2016/05/16(月) - 17:34
キアンティクラッシコ(日本ではキャンティクラシコ)を生み出す丘の上に立ち込める雷雲。雨に降られなかった者、降られた者。雷鳴が轟くタイムトライアル決戦を経てジロは前半戦を終えた。
キアンティはイタリアを代表する、そして世界を代表するワインの産地だ。2年前に長距離タイムトライアルの舞台となったバローロも同様にワインの産地。近年ジロのタイムトライアルはワインと繋がりがち。そしていつも決まって天気が悪い。2年前のタイムトライアルも雨雲の移動によって天候が刻々と変化する厄介な空模様だった。
イタリアの天気予報はここのところ「降る降る詐欺」が続いている。高い降水確率で驚かせておいて、数時間後には天気予報に晴れマークが並んでいたりする。でもこの日は違った。16時から雷雨という予報がドンピシャで的中し、前半スタートと後半スタートでコースは別物になった。
イタリアの中では滑りにくい部類に入るトスカーナの路面だが、それでもやはり完全に濡れれば滑る。ダウンヒルのスペシャリストで、ライバルからリードを奪うとみられていたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)は「下りで後輪が滑っているのを感じたし、絶対に落車だけは避けたかったのでリスクは負わなかった。とくに終盤の下りはとてもナーバスだった」という。
雨によって荒れた展開が予想されたが、2年前のタイムトライアルで優勝したリゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール)が予想外の失速を見せた以外、逆にサプライズは起こらなかった。総合順位を戻しながらも雨でステージ優勝のチャンスを奪われたトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)は「もう総合は狙わない」宣言をしている。
「後半スタートの選手が不利だった」と言われてしまいそうだが、プリモス・ログリッチ(スロベニア、ロットNLユンボ)の速さには目を見張るものがあった。2007年にスキージャンプの世界ジュニア団体戦で優勝した経験ももちながらも、20〜21歳の時に限界を感じてロードレースに転向。スキージャンプに打ち込んでいた頃は、ジャンプに必要な瞬発力が伸びないという理由から自転車でのトレーニングを控えていたというが、転向後は持久系スポーツのほうが自分に向いていると気づいたという。
2013年にUCIコンチネンタルチームのアドリアモビルでデビュー。オールラウンダーとして活躍し、チームスカイも出場した2015年のツール・ド・スロベニアで総合優勝。ツール・ド・アゼルバイジャンでも総合優勝し、ツアー・オブ・チンハイレイクでもステージ優勝を飾った。今年ロットNLユンボに移籍。初戦のツアー・ダウンアンダーを落車でリタイアしている。
「10kmを超える個人タイムトライアルは初めての経験」というが、実際にはヴォルタ・アン・アルガルヴェで18kmのタイムトライアルを走っている(24位だった)。この日、ログリッチは出走前に行われたバイクチェックに引っかかり、スペアバイクでスタート。しかもボトルとメーターが落ちてしまうというトラブルに見舞われながらも忍耐強く51分45秒間、集中して走りきった。
史上3人目のスロベニア人ステージ優勝者となったログリッチ。なお、スロベニア人がステージ優勝を飾るのは3年連続。2014年はルカ・メスゲツ(当時ジャイアント・シマノ)が最終ステージで優勝。2015年はヤン・ポランク(ランプレ・メリダ)がアベトーネ山頂フィニッシュで優勝。そして2016年はログリッチがキアンティのタイムトライアルで優勝。スプリント、山岳、タイムトライアルという違う分野でスロベニア人の活躍が目立つ。
ペーター・サガン(ティンコフ)のスロバキアと混同しがちで、国旗もものすごくよく似ているが(ヨーロッパ人でも間違う)、地理的な位置や文化、言語はもちろん異なる。スロベニアはイタリアに隣接している人口203万人(岐阜県や福島県、群馬県、栃木県と同じぐらい)の国で首都はリュブリャナ。選手だけではなく、メカニックやマッサーも多くUCIワールドチームに所属している。
天候も大きく関係しているが、この日のトップ10の国籍を見ると、スロベニア、オーストリア、ノルウェー、スイス、ロシア、ルクセンブルク、スイス、オランダ、オランダ、コスタリカと、驚くほど強豪国が少ない。
開幕前に崩した体調を完全に立て直すことができなかったファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)は4位に終わり、この第9ステージを最後にジロを去る。しっかりと休養し、キャリア最後のツール・ド・スイスやツール・ド・フランスに向けて調整していく。
2015年のトラック個人追い抜き世界チャンピオンで、「第2のカンチェラーラ」とも呼ばれる22歳のステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)は雨が降りしきる中での走りを強いられながらも7位。23歳のボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)も同様に悪条件の中で6位。新世代の台頭が著しい結果となった。
オランダからのフライトを含めてここまで移動距離が長かったためか、すでにジロが後半戦に入っているような感覚に襲われる。第9ステージまで終わって残り12ステージ。トスカーナの暖かい太陽の下、選手たちは2度目の休息日を迎える。
