2016/07/06(水) - 17:13
2日連続のハンドルの投げ合い。不運のシーズンを乗り越えたキッテルと、フランス期待の星コカール。"2cm"の差が勝利を切望する2人の明暗を分けた。
ロワール川沿いのソミュールのスタート地点には、新たに導入された大型のスタートサインポディウムが用意された。スロープで登壇した選手たちが、ひときわ高い位置から観客たちに紹介される。
マイヨ・ジョーヌのサガン、全身マイヨヴェール色で揃えたカヴェンディッシュも登場。カヴはチェーンのコマまでグリーンに色づいた。
今日が誕生日というアレクサンダー・クリストフ(カチューシャ)はここまでのスプリントでやや低調だが、クラシックに強く、上りフィニッシュで本領を発揮するタイプ。そう、今日のフィニッシュ地点のリモージュは、残り500mから勾配5%ほどを駆け上がるのだ。
新城幸也(ランプレ・メリダ)もチームメイトや地元に住む選手の友人らと会話を楽しんでいる。怪我の影響か昨日までは表情が冴えなかったが、今日は心配が要らない和やかな雰囲気だ。
注目を集めるのはフランス人スプリンターのブライアン・コカール(ディレクトエネルジー)だ。フランス人の期待というだけでなく、第1ステージ7位、そして昨第3ステージでは3位。コカールにとってこのツールは、昨年のシャンゼリゼでグライペルに次いで2位になったことで必ずやステージ勝利を掴みたいツールだ。
ディレクトエネルジーは当初第2ステージでコカールがマイヨジョーヌを着ることを目標にしてきた。サガンが勝利したシェルブール・アン・コタンタンの上りフィニッシュで、コカールのステージ勝利を期待していた。チーム総出でアシストしたが、結果は68位。マイヨジョーヌにも遠く及ばなかった。
苛立ち言葉の「ピュターン!」とゴール後に叫んだコカール。ベルノドーGMは「最初の14%の勾配が、ただ彼にはきつすぎた」と、勝利を狙うには無理があったと認めた。そして出身地に近いアンジェではカヴとグライペルの後塵を拝し、3位。悔しさは頂点に達している。
92年生まれの24歳。ロンドンオリンピックのオムニアム競技の銀メダリストで、マイケル・マシューズ(オリカ・バイクエクスチェンジ)によく似た脚質をもつと言われるコカールは、今日のリモージュでの上りスプリントでの勝利を悲願している。
鶏の意味を持つ「Le Coq(ルコック」の愛称は、名前「Coquard 」からとったものだが、それにしても走りのスタイルや顔、トサカのように跳ねた髪型にいたるまで鶏そのままの容姿になっているのはなぜ? バイクにも不機嫌なニワトリのイラストが描かれる。
曇り空のなか、ロワール川に沿って走りだした選手たち。ソミュールの城がプロトンの通過を見守る。いっときは霧雨が降ったが、午後にかけて徐々に雲が薄まり、青空が覗くようになったきた。これからは夏のフランスらしい風景を取り戻せそうだ。
今ツール最長の237.5km。近年は230kmを越えるステージは珍しい存在。マルケル・イリサール(トレック・セガフレード)とアンドレアス・シュリンガー(ボーラ・アルゴン18)、アレクシ・グジャール(AG2Rラモンディアール)とオリバー・ナーセン(IAMサイクリング)の5人が逃げ出すと、集団は今日もクルーズモードに切り替えた。
ティンコフにとってはコンタドールが休養できるありがたいステージ。マイヨジョーヌを擁しているため先頭にたちコントロールする。南東に進路をとり、中央山塊の入り口リモージュを目指す。途中通過するシャテルローの街の前後にはシルヴァン・シャヴァネル(ディレクトエネルジー)への応援がいっぱい! 街の中心部にかかる橋にはBRAVO SYLVAIN(ブラボー・シルヴァン)!の横断幕がかかる。
逃げ集団のマルケル・イリサールはシャヴァネルファンたちの前を通過するとき、指を咥えるしぐさを真似て見せた。そして遅れて通過するメイン集団からはシャヴァネルが飛び出して先行し、橋の上で待つファンクラブたちにハイタッチをして挨拶。再び集団に戻った。愛されるキャラクターはフランスで大人気だ。
