失意のツール・ド・フランスを終えたバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が最終山岳通過後に全開アタック。リオ五輪を狙うモレマが相性の良いクラシカ・サンセバスティアン(UCIワールドツアー)で初勝利を飾った。



サンセバスティアンをスタートする選手たちサンセバスティアンをスタートする選手たち photo:Tim de Waele


クラシカ・サンセバスティアン2016クラシカ・サンセバスティアン2016 image:clasica-san-sebastian.diariovasco.comスペインの中でも熱狂的な自転車ファンを有することで知られるバスク地方。同国北東部に位置するバスク最大のワンデーレースとして知られているのがクラシカ・サンセバスティアンだ。「クラシカ(クラシック)」の名を冠しているが、今年で開催36回目であり、他のワンデークラシックと比べるとその歴史は浅い。

2級山岳ボルダコ・トントーラでアタックするサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)2級山岳ボルダコ・トントーラでアタックするサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) photo:Tim de Waeleレースはビスケー湾に面した港湾都市サンセバスティアンを発着する起伏に富んだコースで行われる。サンセバスティアンは「ビスケー湾の真珠」と形容されるバスク地方随一のリゾート地であり、フランス国境からすぐの距離にある。

2級山岳ボルダコ・トントーラを先頭でクリアするホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)2級山岳ボルダコ・トントーラを先頭でクリアするホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Tim de Waeleコース全長は220kmで、後半にかけて1級山岳ハイスキベル峠と2級山岳アルカレ峠の組み合わせを2回リピート。そこからさらに2級山岳ボルダコ・トントーラを越えて8km先のフィニッシュラインを目指す。最大勾配が20%に達し、フィニッシュラインに近いボルダコ・トントーラが勝負を決めた。

2級山岳ボルダコ・トントーラをクリアするグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)2級山岳ボルダコ・トントーラをクリアするグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waeleディフェンディングチャンピオンのアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)やダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)、リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)をはじめ、6日前に閉幕したツールを総合上位で終えた選手がラインナップ。ツールを途中リタイアしたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)もブエルタ・ア・エスパーニャに向けてこのバスクレースで再始動した。

ブエルタに向けてレースに復帰したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)ブエルタに向けてレースに復帰したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:Tim de Waeleモレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール)やジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)を含む6名の逃げが序盤から先行したものの、内陸部の山岳地帯を進むうちにリードは縮小する。フィニッシュまで60kmを残した2度目の1級山岳ハイスキベル峠で逃げが吸収されるとダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)とミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)がカウンターアタック。しかしこの動きも引き戻され、縮小した小集団が最後の2級山岳ボルダコ・トントーラに突入した。

独走でフィニッシュするバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)独走でフィニッシュするバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) photo:Tim de Waeleオリカ・バイクエクスチェンジが牽引する集団から真っ先に動いたのは大会連覇が懸かったイェーツ、ではなく、イェーツの双子の兄弟サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)。急勾配の登りで仕掛けたイェーツには、今大会で2度表彰台を経験しながら未勝利のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が合流する。

歓声に応えて4位でフィニッシュするホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)歓声に応えて4位でフィニッシュするホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Tim de Waele激坂を突き進んだロドリゲスのペースに対応できずにイェーツが失速した一方で、モレマとアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)がペースを刻んで合流。観客が詰めかけた2級山岳ボルダコ・トントーラを先頭4名のまま乗り越え、フィニッシュまでの8kmダウンヒルに差し掛かる。

すると、一瞬の緩みを感じ取ったモレマが加速した。「ロドリゲスが一旦ペースを弱めたので、完璧なタイミングだと判断してアタックした。アタックすると他の3人との間に距離が開いたので、そこからは迷わずに全開走行した」というモレマが、後続バルベルデ、ロドリゲス、ギャロパンからすぐさま10秒のリードを奪った。

前日の試走で3回走って確認したという下りを攻めたモレマが独走。ペースが上がりきらない後続グループを振り切って、モレマがフィニッシュまで逃げ切った。

「ロドリゲスがアタックした時、少しポジションを下げていたので、細い登りで他の選手を抜くことができずに出遅れた。でも調子は良かったし、落ち着いて走れば頂上手前の数百メートルで追いつけると思っていた。撃沈してしまうほど追い込んでなかったし、振り返ると追走グループが見えなかった。残り数キロの時点で勝ったと思ったよ」と、クラシカ・サンセバスティアン初制覇を果たしたモレマは語る。

「常にトップ10の成績を残している好きなレースの一つであり、自分にとってはUCIワールドツアーのワンデーレース初勝利。ようやく表彰台でバスクの帽子を受け取ることができた」。クラシカ・サンセバスティアンでモレマは2012年5位、2013年9位、2014年2位、2015年6位と、コンスタントに上位入賞を繰り返していた。

ツールで好走したモレマは第18ステージまで総合2位をキープしたものの、第19ステージの雨のダウンヒルで落車して総合10位に後退。さらに第20ステージで大きく遅れて総合11位でレースを終えた。モレマは「残念な結果が続いたツール終盤のリベンジを果たすことができてよかった。ツールの疲労からしっかりリカバリーしたことが勝利につながった。今日はツールのことなんか全く考えずにレースに集中。調子の良さを再確認できたので、次戦のリオ五輪が楽しみだ」とコメント。2011年以来2度目の出場となったチームメイトの別府史之は役目を終えた後にリタイアしている。



クラシカ・サンセバスティアン2016表彰台 2位ギャロパン、1位モレマ、3位バルベルデクラシカ・サンセバスティアン2016表彰台 2位ギャロパン、1位モレマ、3位バルベルデ photo:Tim de Waele


クラシカ・サンセバスティアン2016結果
1位 バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)       5h31’00”
2位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)          +17”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)           +22”
5位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)     +34”
6位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)
7位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)
8位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、キャノンデール・ドラパック)
9位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)
10位 ドリス・デヴェナインス(ベルギー、IAMサイクリング)       +37”
DNF 別府史之(日本、トレック・セガフレード)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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