2016/08/25(木) - 03:52
数キロ続く登りと連続コーナーをこなし、ルーゴの旧市街を取り囲む城壁に沿って登りスプリント。アタックを封じ込め、落車を切り抜けたジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)が他を寄せ付けないスプリント2勝目を飾った。
海沿いの街ビベイロをスタートするブエルタ第5ステージは中盤に3級山岳マルコ・デ・アルバレ峠が設定された171.3kmの平坦ステージ。平坦と言っても獲得標高差が2,000mに達するアップダウンコースで、残り5kmを切ってから標高差100mの登りが登場するため単純なスプリンター向きのステージとは言えない。
前日のフィニッシュ後に下りで落車し、股関節の脱臼を負ったルイス・マス(スペイン、カハルーラル)が唯一のDNS。この日は序盤にムリロ・フィッシャー(ブラジル、FDJ)が胃腸のトラブルでリタイアを決めている。
ニュートラル走行を終えて0kmアーチを通過し、レースディレクターが正式なスタートを告げる旗を振った瞬間にティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ)とジュリアン・モリス(フランス、ディレクトエネルジー)がファーストアタック。メイン集団はすぐに2人の逃げを見送った。
気温18度の冷たい雨に包まれたオーシャンロードで、マシャドとモリスはメイン集団から最大6分30秒のアドバンテージを奪う。BMCレーシングがメイン集団の先頭でコントロールを開始したが、総合ですでに8分50秒遅れているマシャドと33分18秒遅れているモリスはマイヨロホを脅かす存在ではないと判断。リーダーチームはタイム差を縮めることにチーム力を割かない。
やがてニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア)のスプリントを狙うトレック・セガフレードが集団先頭のローテーションに選手を送り込み、続いてジャイアント・アルペシンとエティックス・クイックステップも合流。タイム差が3〜4分に抑え込まれた状態でレース中盤に差し掛かった。
雨と霧に包まれた山間部を進むうちに先頭からモリスが脱落したが、マシャドは諦めずにソロエスケープを続行した。3級山岳マルコ・デ・アルバレ峠に差し掛かるとスタートから降り続けていた雨は上がり、熱い太陽が姿を見せる。
天候の回復と気温の上昇に合わせるようにメイン集団のスピードも上昇。別府史之(トレック・セガフレード)もローテーションに加わったメイン集団は残り15km地点で先頭のマシャド(敢闘賞獲得)を吸収。スプリンターチームが競り合いながら、丘の上に位置するルーゴの旧市街に向かった。
メイン集団はチームスカイが先頭を陣取った状態で残り3kmから始まる登りに突入。すると、街中のコーナーが連続する登りでサイモン・クラーク(オーストラリア、キャノンデール・ドラパック)とフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)の2人がほぼ同時にアタック。勾配6%ほどの登りをダンシングで踏み抜いた両者は10秒のリードを得て残り2km地点からの平坦区間に入った。
協力して逃げるジルベールとクラークを追うメイン集団では落車が頻発する。コース上に突如現れたポールに接触したステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)とヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)が落車。鎖骨骨折を負ったクルイスウィクは再スタートを切れず、今大会6人目のリタイア者となる。
飛び出していたジルベールとクラークは残り1kmで吸収され、登りで絞られた集団によるスプリントへ。しかし集団前方で再び発生した落車によってコースが塞がれ、10名強が抜け出した状態で残り500mを切る。緩斜面を利用したジルベールのロングスパートに勢いはなく、ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)がメールスマンを連れ出して先頭に立った。
残り200mでスティバルの後ろからタイミングよく加速したメールスマン。ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)やケヴィン・レザ(フランス、FDJ)が対抗したものの、第2ステージで大集団スプリントを制しているメールスマンが先頭を譲ることはなかった。
「日曜日にグランツール初勝利は夢のようだった。ステージ2勝目を飾ることができたのでもう言葉が出てこない」。スプリントで2戦2勝の強さを見せ、ポイント賞トップに返り咲いたメールスマンは感無量の表情で語る。「ものすごく調子が良い状態なので、とにかく集中力を切らさずにやるべきことに専念した。自分を信頼してくれているチームに2勝目をもたらすことができて本当に良かった。自身も勝利を狙えるようなゼネク(スティバル)のリードアウトのおかげで有利にスプリントに持ち込めたんだ」。
2度の落車の影響で集団は分裂した状態でフィニッシュしたが、残り3kmを切ってからの落車のため総合タイムには反映されず。今大会初めてマイヨロホは動かず、ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)が総合首位を守っている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第5ステージ結果
1位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ) 4h16’42”
2位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
3位 ケヴィン・レザ(フランス、FDJ)
4位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
5位 ジーコ・ワイテンス(ベルギー、ジャイアント・アルペシン)
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
7位 ロメン・アルディ(フランス、コフィディス)
8位 ジャンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、BMCレーシング)
9位 ケニース・ファンビルセン(ベルギー、コフィディス)
10位 ホセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カハルーラル)
33位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)
37位 別府史之(日本、トレック・セガフレード)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング) 17h39’52”
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +28”
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +32”
4位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +38”
5位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング) +1’07”
7位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター) +1’10”
8位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +1’12”
9位 ピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ) +1’14”
10位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)+1’22”
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ) 51pts
2位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) 26pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 26pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) 10pts
2位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 8pts
3位 リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー) 5pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー) 15pts
2位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング) 20pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 22pts
チーム総合成績
1位 BMCレーシング 52h01’25”
2位 モビスター +46”
3位 エティックス・クイックステップ +1’35”
敢闘賞
ティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ)
text&photo:Kei Tsuji in Lugo, Spain
海沿いの街ビベイロをスタートするブエルタ第5ステージは中盤に3級山岳マルコ・デ・アルバレ峠が設定された171.3kmの平坦ステージ。平坦と言っても獲得標高差が2,000mに達するアップダウンコースで、残り5kmを切ってから標高差100mの登りが登場するため単純なスプリンター向きのステージとは言えない。
前日のフィニッシュ後に下りで落車し、股関節の脱臼を負ったルイス・マス(スペイン、カハルーラル)が唯一のDNS。この日は序盤にムリロ・フィッシャー(ブラジル、FDJ)が胃腸のトラブルでリタイアを決めている。
ニュートラル走行を終えて0kmアーチを通過し、レースディレクターが正式なスタートを告げる旗を振った瞬間にティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ)とジュリアン・モリス(フランス、ディレクトエネルジー)がファーストアタック。メイン集団はすぐに2人の逃げを見送った。
気温18度の冷たい雨に包まれたオーシャンロードで、マシャドとモリスはメイン集団から最大6分30秒のアドバンテージを奪う。BMCレーシングがメイン集団の先頭でコントロールを開始したが、総合ですでに8分50秒遅れているマシャドと33分18秒遅れているモリスはマイヨロホを脅かす存在ではないと判断。リーダーチームはタイム差を縮めることにチーム力を割かない。
やがてニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア)のスプリントを狙うトレック・セガフレードが集団先頭のローテーションに選手を送り込み、続いてジャイアント・アルペシンとエティックス・クイックステップも合流。タイム差が3〜4分に抑え込まれた状態でレース中盤に差し掛かった。
雨と霧に包まれた山間部を進むうちに先頭からモリスが脱落したが、マシャドは諦めずにソロエスケープを続行した。3級山岳マルコ・デ・アルバレ峠に差し掛かるとスタートから降り続けていた雨は上がり、熱い太陽が姿を見せる。
天候の回復と気温の上昇に合わせるようにメイン集団のスピードも上昇。別府史之(トレック・セガフレード)もローテーションに加わったメイン集団は残り15km地点で先頭のマシャド(敢闘賞獲得)を吸収。スプリンターチームが競り合いながら、丘の上に位置するルーゴの旧市街に向かった。
メイン集団はチームスカイが先頭を陣取った状態で残り3kmから始まる登りに突入。すると、街中のコーナーが連続する登りでサイモン・クラーク(オーストラリア、キャノンデール・ドラパック)とフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)の2人がほぼ同時にアタック。勾配6%ほどの登りをダンシングで踏み抜いた両者は10秒のリードを得て残り2km地点からの平坦区間に入った。
協力して逃げるジルベールとクラークを追うメイン集団では落車が頻発する。コース上に突如現れたポールに接触したステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)とヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)が落車。鎖骨骨折を負ったクルイスウィクは再スタートを切れず、今大会6人目のリタイア者となる。
飛び出していたジルベールとクラークは残り1kmで吸収され、登りで絞られた集団によるスプリントへ。しかし集団前方で再び発生した落車によってコースが塞がれ、10名強が抜け出した状態で残り500mを切る。緩斜面を利用したジルベールのロングスパートに勢いはなく、ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)がメールスマンを連れ出して先頭に立った。
残り200mでスティバルの後ろからタイミングよく加速したメールスマン。ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)やケヴィン・レザ(フランス、FDJ)が対抗したものの、第2ステージで大集団スプリントを制しているメールスマンが先頭を譲ることはなかった。
「日曜日にグランツール初勝利は夢のようだった。ステージ2勝目を飾ることができたのでもう言葉が出てこない」。スプリントで2戦2勝の強さを見せ、ポイント賞トップに返り咲いたメールスマンは感無量の表情で語る。「ものすごく調子が良い状態なので、とにかく集中力を切らさずにやるべきことに専念した。自分を信頼してくれているチームに2勝目をもたらすことができて本当に良かった。自身も勝利を狙えるようなゼネク(スティバル)のリードアウトのおかげで有利にスプリントに持ち込めたんだ」。
2度の落車の影響で集団は分裂した状態でフィニッシュしたが、残り3kmを切ってからの落車のため総合タイムには反映されず。今大会初めてマイヨロホは動かず、ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)が総合首位を守っている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第5ステージ結果
1位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ) 4h16’42”
2位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
3位 ケヴィン・レザ(フランス、FDJ)
4位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
5位 ジーコ・ワイテンス(ベルギー、ジャイアント・アルペシン)
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
7位 ロメン・アルディ(フランス、コフィディス)
8位 ジャンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、BMCレーシング)
9位 ケニース・ファンビルセン(ベルギー、コフィディス)
10位 ホセ・ゴンサルベス(ポルトガル、カハルーラル)
33位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)
37位 別府史之(日本、トレック・セガフレード)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング) 17h39’52”
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +28”
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +32”
4位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +38”
5位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング) +1’07”
7位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター) +1’10”
8位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ) +1’12”
9位 ピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ) +1’14”
10位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)+1’22”
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、エティックス・クイックステップ) 51pts
2位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) 26pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 26pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) 10pts
2位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 8pts
3位 リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー) 5pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー) 15pts
2位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング) 20pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 22pts
チーム総合成績
1位 BMCレーシング 52h01’25”
2位 モビスター +46”
3位 エティックス・クイックステップ +1’35”
敢闘賞
ティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ)
text&photo:Kei Tsuji in Lugo, Spain
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