淡々と巡航する集団内で走るユキヤ。通過する街で高いところによじ登って撮影していたら、レース後に「手を振ったのに気づいてくれなかったじゃないですか!」と笑って言われた。つまりユキヤはいつもの余裕を取り戻しているようだ。
ツール・ド・リムザンのステージ優勝と総合優勝の経験をもつユキヤ。ツールに16年ぶりの登場となるリモージュはその中心地だが、今日のステージはスプリンターたちのもの。
フラムルージュを過ぎて残り500mでヴィエンヌ川を越え、そこから勾配5%ほどのジョルジュデュマ通りを駆け上がる。
普通の人が見たらとても平坦ではない上り坂。激しいポジション争いを経て、スプリンターたちが上りに取り付いた。ラスト900mで66km/hのスピードからはじまったスプリント合戦は、ラスト500mで60/h、ラスト200mで55km/h、そしてフィニッシュラインに向けて52km/hでなだれ込んだ。徐々にスピードが落ちていくというゴールスプリント。
口を大きく開けてトップスピードを維持しようと耐えるキッテル。ニワトリのしぐさのように上半身を縦に振って加速を試みるコカール。肩が接触しそうになりながらのふたりの争いは、昨ステージに続いてフィニッシュラインに向けてのハンドルの投げ合いで決まった。またしても写真判定だ。
フィニッシュした先で地面に座り込んだキッテルはオールアウトまで追い込んでしばらく動けない。そしてスタッフやメディアに囲まれて待つなか、レース無線で勝利が知らされた。喜びを炸裂させるキッテル。病気で棒に振ったツール出場、不振からのチーム移籍と、不遇が続いた。それらを帳消しにする待望の勝利だ。2014年のシャンゼリゼ以来、2年ぶりのツールでのステージ優勝。
「僕は今とても感情的になっている。また初めてのステージ優勝したような感覚だ。スーパーハッピーだ。チームは僕を信じて最後までサポートして闘ってくれた。昨日はうまくいかなかった。でもこうしてまたツールで勝てたことが嬉しい。信じられない」
今季は春から好調で、第1ステージではスプリント勝利とマイヨジョーヌ獲得も視野にあったキッテルは、しかしカヴに敗れる。そして第3ステージも。通常、大型のキッテルは上りスプリントは向いていないはずだ。しかしそれを越える好調の「ゴールデン・レッグ(金の脚)」が今日のキッテルにはあったという。昨夜のチームミーティングではそれを再確認し、チームはキッテルを信じ続けた。失敗したゴール前のリプレイ映像を何度も観て闘い方を再確認しあったという。
敗れたコカールはヴィッテルのスタンドに憮然とした態度で座り、メディアたちに囲まれる。肩を落とし、失望を隠せない。
「今日はチャンスがあることを信じていた。やったと思ったのに、十分じゃなかったんだ。スプリントではミスは無かった。もっとも強かった選手が勝ったんだ。わずかな差が勝利と敗北を分けた。こんなにも勝利に近づいたことは今までに無かった。でも、僕はまだ勝利していない。とても失望しているけど諦めない。このツールにはまだ多くのチャンスが残されているし、今年は期間中に何としても勝利を掴みたい」。
表彰式にはリムザン出身のレイモン・プリドール氏が登壇した。今年80歳になった「ププ」は、1960~70年代に活躍した「永遠の2番手」と呼ばれる選手だった。14回出場したツールでは、総合2位が3回、3位が5回と、表彰台に8回上がりながらもジャック・アンクティルとエディ・メルクスの活躍期と重なったために総合優勝にだけは手が届かなかった。
優勝できないことへの同情、あるいは闘争心を感じさせない温和な人柄でフランス国民に愛され、今でも国民的な人気がある。現在はツールの広報役としてマイヨジョーヌスポンサーのLCL銀行とともにツールを回っている。16年ぶりにツールが立ち寄ったリムザンで、リムザンっ子たちの大声援を浴びた。ベルナール・イノーに登壇をうながされながら、どこか気恥ずかしげな姿。サガンもかつての英雄と並ぶと、敬意をもってそっと肩を組んで撮影に応じた。
