2016/04/21(木) - 08:44
最大勾配26%の「ユイの壁」でタイミングよくアタックしたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が他を寄せ付けないスピードでフィニッシュ。3年連続、4度目のフレーシュ・ワロンヌ勝利を果たした。
アルデンヌクラシック2戦目のフレーシュ・ワロンヌが、アムステル・ゴールドレースとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに挟まれた水曜日(4月20日)に開催。ベルギー南部のワロン地域を貫く196kmのアップダウンコースに、別府史之(トレック・セガフレード)を含む199名が挑んだ(チームスカイのエナオモントーヤのみDNS)。
スティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)のアタックをきっかけに形成された10名の逃げを、モビスターとカチューシャ率いるメイン集団が3分差で追いかける。断続的に登場する登りでポジション争いを繰り広げるメイン集団のスピードは必然的に上がり、レース後半にかけて逃げとのタイム差は縮小。集団内で落車したフランク・シュレク(ルクセンブルク、トレック・セガフレード)は鎖骨骨折によりリタイアしている。
残り55km地点で逃げはクミングス、トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・ソウダル)、マッテーオ・ボノ(イタリア、ランプレ・メリダ)、シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)の4名に絞られ、メイン集団から1分差で2回目のユイの壁(残り29km地点)に突入。メイン集団からビョルン・トゥラウ(ドイツ、ワンティ・グループグベルト)らがカウンターアタックを仕掛けるも、先頭に追いつくことなく吸収される。
先頭では残り27km地点からクミングスが独走に持ち込んだものの、トラックレースで磨いたスピードを生かした独走は約10kmで終わりを告げる。逃げを全て封じ込めたメイン集団は引き続きモビスターとカチューシャの支配下に置かれた。
コート・デレッフ(2100m/5%)でボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)とゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、ジャイアント・アルペシン)がアタックすると、モビスターはヨン・イサギーレ(スペイン)を送り込んでチェック。こうして新たに形成された3名はメイン集団から10秒リードを築き、「ユイの壁」手前のコート・ド・シュラーブ(1300m/8.1%)に差し掛かった。
頂上が近づくにつれて勾配が増す直線的な登りでイサギーレ自らペースを上げ、ユンヘルスと並んで頂上をクリア。一方のメイン集団では、アムステルゴールドレース同様にティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)がアタックする。コート・ド・シュラーブの頂上通過後、ウェレンスは先頭イサギーレとユンヘルスに勢いよく追いついた。
フランスからベルギー、オランダを経て北海に注ぐマース川沿いの平坦路でメイン集団は追い上げ、残り2km地点で先頭3名を飲み込む。ユイの街を抜けた約60名の集団が残り1.3kmから始まる登りを高速で進んだ。
残り800mで幹線道路を離れ、道幅3mほどの「シュマン・デ・シャペル(教会に続く小径)」に入る。両脇を観客で固められた登りをダンシングで進むトップレーサーたち。残り500mから始まる急勾配区間でバルベルデが先頭に立つと、その横でホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がペースを上げた。
2012年大会の優勝者で、昨年ツール・ド・フランスで「ユイの壁」を制したロドリゲスが軽快なダンシングで先頭に立つも、落ち着き払った表情でバルベルデがぴったりマーク。ロドリゲスのペースが緩むと今度はダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)が先頭へ。
マーティンのペースアップもバルベルデを振り切れず、逆に残り100mからバルベルデが踏み始めると誰も反応できない。上半身を左右に振りながら昨年2位のジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)が追走したが、バルベルデの加速が伸びる。「ユイの壁では集団先頭で走り、自分のラインで走ることを心がけた。良いポジションをキープしながらタイミングを待ち、残り100mから全開で踏むことが勝利の秘訣だった」と語るバルベルデが頂上で大きく両手を広げた。
2006年に初優勝を飾り、2014年から3年連続で「ユイの壁」を制したバルベルデ。これまでマルセル・キント(ベルギー)、エディ・メルクス(ベルギー)、モレーノ・アルジェンティン(イタリア)、ダヴィデ・レベッリン(イタリア)と3勝で並んでいたが、最多勝記録を4勝にまで伸ばすことに成功した。
「4度目の優勝を飾るなんて、自分にとってもチームにとっても歴史的な快挙だ。調子の良さを自覚していたし、力を最大限発揮できたと思う。メジャーレースの一つであるフレーシュで記録を更新したことは誇らしいよ」と35歳のベテランは語る。
