2016/07/18(月) - 12:56
MTB全日本選手権、クロスカントリー男子エリート。不調を押した山本幸平(Trek Factory Racing)が圧倒的な力で優勝し、2位には久々の表彰台登壇となった平野星矢が、3位には気迫の走りでプッシュを続けた中原義貴が入った。
男子U23、女子エリートなどのスタート時に降った雨の影響は、路面にはもうほとんど残っていなかった。代わりに現れたのは、各チームが氷入りボトルを用意するほどの高温多湿。男子エリートがスタートする頃、長野県諏訪郡富士見町にあるスキー場、富士見パノラマリゾートのゲレンデは、梅雨時期終盤を象徴するかのように蒸しあがった。
名実共にMTBクロスカントリーの「日本一」を決める男子エリートクラスには、78名がエントリー。男子エリートの距離は2790mのスタートループと4600mのコースを6周回する30.39km。
スキーゲレンデをつづら折りに上るセクション、木立の中のシングルトラック、ロックセクションが盛り込まれたコースは、最低標高地点でも1000mを超える。全日本選手権独特の緊張感が漂う中、午後2時半に男子エリートのレースがスタートした。
号砲と共に、最前列中央からはアジアチャンピオンジャージを着用する絶対的優勝候補、山本幸平(Trek Factory Racing)が加速。左からは全日本エリート初挑戦となる中原義貴(BH SR SUNTOUR)が、右からは平野星矢(Bridgestone Anchor Cycling)が並びかける状態で最初のゲレンデ登りに突入していく。
スタートループを終える頃には山本と中原の2名が抜け出す形となり、続いて今シーズンから国内MTBレースへと参戦しているシクロクロス全日本王者の竹之内悠(Toyo Frame)や、松尾純(BIKE RANCH)、小野寺健(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)、小笠原崇裕らが続く形で2周目へと入った。
先頭では「歴史を変えたいという気持ちでプッシュし続けた」と言う中原が1周回を牽いたが、その後ろに付ける山本には十分な余裕があった。中原はレース後にこの瞬間を「勝つには引き離すしかなかった。何回かスピードを上げたにも関わらず幸平さんは離れず、逆にタイヤで突っつかれてしまい、”ダメだ、まだまだ余裕がある”と感じてました」と振り返っている。
すると先頭交代のタイミングで、「野生の勘が働いた」と振り返る山本がアタック。必死の表情で粘った中原だが追いきれず、じわじわとリードを奪った山本は昨年同様の独走態勢に入った。淡々とハイペースを刻む山本に対して、レース後方では次々とタイムアウトを食らう選手が続出し、最終的な完走人数は13名という厳しいレースが繰り広げられた。
レース後半に差し掛かる頃には、「スタートの掛かりが良くなかったけれど、マイペースを刻んでいるうちに力みが取れてペースが上がった」という平野が中原を捉えて2位に浮上。その後ろでは恩田祐一(BH SR SUNTOUR)が4位に上がり、一旦は7位まで遅れた小野寺も5位にまでポジションを回復してみせる。
ピットで受け取る氷水を身体に掛けながら走る山本。苦しそうな表情を見せながらも一向にペースは落ちることなく、残り距離を消化してフィニッシュへ。最後は大声援に包まれながら観客とハイタッチし、右手の人差し指を突き立ててゴール。2年連続8度目の優勝を成し遂げた。
圧倒的な勝利を飾った山本だが、ワールドカップ第1戦ケアンズでの15位フィニッシュやアジア選手権優勝など絶好調を維持した今シーズン序盤に対して、ワールドカップ第2戦アルプシュタットを前に体調を崩してからは本来の力を出し切れないレースが続いていた。今回の全日本選手権前にも風邪をひき、不安材料を抱えての参戦だったと言う。
「帰国してからの5日間は体調を整えることに集中していました。今日は両足を攣ってしまうなどコンディションはベストから遠く、悔しい。僕の走りはこんなもんじゃない」とレース後のインタビューで語った山本。不満さを表すかのように、表彰式でもどこか苦い表情が消えることはなかった。
