独自構造がもたらす高い快適性と、イタリアンブランドならではの優れたデザイン性で人気を集める新興サドルブランド、アスチュート。縦横にラウンドした座面形状や、無駄のないスマートなルックスを持つ新型サドル「STARLINE-VT」をインプレッションした。



アスチュート STARLINE-VT(ブラック/イエロー)アスチュート STARLINE-VT(ブラック/イエロー)
アスチュートは、異なるバックグラウンドを持つ3人のイタリア人デザイナーと、40年に渡ってサドルを造り続けてきたイタリア・ベネチア地方の職人たちがタッグを組み、立ち上げたサドル専業ブランドである。創業から僅か3年ながらプロチームにも採用されており、海外では萩原麻由子が所属するウィグル・HIGH 5が、国内ではTeam UKYOなどが使用。日本国内のホビーレーサーの中でも徐々にユーザーが増加している。

アスチュートのサドルを使用する萩原麻由子(ウィグル・HIGH5)アスチュートのサドルを使用する萩原麻由子(ウィグル・HIGH5) (c)Bart Hazen / Wiggle HIGH5これまでは、同社のファーストサドルである「SKY」シリーズと、その派生モデルで構成されていたアスチュートのラインアップだが、2016年からはバリエーションが大幅に増加。その中でも「SKY」シリーズと双璧をなすのが「STAR」シリーズだ。

その特徴は、縦横にフラットな「SKY」シリーズに対して、縦横にラウンドした座面形状を持つこと。そして、アスチュートが座り心地や耐久性などと同じく大切にしているというスマートなルックスも特徴だ。また、現在流通している数多のサドルの中でも1・2を争うほどロープロファイルな設計も特筆すべきポイントだろう。

「STAR」シリーズはハイエンドの「STARLITE-VT」と、スタンダードモデルの「STARLINE-VT」の2種類となる。両者の違いはレールのみで、STARLITEは3Kカーボン製の、STARLINEはチタンバナジウム合金製のレールを採用。今回のインプレッションでは「STARLINE-VT」を使用した。

後端~ノーズにかけては溝が設けられている後端~ノーズにかけては溝が設けられている ベース素材は高い耐久性を持つナイロンカーボンベース素材は高い耐久性を持つナイロンカーボン

STARLINE-VTはチタンバナジウム合金製レールを採用するSTARLINE-VTはチタンバナジウム合金製レールを採用する 腰を安定させやすいラウンドシェイプが特徴だ腰を安定させやすいラウンドシェイプが特徴だ

幅狭とされたノーズ部分幅狭とされたノーズ部分 表皮は特殊マイクロファイバー製だ表皮は特殊マイクロファイバー製だ


ベースはプロユースに適う耐久性としなやかさを兼ね備えるカーボンナイロン製。ベースの先端から中央にかけてU字型の溝を設けた「オープンUシェイプ」という独自構造により、厚みと幅を抑えながらも多くのパッドを内蔵し、前乗り時の快適性を向上。痛みのもととなる尿道への圧迫を低減すべく、中央部~後端にかけては溝を設けている。

STARLINE-VTの実測重量は246gSTARLINE-VTの実測重量は246g 内蔵されるパッドは、密度が異なる2種類のフォームを重ねた「Bi-Density」というもの。前後で柔軟性が変えられており、局部を圧迫するフロントノーズ部分には十分な柔軟性を持たせつつ、坐骨を支えるリア部分は硬めとしている。また、メモリーフォーム(形状記憶)システムによって長期間の使用後でも型崩れすることなく、長く快適な状態をキープしてくれるという。

パッドを覆う表皮の素材には高級感あるマイクロファイバーを採用する。表皮の端部をベースなどで全てカバーし、裏面の後端にはレールとベースの接続部などを覆うアシンメトリックデザインのパーツを配置。接着剤のはみ出しやステープルのない、クリーンで美観性の高い仕上がりとなっており、雨や泥などで汚れてしまった際にも簡単にクリーンアップすることができる。

座面寸法は、最大幅135mmx長さ270mm。カラーはブラック/ブラック、ブラック/ピンク、ブラック/ブルー、ブラック/イエロー、ブラック/レッド、ブラック/ライムの6色展開だ。



