2016/04/16(土) - 06:52
アルデンヌクラシック初戦アムステルゴールドレースが4月17日に開催される。別府史之(トレック・セガフレード)の他、窪木一茂と小石祐馬(NIPPOヴィーニファンティーニ)も出場するオランダ最大レースの見どころをチェックしておこう。
カウベルグに至る「1000のカーブ」と「34の登り」を含む258km
石畳系のクラシックが終了したのも束の間、アルデンヌ・クラシック3連戦が始動する。アムステルゴールドレースを皮切りに、3日後の水曜日にフレーシュ・ワロンヌ、1週間後の日曜日にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが開催。いずれも起伏に富んだコースレイアウトであり、活躍する選手は石畳系クラシックとは異なる。
オランダと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、やはり、チューリップが咲き、風車が穏やかに回る風景だ。確かに国土の大半は標高0メートル、もしくはそれ以下。実際に国名Nederland(英語でNetherlands)は「低地の国」を意味しているように、国土の大部分は起伏に乏しい。
しかしそんなオランダ最大のロードレースであるアムステルゴールドレースは、登りが勝負の鍵を握る起伏に富んだレースだ。オランダはオランダでも、レース開催地は同国南部に広がる丘陵地帯。ベルギーとドイツに隣接したリンブルフ州を駆け巡る複雑な周回コースが設定されている。登場する短い登りの数は34カ所。258kmのコースはまさにアップダウンの連続で、獲得標高差は3600mを超える。
コースは全体的に道幅が狭く、「1000のカーブ」と呼ばれるほどコーナーが連続する。アップダウンとワインディングを繰り返すため「ジェットコースター」とも。ナーバスな下りは次なる登りへの位置取りの場であり、集団が一列棒状に伸びる終盤に後方に下がってしまうと勝負に絡むのは難しい。
合計30カ所の登りをこなした後、選手たちは最後の周回コースに突入する。この周回コースは2012年ロード世界選手権の周回コースと似通ったもので、カウベルグとグールヘンメルベルグ(世界選には登場せず)、ベメレルベルグの3つの坂を通過後、再びカウベルグに挑む。
合計4回通過することになるアムステル名物のカウベルグは、登坂距離1200m/高低差68m/平均勾配5.8%/最大勾配12%。長年カウベルグの頂上でフィニッシュを迎えていたが、2013年から2012年ロード世界選手権同様にフィニッシュラインがカウベルグ頂上の1.8km先に変更されている。
断続的に続くアップダウンを“フレッシュな状態”で乗り越え、カウベルグに全力をぶつけることが出来るかが勝負の分かれ道。一瞬の判断ミスが敗戦に繋がることもあり、アタックチャンスを感じ取る優れた嗅覚も問われる。
ちなみに、レース名がオランダの首都アムステルダムに由来すると勘違いされがちだが、その名前はメインスポンサーであるオランダのビール会社からきている。アムステルがメーカー名で、ゴールドはビールの銘柄。レース公式サイトがビール会社のサイト内に設置されているため、サイトを閲覧するためには年齢を記さなければならない。
クライマーやパンチャー、登れるスプリンターがしのぎを削る
2015年大会はカウベルグで完全に飛び出す選手が現れず、18名によるスプリントに持ち込まれた結果、当時アルカンシェル(世界チャンピオンジャージ)を着ていたミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)が優勝した。エティックス・クイックステップからチームスカイに移籍したクヴィアトコウスキーは、イギリスチャンピオンのピーター・ケノーや地元オランダ・リンブルフ出身のワウト・ポエルスらとともに大会連覇を目指す。
クヴィアトコウスキーは石畳系のE3ハーレルベーケで優勝しており、アルデンヌ3連戦に向けて好調な仕上がり(ロンドでは27位)。なお、2015年はアムステル1位、フレーシュ33位、リエージュ21位だった。
1週間前のパリ〜ルーベを制したオリカ・グリーンエッジはマイケル・マシューズ(オーストラリア)をエースに立てる。「登れるスプリンター」として知られるマシューズは2015年大会の3位フィニッシャー。ルーベ覇者のマシュー・ヘイマン(オーストラリア)がボディーガードとして走り、マシューズは過去3度(2011年、2013年、2014年)表彰台を経験しているサイモン・ゲランス(オーストラリア)とともにチームとしてクラシック連勝を狙う。
2015年に惜しくも表彰台を逃した元世界チャンピオンのルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)や同年6位のトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)らもアムステルでの走り方を心得ている。2013年大会の優勝者ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)も上位に絡んでくるだろう。
アルデンヌの前哨戦として知られるブラバンツペイルで優勝したペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)は、ジュリアン・アラフィリップ(フランス)やジャンニ・メールスマン(ベルギー)とともに出場。ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)といったグランツールで活躍するクライマーも顔を揃える。
オランダ勢としてはトム・ドゥムラン(ジャイアント・アルペシン)やウィルコ・ケルデルマン(ロットNLユンボ)、ピーター・ウェーニング(ルームポット・オラニエ)、トムイェルテ・スラグテル(キャノンデール)らの名前が挙がる。オランダ最大のレースだけに地元出身者のモチベーションは高いはず。しかしオランダ人によるアムステル制覇は2001年のエリック・デッケルを最後に14年間果たされていない。
2010年、2011年、2014年の優勝者フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)は大会10日前のトレーニング中に自動車の運転手と口論になり、もみ合いになった際に左手の中指を骨折。手術を受けてレース出場は可能な状態となったが、走りに影響する場合はサムエル・サンチェス(スペイン)にエースを託す可能性も考えられる。
