2016/07/16(土) - 17:52
前夜にニースを襲ったテロの衝撃。ツールとゆかりの深い街での惨劇にツールは喪に服した。しかしレースは続く。連日のように吹く風とも闘いながら。
ローヌ川にそって美しい景観をみせるブール・サン・タンデオルの街。ツールをホストするのは初めてだが、自転車レースに馴染みの無い街ということではなく、この地域で開催されるクラシック・シュド・アルデッシュなどのレースも迎えている(2015はセプヴェルダがこの街で優勝)。
可愛い街が迎えるツールだが、この日は前夜に起こったニースのテロの惨劇に空気が支配されていた。ニースはわずか300kmの近さ。そしてASOにとってニースは特別な関係をもつ街だ。
キャラバン隊は音楽無しでコースを通過し、お祭り騒ぎは無し。ステージ中止もあり得た状況で、ヴィラージュでは総合ディレクターのプリュドム氏による、テロに対するツールの意志表明が行われた。
「今日はフランスとツール・ド・フランスが喪に服す日だ。我々はニースのことはよく知っている。毎年3月にはパリ〜ニースを開催してきている。アルデッシュ地方自治体、警察、警備隊とともに緊急会議を行った。『今日のアルデッシュでのステージは行う』」。
通常通りツールは継続する。しかし今日は特別な一日だ。スタート前にはヴィラージュで黙祷が捧げられ、レース終了後にも犠牲者を追悼することに。
「我々の心は悲劇を被った人々、その家族とともにある。レースを行なわないことも考えたが、関係者各位の合意により開催することにした。テロには屈しない。我々の生活を変えようと脅迫を続ける奴らに屈してはならない」(プリュドム氏)。
ー平静と尊厳を保ってツールは続く。
連日プロトンを悩ませ続けている風がまた今日も吹いた。昨日はカオスのステージの後、ホテルへ向かう帰路に狂ったように風が吹き荒れるモンヴァントゥー頂上をチームバスで通過した選手たち。その際に感じた恐怖からまだ半日しか経っていないのに、朝から吹く風に恐怖を抱いたことだろう。この風は生命を脅かす種類のものではないけれど、ツールでの成績を左右するほどの強さだ。
晴天しかし強風予報。気温は20℃〜26℃。北風は60km/hに達するという天気予報。今日のアップダウンが多い個人タイムトライアルは、その勾配に強風という難敵を加味することに。
いつもより早め、9:45からの2分おきの出走だ。今回はUCIの機材検査が厳しい。各部の規定サイズのチェックとスキャナによるモータードーピングのチェック。スタート前に寸法の規定違反が見つかったスティーブ・クミングス(ディメンションデータ)は対応に追われ、秒読みが始まると同時にスタート台に到着し、間髪入れず出走していった。(それでトップ10のリザルト!)
2015年ツールの開幕ステージTTを制したローハン・デニス(BMCレーシング)はオーストラリアチャンピオンのジャージを着てリラックスしてスピニング。
最後のツールを迎えるファビアン・カンチェラーラ(トレック・セガフレード)は赤いスイスTTチャンピオンジャージで登場。本来なら得意のTTで花を飾りたいところだが、しかし少しばかり自分向きではないコース。トレックの選手たちは今日のステージから登場したチームのマスコット「ヘルマン・シープ」に挨拶してからスタートに向かう。
真っ白に虹色のラインの世界チャンピオンジャージ姿が眩しいヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)、元世界チャンプのトニ・マルティン(エティックス・クイックステップ)にも、少しばかり登りの多すぎるコース。そしていずれのTTスペシャリストも、この数日の難ステージで総合リーダーのために献身的な仕事をしてきている。もはや純TT能力の凌ぎ合いではなく、登りを含めた能力と、残った脚の勝負。
風はやまず、ふらつかないように上半身をがっしり固めて走り抜ける選手たち。しかし時折風に煽られてふらつく姿も見られる。TTバイクにディスクホイールが基本装備だが、前輪にハイトの低いリムのホイールを用いたり、後輪のディスクを諦めたり、低いギア比の大きなスプロケットを使ったりと、それぞれの選手ごとに機材も違う。
テロ事件が空気を支配したが、沿道で応援する観客たちはボルテージを下げることなく賑やか。しかしいつもよりマナーも良かったのは昨日のカオス報道があったからかもしれない。風による肌寒さを感じつつ、しかしさんさんと降り注ぐ陽の光に日光浴を楽しみながらの観戦だ。それにしても美しい地域。