バルベルデはアムステルゴールドレースの代わりに出場したブエルタ・ア・カスティーリャ・イ・レオンでステージ2勝を飾って総合優勝。16日後に迫ったジロ・デ・イタリアに向けて順調な仕上がりだ。「今シーズンは(ジロに集中するため)プログラムを変更した。タフなレースを減らし、テネリフェでトレーニングを行った。その成果が出ていると思う。あと何年現役で走るか分からないけど、来年は契約が残っているので、少なくともあと1年はフレーシュを走るよ。プロ選手として走る限り、フレーシュとリエージュには出場を続ける」。
日曜日にはこちらも4度目の優勝がかかったリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが開催。バルベルデは「リエージュは悪天候が予想されていて、気温が低く、雨や雪が降るかもしれない。出場選手全員にとって厳しいレースになる。リエージュのコンディションが悪ければ、すでにフレーシュで勝ったし、ジロへの調整を犠牲にしてまで勝利を狙わないつもり。雨さえ降らなければ、どれだけ寒くても良いんだけど」とコメントしている。
2年連続2位の23歳アラフィリップは「今日はダン(マーティン)と一緒に勝つために出場した。チームとして責任感をもってレースに挑み、作戦通り最後の登りでバトルに加わることができた。でも今年もバルベルデが最強だった。何も悔いはないよ。バルベルデが一番強かったんだ。彼がリタイアするまでに何とか負かしてやりたいと思う」とコメント。自身4度目のトップ6フィニッシュを経験したマーティンとともにリエージュでリベンジを狙う。
選手コメントはレース公式サイトより。オフィシャルハイライト映像はこちら。
フレーシュ・ワロンヌ2016
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 4h43’57”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)
4位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ) +04”
5位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト) +05”
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
7位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
8位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)
9位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
10位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
138位 別府史之(日本、トレック・セガフレード) +8’02”
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
アルデンヌクラシック2戦目のフレーシュ・ワロンヌが、アムステル・ゴールドレースとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに挟まれた水曜日(4月20日)に開催。ベルギー南部のワロン地域を貫く196kmのアップダウンコースに、別府史之(トレック・セガフレード)を含む199名が挑んだ(チームスカイのエナオモントーヤのみDNS)。
スティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)のアタックをきっかけに形成された10名の逃げを、モビスターとカチューシャ率いるメイン集団が3分差で追いかける。断続的に登場する登りでポジション争いを繰り広げるメイン集団のスピードは必然的に上がり、レース後半にかけて逃げとのタイム差は縮小。集団内で落車したフランク・シュレク(ルクセンブルク、トレック・セガフレード)は鎖骨骨折によりリタイアしている。
残り55km地点で逃げはクミングス、トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・ソウダル)、マッテーオ・ボノ(イタリア、ランプレ・メリダ)、シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)の4名に絞られ、メイン集団から1分差で2回目のユイの壁(残り29km地点)に突入。メイン集団からビョルン・トゥラウ(ドイツ、ワンティ・グループグベルト)らがカウンターアタックを仕掛けるも、先頭に追いつくことなく吸収される。
先頭では残り27km地点からクミングスが独走に持ち込んだものの、トラックレースで磨いたスピードを生かした独走は約10kmで終わりを告げる。逃げを全て封じ込めたメイン集団は引き続きモビスターとカチューシャの支配下に置かれた。
コート・デレッフ(2100m/5%)でボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)とゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、ジャイアント・アルペシン)がアタックすると、モビスターはヨン・イサギーレ(スペイン)を送り込んでチェック。こうして新たに形成された3名はメイン集団から10秒リードを築き、「ユイの壁」手前のコート・ド・シュラーブ(1300m/8.1%)に差し掛かった。
頂上が近づくにつれて勾配が増す直線的な登りでイサギーレ自らペースを上げ、ユンヘルスと並んで頂上をクリア。一方のメイン集団では、アムステルゴールドレース同様にティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)がアタックする。コート・ド・シュラーブの頂上通過後、ウェレンスは先頭イサギーレとユンヘルスに勢いよく追いついた。
