2016/07/23(土) - 09:51
台湾中央部の台中を拠点とする世界最大の自転車メーカー、ジャイアント。エンデュランスロード「DEFY(ディファイ)」シリーズより、ディスクブレーキ装備のカーボンモデル「DEFY ADVANCED 2」をインプレッションした。
ジャイアント DEFY ADVANCED 2 photo:Makoto.AYANO/cyclowired.jp
アップライトなジオメトリーに、ワイドタイヤが装着可能なクリアランス、振動吸収性を高めるベンドしたシートステーなど……。ジャイアントは、現在のエンデュランスロードの標準とも言うべき設計が施されたバイクを10年以上も前にラインアップしていた。それがOCRシリーズ。現在に続くDEFYシリーズの前身となるモデルである。つまり、エンデュランスロードのパイオニアはジャイアントと言っても過言ではないだろう。
DEFYシリーズが登場したのは2008年のこと。その乗りやすさとプライスバリューから、日本国内ではアルミ製のエントリーグレードが人気を博している。しかし、カーボン製上位モデルの「DEFY ADVANCED」シリーズは卓越した振動吸収性能とレーシング性能によって、パリ~ルーベに代表される北のクラシックや連日長距離を走るグランツールで、プロ選手からの厚い信頼を勝ち取ってきた。
上側を1-1/8インチ、下側を1-1/4インチとしたOVERDRIVEヘッドチューブ
ディスクブレーキの高い制動力を受け止めるフロントフォーク
ディスクブレーキの台座はポストマウントとしている
デビュー以来、数度に渡ってモデルチェンジを重ねてきたDEFY ADVANCEDだが、他社に先駆けてロード用ディスクブレーキを導入すると共に、2014年夏にフルモデルチェンジを果たす。快適性・剛性・操作性・重量と4つの要素を高いレベルでバランスさせたオールラウンドなバイクを目指し、フレーム設計をフルリニューアルした。
今回インプレッションを行うのは、カーボン製の末弟グレードに位置づけられる「DEFY ADVANCED」。上位グレードから基本設計を踏襲しながらも、ビギナーにも扱いやすいように一部の設計を変更。様々な寸法のステムを気軽に試せるようにステアリングコラムは汎用サイズとし、シートポストは自在に上げ下げできるように非ISP仕様としている。
レースモデルよりも大きめのタイヤクリアランス。28Cタイヤも取り付け可能だ
やや長めのヘッドチューブが、リラックスしたライディングポジションを可能とする
シェル幅を目一杯広げたPOWERCOREデザインのBB
前後共にエンドはクイックレリーズに対応する
最新のエンデュランスロードにおいて、ピボットやエストラマーといったメカニカルな減衰機構を組み込んだバイクも増えてきた。しかし、DEFY ADVANCEDはこれらを用いず、最先端のカーボン成型技術とフレームデザインによって快適性を高めることに成功した。
振動吸収性向上の中心的な役割を果たすのが、一般的な丸形のシートポストに比べ軽量で快適性に優れるD型断面のD-Fuseシートポストだ。また、臼式のシートクランプや扁平形状のシートステー、ディスクブレーキ化によるシートステーブリッジの省略も、リアホイールからの突き上げ軽減に大きく貢献している。ジオメトリーはヘッドチューブをやや長めとしており、腰や首などへの負担が少ないアップライトなライドポジションをとることができる。
30mmハイトのセミエアロホイールを標準装備する
ハンドルやステムもジャイアント製だ
同時に、ただ乗り心地が良いだけでは無く、走行性能にも抜かりないDEFY ADVANCED。ヘッドチューブには、専用ステムが必要な独自規格「OVERDRIVE2」ではなく、1-1/8"寸法の汎用規格「OVERDRIVE」を採用。サイズダウンの代わりに、アルミ製フォークコラムを用いることでステアリング剛性を確保した。上位グレードに対しては若干の重量増を伴うものの、様々な寸法のステムを気軽に試すことができ、メンテナンスに不慣れなビギナーでも増し締めや調整を安心して行うことができるというメリットがある。
BBには、シェル幅を目一杯拡幅することでねじれ剛性を高めるBB86規格の「POWERCORE」を採用し、大口径ダウンチューブ「MegaDrive」や、コンパクトなリア三角と合わせて優れたペダリング剛性を実現。入力を余すことなく推進力へと変換し、ライダーの疲労低減に貢献する。