3度目の出場となるリオオリンピックに関しては、8位入賞以上の成績を目指していきたい、と言う。「日本代表として皆の期待を背負って、スタートから全力でぶつかっていく。そのためにも長いようでとても短い5週間を大切に過ごしていきたい」と語る。今は体調が落ちているが、4年前に練習しすぎて疲れてしまったことを考えればピーキングのタイミングとしてもちょうど良い、とも。
更に「ヨーロッパは若手が育つからこそベテラン選手も息長く活躍できる。だから正直言えば物足りない。誰も歩んできていない道を切り開いた自信があるので、環境さえあれば後進の育成も担いたい」と国内の現状に対してコメントした。
「去年もパンクしたし、全日本選手権では上手くいかないレースが続いていたので、無難に走りたかった」と言う平野が久しぶりの全日本エリート表彰台を決めた1分後に、全力を振り絞った中原が3位フィニッシュ。「幸平さんと抜け出してからも冷静でいたつもりだったけれど、どこかで焦ってしまった。出遅れても”離されたら終わりだ”と必死にプッシュし続けたんですが…。」とレースを振り返る。
今後については「東京オリンピックが人生最大の目標。そのためには全日本で一番になるべきだし、海外でしっかりとレースを展開できるレベルに上がらなければいけない。もうエリートカテゴリーに上がったので若くない。焦らないといけない」と噛み締めながら語った。
全日本マウンテンバイク選手権大会2016
男子エリート
text&photo:So.Isobe
男子U23、女子エリートなどのスタート時に降った雨の影響は、路面にはもうほとんど残っていなかった。代わりに現れたのは、各チームが氷入りボトルを用意するほどの高温多湿。男子エリートがスタートする頃、長野県諏訪郡富士見町にあるスキー場、富士見パノラマリゾートのゲレンデは、梅雨時期終盤を象徴するかのように蒸しあがった。
名実共にMTBクロスカントリーの「日本一」を決める男子エリートクラスには、78名がエントリー。男子エリートの距離は2790mのスタートループと4600mのコースを6周回する30.39km。
スキーゲレンデをつづら折りに上るセクション、木立の中のシングルトラック、ロックセクションが盛り込まれたコースは、最低標高地点でも1000mを超える。全日本選手権独特の緊張感が漂う中、午後2時半に男子エリートのレースがスタートした。
号砲と共に、最前列中央からはアジアチャンピオンジャージを着用する絶対的優勝候補、山本幸平(Trek Factory Racing)が加速。左からは全日本エリート初挑戦となる中原義貴(BH SR SUNTOUR)が、右からは平野星矢(Bridgestone Anchor Cycling)が並びかける状態で最初のゲレンデ登りに突入していく。
スタートループを終える頃には山本と中原の2名が抜け出す形となり、続いて今シーズンから国内MTBレースへと参戦しているシクロクロス全日本王者の竹之内悠(Toyo Frame)や、松尾純(BIKE RANCH)、小野寺健(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)、小笠原崇裕らが続く形で2周目へと入った。
先頭では「歴史を変えたいという気持ちでプッシュし続けた」と言う中原が1周回を牽いたが、その後ろに付ける山本には十分な余裕があった。中原はレース後にこの瞬間を「勝つには引き離すしかなかった。何回かスピードを上げたにも関わらず幸平さんは離れず、逆にタイヤで突っつかれてしまい、”ダメだ、まだまだ余裕がある”と感じてました」と振り返っている。
すると先頭交代のタイミングで、「野生の勘が働いた」と振り返る山本がアタック。必死の表情で粘った中原だが追いきれず、じわじわとリードを奪った山本は昨年同様の独走態勢に入った。淡々とハイペースを刻む山本に対して、レース後方では次々とタイムアウトを食らう選手が続出し、最終的な完走人数は13名という厳しいレースが繰り広げられた。
レース後半に差し掛かる頃には、「スタートの掛かりが良くなかったけれど、マイペースを刻んでいるうちに力みが取れてペースが上がった」という平野が中原を捉えて2位に浮上。その後ろでは恩田祐一(BH SR SUNTOUR)が4位に上がり、一旦は7位まで遅れた小野寺も5位にまでポジションを回復してみせる。
