2016/06/12(日) - 06:35
標高1,992mの超級山岳マドレーヌ峠を越え、1級山岳メリベル・レザリュにフィニッシュする獲得標高差4,300mの最難関ステージでティボー・ピノ(フランス、FDJ)が勝利。ともに逃げたロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)が総合3位にジャンプアップした。
チームスカイを先頭にメイン集団が超級山岳マドレーヌ峠を走る photo:Tim de Waele
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第6ステージ image:Criterium du Dauphinéクリテリウム・ドゥ・ドーフィネのクイーンステージ(最難関ステージ)には5つのカテゴリー山岳が詰め込まれている。序盤から1級山岳シャンローラン(9.3km/平均8.1%)と2級山岳グランキュシュロン(3.4km/平均6.9%)を立て続けにクリアし、中盤にかけて標高1,992mの超級山岳マドレーヌ峠(19.2km/平均7.9%)を越える。
標高1,992mの超級山岳マドレーヌ峠を走る photo:Tim de Waeleそこからさらに1級山岳モンテー・デ・フラース(8km/平均6.5%)と1級山岳メリベル・レザリュ(12.3km/平均6.6%)を駆け上がる過酷なコースレイアウト。獲得標高差が大会最大の4,300mに達するこの日は27名の巨大な集団が先行する展開で幕開けた。
超級山岳マドレーヌ峠でアタックを仕掛けるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:Tim de Waele1級山岳シャンローランで形成されたこの逃げ集団に入ったのはティボー・ピノ(フランス、FDJ)やロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)、ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)、トマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)といった強力なメンバー。テクレハイマノは2年連続山岳賞獲得に向けて1級山岳シャンローランと2級山岳グランキュシュロンを先頭通過する。
超級山岳マドレーヌ峠でアタックするロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waele逃げ集団とメイン集団のタイム差が3分まで広がった状態で、この日最大の難所である超級山岳マドレーヌ峠に突入。登りが始まるとすぐ、フィニッシュまで80km以上を残して、総合成績をかけた戦いが始まった。
前日にマイヨジョーヌを失ったアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)のアタックにファビオ・アル(イタリア、アスタナ)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らがジョインし、フルームを25秒引き離すことに成功する。
結果的にこの動きはチームスカイによって封じ込められたが、形勢逆転を狙うコンタドールは諦めずにマドレーヌ峠でアタックを連発した。「ライバルチームにプレッシャーを与えたかった。強力なチームスカイを崩す必要があった。挑戦しなければ何も起こらない。脚の状態は日を追うごとに良くなっており、今日のフィーリングはとても良かった」と攻撃的な走りを見せたコンタドールは語る。
コンタドールはチームスカイのアシスト体制を崩すことができないまま、フルームらとともに先頭ピノから1分22秒遅れでマドレーヌ峠をクリア。すると長いダウンヒル区間でメイン集団からアルとバルデが抜け出し、逃げグループまで一気にジャンプした。
強力なアシストたちに導かれるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele
超級山岳マドレーヌ峠のダウンヒルをこなすクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleこうしてバルデが加わった逃げグループはメンバー3名(シュレル、バケランツ、バルデ)を揃えるAG2Rラモンディアールがリードし、アルをふるい落として1級山岳モンテー・デ・フラースを乗り越える。10名に絞られた先頭グループがチームスカイ率いるメイン集団から3分のリードで最後の1級山岳メリベル・レザリュの登坂を開始した。
1級山岳モンテー・デ・フラースを駆け上がるメイン集団 photo:Tim de Waeleチームメイトが力尽きたタイミングで、フィニッシュラインまで10kmを残してバルデが先頭からアタックするとピノが応戦。こうして形成されたバルデ=ピノのフレンチデュオがリードを失うながらも山頂まで逃げ切る。総合11位・1分34秒差のバルデが積極的にプッシュし、その後ろで力を溜めたピノがスプリントで勝利した。
先頭グループから脱落するファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele「1日中ずっと苦しみ続け、最後の最後になってようやく良い感触を得たので、自分が勝ったとは未だに信じられない。仮にマドレーヌ峠を登っているときに『今日は君が勝つ』と言われても信じられなかったと思う。特に調子が良いわけでもないので予想外の勝利だ」と、今シーズン5勝目を飾ったピノ。ともに逃げたバルデが総合3位まで順位を上げる中、ピノも総合27位から総合10位にまでジャンプアップしている。
AG2Rラモンディアールが率いる先頭グループ photo:Tim de Waele「ロメン・バルデが早めにアタックしなければ、より大きなタイム差をもって逃げきれていたと思う。とは言ってもフランス生まれの2人が先頭でバトルを繰り広げるのは大会にとっても良いことだ。ロメンとの逃げ切りは、昨年ツール第11ステージ(ピノとバルデを振り切ったクミングスが逃げ切り勝利)のリベンジになったよ」とピノは締めくくっている。
チームスカイが集団先頭を固めたままフィニッシュへ photo:Tim de Waele最終的に約1分後方にまで迫ったメイン集団ではチームスカイの鉄壁の走りが目立った。ワウト・ポエルス(オランダ)、ミケル・ランダ(スペイン)、セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア)によるハイスピード牽引がバルデの総合逆転を許さず、集団内のライバルたちにアタックチャンスを与えない。残り500mで加速したダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)にフルームだけが反応。フルームはコンタドールを8秒、リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)を14秒引き離す走りでマイヨジョーヌを守った。
「今日もチームメイトの完璧な走りに助けられた。ジャージキープのためにチームメイトの一人一人が全力を尽くしてくれた。プレッシャーが一気に増したのはマドレーヌ峠でのアルベルト・コンタドールがアタックしたタイミング。彼を逃しては手遅れになる可能性があったので、すぐに引き戻す必要があった。そして終盤はバーチャルリーダーとなったロメン・バルデを追撃。リッチーとアルベルトに対してリードを奪ったことはサプライズだ。明日の最終ステージに向けて少しでもタイム差を付けることができてよかった」と、3度目の大会制覇に王手をかけたフルーム。総合2位ポートとのタイム差は21秒にまで広がった。
選手コメントはレース公式サイトより。
バルデとのスプリント一騎打ちを制したティボー・ピノ(フランス、FDJ) photo:Tim de Waele
フルームとともにフィニッシュに向かうダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele
ステージ優勝を飾ったティボー・ピノ(フランス、FDJ) photo:Tim de Waele
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第6ステージ結果
1位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) 4h24’16”
2位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +1’04”