ペダリング剛性を高める大口径ダウンチューブ「MEGADRIVE」
剛性向上に寄与するコンパクトデザインのリア三角
快適性向上の要であるD-Fuseシートピラー
エンドは前後共にクリックリレーズに対応する。エンド幅はフロントが100mmで、リアが135mm。ディスクブレーキの台座は、MTBではポピュラーなポストマウントとしている。ローター径は160mmだ。タイヤクリアランスは28Cまで対応する。
今回のインプレッションに用いたDEFY ADVANCED 2は、シマノ105をメインコンポーネントとする1台。ワイヤー引きながら、対向ピストンにより優れた制動力を実現したTRP SPYREをブレーキに組み合わせる。ホイールはジャイアントが製造する30mmハイトのセミエアロモデルPR-2。完成車重量は8.6kgをマークしている。早速インプレッションに移ろう。
ー インプレッション
「とにかく乗り心地が良く、遠くに行きたくなるバイク」上萩泰司(カミハギサイクル )
とにかく乗り心地の高いロードバイク。突き上げを良くカットしてくれるので、グラベルに突っ込んでもふわふわっとした乗り味でこなしてしまうことに驚きました。謳い文句通りの乗り味で、ジオメトリーも上体が起きた楽なポジションが取れるよう設定されているので、ロングライド派の求める性能がそのまま実現されています。
「とにかく乗り心地が良く、遠くに行きたくなるバイク」上萩泰司(カミハギサイクル ) この快適性はフレーム自体はもちろん。サドルやタイヤのエアボリュームなど、トータルパッケージとして生み出されているものでしょう。D型断面のシートポストも相当しなって衝撃を吸収してくれる動きが分かりますし、下りでは路面にベタッと吸い付くかのような安定感があるので、全くふらつきによる怖さを感じることがありません。
もちろんレーサーと比較すれば「パリッと感」は薄く、登りでのダンシングは反応が遅れますが、軽いギアをシッティングでクルクル回せばヒルクライムも決して不得意ではありません。今回のテストでは長距離を試していませんが、脚への反応がマイルドであることを考えれば、単純な乗り心地とは別に脚残りも良いはずです。100kmを超えるロングライドでは後半の体力に差が付くでしょうし、ロングライドを楽しく、快適に、楽に走りたい人に強くお勧めしたいと感じます。
機械式のディスクブレーキはコントロール性も良好で、例えば細い下りコーナーへとややオーバースピードで進入してしまっても、余裕を持ってスピードをセーブできる特性を感じます。レバーを握りこんでいくと最後にガツンと制動力が高くなる特徴がありますので、これが嫌と感じるならば140mm径のディスクローターに変更するのも手ですね。下手な入門キャリパーブレーキよりも安心ですし、雨でも制動力が変わりにくい面はとても魅力的です。
またホイールの固定はスルーアクスルではなくクイックレリーズですが、ターゲットユーザーを踏まえれば剛性は十分。ホイールも見た目の印象よりも走りが軽いですし、ジャイアントからはよりハイグレード製品もリリースされているので、交換すれば出だしの軽やかさはもっと伸びるはずです。
カーボンフレーム、コンポーネントは105、そしてディスクブレーキがセットされて21万円。相当なバリュープライスだと思いますよ。ハンドルやシート、タイヤに至るまでジャイアント製ですし、これが実現できるのは業界最大手であるジャイアントならではと言えるでしょうか。タイヤもグリップがありつつ安定した挙動でしたし、このパッケージに不満を感じるユーザーは少ないはずです。
フレームも小さなサイズから用意されており、低速走行でも苦しくないようなギア比ですし、かなり幅広い層に使ってもらえるバイクに仕上がっています。とにかく乗り心地の良いバイクで遠くに行きたい方にはオススメ。ブレーキの油圧化、ホイールのカーボン化など、素性が良いぶん先々のアップグレードも楽しめるでしょう。
「トータルの完成度の高さは流石 ロングライド派の良き相棒となる1台」生駒元保(bicycle store RIDEWORKS)
姿勢が楽で、見た目ほど走りが重くなく、スローピングデザインが効いているのか重心が低く、下りの安定感がもの凄く高い。とても良いバイクですね。驚きました。
振動吸収性に目が行きがちですが、私が一番の特徴として感じたのは安定感の高さ。低重心な設計による性格だと思いますが、BB周辺の剛性がしっかりと活きていることも効いているからかもしれません。乗り心地はとても良いのですが、ふにゃふにゃでロスが多く生まれているようには感じませんでした。
