2016/07/06(水) - 02:52
リモージュのジョルジュデュマ通りを駆け上がる登りスプリントでマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が勝利。不利と思われたアップダウンコースでジャーマンスプリンターが今大会初勝利を飾った。
ツールにしては珍しい230kmオーバーのロングコースで行われた第4ステージ。登場するカテゴリー山岳は4級山岳一つだけだが、世界的な磁器の産地として知られるリモージュに向かってコースは細かく波打つ。しかも残り500mから勾配6%の登りが続くピュアスプリンターにとって挑戦的なコース設定だ。
ステージの長さからレース開始時間が早く、霧雨が降る肌寒いソミュールの街を198名がスタート。すんなりと逃げを見送ったここまでの3ステージとは異なり、正式なスタートが切られてからもしばらくアタック合戦が継続する。
28km地点で飛び出したマルケル・イリサール(スペイン、トレック・セガフレード)とアンドレアス・シュリンガー(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)に、遅れてアレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)とオリバー・ナーセン(ベルギー、IAMサイクリング)がジョインしたところでメイン集団はようやくペースを弱めた。
タイム差が5分まで広がるとメイン集団ではティンコフがコントロールを開始する。脚の揃った先頭4名は43km/h前後のペースを刻みながらエスケープ。霧雨を降らせた雲はレースの進行とともに去り、リムーザン地域圏は暖かい太陽に照らされ始める。気温は25度まで上昇した。
レース後半にかけて集団ローテーションに人数を送り込んだのはディメンションデータ、ロット・ソウダル、エティックス・クイックステップ。リモージュが近づくにつれてタイム差は緩やかに縮まっていく。メイン集団がペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)を先頭に170km地点の中間スプリントポイントを通過すると、いよいよ本格的な追走と位置取りが始まった。
先頭からはグジャールが脱落し、ナーセン、イリサール、シュリンガーの3名が1分に満たないリードを維持しながら逃げ続ける。コースは忙しなく上昇と降下を繰り返し、さらにコーナーやロータリー、中央分離帯が連続したため集団は縦に長く伸びた状態に。
ロット・ソウダルやティンコフ、チームスカイに導かれたメイン集団は残り7kmで逃げを吸収。その後もメイン集団はナーバスな状態のまま進んだが、大きな落車や集団分断は起こらず。ピュアスプリンターを含んだ集団がリモージュに到着した。
フラムルージュを通過し、集団先頭はディメンションデータからカチューシャとエティックス・クイックステップへ。集団はおよそ65km/hで残り500mから始まる勾配6%のジョルジュデュマ通りに突入。集団全体がスピードを失いながらも、55km/h前後のスピード域からスプリントが始まった。
残り200mで最初に仕掛けたのはアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)。バースデーウィンを狙ったクリストフだったが、その後ろからアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)とマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)、ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)の3人が加速する。
グライペルはすぐにスピードを失ってしまい、「自分向きのフィニッシュだったけどスプリントを開始するのが早すぎた」というサガンも伸びない。先頭でもがき続けるキッテルにはブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)だけが並んだ。
横並びでフィニッシュしたキッテルとコカール。この日も勝利を確信する選手は現れず、両者ともにハンドルに手を置いたままフィニッシュラインを駆け抜ける。写真判定の結果、キッテルの勝利が確定する。コカールとはわずか2cmほどの差だった。
「チームスタッフに告げられて初めてステージ優勝したことを知った」というキッテルは地面に座り込んで雄叫びを上げた。本命スプリンターに名前が挙がりながらもカヴェンディッシュに土をつけられていたジャーマンスプリンターが2年ぶりのステージ優勝を果たした。
ステージ通算9勝目をつかんだキッテルは「この勝利を誇りに思うし、とても嬉しい」と喜ぶ。「病気続きで昨年のツールを欠場し、チームを移籍して挑んだ今回のツール。周りからの期待は大きかったものの、目標としていた第1ステージで勝てずにマイヨジョーヌを逃した。失望したけどチームは集中力を絶やさなかった。大きなプレッシャーを受けていただけに勝利の喜びは大きい」。
マイヨジョーヌはステージ3位のサガンがキープ。カヴェンディッシュがステージ8位に沈んだためサガンがポイント賞トップに返り咲いている(第5ステージでは引き続きカヴェンディッシュがマイヨヴェールを着用する)。
ツール・ド・フランス2016第4ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 5h28’30”
2位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
4位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
5位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
6位 ソンドレホルスト・エンゲル(ノルウェー、IAMサイクリング)
7位 ダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)
8位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)
9位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、AG2Rラモンディアール)
10位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
122位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +52”
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 20h03’02”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) +12”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +14”
4位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +18”
5位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)
7位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
8位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
9位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
10位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 147pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 142pts
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 137pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 4pts
2位 ポール・ヴォス(ドイツ、ボーラ・アルゴン18) 2pts
3位 アルマンド・フォンセカ(フランス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト) 1pt
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)20h03’14”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +06”
3位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
チーム総合成績
1位 オリカ・バイクエクスチェンジ 60h10’00”
2位 チームスカイ
3位 モビスター +21”
ステージ敢闘賞
オリバー・ナーセン(ベルギー、IAMサイクリング)
