2016/04/30(土) - 06:30
西風の吹くヨークシャー地方を西へと向かうプロトン。雪と雨が真横に降る標高358mの1級山岳を越えてフィニッシュにたどり着いた集団の中から、若いスプリンターたちが飛び出していく。悪天候のツアー・オブ・ヨークシャーが始まった。
ASOが主催する第2回ツアー・オブ・ヨークシャーが開幕。頭からつま先までばっちり雨支度を整えた選手たちがビヴァリーのスタート地点にやってきた。
レース後半にかけてヨークシャーデイルズ国立公園を走る第1ステージはスプリンター向き。とは言っても残り58km地点には1級山岳グリーンハウヒルが登場し、集団がナーバスになる細く入り組んだワインディングコースが設定されている。
さらに概ね進行方向から強風が吹き付け、気温は6度までしか上がらず、大雨と雪を降らす雲が高速で上空を進む。地元の人々も首をかしげるほどの悪天候。この日、ヨークシャーデイルズ国立公園の丘陵地帯には雪が降った。
レインジャケットを着込んだプロトンの中から、ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)やニルス・ポリット(ドイツ、カチューシャ)、2014年にマトリックスパワータグに所属したスクラッチ世界王者セバスチャン・モラ(スペイン、チームラレー)らが果敢に飛び出していく。6名が先行を開始したところでメイン集団はペースダウン。リーダーチームを欠くステージレース初日は集団コントロール機能不全に陥りがちだが、ここはイギリス。チームスカイが序盤からコントロールを一手に引き受けた。
強い向かい風を伴う悪天候によって予定を大幅に下回るペース(この日の平均スピードは36.29km/h)でレースは進み、4分まで広がったタイム差は16%前後の急勾配が続く1級山岳グリーンハウヒルで急速に縮まる。
この頃にはチームスカイに加えてオリカ・グリーンエッジやディメンションデータも集団を牽引。2ヶ月半前の鎖骨骨折から復活したベルンハルト・アイゼル(オーストリア、ディメンションデータ)が献身的に先頭を引いた。一方でスタート地点でバースデーケーキをプレゼントされた前日が誕生日のブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ)は途中リタイアしている。
2015年のツアー・オブ・ブリテンで連日逃げに乗り、山岳賞とスプリント賞を獲得したウィリアムスが1級山岳グリーンハウヒルを先頭通過して山岳賞ジャージと敢闘賞をゲット。しかしUCIワールドチームの追撃を振り切ることができずに逃げは吸収される。
するとトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)がカウンターアタックを仕掛け、アントニー・トゥルジ(フランス、コフィディス)とともに逃げを試みたがこれもフィニッシュには届かず。続いて動いたのは今シーズン2度の独走逃げ切りを果たしているスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)だった。
得意の勝ちパターンに持ち込んだクミングスだったが、この日はスプリンターのスピードが勝った。ロットNLユンボやオリカ・グリーンエッジが猛然と牽引するメイン集団によってクミングスは残り1kmアーチ手前で吸収。黄色いロットNLユンボがトレインを組んで登り基調の街中ワインディングコースを進み、22歳のディラン・フルーネヴェーヘンを解き放った。
紺色のレインベストを着たままスプリントに挑んだカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は一歩出遅れ、巻き返しを図るもフルーネヴェーヘンには届かず。最速ラインを突き進んだフルーネヴェーヘンがバランスを崩しながらもフィニッシュラインで両手を挙げた。
UCIプロコンチネンタルチームのルームポット・オラニエからロットNLユンボに移籍したフルーネヴェーヘンは1993年生まれの22歳(ステージ2位に入ったユアンは1994年生まれの21歳)。今シーズンここまでクールネ〜ブリュッセル〜クールネ4位、ノコレコールス3位、ハンザメクラシック2位、シュヘルデプライス9位と安定した成績を残しているスプリンターだ。
キャリア最大の勝利を手にしたフルーネヴェーヘンはチームメイトに感謝の言葉を並べる。「今日はロットNLユンボが最速だった。リードアウトはパーフェクト。自分はただ良いポジションからスプリントしただけなんだ」。
青いリーダージャージを手にしたフルーネヴェーヘンは連勝を狙う構え。翌日の第2ステージでは再び22歳と21歳の若きスプリンターがしのぎを削ることになりそうだ。しかしフルーネヴェーヘンに総合優勝の考えはなく、最終日の第3ステージは総合狙いのステフェン・クルイスウィク(オランダ)をアシストすると宣言している。
ツール・ド・ヨークシャー2016第1ステージ結果
1位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) 5h09’11”
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ニキアス・アルント(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
4位 トマ・ブダ(フランス、ディレクトエネルジー)
5位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)
6位 フロリス・ヘールツ(オランダ、BMCレーシング)
7位 クリストファー・ローレス(イギリス、JTLコンドール)
8位 カロル・ドマガルスキー(ポーランド、ワンプロサイクリング)
9位 ディオン・スミス(ニュージーランド、ワンプロサイクリング)
10位 ベルト・ファンレルベーグ(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)
個人総合成績
1位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) 5h09’01”
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +04”
3位 ニキアス・アルント(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) +06”
4位 アントニー・トゥルジ(フランス、コフィディス) +07”
5位 トマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー) +08”
6位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、ディメンションデータ) +09”
7位 トマ・ブダ(フランス、ディレクトエネルジー) +10”
8位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)
9位 フロリス・ヘールツ(オランダ、BMCレーシング)
10位 クリストファー・ローレス(イギリス、JTLコンドール)
ポイント賞
1位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
山岳賞
1位 ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)
