2016/05/14(土) - 14:53
大地震でダメージを受けたラクイラの街を通り、しつこく降る雨を抜け、横風を浴びながらフォリーニョに到着。スプリンターの戦いがひと段落した今、マリアローザは重要な局面を迎える。
今日は家の外がなにやら騒がしい photo:Kei Tsuji
セガフレードはジロのオフィシャルサプライヤー photo:Kei Tsuji
エドゥアルド・グロス(ルーマニア)と一緒に出走サインに向かう山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji
スルモナの街をスタートしていく photo:Kei Tsuji
アブルッツォ州の内陸部をジロが走るときは決まって天候が思わしくなく、大きな動きが生まれがちだ。オランダで開幕した2010年ジロの第11ステージの後半部分は、この第7ステージの前半部分とほぼ一緒。当時、降りしきる雨の中、56名が12分以上のリードで逃げ切ってリッチー・ポート(オーストラリア、当時サクソバンク)がマリアローザを獲得した(最終的にバッソが総合優勝)。
この日も序盤から50名ほどが先行する展開となる。アペニン山脈のアップダウンに雨が加わったことで6年前の再現になることが予想されたが、天候も回復し、総合上位陣が誰も遅れていなかったことと6名の逃げが形成されたことでレースは落ち着きを取り戻す。
6年前にフィニッシュ地点が置かれたライクラの街がこの日のスプリントポイント。2009年4月6日に発生したマグニチュード6.3のイタリア中部地震によって大きなダメージを受けた街は復興途中にある。特に耐震性に乏しい煉瓦造りの建物が並ぶ旧市街のダメージは甚大で、工事のクレーンが今でも立ち並んでおり、崩壊したままの建物を見るのも珍しくない。
ラクイラの街をバックにプロトンを撮影していると「このあいだクマモトで大きな地震があったようだな」と心配された。イタリアは日本と同じく地震大国。イタリア人は地震の情報に敏感だ。
2009年の地震で大きな被害を受けたラクイラの街を背にメイン集団が進む photo:Kei Tsuji
この第7ステージにはオンボードカメラが初めて導入された。RAI(イタリア放送協会)がアンドレイ・ソロメニコフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)のバイクにカメラとトランスミッターを装着。これまでもアクションカメラで撮影された映像がレース後に公開されることは多々あったが、中継にオンボード映像が乗るのは初めてだ。
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)がステージ2勝目でロット・ソウダルがステージ3連勝。1チームが3連勝するのは2013年大会のモビスター以来。グライペルは「これがサッカーならハットトリックだ」と笑った。
ドイツ人選手によるステージ優勝はこれが30勝目。開幕からまだ1週間しか経過していないが、1大会でドイツ人選手が4勝するのはこれが初めてのこと。一方でイタリア勢はトップ10に6名を送り込みながらもスプリントで勝てていない。ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)は全く同じフィニッシュレイアウトの2年前に引き続いて2位だった。
表彰式を待つ間、ステージ前に突然グライペルよりもマッチョなスプリンターが現れる。ジロでステージ通算42勝しているマリオ・チポッリーニ(イタリア)だ。現役を引退してから8年が経つが、今でもサイクリングを続けている49歳はムキムキだ。
チポッリーニは今年4月のルーラーマガジンのインタビューで「今から1ヶ月半トレーニングに打ち込めばイタリア人スプリンター全員をやっつける自信がある。今でも何人かを倒せるだろう。彼らの契約に影響が及ぶので名前は挙げないけど」と、スプリントでイタリア勢が勝てない現状を憂いている。
今大会2勝目を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji
優勝はある意味でマリオ・チポッリーニ(イタリア) photo:Kei Tsuji
第7ステージを走り終えた山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji
プロセッコを開けたマリアローザのトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:Kei Tsuji
トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)の口からついに「総合も狙う」宣言が出た。開幕時に「総合は全く考えていない」だったコメントが徐々にシフトしている。周りを油断させるジャイアント・アルペシンの周到な作戦だった可能性もある。
週末にかけての2ステージはマリアローザ争いの山場となる。第8ステージに登場するジロ名物の未舗装路がドゥムランの弱点になるかと思いきや、本人は「(未舗装路が設定された)ストラーデビアンケを過去2回走っている。大好きなレースだ」とコメント。ストラーデビアンケでは2012年17位、2014年12位に入っており、むしろライバルたちからリードを奪うことも考えられる。