photo&text:Makoto.AYANO in Limoge, France
ロワール川沿いのソミュールのスタート地点には、新たに導入された大型のスタートサインポディウムが用意された。スロープで登壇した選手たちが、ひときわ高い位置から観客たちに紹介される。
マイヨ・ジョーヌのサガン、全身マイヨヴェール色で揃えたカヴェンディッシュも登場。カヴはチェーンのコマまでグリーンに色づいた。
今日が誕生日というアレクサンダー・クリストフ(カチューシャ)はここまでのスプリントでやや低調だが、クラシックに強く、上りフィニッシュで本領を発揮するタイプ。そう、今日のフィニッシュ地点のリモージュは、残り500mから勾配5%ほどを駆け上がるのだ。
新城幸也(ランプレ・メリダ)もチームメイトや地元に住む選手の友人らと会話を楽しんでいる。怪我の影響か昨日までは表情が冴えなかったが、今日は心配が要らない和やかな雰囲気だ。
注目を集めるのはフランス人スプリンターのブライアン・コカール(ディレクトエネルジー)だ。フランス人の期待というだけでなく、第1ステージ7位、そして昨第3ステージでは3位。コカールにとってこのツールは、昨年のシャンゼリゼでグライペルに次いで2位になったことで必ずやステージ勝利を掴みたいツールだ。
ディレクトエネルジーは当初第2ステージでコカールがマイヨジョーヌを着ることを目標にしてきた。サガンが勝利したシェルブール・アン・コタンタンの上りフィニッシュで、コカールのステージ勝利を期待していた。チーム総出でアシストしたが、結果は68位。マイヨジョーヌにも遠く及ばなかった。
苛立ち言葉の「ピュターン!」とゴール後に叫んだコカール。ベルノドーGMは「最初の14%の勾配が、ただ彼にはきつすぎた」と、勝利を狙うには無理があったと認めた。そして出身地に近いアンジェではカヴとグライペルの後塵を拝し、3位。悔しさは頂点に達している。
92年生まれの24歳。ロンドンオリンピックのオムニアム競技の銀メダリストで、マイケル・マシューズ(オリカ・バイクエクスチェンジ)によく似た脚質をもつと言われるコカールは、今日のリモージュでの上りスプリントでの勝利を悲願している。
鶏の意味を持つ「Le Coq(ルコック」の愛称は、名前「Coquard 」からとったものだが、それにしても走りのスタイルや顔、トサカのように跳ねた髪型にいたるまで鶏そのままの容姿になっているのはなぜ? バイクにも不機嫌なニワトリのイラストが描かれる。
曇り空のなか、ロワール川に沿って走りだした選手たち。ソミュールの城がプロトンの通過を見守る。いっときは霧雨が降ったが、午後にかけて徐々に雲が薄まり、青空が覗くようになったきた。これからは夏のフランスらしい風景を取り戻せそうだ。
今ツール最長の237.5km。近年は230kmを越えるステージは珍しい存在。マルケル・イリサール(トレック・セガフレード)とアンドレアス・シュリンガー(ボーラ・アルゴン18)、アレクシ・グジャール(AG2Rラモンディアール)とオリバー・ナーセン(IAMサイクリング)の5人が逃げ出すと、集団は今日もクルーズモードに切り替えた。
ティンコフにとってはコンタドールが休養できるありがたいステージ。マイヨジョーヌを擁しているため先頭にたちコントロールする。南東に進路をとり、中央山塊の入り口リモージュを目指す。途中通過するシャテルローの街の前後にはシルヴァン・シャヴァネル(ディレクトエネルジー)への応援がいっぱい! 街の中心部にかかる橋にはBRAVO SYLVAIN(ブラボー・シルヴァン)!の横断幕がかかる。
逃げ集団のマルケル・イリサールはシャヴァネルファンたちの前を通過するとき、指を咥えるしぐさを真似て見せた。そして遅れて通過するメイン集団からはシャヴァネルが飛び出して先行し、橋の上で待つファンクラブたちにハイタッチをして挨拶。再び集団に戻った。愛されるキャラクターはフランスで大人気だ。
淡々と巡航する集団内で走るユキヤ。通過する街で高いところによじ登って撮影していたら、レース後に「手を振ったのに気づいてくれなかったじゃないですか!」と笑って言われた。つまりユキヤはいつもの余裕を取り戻しているようだ。