text&photo:Kei Tsuji in Settle, UK
ASOが主催する第2回ツアー・オブ・ヨークシャーが開幕。頭からつま先までばっちり雨支度を整えた選手たちがビヴァリーのスタート地点にやってきた。
レース後半にかけてヨークシャーデイルズ国立公園を走る第1ステージはスプリンター向き。とは言っても残り58km地点には1級山岳グリーンハウヒルが登場し、集団がナーバスになる細く入り組んだワインディングコースが設定されている。
さらに概ね進行方向から強風が吹き付け、気温は6度までしか上がらず、大雨と雪を降らす雲が高速で上空を進む。地元の人々も首をかしげるほどの悪天候。この日、ヨークシャーデイルズ国立公園の丘陵地帯には雪が降った。
レインジャケットを着込んだプロトンの中から、ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)やニルス・ポリット(ドイツ、カチューシャ)、2014年にマトリックスパワータグに所属したスクラッチ世界王者セバスチャン・モラ(スペイン、チームラレー)らが果敢に飛び出していく。6名が先行を開始したところでメイン集団はペースダウン。リーダーチームを欠くステージレース初日は集団コントロール機能不全に陥りがちだが、ここはイギリス。チームスカイが序盤からコントロールを一手に引き受けた。
強い向かい風を伴う悪天候によって予定を大幅に下回るペース(この日の平均スピードは36.29km/h)でレースは進み、4分まで広がったタイム差は16%前後の急勾配が続く1級山岳グリーンハウヒルで急速に縮まる。
この頃にはチームスカイに加えてオリカ・グリーンエッジやディメンションデータも集団を牽引。2ヶ月半前の鎖骨骨折から復活したベルンハルト・アイゼル(オーストリア、ディメンションデータ)が献身的に先頭を引いた。一方でスタート地点でバースデーケーキをプレゼントされた前日が誕生日のブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ)は途中リタイアしている。
2015年のツアー・オブ・ブリテンで連日逃げに乗り、山岳賞とスプリント賞を獲得したウィリアムスが1級山岳グリーンハウヒルを先頭通過して山岳賞ジャージと敢闘賞をゲット。しかしUCIワールドチームの追撃を振り切ることができずに逃げは吸収される。
するとトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)がカウンターアタックを仕掛け、アントニー・トゥルジ(フランス、コフィディス)とともに逃げを試みたがこれもフィニッシュには届かず。続いて動いたのは今シーズン2度の独走逃げ切りを果たしているスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)だった。
得意の勝ちパターンに持ち込んだクミングスだったが、この日はスプリンターのスピードが勝った。ロットNLユンボやオリカ・グリーンエッジが猛然と牽引するメイン集団によってクミングスは残り1kmアーチ手前で吸収。黄色いロットNLユンボがトレインを組んで登り基調の街中ワインディングコースを進み、22歳のディラン・フルーネヴェーヘンを解き放った。
紺色のレインベストを着たままスプリントに挑んだカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は一歩出遅れ、巻き返しを図るもフルーネヴェーヘンには届かず。最速ラインを突き進んだフルーネヴェーヘンがバランスを崩しながらもフィニッシュラインで両手を挙げた。
UCIプロコンチネンタルチームのルームポット・オラニエからロットNLユンボに移籍したフルーネヴェーヘンは1993年生まれの22歳(ステージ2位に入ったユアンは1994年生まれの21歳)。今シーズンここまでクールネ〜ブリュッセル〜クールネ4位、ノコレコールス3位、ハンザメクラシック2位、シュヘルデプライス9位と安定した成績を残しているスプリンターだ。
キャリア最大の勝利を手にしたフルーネヴェーヘンはチームメイトに感謝の言葉を並べる。「今日はロットNLユンボが最速だった。リードアウトはパーフェクト。自分はただ良いポジションからスプリントしただけなんだ」。
青いリーダージャージを手にしたフルーネヴェーヘンは連勝を狙う構え。翌日の第2ステージでは再び22歳と21歳の若きスプリンターがしのぎを削ることになりそうだ。しかしフルーネヴェーヘンに総合優勝の考えはなく、最終日の第3ステージは総合狙いのステフェン・クルイスウィク(オランダ)をアシストすると宣言している。
ツール・ド・ヨークシャー2016第1ステージ結果
1位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) 5h09’11”
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ニキアス・アルント(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
4位 トマ・ブダ(フランス、ディレクトエネルジー)
5位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)
6位 フロリス・ヘールツ(オランダ、BMCレーシング)
7位 クリストファー・ローレス(イギリス、JTLコンドール)
8位 カロル・ドマガルスキー(ポーランド、ワンプロサイクリング)
9位 ディオン・スミス(ニュージーランド、ワンプロサイクリング)
10位 ベルト・ファンレルベーグ(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)
個人総合成績
1位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) 5h09’01”
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +04”
3位 ニキアス・アルント(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) +06”
4位 アントニー・トゥルジ(フランス、コフィディス) +07”
5位 トマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー) +08”
6位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、ディメンションデータ) +09”
7位 トマ・ブダ(フランス、ディレクトエネルジー) +10”
8位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)
9位 フロリス・ヘールツ(オランダ、BMCレーシング)
10位 クリストファー・ローレス(イギリス、JTLコンドール)
ポイント賞
1位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
山岳賞
1位 ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)
text&photo:Kei Tsuji in Settle, UK
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