観客たちのなかには気管支炎が悪化したティボー・ピノ(FDJ)の不出走を知らなかった人も多く、スタート順が来たのに待てど暮らせど来ないピノにショックを受ける人達も。やはりフランス人の活躍は関心事。しかしピノはフランスTTチャンピオンのトリコロールジャージをこのツールで披露することなくレースを去ることになってしまった。
新城幸也(ランプレ・メリダ)は11時49分の出走。この日は自身の順位を争う必要は無し。他の選手のアシスト仕事も無し。「今日はひまわり畑じゃなくて、フランス南部特有なラベンダー畑を横目に走りました。強風の為にあんまり香りを楽しんでいる暇は無かった。タトライアルバイクでの長距離だったが、テンポ良く走りきる事が出来た。 しっかりと汗もかいたし、明日もまた風が強い予報なのでこれ以上は平坦ステージでメンティスのタイムを失わないように頑張りたい」(レース後のコメント/ユキヤ通信より)。
レース後は早々にホテルに帰り、テレビ放送でツールを観戦したユキヤ。日本でのJ SPORTSのライブ放送で解説する宮澤崇史さんにはTwitterでギアに関する質問を寄せた(まるでアマチュアのように・笑)。そして昼寝も。この日はしっかり回復できたようだ。
トップタイムを叩きだしたトム・ドゥムラン(ジャイアント・アルペシン)。2位のフルームにさえ1分3秒という大差をつけてステージ2勝目だ。厳しい山岳の続く最難関ステージで雨とヒョウの降るなか逃げ続け、逃げ切ったアンドラ・アルカリスでの勝利からまだ数日の疲労を感じさせず。優勝候補の下馬評どおり再び脚を魅せた。
勝利者記者会見では喜びは全面に出さず、まずニースの惨劇について心境をコメントした。「今朝ニースで凄惨な事件が起きたことを知って言葉を失った。でもレースは継続して開催されることになった。良い判断だったと思う。落ち着いて開幕前から目標にしていたこの個人TTに集中した」。
風の強さにバトンホイールを使うことも考えたが、結局はディスクを選択。風に煽られることもあったが、スムーズに走れたという。フルームにつけた1分以上の差。「負けない自信はあったけど、1分以上のタイム差がつくとは予想していなかった。この結果は自信につながる」。
当初語っている目標どおり、このツールでは総合成績は追わず、この個人TTステージとリオ五輪でのメダル獲得がシーズンの目標となっていたドゥムラン。今後はリオに向けこの調子をあと4週間保つために走る。本人が言うように、数年内には(おそらく来年には)フルームらとともにグランツールで総合成績を争う選手となるはずだ。
自身曰く「人生最高のタイムトライアル」を披露したのはドゥムランから1分54秒遅れの6位でまとめたバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)だ。軒並み冴えなかった総合争い勢のなかでは成功し、総合を2位に上げた。ツールに臨むまでにTTバイクでのトレーニングを積み、昨日からの調子の良さをそのまま継続した。風の国オランダでの経験も活きたという。モンヴァントゥーでの事件が寝不足をもたらしたが、スタート2時間前には居眠りできるリラックス状態に、自身の調子の良さを再確認したという。
過去トップ10入りを繰り返すもポディウムは遠かったモレマは、シャンゼリゼで登壇することが具体的な目標になってきた。
軒並みタイムを落とした総合上位狙いの選手たち。3分8秒遅れの20位に終わったナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)は、総合優勝が遠ざかってしまった。「身体が軽い自分のような選手にとって風は大敵。後半になってようやく身体が動き始めた。前半はとにかく苦しみ続けたんだ。フルームから3分遅れ。確かに小さい差ではないけど、脚の調子は良いので、この後の山岳ステージで挽回したい。これまで通り山岳ステージでアタックする。できることを全て試したい」。
フランス期待のロメン・バルデ(AG2Rラモンディアール)は風に弄ばれ、3分52秒遅れの30位に終わった。