「トータルの完成度の高さは流石 ロングライド派の良き相棒となる1台」生駒元保(bicycle store RIDEWORKS)
レーサーらしい乗り味を好む方にとっては物足りなさを感じるでしょうが、ターゲットユーザーが違うのでこれで正解だと思います。TCRほどの機敏さはありませんが、ロードバイクの楽しみを理解するには十分です。レーシングバイクだと特有の薄皮感があることで肩に力が入りがちですが、DEFYなら心身ともにリラックスしてライドを楽しめる。グラベルだってへっちゃらですし、超長距離をこなすブルベではトータルスピードが上がるかもしれません。懐の広いバイクです。
ディスクブレーキもネガティブなところを感じませんね。機械式ですが対向ピストンの両押し式なので、引きも軽いし制動力も高い。下り坂で急制動をしてもタイヤのヨレ、クイックのブレなどは一切なく、全体的な性能も40km/hまでの範囲ならば何も不満はありません。用途的に考えれば十分、十二分でしょう。コストパフォーマンスもとても高いですね。
ギア比もかなりワイドレシオですし、このバイクと上手く付き合うコツは「頑張らないこと」。登りと下りが連続する状況でもイーブンペースで走れば脚にも優しいし、結果的に翌日への疲労の溜まりかたが少ないように思います。ホイールはリムハイト高めのアルミリムですし、乗車前は重さを気にしてたものの、実際に走ればそこまで重く感じません。逆に重心が下がるので荒れた路面でもギュっと押し付けるかのように安定して、とても安心できました。
トータルの完成度の高さは流石ジャイアントという感じ。この乗り味でしたらサイクリングの楽しさを初心者に伝えられるでしょう。もちろんアワイチ(淡路島一周)やビワイチ(琵琶湖一周)などのロングライドが最高ですが、安定感を味方につけて山奥の林道や、未舗装路へと出かけてみたいとも思わされました。
これで21万円は安いですし、ジャイアントだからできること。各メーカーがエンデュランスロードをリリースしていますが、この価格でディスクブレーキまで付いている製品はなかなか無いですよね。ロングライド派、これからロングライドにチャレンジしたい方の良き相棒となるはずです。
ジャイアント DEFY ADVANCED 2 photo:Makoto.AYANO/cyclowired.jp
ジャイアント DEFY ADVANCED 2(完成車)
フレーム:Advanced-Grade Composite、D-Fuse Composite Seat Pillar
フィーク:Advanced-Grade Composite、Aluminum OverDrive Column
メインコンポーネント:シマノ105
ブレーキ:TRP SPYRE
ローター径:160mm
ホイール:ジャイアント PR-2
タイヤ:ジャイアント P-SL1 700x25C
サイズ:410mm(XS)、445mm(S)、480mm(M)、515mm(ML)
完成車重量:8.6kg(480mm)
カラー:ホワイト
価 格:210,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
上萩泰司(カミハギサイクル ) 上萩泰司(カミハギサイクル )
愛知県下に3店舗を展開するカミハギサイクルの代表取締役を務める。20年以上のショップ歴を持つベテラン店長だ。ロードバイクのみならず、MTBやシクロクロスなど様々な自転車の楽しみ方をエンジョイしている。中でも最近はトライアスロンに没頭しているとのことで、フランクフルトのアイアンマンレースで完走するなど、その走力は折り紙つき。ショップのテーマは"RIDE with Us"。お客さんと共に自転車を楽しむことができるお店づくりがモットー。
CWレコメンドショップページ
カミハギサイクル
生駒元保(bicycle store RIDEWORKS) 生駒元保(bicycle store RIDEWORKS)
兵庫県芦屋市に店舗を構えるbicycle store RIDEWORKSの店長を務める。スポーツバイク歴は30年。ショップスタッフ歴は16年ほどで、2010年3月より現職に。普段はお客さんと共にトライアスロンやロングライドなどの各イベントに参加し、自転車の楽しさを伝えている。ショップとしてのモットーは「機材にもサイクリストにも愛情を持って接すること」。愛車はスペシャライズドVenge ViasやシーポCATANA、シエロのMTB、ズッロなど、マスプロ系からハンドメイドまで多岐に渡る。