ピットで受け取る氷水を身体に掛けながら走る山本。苦しそうな表情を見せながらも一向にペースは落ちることなく、残り距離を消化してフィニッシュへ。最後は大声援に包まれながら観客とハイタッチし、右手の人差し指を突き立ててゴール。2年連続8度目の優勝を成し遂げた。
圧倒的な勝利を飾った山本だが、ワールドカップ第1戦ケアンズでの15位フィニッシュやアジア選手権優勝など絶好調を維持した今シーズン序盤に対して、ワールドカップ第2戦アルプシュタットを前に体調を崩してからは本来の力を出し切れないレースが続いていた。今回の全日本選手権前にも風邪をひき、不安材料を抱えての参戦だったと言う。
「帰国してからの5日間は体調を整えることに集中していました。今日は両足を攣ってしまうなどコンディションはベストから遠く、悔しい。僕の走りはこんなもんじゃない」とレース後のインタビューで語った山本。不満さを表すかのように、表彰式でもどこか苦い表情が消えることはなかった。
3度目の出場となるリオオリンピックに関しては、8位入賞以上の成績を目指していきたい、と言う。「日本代表として皆の期待を背負って、スタートから全力でぶつかっていく。そのためにも長いようでとても短い5週間を大切に過ごしていきたい」と語る。今は体調が落ちているが、4年前に練習しすぎて疲れてしまったことを考えればピーキングのタイミングとしてもちょうど良い、とも。
更に「ヨーロッパは若手が育つからこそベテラン選手も息長く活躍できる。だから正直言えば物足りない。誰も歩んできていない道を切り開いた自信があるので、環境さえあれば後進の育成も担いたい」と国内の現状に対してコメントした。
「去年もパンクしたし、全日本選手権では上手くいかないレースが続いていたので、無難に走りたかった」と言う平野が久しぶりの全日本エリート表彰台を決めた1分後に、全力を振り絞った中原が3位フィニッシュ。「幸平さんと抜け出してからも冷静でいたつもりだったけれど、どこかで焦ってしまった。出遅れても”離されたら終わりだ”と必死にプッシュし続けたんですが…。」とレースを振り返る。
今後については「東京オリンピックが人生最大の目標。そのためには全日本で一番になるべきだし、海外でしっかりとレースを展開できるレベルに上がらなければいけない。もうエリートカテゴリーに上がったので若くない。焦らないといけない」と噛み締めながら語った。
全日本マウンテンバイク選手権大会2016
男子エリート
1位 山本幸平(Trek Factory Racing)
2位 平野星矢(Bridgestone Anchor Cycling)
3位 中原義貴(BH SR SUNTOUR)
4位 恩田祐一(BH SR SUNTOUR)
5位 小野寺健(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)
6位 竹之内悠(Toyo Frame)
7位 門田基志(TEAM GIANT)
8位 大渕宏紀(DECOJA RACING TEAM)
9位 松尾純(BIKE RANCH)
10位 西田尚平(GIANT KOHOKU)
2位 平野星矢(Bridgestone Anchor Cycling)
3位 中原義貴(BH SR SUNTOUR)
4位 恩田祐一(BH SR SUNTOUR)
5位 小野寺健(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)
6位 竹之内悠(Toyo Frame)
7位 門田基志(TEAM GIANT)
8位 大渕宏紀(DECOJA RACING TEAM)
9位 松尾純(BIKE RANCH)
10位 西田尚平(GIANT KOHOKU)
1:39'18"
+1'23"
+2'37"
+6'35"
+7'10"
+8'24"
+11'00"
+11'33"
+12'20"
+12'42"
+1'23"
+2'37"
+6'35"
+7'10"
+8'24"
+11'00"
+11'33"
+12'20"
+12'42"
text&photo:So.Isobe
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