フランスからベルギー、オランダを経て北海に注ぐマース川沿いの平坦路でメイン集団は追い上げ、残り2km地点で先頭3名を飲み込む。ユイの街を抜けた約60名の集団が残り1.3kmから始まる登りを高速で進んだ。
残り800mで幹線道路を離れ、道幅3mほどの「シュマン・デ・シャペル(教会に続く小径)」に入る。両脇を観客で固められた登りをダンシングで進むトップレーサーたち。残り500mから始まる急勾配区間でバルベルデが先頭に立つと、その横でホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がペースを上げた。
2012年大会の優勝者で、昨年ツール・ド・フランスで「ユイの壁」を制したロドリゲスが軽快なダンシングで先頭に立つも、落ち着き払った表情でバルベルデがぴったりマーク。ロドリゲスのペースが緩むと今度はダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)が先頭へ。
マーティンのペースアップもバルベルデを振り切れず、逆に残り100mからバルベルデが踏み始めると誰も反応できない。上半身を左右に振りながら昨年2位のジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)が追走したが、バルベルデの加速が伸びる。「ユイの壁では集団先頭で走り、自分のラインで走ることを心がけた。良いポジションをキープしながらタイミングを待ち、残り100mから全開で踏むことが勝利の秘訣だった」と語るバルベルデが頂上で大きく両手を広げた。
2006年に初優勝を飾り、2014年から3年連続で「ユイの壁」を制したバルベルデ。これまでマルセル・キント(ベルギー)、エディ・メルクス(ベルギー)、モレーノ・アルジェンティン(イタリア)、ダヴィデ・レベッリン(イタリア)と3勝で並んでいたが、最多勝記録を4勝にまで伸ばすことに成功した。
「4度目の優勝を飾るなんて、自分にとってもチームにとっても歴史的な快挙だ。調子の良さを自覚していたし、力を最大限発揮できたと思う。メジャーレースの一つであるフレーシュで記録を更新したことは誇らしいよ」と35歳のベテランは語る。
バルベルデはアムステルゴールドレースの代わりに出場したブエルタ・ア・カスティーリャ・イ・レオンでステージ2勝を飾って総合優勝。16日後に迫ったジロ・デ・イタリアに向けて順調な仕上がりだ。「今シーズンは(ジロに集中するため)プログラムを変更した。タフなレースを減らし、テネリフェでトレーニングを行った。その成果が出ていると思う。あと何年現役で走るか分からないけど、来年は契約が残っているので、少なくともあと1年はフレーシュを走るよ。プロ選手として走る限り、フレーシュとリエージュには出場を続ける」。
日曜日にはこちらも4度目の優勝がかかったリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが開催。バルベルデは「リエージュは悪天候が予想されていて、気温が低く、雨や雪が降るかもしれない。出場選手全員にとって厳しいレースになる。リエージュのコンディションが悪ければ、すでにフレーシュで勝ったし、ジロへの調整を犠牲にしてまで勝利を狙わないつもり。雨さえ降らなければ、どれだけ寒くても良いんだけど」とコメントしている。
2年連続2位の23歳アラフィリップは「今日はダン(マーティン)と一緒に勝つために出場した。チームとして責任感をもってレースに挑み、作戦通り最後の登りでバトルに加わることができた。でも今年もバルベルデが最強だった。何も悔いはないよ。バルベルデが一番強かったんだ。彼がリタイアするまでに何とか負かしてやりたいと思う」とコメント。自身4度目のトップ6フィニッシュを経験したマーティンとともにリエージュでリベンジを狙う。
選手コメントはレース公式サイトより。オフィシャルハイライト映像はこちら。
フレーシュ・ワロンヌ2016
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 4h43’57”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)
4位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ) +04”
5位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト) +05”
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
7位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
8位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)
9位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
10位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
138位 別府史之(日本、トレック・セガフレード) +8’02”
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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