2016/06/11(土) - 11:24
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネも後半戦に突入。勾配のある2級山岳の山頂フィニッシュで強烈なアタックを仕掛けたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が勝利し、同時にマイヨジョーヌを手にした。
チームメイトとともにダウンヒルをこなすアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:Tim de Waele
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第5ステージ image:Criterium du Dauphinéラ・ラヴォワールをスタートするクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第5ステージには、距離は140kmと短いが、合計7つのカテゴリー山岳が詰め込まれている。序盤から断続的に登りをクリアし、最後は標高1,223mの2級山岳ヴォジャニー(6.4km/平均6.5%)に向かってヒルクライム。中腹にかけてコンスタントに勾配が10%を超えるこのパンチの効いた登りで7月のマイヨジョーヌを見据えた山岳バトルの第一ラウンドが繰り広げられた。
レース序盤にアタックを仕掛けるトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)ら photo:Tim de Waele山岳賞争いにとっても重要な局面を迎えたこの日、ツガブ・グルメイ(エチオピア、ランプレ・メリダ)のアタックによってレースは動き出す。最初の3級山岳を先頭通過したグルメイにはグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)、ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)、トマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)という強力な面々が追いつき、先頭では25名の大きな逃げ集団が形成された。
逃げグループを形成するダイェル・キンタナ(コロンビア、モビスター)ら5名 photo:Tim de Waeleレース前半の1級山岳バリオズ峠と2級山岳アイェス峠で動いたダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)は山岳ポイントを量産することに成功。2年連続ドーフィネ山岳賞獲得を狙うテクレハイマノが山岳賞ランキング首位に躍り出た。
人数の多さから協調性を欠いた逃げ集団のリードは1分以内に抑え込まれ、やがて先頭から抜け出したアンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)を除いてレース中盤(72km地点)に他の逃げメンバーはメイン集団に引き戻される。するとダイェル・キンタナ(コロンビア、モビスター)、エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト)、バルトス・フザルスキー(ポーランド、ボーラ・アルゴン18)、シリル・ゴティエ(フランス、AG2Rラモンディアール)の4名が新たにカウンターアタックを仕掛けて飛び出して先頭グリブコに追いついた。
こうして5名の先行が決まったところでレースはようやく落ち着き、最大2分40秒まで広がったタイム差をティンコフが詰めながら渓谷路を駆け抜ける。ラルプデュエズの麓近くを通り、ハイスピードで勝負の2級山岳ヴォジャニーに向かった。
2級山岳ヴォジャニーに向かうプロトン photo:Tim de Waele
残り6kmでメイン集団から飛び出したミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ) photo:Tim de WaeleモビスターやBMCレーシング、オリカ・グリーンエッジ、FDJ、エティックス・クイックステップの牽引によってメイン集団のペースは一段と上がり、全長6.4kmの2級山岳ヴォジャニーの登りが始まる頃にはタイム差は1分に。先頭ではガスパロットが独走に持ち込んだが、結果的にメイン集団を振り切るには十分なリードとは言えなかった。
総合上位陣の中で最初に動いたダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waeleチームスカイが作るハイペースによってライダー・ヘシェダル(カナダ、トレック・セガフレード)やトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)が早々に脱落。するとフィニッシュまで6kmを残してチームスカイが最初の一手を打つ。
マーティンのアタックに反応するリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)やアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:Tim de Waeleジロを途中リタイアしたミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)が軽快なダンシングで抜け出し、急勾配を進んで先頭ガスパロットをパス。10秒程度のリードを得たランダをロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)率いるメイン集団が追う展開。エース勢のアタック合戦を待たずして、ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)やティボー・ピノ(フランス、FDJ)は脱落してしまう。
コンタドールを置き去りにしたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)とリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Tim de Waele残り3kmで口火を切った総合5位ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)にはリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)とアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)がすかさず反応する。対してフルームは急激なペースアップには反応せず、マイペースを保って合流。すると、脚を使うことなくライバルたちに追いついたフルームが続けざまにダンシングでアタックを仕掛けた。
先行するリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)とクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleスプリント並みの勢いで加速したフルームに食らい付いたのはポートのみ。マイヨジョーヌを着るコンタドールも応戦したものの、先頭ランダを追い抜いてダンシングで突き進むフルームの背中が遠ざかる。フルームとポートという昨年までのエース&アシストコンビが先頭交代し、後続を15秒引き離したままフラムルージュを駆け抜けた。
ポートを振り切ってフィニッシュするクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleステージ優勝に向けて先に仕掛けたポートだったがフルームを振り切ることはできず、逆に残り200mで加速したフルームが先頭へ。フィニッシュラインまで踏み抜いたフルームがステージ優勝ならびにマイヨジョーヌ獲得。ステージ2位のポートが総合2位に浮上した。
「ツール・ド・フランス直前のレースでの勝利は格別だ。素晴らしい気持ちに包まれている」。ライバルたちを撃破し、2ステージを残して総合首位に立ったフルームはツールに向けて良い手応えをつかんだ様子だ。「チームに最高のポジションを用意してもらってアタック。食らい付いたのはリッチー・ポートだけ。今日のような短い登りでアルベルト・コンタドールからリードを奪えるとは思っていなかった。でも彼が決して諦めないことは過去の経験から知っている。明日は彼が攻撃を仕掛けてくるだろう。ドーフィネはこれで終わりではなくまだまだハードなステージが残っている」。
フルームと互角の走りを見せたポートは「ライバルたちのやる気を削ぐフルーミーの強烈なアタックに対応できたことは良いサインだ。フルーミーと自分が7月に向けて良い仕上がりであることが分かった。エースとして自分のために走ることにまだ違和感があるけど、問題なくエンジョイできている」とコメントしている。
フルームから21秒遅れでフィニッシュし、総合3位に順位を下げたコンタドールは「クリスとリッチーのアタックに反応したものの、そのスピードに対応できなかった。常々言っているように、ドーフィネはツールに向けた調整レース。毎日調子を上げている状態であり、明日はまた別の1日が待っている」とリベンジを仕掛ける構えだ。
選手コメントはレース公式サイトならびにチーム公式サイトより。
3位争いのスプリントを繰り広げるダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)とアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waele
21秒遅れでフィニッシュするアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:Tim de Waele
マイヨジョーヌに袖を通したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第5ステージ結果