総合11位から8位に上げたリッチー・ポート、そして5位から6位に上げたティージェイ・ヴァンガーデレンのBMCコンビ。ポートは言う「風が強くて無線の音が全く聞こえず、感覚に頼って走り続けた。とてもハードなタイムトライアルだった。昨日のモーターバイクとの接触事故の影響もあった。正直言って結果は残念だけど、まだツールの総合争いは終わっていない」。
ニース近隣のモナコに住んでいるフルームの記者会見は、レースに関することは語られなかった。「ニースでの出来事が残念でならない。嬉しさと悲しさが同居し、キャリアの中で最も奇妙な気持ちの中にいる。今はステージを振り返る気持ちにならない。フランスを襲った悲劇がレースに影を落としていた。普段からニース近くの道でトレーニングを行っている。遺体が横たわる海岸通りの凄惨な映像に動揺した。事件によって犠牲になった方々や影響を受けた方々のことを思う。」(フルーム)
表彰式は無し。代わりに各賞ジャージの選手と関係者たちがポディウムに登壇し、テロの犠牲者となった人々とニースのために黙祷を捧げた。
このレポートでは書くまいと思っていたことだが、当然このツール・ド・フランスのような巨大なスポーツイベントはテロの対象になることが考えられる。今大会ではセキュリティに関するチェックが厳しさを増し、プレスセンターやヴィラージュの出入りにも念入りな荷物検査が課せられている。どうか最後まで何事も起こらないで欲しい。
明日の第14ステージは晴れだが、40〜80kmの北風が吹くという予報。そのためスタート時間を15分早めて開催するという異例の事態に。ツールの時間割が変更になることはそう多くない。それほどの風が吹くということは、風に翻弄されたステージ同様に厳しい闘いが繰り広げられそうだ。
なお第14ステージのスタート地点でもニースに対して黙祷が捧げられる。
photo&text:Makoto.AYANO in Monterimar, France
photo:Kei.TSUJI, TimDeWaele
ローヌ川にそって美しい景観をみせるブール・サン・タンデオルの街。ツールをホストするのは初めてだが、自転車レースに馴染みの無い街ということではなく、この地域で開催されるクラシック・シュド・アルデッシュなどのレースも迎えている(2015はセプヴェルダがこの街で優勝)。
可愛い街が迎えるツールだが、この日は前夜に起こったニースのテロの惨劇に空気が支配されていた。ニースはわずか300kmの近さ。そしてASOにとってニースは特別な関係をもつ街だ。
キャラバン隊は音楽無しでコースを通過し、お祭り騒ぎは無し。ステージ中止もあり得た状況で、ヴィラージュでは総合ディレクターのプリュドム氏による、テロに対するツールの意志表明が行われた。
「今日はフランスとツール・ド・フランスが喪に服す日だ。我々はニースのことはよく知っている。毎年3月にはパリ〜ニースを開催してきている。アルデッシュ地方自治体、警察、警備隊とともに緊急会議を行った。『今日のアルデッシュでのステージは行う』」。
通常通りツールは継続する。しかし今日は特別な一日だ。スタート前にはヴィラージュで黙祷が捧げられ、レース終了後にも犠牲者を追悼することに。
「我々の心は悲劇を被った人々、その家族とともにある。レースを行なわないことも考えたが、関係者各位の合意により開催することにした。テロには屈しない。我々の生活を変えようと脅迫を続ける奴らに屈してはならない」(プリュドム氏)。
ー平静と尊厳を保ってツールは続く。
連日プロトンを悩ませ続けている風がまた今日も吹いた。昨日はカオスのステージの後、ホテルへ向かう帰路に狂ったように風が吹き荒れるモンヴァントゥー頂上をチームバスで通過した選手たち。その際に感じた恐怖からまだ半日しか経っていないのに、朝から吹く風に恐怖を抱いたことだろう。この風は生命を脅かす種類のものではないけれど、ツールでの成績を左右するほどの強さだ。
晴天しかし強風予報。気温は20℃〜26℃。北風は60km/hに達するという天気予報。今日のアップダウンが多い個人タイムトライアルは、その勾配に強風という難敵を加味することに。
いつもより早め、9:45からの2分おきの出走だ。今回はUCIの機材検査が厳しい。各部の規定サイズのチェックとスキャナによるモータードーピングのチェック。スタート前に寸法の規定違反が見つかったスティーブ・クミングス(ディメンションデータ)は対応に追われ、秒読みが始まると同時にスタート台に到着し、間髪入れず出走していった。(それでトップ10のリザルト!)