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +1’07”
5位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ) +1’15”
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)
7位 ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ) +1’17”
8位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
9位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) +1’21”
10位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)
DNF 別府史之(日本、トレック・セガフレード)
個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 25h50’22”
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +21”
3位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +30”
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) +35”
6位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) +56”
7位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +1’02”
8位 ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ) +1’18”
9位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ) +1’35”
10位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +2’12”
ポイント賞
1位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)
山岳賞
1位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)
ヤングライダー賞
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
チーム総合成績
1位 チームスカイ
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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前日にマイヨジョーヌを失ったアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)のアタックにファビオ・アル(イタリア、アスタナ)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らがジョインし、フルームを25秒引き離すことに成功する。
結果的にこの動きはチームスカイによって封じ込められたが、形勢逆転を狙うコンタドールは諦めずにマドレーヌ峠でアタックを連発した。「ライバルチームにプレッシャーを与えたかった。強力なチームスカイを崩す必要があった。挑戦しなければ何も起こらない。脚の状態は日を追うごとに良くなっており、今日のフィーリングはとても良かった」と攻撃的な走りを見せたコンタドールは語る。
コンタドールはチームスカイのアシスト体制を崩すことができないまま、フルームらとともに先頭ピノから1分22秒遅れでマドレーヌ峠をクリア。すると長いダウンヒル区間でメイン集団からアルとバルデが抜け出し、逃げグループまで一気にジャンプした。
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「今日もチームメイトの完璧な走りに助けられた。ジャージキープのためにチームメイトの一人一人が全力を尽くしてくれた。プレッシャーが一気に増したのはマドレーヌ峠でのアルベルト・コンタドールがアタックしたタイミング。彼を逃しては手遅れになる可能性があったので、すぐに引き戻す必要があった。そして終盤はバーチャルリーダーとなったロメン・バルデを追撃。リッチーとアルベルトに対してリードを奪ったことはサプライズだ。明日の最終ステージに向けて少しでもタイム差を付けることができてよかった」と、3度目の大会制覇に王手をかけたフルーム。総合2位ポートとのタイム差は21秒にまで広がった。
選手コメントはレース公式サイトより。
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クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第6ステージ結果
1位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) 4h24’16”
2位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +1’04”
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +1’07”
5位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ) +1’15”
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)
7位 ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ) +1’17”
8位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
9位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) +1’21”
10位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)
DNF 別府史之(日本、トレック・セガフレード)
個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 25h50’22”
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +21”
3位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +30”
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) +35”
6位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) +56”
7位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +1’02”
8位 ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ) +1’18”
9位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ) +1’35”
10位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +2’12”
ポイント賞
1位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)
山岳賞
1位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)
ヤングライダー賞
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
チーム総合成績
1位 チームスカイ
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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八重洲出版