CWレコメンドショップページ
bicycle store RIDEWORKS
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アップライトなジオメトリーに、ワイドタイヤが装着可能なクリアランス、振動吸収性を高めるベンドしたシートステーなど……。ジャイアントは、現在のエンデュランスロードの標準とも言うべき設計が施されたバイクを10年以上も前にラインアップしていた。それがOCRシリーズ。現在に続くDEFYシリーズの前身となるモデルである。つまり、エンデュランスロードのパイオニアはジャイアントと言っても過言ではないだろう。
DEFYシリーズが登場したのは2008年のこと。その乗りやすさとプライスバリューから、日本国内ではアルミ製のエントリーグレードが人気を博している。しかし、カーボン製上位モデルの「DEFY ADVANCED」シリーズは卓越した振動吸収性能とレーシング性能によって、パリ~ルーベに代表される北のクラシックや連日長距離を走るグランツールで、プロ選手からの厚い信頼を勝ち取ってきた。
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デビュー以来、数度に渡ってモデルチェンジを重ねてきたDEFY ADVANCEDだが、他社に先駆けてロード用ディスクブレーキを導入すると共に、2014年夏にフルモデルチェンジを果たす。快適性・剛性・操作性・重量と4つの要素を高いレベルでバランスさせたオールラウンドなバイクを目指し、フレーム設計をフルリニューアルした。
今回インプレッションを行うのは、カーボン製の末弟グレードに位置づけられる「DEFY ADVANCED」。上位グレードから基本設計を踏襲しながらも、ビギナーにも扱いやすいように一部の設計を変更。様々な寸法のステムを気軽に試せるようにステアリングコラムは汎用サイズとし、シートポストは自在に上げ下げできるように非ISP仕様としている。
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最新のエンデュランスロードにおいて、ピボットやエストラマーといったメカニカルな減衰機構を組み込んだバイクも増えてきた。しかし、DEFY ADVANCEDはこれらを用いず、最先端のカーボン成型技術とフレームデザインによって快適性を高めることに成功した。
振動吸収性向上の中心的な役割を果たすのが、一般的な丸形のシートポストに比べ軽量で快適性に優れるD型断面のD-Fuseシートポストだ。また、臼式のシートクランプや扁平形状のシートステー、ディスクブレーキ化によるシートステーブリッジの省略も、リアホイールからの突き上げ軽減に大きく貢献している。ジオメトリーはヘッドチューブをやや長めとしており、腰や首などへの負担が少ないアップライトなライドポジションをとることができる。
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同時に、ただ乗り心地が良いだけでは無く、走行性能にも抜かりないDEFY ADVANCED。ヘッドチューブには、専用ステムが必要な独自規格「OVERDRIVE2」ではなく、1-1/8"寸法の汎用規格「OVERDRIVE」を採用。サイズダウンの代わりに、アルミ製フォークコラムを用いることでステアリング剛性を確保した。上位グレードに対しては若干の重量増を伴うものの、様々な寸法のステムを気軽に試すことができ、メンテナンスに不慣れなビギナーでも増し締めや調整を安心して行うことができるというメリットがある。
BBには、シェル幅を目一杯拡幅することでねじれ剛性を高めるBB86規格の「POWERCORE」を採用し、大口径ダウンチューブ「MegaDrive」や、コンパクトなリア三角と合わせて優れたペダリング剛性を実現。入力を余すことなく推進力へと変換し、ライダーの疲労低減に貢献する。
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エンドは前後共にクリックリレーズに対応する。エンド幅はフロントが100mmで、リアが135mm。ディスクブレーキの台座は、MTBではポピュラーなポストマウントとしている。ローター径は160mmだ。タイヤクリアランスは28Cまで対応する。
