挙げた。ブランビッラは今年のジロ・デ・イタリア第8ステージに続くグランツアーの勝利だ。



頂上ゴールを制したジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)頂上ゴールを制したジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ) photo:TDWsport/Kei Tsuji
キンタナから2分37秒遅れで辿り着いたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)キンタナから2分37秒遅れで辿り着いたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport/Kei Tsuji今年のグランツアー2勝目を祝うジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)今年のグランツアー2勝目を祝うジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ) photo:TDWsport/Kei Tsuji



また遅れたコンタドールは34秒遅れでフィニッシュし、追走グループ内の最高順位は最終盤にバルベルデやスカルポーニを置き去りにしたチャベス。フルームは2分37秒遅れで辿り着き、結果的にキンタナとのタイム差は3分37秒にまで広がった。コンタドールは総合3位には届かなかったものの、総合順位を6位→4位へと浮上。フォルモロは11位→8位、デラクルスは14位→9位とそれぞれ躍進してみせた。

各選手のコメントは続報にてお伝えします。



ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第15ステージ結果
1位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
3位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
4位 ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)
5位 ダヴィド・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ)
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)
7位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)
8位 マトベイ・マムキン(ロシア、カチューシャ)
9位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
10位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)
2h54’30”
+03”
+25”
+28”
+31”
+34”
+53”
+1’16”
+1’53”
+1’59”


マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)
5位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
7位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)
8位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)
9位 ダヴィド・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ)
10位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)
61h36’07”
+3’37”
+3’57”
+4’02”
+5’07”
+6’12”
+6’43”
+7’17”
+7’23”
+7’39”


マイヨプントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 
3位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード) 
93pts
86pts
767pts


マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)
2位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)
56pts
48pts
30pts


マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)
7pts
17pts
27pts


チーム総合成績
1位 BMCレーシング
2位 モビスター
3位 キャノンデール・ドラパック
183h43’06”
24’20”
+24’50”


敢闘賞
アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)

text:So.Isobe

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