ー編集部インプレッション

「縦横にラウンドした座面形状による安定感が特徴 ロープロファイルな見た目も良し」


アスチュートの国内展開が始まった際に、筆者はSKYLITE-VTをインプレッションしたが、その時に感じた快適性や完成度の高さは今でも覚えている。ただ残念なことに「SKY」シリーズは、座面自体の形状が自分好みでは無かった。筆者は縦横にラウンドした座面形状が好みであり、昨年夏のユーロバイクで発表されて以来「STAR」シリーズを注目していた。

ロープロファイルでスマートなルックスもSTARLINE-VTの特徴だロープロファイルでスマートなルックスもSTARLINE-VTの特徴だ
今回のインプレッションでは、通勤ライドやロングライドなど平坦路を中心に300kmほど走行。結論から述べると、「STARLINE-VT」はその形状通りに安定感に優れ、ロングライドに対応できるだけの振動吸収性を確保しつつ、見た目にスマートなアスチュートらしいサドルであった。

縦横にラウンドした座面形状がお尻を的確にホールドし、高い安定感を生み出す縦横にラウンドした座面形状がお尻を的確にホールドし、高い安定感を生み出す 幅狭ながらも、豊富なパッド量により高い快適性を実現したノーズ部幅狭ながらも、豊富なパッド量により高い快適性を実現したノーズ部 まずは、セッティングから。今回はサドルの上に板を置き、その板と地面が水平になるようにセット。加えて、STARLINE-VTは極めてロープロファイルであったことから、サドル変更前と同じサドル高にするために、シートポストの出代は大きなった。シートポストの出代が大きくなることで、自転車全体の見栄えがよくなり、更には衝撃吸収性の向上も期待できる。

取り付けてすぐのころは、薄い見た目通りに乗り心地が硬く、振動がコツコツと身体に伝わってきた。しかし、200kmも乗ればパッドが馴染んできて適度に柔軟になり、衝撃を吸収してくれるようになるため、振動が気にならなくなってくる。加えて、パッドの配置もよく考えられており、溝の両サイドだけ多めに盛られたパッドが、的確に坐骨をサポートしてくれる。レースからアップテンポなロングライドまで、シチュエーション選ばず使うことができるだろう。

縦横にラウンドした座面はお尻のホールド感に貢献しており、その安定感はまさにセライタリアの初代Fliteのようなトラディショナルなサドルに近い。トルクを掛けながら踏んだ際にもお尻がずれて、力が逃げるということは無かった。

ノーズは、パッド量の豊富さが快適性に結びついており、極めて細いながらも長時間に渡って座り続けることが可能。座面中央に貫かれた溝のおかげで、長時間のライドの後でも尿道のしびれは皆無であった。

総じて、トラディショナルなサドルが好みだが、見た目や重量に不満がある方に「STARLINE-VT」はオススメ。実測重量は246gと、金属レール仕様のロープロファイルなサドルとしては標準的だが、各部の造りを見るに耐久性には期待できる。更に軽さを求めるのであれば、カーボンレール仕様のSTARLITE-VT(実測218g)が良いだろう。(インプレッション by CW編集部・山本)

アスチュート STARシリーズアスチュート STARシリーズ


アスチュート STARLITE-VT
シェイプ:ラウンド
ベース素材:カーボンナイロン
パッド:メモリーフォームパッド
表 皮:特殊マイクロファイバー
レール素材:3Kカーボン(φ7x9mm)
サイズ:最大幅135mmx長さ270mm
実測重量:218g
カラー:ブラック/ブラック、ブラック/ピンク、ブラック/ブルー、ブラック/イエロー、ブラック/レッド、ブラック/ライム 
価 格:28,500円(税抜)

アスチュート STARLINE-VT
シェイプ:ラウンド
ベース素材:カーボンナイロン
パッド:メモリーフォームパッド
表 皮:特殊マイクロファイバー
レール素材:チタンバナジウム合金(φ7mm)
サイズ:最大幅135mmx長さ270mm
実測重量:246g
カラー:ブラック/ブラック、ブラック/ピンク、ブラック/ブルー、ブラック/イエロー、ブラック/レッド、ブラック/ライム 
価 格:19,600円(税抜)

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