今回のインプレッションに用いたDEFY ADVANCED 2は、シマノ105をメインコンポーネントとする1台。ワイヤー引きながら、対向ピストンにより優れた制動力を実現したTRP SPYREをブレーキに組み合わせる。ホイールはジャイアントが製造する30mmハイトのセミエアロモデルPR-2。完成車重量は8.6kgをマークしている。早速インプレッションに移ろう。
ー インプレッション
「とにかく乗り心地が良く、遠くに行きたくなるバイク」上萩泰司(カミハギサイクル )
とにかく乗り心地の高いロードバイク。突き上げを良くカットしてくれるので、グラベルに突っ込んでもふわふわっとした乗り味でこなしてしまうことに驚きました。謳い文句通りの乗り味で、ジオメトリーも上体が起きた楽なポジションが取れるよう設定されているので、ロングライド派の求める性能がそのまま実現されています。
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もちろんレーサーと比較すれば「パリッと感」は薄く、登りでのダンシングは反応が遅れますが、軽いギアをシッティングでクルクル回せばヒルクライムも決して不得意ではありません。今回のテストでは長距離を試していませんが、脚への反応がマイルドであることを考えれば、単純な乗り心地とは別に脚残りも良いはずです。100kmを超えるロングライドでは後半の体力に差が付くでしょうし、ロングライドを楽しく、快適に、楽に走りたい人に強くお勧めしたいと感じます。
機械式のディスクブレーキはコントロール性も良好で、例えば細い下りコーナーへとややオーバースピードで進入してしまっても、余裕を持ってスピードをセーブできる特性を感じます。レバーを握りこんでいくと最後にガツンと制動力が高くなる特徴がありますので、これが嫌と感じるならば140mm径のディスクローターに変更するのも手ですね。下手な入門キャリパーブレーキよりも安心ですし、雨でも制動力が変わりにくい面はとても魅力的です。
またホイールの固定はスルーアクスルではなくクイックレリーズですが、ターゲットユーザーを踏まえれば剛性は十分。ホイールも見た目の印象よりも走りが軽いですし、ジャイアントからはよりハイグレード製品もリリースされているので、交換すれば出だしの軽やかさはもっと伸びるはずです。
カーボンフレーム、コンポーネントは105、そしてディスクブレーキがセットされて21万円。相当なバリュープライスだと思いますよ。ハンドルやシート、タイヤに至るまでジャイアント製ですし、これが実現できるのは業界最大手であるジャイアントならではと言えるでしょうか。タイヤもグリップがありつつ安定した挙動でしたし、このパッケージに不満を感じるユーザーは少ないはずです。
フレームも小さなサイズから用意されており、低速走行でも苦しくないようなギア比ですし、かなり幅広い層に使ってもらえるバイクに仕上がっています。とにかく乗り心地の良いバイクで遠くに行きたい方にはオススメ。ブレーキの油圧化、ホイールのカーボン化など、素性が良いぶん先々のアップグレードも楽しめるでしょう。
「トータルの完成度の高さは流石 ロングライド派の良き相棒となる1台」生駒元保(bicycle store RIDEWORKS)
姿勢が楽で、見た目ほど走りが重くなく、スローピングデザインが効いているのか重心が低く、下りの安定感がもの凄く高い。とても良いバイクですね。驚きました。
振動吸収性に目が行きがちですが、私が一番の特徴として感じたのは安定感の高さ。低重心な設計による性格だと思いますが、BB周辺の剛性がしっかりと活きていることも効いているからかもしれません。乗り心地はとても良いのですが、ふにゃふにゃでロスが多く生まれているようには感じませんでした。
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レーサーらしい乗り味を好む方にとっては物足りなさを感じるでしょうが、ターゲットユーザーが違うのでこれで正解だと思います。TCRほどの機敏さはありませんが、ロードバイクの楽しみを理解するには十分です。レーシングバイクだと特有の薄皮感があることで肩に力が入りがちですが、DEFYなら心身ともにリラックスしてライドを楽しめる。グラベルだってへっちゃらですし、超長距離をこなすブルベではトータルスピードが上がるかもしれません。懐の広いバイクです。