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 3h32’20”
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +01”
3位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +19”
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) +21”
6位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) +25”
7位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール) +27”
8位 バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
9位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)
10位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
12位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
35位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +1’57”
40位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +2’31”
157位 別府史之(日本、トレック・セガフレード) +27’16”
個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 21h24’59”
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +07”
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) +27”
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +37”
5位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) +42”
6位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +52”
7位 ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ) +1’08”
8位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス) +1’16”
9位 バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +1’21”
10位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ) +1’27”
ポイント賞
1位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)
山岳賞
1位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)
ヤングライダー賞
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
チーム総合成績
1位 チームスカイ
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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こうして5名の先行が決まったところでレースはようやく落ち着き、最大2分40秒まで広がったタイム差をティンコフが詰めながら渓谷路を駆け抜ける。ラルプデュエズの麓近くを通り、ハイスピードで勝負の2級山岳ヴォジャニーに向かった。
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「ツール・ド・フランス直前のレースでの勝利は格別だ。素晴らしい気持ちに包まれている」。ライバルたちを撃破し、2ステージを残して総合首位に立ったフルームはツールに向けて良い手応えをつかんだ様子だ。「チームに最高のポジションを用意してもらってアタック。食らい付いたのはリッチー・ポートだけ。今日のような短い登りでアルベルト・コンタドールからリードを奪えるとは思っていなかった。でも彼が決して諦めないことは過去の経験から知っている。明日は彼が攻撃を仕掛けてくるだろう。ドーフィネはこれで終わりではなくまだまだハードなステージが残っている」。
フルームと互角の走りを見せたポートは「ライバルたちのやる気を削ぐフルーミーの強烈なアタックに対応できたことは良いサインだ。フルーミーと自分が7月に向けて良い仕上がりであることが分かった。エースとして自分のために走ることにまだ違和感があるけど、問題なくエンジョイできている」とコメントしている。
フルームから21秒遅れでフィニッシュし、総合3位に順位を下げたコンタドールは「クリスとリッチーのアタックに反応したものの、そのスピードに対応できなかった。常々言っているように、ドーフィネはツールに向けた調整レース。毎日調子を上げている状態であり、明日はまた別の1日が待っている」とリベンジを仕掛ける構えだ。
選手コメントはレース公式サイトならびにチーム公式サイトより。
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クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2016第5ステージ結果
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 3h32’20”
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +01”
3位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +19”
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) +21”
6位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) +25”
7位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール) +27”
8位 バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)
9位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)
10位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
12位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
35位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +1’57”
40位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +2’31”
157位 別府史之(日本、トレック・セガフレード) +27’16”
個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 21h24’59”
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +07”
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) +27”
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ) +37”
5位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) +42”
6位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) +52”
7位 ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ) +1’08”
8位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス) +1’16”
9位 バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +1’21”
10位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ) +1’27”
ポイント賞
1位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)
山岳賞
1位 ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)
ヤングライダー賞
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
チーム総合成績
1位 チームスカイ
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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