2015年ツールの開幕ステージTTを制したローハン・デニス(BMCレーシング)はオーストラリアチャンピオンのジャージを着てリラックスしてスピニング。
最後のツールを迎えるファビアン・カンチェラーラ(トレック・セガフレード)は赤いスイスTTチャンピオンジャージで登場。本来なら得意のTTで花を飾りたいところだが、しかし少しばかり自分向きではないコース。トレックの選手たちは今日のステージから登場したチームのマスコット「ヘルマン・シープ」に挨拶してからスタートに向かう。
真っ白に虹色のラインの世界チャンピオンジャージ姿が眩しいヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)、元世界チャンプのトニ・マルティン(エティックス・クイックステップ)にも、少しばかり登りの多すぎるコース。そしていずれのTTスペシャリストも、この数日の難ステージで総合リーダーのために献身的な仕事をしてきている。もはや純TT能力の凌ぎ合いではなく、登りを含めた能力と、残った脚の勝負。
風はやまず、ふらつかないように上半身をがっしり固めて走り抜ける選手たち。しかし時折風に煽られてふらつく姿も見られる。TTバイクにディスクホイールが基本装備だが、前輪にハイトの低いリムのホイールを用いたり、後輪のディスクを諦めたり、低いギア比の大きなスプロケットを使ったりと、それぞれの選手ごとに機材も違う。
テロ事件が空気を支配したが、沿道で応援する観客たちはボルテージを下げることなく賑やか。しかしいつもよりマナーも良かったのは昨日のカオス報道があったからかもしれない。風による肌寒さを感じつつ、しかしさんさんと降り注ぐ陽の光に日光浴を楽しみながらの観戦だ。それにしても美しい地域。
観客たちのなかには気管支炎が悪化したティボー・ピノ(FDJ)の不出走を知らなかった人も多く、スタート順が来たのに待てど暮らせど来ないピノにショックを受ける人達も。やはりフランス人の活躍は関心事。しかしピノはフランスTTチャンピオンのトリコロールジャージをこのツールで披露することなくレースを去ることになってしまった。
新城幸也(ランプレ・メリダ)は11時49分の出走。この日は自身の順位を争う必要は無し。他の選手のアシスト仕事も無し。「今日はひまわり畑じゃなくて、フランス南部特有なラベンダー畑を横目に走りました。強風の為にあんまり香りを楽しんでいる暇は無かった。タトライアルバイクでの長距離だったが、テンポ良く走りきる事が出来た。 しっかりと汗もかいたし、明日もまた風が強い予報なのでこれ以上は平坦ステージでメンティスのタイムを失わないように頑張りたい」(レース後のコメント/ユキヤ通信より)。
レース後は早々にホテルに帰り、テレビ放送でツールを観戦したユキヤ。日本でのJ SPORTSのライブ放送で解説する宮澤崇史さんにはTwitterでギアに関する質問を寄せた(まるでアマチュアのように・笑)。そして昼寝も。この日はしっかり回復できたようだ。
トップタイムを叩きだしたトム・ドゥムラン(ジャイアント・アルペシン)。2位のフルームにさえ1分3秒という大差をつけてステージ2勝目だ。厳しい山岳の続く最難関ステージで雨とヒョウの降るなか逃げ続け、逃げ切ったアンドラ・アルカリスでの勝利からまだ数日の疲労を感じさせず。優勝候補の下馬評どおり再び脚を魅せた。
勝利者記者会見では喜びは全面に出さず、まずニースの惨劇について心境をコメントした。「今朝ニースで凄惨な事件が起きたことを知って言葉を失った。でもレースは継続して開催されることになった。良い判断だったと思う。落ち着いて開幕前から目標にしていたこの個人TTに集中した」。
風の強さにバトンホイールを使うことも考えたが、結局はディスクを選択。風に煽られることもあったが、スムーズに走れたという。フルームにつけた1分以上の差。「負けない自信はあったけど、1分以上のタイム差がつくとは予想していなかった。この結果は自信につながる」。