ディスクブレーキもネガティブなところを感じませんね。機械式ですが対向ピストンの両押し式なので、引きも軽いし制動力も高い。下り坂で急制動をしてもタイヤのヨレ、クイックのブレなどは一切なく、全体的な性能も40km/hまでの範囲ならば何も不満はありません。用途的に考えれば十分、十二分でしょう。コストパフォーマンスもとても高いですね。
ギア比もかなりワイドレシオですし、このバイクと上手く付き合うコツは「頑張らないこと」。登りと下りが連続する状況でもイーブンペースで走れば脚にも優しいし、結果的に翌日への疲労の溜まりかたが少ないように思います。ホイールはリムハイト高めのアルミリムですし、乗車前は重さを気にしてたものの、実際に走ればそこまで重く感じません。逆に重心が下がるので荒れた路面でもギュっと押し付けるかのように安定して、とても安心できました。
トータルの完成度の高さは流石ジャイアントという感じ。この乗り味でしたらサイクリングの楽しさを初心者に伝えられるでしょう。もちろんアワイチ(淡路島一周)やビワイチ(琵琶湖一周)などのロングライドが最高ですが、安定感を味方につけて山奥の林道や、未舗装路へと出かけてみたいとも思わされました。
これで21万円は安いですし、ジャイアントだからできること。各メーカーがエンデュランスロードをリリースしていますが、この価格でディスクブレーキまで付いている製品はなかなか無いですよね。ロングライド派、これからロングライドにチャレンジしたい方の良き相棒となるはずです。
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ジャイアント DEFY ADVANCED 2(完成車)
フレーム:Advanced-Grade Composite、D-Fuse Composite Seat Pillar
フィーク:Advanced-Grade Composite、Aluminum OverDrive Column
メインコンポーネント:シマノ105
ブレーキ:TRP SPYRE
ローター径:160mm
ホイール:ジャイアント PR-2
タイヤ:ジャイアント P-SL1 700x25C
サイズ:410mm(XS)、445mm(S)、480mm(M)、515mm(ML)
完成車重量:8.6kg(480mm)
カラー:ホワイト
価 格:210,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
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愛知県下に3店舗を展開するカミハギサイクルの代表取締役を務める。20年以上のショップ歴を持つベテラン店長だ。ロードバイクのみならず、MTBやシクロクロスなど様々な自転車の楽しみ方をエンジョイしている。中でも最近はトライアスロンに没頭しているとのことで、フランクフルトのアイアンマンレースで完走するなど、その走力は折り紙つき。ショップのテーマは"RIDE with Us"。お客さんと共に自転車を楽しむことができるお店づくりがモットー。
CWレコメンドショップページ
カミハギサイクル
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兵庫県芦屋市に店舗を構えるbicycle store RIDEWORKSの店長を務める。スポーツバイク歴は30年。ショップスタッフ歴は16年ほどで、2010年3月より現職に。普段はお客さんと共にトライアスロンやロングライドなどの各イベントに参加し、自転車の楽しさを伝えている。ショップとしてのモットーは「機材にもサイクリストにも愛情を持って接すること」。愛車はスペシャライズドVenge ViasやシーポCATANA、シエロのMTB、ズッロなど、マスプロ系からハンドメイドまで多岐に渡る。
CWレコメンドショップページ
bicycle store RIDEWORKS
ウェア協力:マヴィック、アソス
シューズ&ヘルメット協力:ジロ
text:CW編集部
photo:Makoto.AYANO
リンク
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