リタイア
なし
text&photo:Kei Tsuji in Limoges, France
ツールにしては珍しい230kmオーバーのロングコースで行われた第4ステージ。登場するカテゴリー山岳は4級山岳一つだけだが、世界的な磁器の産地として知られるリモージュに向かってコースは細かく波打つ。しかも残り500mから勾配6%の登りが続くピュアスプリンターにとって挑戦的なコース設定だ。
ステージの長さからレース開始時間が早く、霧雨が降る肌寒いソミュールの街を198名がスタート。すんなりと逃げを見送ったここまでの3ステージとは異なり、正式なスタートが切られてからもしばらくアタック合戦が継続する。
28km地点で飛び出したマルケル・イリサール(スペイン、トレック・セガフレード)とアンドレアス・シュリンガー(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)に、遅れてアレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)とオリバー・ナーセン(ベルギー、IAMサイクリング)がジョインしたところでメイン集団はようやくペースを弱めた。
タイム差が5分まで広がるとメイン集団ではティンコフがコントロールを開始する。脚の揃った先頭4名は43km/h前後のペースを刻みながらエスケープ。霧雨を降らせた雲はレースの進行とともに去り、リムーザン地域圏は暖かい太陽に照らされ始める。気温は25度まで上昇した。
レース後半にかけて集団ローテーションに人数を送り込んだのはディメンションデータ、ロット・ソウダル、エティックス・クイックステップ。リモージュが近づくにつれてタイム差は緩やかに縮まっていく。メイン集団がペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)を先頭に170km地点の中間スプリントポイントを通過すると、いよいよ本格的な追走と位置取りが始まった。
先頭からはグジャールが脱落し、ナーセン、イリサール、シュリンガーの3名が1分に満たないリードを維持しながら逃げ続ける。コースは忙しなく上昇と降下を繰り返し、さらにコーナーやロータリー、中央分離帯が連続したため集団は縦に長く伸びた状態に。
ロット・ソウダルやティンコフ、チームスカイに導かれたメイン集団は残り7kmで逃げを吸収。その後もメイン集団はナーバスな状態のまま進んだが、大きな落車や集団分断は起こらず。ピュアスプリンターを含んだ集団がリモージュに到着した。
フラムルージュを通過し、集団先頭はディメンションデータからカチューシャとエティックス・クイックステップへ。集団はおよそ65km/hで残り500mから始まる勾配6%のジョルジュデュマ通りに突入。集団全体がスピードを失いながらも、55km/h前後のスピード域からスプリントが始まった。
残り200mで最初に仕掛けたのはアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)。バースデーウィンを狙ったクリストフだったが、その後ろからアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)とマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)、ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)の3人が加速する。
グライペルはすぐにスピードを失ってしまい、「自分向きのフィニッシュだったけどスプリントを開始するのが早すぎた」というサガンも伸びない。先頭でもがき続けるキッテルにはブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)だけが並んだ。
横並びでフィニッシュしたキッテルとコカール。この日も勝利を確信する選手は現れず、両者ともにハンドルに手を置いたままフィニッシュラインを駆け抜ける。写真判定の結果、キッテルの勝利が確定する。コカールとはわずか2cmほどの差だった。
「チームスタッフに告げられて初めてステージ優勝したことを知った」というキッテルは地面に座り込んで雄叫びを上げた。本命スプリンターに名前が挙がりながらもカヴェンディッシュに土をつけられていたジャーマンスプリンターが2年ぶりのステージ優勝を果たした。
ステージ通算9勝目をつかんだキッテルは「この勝利を誇りに思うし、とても嬉しい」と喜ぶ。「病気続きで昨年のツールを欠場し、チームを移籍して挑んだ今回のツール。周りからの期待は大きかったものの、目標としていた第1ステージで勝てずにマイヨジョーヌを逃した。失望したけどチームは集中力を絶やさなかった。大きなプレッシャーを受けていただけに勝利の喜びは大きい」。
マイヨジョーヌはステージ3位のサガンがキープ。カヴェンディッシュがステージ8位に沈んだためサガンがポイント賞トップに返り咲いている(第5ステージでは引き続きカヴェンディッシュがマイヨヴェールを着用する)。
ツール・ド・フランス2016第4ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 5h28’30”
2位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
4位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
5位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
6位 ソンドレホルスト・エンゲル(ノルウェー、IAMサイクリング)
7位 ダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)
8位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)
9位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、AG2Rラモンディアール)
10位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
122位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +52”
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 20h03’02”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) +12”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +14”
4位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +18”
5位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)
7位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
8位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
9位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
10位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 147pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 142pts
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 137pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 4pts
2位 ポール・ヴォス(ドイツ、ボーラ・アルゴン18) 2pts
3位 アルマンド・フォンセカ(フランス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト) 1pt
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)20h03’14”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +06”
3位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
チーム総合成績
1位 オリカ・バイクエクスチェンジ 60h10’00”
2位 チームスカイ
3位 モビスター +21”
ステージ敢闘賞
オリバー・ナーセン(ベルギー、IAMサイクリング)
リタイア
なし
text&photo:Kei Tsuji in Limoges, France
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