当初語っている目標どおり、このツールでは総合成績は追わず、この個人TTステージとリオ五輪でのメダル獲得がシーズンの目標となっていたドゥムラン。今後はリオに向けこの調子をあと4週間保つために走る。本人が言うように、数年内には(おそらく来年には)フルームらとともにグランツールで総合成績を争う選手となるはずだ。
自身曰く「人生最高のタイムトライアル」を披露したのはドゥムランから1分54秒遅れの6位でまとめたバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)だ。軒並み冴えなかった総合争い勢のなかでは成功し、総合を2位に上げた。ツールに臨むまでにTTバイクでのトレーニングを積み、昨日からの調子の良さをそのまま継続した。風の国オランダでの経験も活きたという。モンヴァントゥーでの事件が寝不足をもたらしたが、スタート2時間前には居眠りできるリラックス状態に、自身の調子の良さを再確認したという。
過去トップ10入りを繰り返すもポディウムは遠かったモレマは、シャンゼリゼで登壇することが具体的な目標になってきた。
軒並みタイムを落とした総合上位狙いの選手たち。3分8秒遅れの20位に終わったナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)は、総合優勝が遠ざかってしまった。「身体が軽い自分のような選手にとって風は大敵。後半になってようやく身体が動き始めた。前半はとにかく苦しみ続けたんだ。フルームから3分遅れ。確かに小さい差ではないけど、脚の調子は良いので、この後の山岳ステージで挽回したい。これまで通り山岳ステージでアタックする。できることを全て試したい」。
フランス期待のロメン・バルデ(AG2Rラモンディアール)は風に弄ばれ、3分52秒遅れの30位に終わった。
総合11位から8位に上げたリッチー・ポート、そして5位から6位に上げたティージェイ・ヴァンガーデレンのBMCコンビ。ポートは言う「風が強くて無線の音が全く聞こえず、感覚に頼って走り続けた。とてもハードなタイムトライアルだった。昨日のモーターバイクとの接触事故の影響もあった。正直言って結果は残念だけど、まだツールの総合争いは終わっていない」。
ニース近隣のモナコに住んでいるフルームの記者会見は、レースに関することは語られなかった。「ニースでの出来事が残念でならない。嬉しさと悲しさが同居し、キャリアの中で最も奇妙な気持ちの中にいる。今はステージを振り返る気持ちにならない。フランスを襲った悲劇がレースに影を落としていた。普段からニース近くの道でトレーニングを行っている。遺体が横たわる海岸通りの凄惨な映像に動揺した。事件によって犠牲になった方々や影響を受けた方々のことを思う。」(フルーム)
表彰式は無し。代わりに各賞ジャージの選手と関係者たちがポディウムに登壇し、テロの犠牲者となった人々とニースのために黙祷を捧げた。
このレポートでは書くまいと思っていたことだが、当然このツール・ド・フランスのような巨大なスポーツイベントはテロの対象になることが考えられる。今大会ではセキュリティに関するチェックが厳しさを増し、プレスセンターやヴィラージュの出入りにも念入りな荷物検査が課せられている。どうか最後まで何事も起こらないで欲しい。
明日の第14ステージは晴れだが、40〜80kmの北風が吹くという予報。そのためスタート時間を15分早めて開催するという異例の事態に。ツールの時間割が変更になることはそう多くない。それほどの風が吹くということは、風に翻弄されたステージ同様に厳しい闘いが繰り広げられそうだ。
なお第14ステージのスタート地点でもニースに対して黙祷が捧げられる。
photo&text:Makoto.AYANO in Monterimar, France
photo:Kei.TSUJI, TimDeWaele
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