「このオランダ人は果たして崩れるのか?最後までマリアローザを守ってしまうんじゃないか」というイタリアメディアの焦燥を肌で感じずにはいられない。
マリアローザのトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:Kei Tsuji
text&photo:Kei Tsuji in Foligno, Italy
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アブルッツォ州の内陸部をジロが走るときは決まって天候が思わしくなく、大きな動きが生まれがちだ。オランダで開幕した2010年ジロの第11ステージの後半部分は、この第7ステージの前半部分とほぼ一緒。当時、降りしきる雨の中、56名が12分以上のリードで逃げ切ってリッチー・ポート(オーストラリア、当時サクソバンク)がマリアローザを獲得した(最終的にバッソが総合優勝)。
この日も序盤から50名ほどが先行する展開となる。アペニン山脈のアップダウンに雨が加わったことで6年前の再現になることが予想されたが、天候も回復し、総合上位陣が誰も遅れていなかったことと6名の逃げが形成されたことでレースは落ち着きを取り戻す。
6年前にフィニッシュ地点が置かれたライクラの街がこの日のスプリントポイント。2009年4月6日に発生したマグニチュード6.3のイタリア中部地震によって大きなダメージを受けた街は復興途中にある。特に耐震性に乏しい煉瓦造りの建物が並ぶ旧市街のダメージは甚大で、工事のクレーンが今でも立ち並んでおり、崩壊したままの建物を見るのも珍しくない。
ラクイラの街をバックにプロトンを撮影していると「このあいだクマモトで大きな地震があったようだな」と心配された。イタリアは日本と同じく地震大国。イタリア人は地震の情報に敏感だ。
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この第7ステージにはオンボードカメラが初めて導入された。RAI(イタリア放送協会)がアンドレイ・ソロメニコフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)のバイクにカメラとトランスミッターを装着。これまでもアクションカメラで撮影された映像がレース後に公開されることは多々あったが、中継にオンボード映像が乗るのは初めてだ。
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)がステージ2勝目でロット・ソウダルがステージ3連勝。1チームが3連勝するのは2013年大会のモビスター以来。グライペルは「これがサッカーならハットトリックだ」と笑った。
ドイツ人選手によるステージ優勝はこれが30勝目。開幕からまだ1週間しか経過していないが、1大会でドイツ人選手が4勝するのはこれが初めてのこと。一方でイタリア勢はトップ10に6名を送り込みながらもスプリントで勝てていない。ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)は全く同じフィニッシュレイアウトの2年前に引き続いて2位だった。
表彰式を待つ間、ステージ前に突然グライペルよりもマッチョなスプリンターが現れる。ジロでステージ通算42勝しているマリオ・チポッリーニ(イタリア)だ。現役を引退してから8年が経つが、今でもサイクリングを続けている49歳はムキムキだ。
チポッリーニは今年4月のルーラーマガジンのインタビューで「今から1ヶ月半トレーニングに打ち込めばイタリア人スプリンター全員をやっつける自信がある。今でも何人かを倒せるだろう。彼らの契約に影響が及ぶので名前は挙げないけど」と、スプリントでイタリア勢が勝てない現状を憂いている。
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トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)の口からついに「総合も狙う」宣言が出た。開幕時に「総合は全く考えていない」だったコメントが徐々にシフトしている。周りを油断させるジャイアント・アルペシンの周到な作戦だった可能性もある。
週末にかけての2ステージはマリアローザ争いの山場となる。第8ステージに登場するジロ名物の未舗装路がドゥムランの弱点になるかと思いきや、本人は「(未舗装路が設定された)ストラーデビアンケを過去2回走っている。大好きなレースだ」とコメント。ストラーデビアンケでは2012年17位、2014年12位に入っており、むしろライバルたちからリードを奪うことも考えられる。
「このオランダ人は果たして崩れるのか?最後までマリアローザを守ってしまうんじゃないか」というイタリアメディアの焦燥を肌で感じずにはいられない。
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text&photo:Kei Tsuji in Foligno, Italy
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