ツール・ド・リムザンのステージ優勝と総合優勝の経験をもつユキヤ。ツールに16年ぶりの登場となるリモージュはその中心地だが、今日のステージはスプリンターたちのもの。
フラムルージュを過ぎて残り500mでヴィエンヌ川を越え、そこから勾配5%ほどのジョルジュデュマ通りを駆け上がる。
普通の人が見たらとても平坦ではない上り坂。激しいポジション争いを経て、スプリンターたちが上りに取り付いた。ラスト900mで66km/hのスピードからはじまったスプリント合戦は、ラスト500mで60/h、ラスト200mで55km/h、そしてフィニッシュラインに向けて52km/hでなだれ込んだ。徐々にスピードが落ちていくというゴールスプリント。
口を大きく開けてトップスピードを維持しようと耐えるキッテル。ニワトリのしぐさのように上半身を縦に振って加速を試みるコカール。肩が接触しそうになりながらのふたりの争いは、昨ステージに続いてフィニッシュラインに向けてのハンドルの投げ合いで決まった。またしても写真判定だ。
フィニッシュした先で地面に座り込んだキッテルはオールアウトまで追い込んでしばらく動けない。そしてスタッフやメディアに囲まれて待つなか、レース無線で勝利が知らされた。喜びを炸裂させるキッテル。病気で棒に振ったツール出場、不振からのチーム移籍と、不遇が続いた。それらを帳消しにする待望の勝利だ。2014年のシャンゼリゼ以来、2年ぶりのツールでのステージ優勝。
「僕は今とても感情的になっている。また初めてのステージ優勝したような感覚だ。スーパーハッピーだ。チームは僕を信じて最後までサポートして闘ってくれた。昨日はうまくいかなかった。でもこうしてまたツールで勝てたことが嬉しい。信じられない」
今季は春から好調で、第1ステージではスプリント勝利とマイヨジョーヌ獲得も視野にあったキッテルは、しかしカヴに敗れる。そして第3ステージも。通常、大型のキッテルは上りスプリントは向いていないはずだ。しかしそれを越える好調の「ゴールデン・レッグ(金の脚)」が今日のキッテルにはあったという。昨夜のチームミーティングではそれを再確認し、チームはキッテルを信じ続けた。失敗したゴール前のリプレイ映像を何度も観て闘い方を再確認しあったという。
敗れたコカールはヴィッテルのスタンドに憮然とした態度で座り、メディアたちに囲まれる。肩を落とし、失望を隠せない。
「今日はチャンスがあることを信じていた。やったと思ったのに、十分じゃなかったんだ。スプリントではミスは無かった。もっとも強かった選手が勝ったんだ。わずかな差が勝利と敗北を分けた。こんなにも勝利に近づいたことは今までに無かった。でも、僕はまだ勝利していない。とても失望しているけど諦めない。このツールにはまだ多くのチャンスが残されているし、今年は期間中に何としても勝利を掴みたい」。
表彰式にはリムザン出身のレイモン・プリドール氏が登壇した。今年80歳になった「ププ」は、1960~70年代に活躍した「永遠の2番手」と呼ばれる選手だった。14回出場したツールでは、総合2位が3回、3位が5回と、表彰台に8回上がりながらもジャック・アンクティルとエディ・メルクスの活躍期と重なったために総合優勝にだけは手が届かなかった。
優勝できないことへの同情、あるいは闘争心を感じさせない温和な人柄でフランス国民に愛され、今でも国民的な人気がある。現在はツールの広報役としてマイヨジョーヌスポンサーのLCL銀行とともにツールを回っている。16年ぶりにツールが立ち寄ったリムザンで、リムザンっ子たちの大声援を浴びた。ベルナール・イノーに登壇をうながされながら、どこか気恥ずかしげな姿。サガンもかつての英雄と並ぶと、敬意をもってそっと肩を組んで撮影に応じた。
photo&text:Makoto.AYANO in Limoge, France
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