text&photo:Kei Tsuji in Siena, Italy
キアンティはイタリアを代表する、そして世界を代表するワインの産地だ。2年前に長距離タイムトライアルの舞台となったバローロも同様にワインの産地。近年ジロのタイムトライアルはワインと繋がりがち。そしていつも決まって天気が悪い。2年前のタイムトライアルも雨雲の移動によって天候が刻々と変化する厄介な空模様だった。
イタリアの天気予報はここのところ「降る降る詐欺」が続いている。高い降水確率で驚かせておいて、数時間後には天気予報に晴れマークが並んでいたりする。でもこの日は違った。16時から雷雨という予報がドンピシャで的中し、前半スタートと後半スタートでコースは別物になった。
イタリアの中では滑りにくい部類に入るトスカーナの路面だが、それでもやはり完全に濡れれば滑る。ダウンヒルのスペシャリストで、ライバルからリードを奪うとみられていたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)は「下りで後輪が滑っているのを感じたし、絶対に落車だけは避けたかったのでリスクは負わなかった。とくに終盤の下りはとてもナーバスだった」という。
雨によって荒れた展開が予想されたが、2年前のタイムトライアルで優勝したリゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール)が予想外の失速を見せた以外、逆にサプライズは起こらなかった。総合順位を戻しながらも雨でステージ優勝のチャンスを奪われたトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)は「もう総合は狙わない」宣言をしている。
「後半スタートの選手が不利だった」と言われてしまいそうだが、プリモス・ログリッチ(スロベニア、ロットNLユンボ)の速さには目を見張るものがあった。2007年にスキージャンプの世界ジュニア団体戦で優勝した経験ももちながらも、20〜21歳の時に限界を感じてロードレースに転向。スキージャンプに打ち込んでいた頃は、ジャンプに必要な瞬発力が伸びないという理由から自転車でのトレーニングを控えていたというが、転向後は持久系スポーツのほうが自分に向いていると気づいたという。
2013年にUCIコンチネンタルチームのアドリアモビルでデビュー。オールラウンダーとして活躍し、チームスカイも出場した2015年のツール・ド・スロベニアで総合優勝。ツール・ド・アゼルバイジャンでも総合優勝し、ツアー・オブ・チンハイレイクでもステージ優勝を飾った。今年ロットNLユンボに移籍。初戦のツアー・ダウンアンダーを落車でリタイアしている。
「10kmを超える個人タイムトライアルは初めての経験」というが、実際にはヴォルタ・アン・アルガルヴェで18kmのタイムトライアルを走っている(24位だった)。この日、ログリッチは出走前に行われたバイクチェックに引っかかり、スペアバイクでスタート。しかもボトルとメーターが落ちてしまうというトラブルに見舞われながらも忍耐強く51分45秒間、集中して走りきった。
史上3人目のスロベニア人ステージ優勝者となったログリッチ。なお、スロベニア人がステージ優勝を飾るのは3年連続。2014年はルカ・メスゲツ(当時ジャイアント・シマノ)が最終ステージで優勝。2015年はヤン・ポランク(ランプレ・メリダ)がアベトーネ山頂フィニッシュで優勝。そして2016年はログリッチがキアンティのタイムトライアルで優勝。スプリント、山岳、タイムトライアルという違う分野でスロベニア人の活躍が目立つ。
ペーター・サガン(ティンコフ)のスロバキアと混同しがちで、国旗もものすごくよく似ているが(ヨーロッパ人でも間違う)、地理的な位置や文化、言語はもちろん異なる。スロベニアはイタリアに隣接している人口203万人(岐阜県や福島県、群馬県、栃木県と同じぐらい)の国で首都はリュブリャナ。選手だけではなく、メカニックやマッサーも多くUCIワールドチームに所属している。
天候も大きく関係しているが、この日のトップ10の国籍を見ると、スロベニア、オーストリア、ノルウェー、スイス、ロシア、ルクセンブルク、スイス、オランダ、オランダ、コスタリカと、驚くほど強豪国が少ない。
開幕前に崩した体調を完全に立て直すことができなかったファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)は4位に終わり、この第9ステージを最後にジロを去る。しっかりと休養し、キャリア最後のツール・ド・スイスやツール・ド・フランスに向けて調整していく。
2015年のトラック個人追い抜き世界チャンピオンで、「第2のカンチェラーラ」とも呼ばれる22歳のステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)は雨が降りしきる中での走りを強いられながらも7位。23歳のボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)も同様に悪条件の中で6位。新世代の台頭が著しい結果となった。
オランダからのフライトを含めてここまで移動距離が長かったためか、すでにジロが後半戦に入っているような感覚に襲われる。第9ステージまで終わって残り12ステージ。トスカーナの暖かい太陽の下、選手たちは2度目の休息日を迎える。
text&photo:Kei Tsuji in Siena, Italy
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