パリ〜ルーベ4位のエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)や、ブラバンツペイル2位のエンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト)も出場。2004年にアルデンヌハットトリック(3連勝)の偉業を果たしたダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCスプランディポルコウィチェ)は自身18回目の出場だ。
トレック・セガフレードからは別府史之が2年連続4度目のアムステル出場。別府はアムステルだけでなくアルデンヌ3連戦への出場が決まっている。トレック・セガフレードは2006年の優勝者フランク・シュレク(ルクセンブルク)、2015年ジャパンカップ覇者バウク・モレマ(オランダ)、ライダー・ヘシェダル(カナダ)という強力な布陣を揃える。
トラック競技のリオ五輪代表候補に選出された窪木一茂や小石祐馬(NIPPOヴィーニファンティーニ)は2008年の優勝者ダミアーノ・クネゴ(イタリア)のアシストとしてアムステルに初挑戦する。
アムステルゴールド・レースの模様はJ SPORTS4にて4月17日(日)21時からライブ放映される。詳しくは番組ホームページへ。
text:Kei Tsuji
カウベルグに至る「1000のカーブ」と「34の登り」を含む258km
石畳系のクラシックが終了したのも束の間、アルデンヌ・クラシック3連戦が始動する。アムステルゴールドレースを皮切りに、3日後の水曜日にフレーシュ・ワロンヌ、1週間後の日曜日にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが開催。いずれも起伏に富んだコースレイアウトであり、活躍する選手は石畳系クラシックとは異なる。
オランダと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、やはり、チューリップが咲き、風車が穏やかに回る風景だ。確かに国土の大半は標高0メートル、もしくはそれ以下。実際に国名Nederland(英語でNetherlands)は「低地の国」を意味しているように、国土の大部分は起伏に乏しい。
しかしそんなオランダ最大のロードレースであるアムステルゴールドレースは、登りが勝負の鍵を握る起伏に富んだレースだ。オランダはオランダでも、レース開催地は同国南部に広がる丘陵地帯。ベルギーとドイツに隣接したリンブルフ州を駆け巡る複雑な周回コースが設定されている。登場する短い登りの数は34カ所。258kmのコースはまさにアップダウンの連続で、獲得標高差は3600mを超える。
コースは全体的に道幅が狭く、「1000のカーブ」と呼ばれるほどコーナーが連続する。アップダウンとワインディングを繰り返すため「ジェットコースター」とも。ナーバスな下りは次なる登りへの位置取りの場であり、集団が一列棒状に伸びる終盤に後方に下がってしまうと勝負に絡むのは難しい。
合計30カ所の登りをこなした後、選手たちは最後の周回コースに突入する。この周回コースは2012年ロード世界選手権の周回コースと似通ったもので、カウベルグとグールヘンメルベルグ(世界選には登場せず)、ベメレルベルグの3つの坂を通過後、再びカウベルグに挑む。
合計4回通過することになるアムステル名物のカウベルグは、登坂距離1200m/高低差68m/平均勾配5.8%/最大勾配12%。長年カウベルグの頂上でフィニッシュを迎えていたが、2013年から2012年ロード世界選手権同様にフィニッシュラインがカウベルグ頂上の1.8km先に変更されている。
断続的に続くアップダウンを“フレッシュな状態”で乗り越え、カウベルグに全力をぶつけることが出来るかが勝負の分かれ道。一瞬の判断ミスが敗戦に繋がることもあり、アタックチャンスを感じ取る優れた嗅覚も問われる。
ちなみに、レース名がオランダの首都アムステルダムに由来すると勘違いされがちだが、その名前はメインスポンサーであるオランダのビール会社からきている。アムステルがメーカー名で、ゴールドはビールの銘柄。レース公式サイトがビール会社のサイト内に設置されているため、サイトを閲覧するためには年齢を記さなければならない。
クライマーやパンチャー、登れるスプリンターがしのぎを削る
2015年大会はカウベルグで完全に飛び出す選手が現れず、18名によるスプリントに持ち込まれた結果、当時アルカンシェル(世界チャンピオンジャージ)を着ていたミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)が優勝した。エティックス・クイックステップからチームスカイに移籍したクヴィアトコウスキーは、イギリスチャンピオンのピーター・ケノーや地元オランダ・リンブルフ出身のワウト・ポエルスらとともに大会連覇を目指す。
クヴィアトコウスキーは石畳系のE3ハーレルベーケで優勝しており、アルデンヌ3連戦に向けて好調な仕上がり(ロンドでは27位)。なお、2015年はアムステル1位、フレーシュ33位、リエージュ21位だった。
1週間前のパリ〜ルーベを制したオリカ・グリーンエッジはマイケル・マシューズ(オーストラリア)をエースに立てる。「登れるスプリンター」として知られるマシューズは2015年大会の3位フィニッシャー。ルーベ覇者のマシュー・ヘイマン(オーストラリア)がボディーガードとして走り、マシューズは過去3度(2011年、2013年、2014年)表彰台を経験しているサイモン・ゲランス(オーストラリア)とともにチームとしてクラシック連勝を狙う。
2015年に惜しくも表彰台を逃した元世界チャンピオンのルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)や同年6位のトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)らもアムステルでの走り方を心得ている。2013年大会の優勝者ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)も上位に絡んでくるだろう。
アルデンヌの前哨戦として知られるブラバンツペイルで優勝したペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)は、ジュリアン・アラフィリップ(フランス)やジャンニ・メールスマン(ベルギー)とともに出場。ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)といったグランツールで活躍するクライマーも顔を揃える。
オランダ勢としてはトム・ドゥムラン(ジャイアント・アルペシン)やウィルコ・ケルデルマン(ロットNLユンボ)、ピーター・ウェーニング(ルームポット・オラニエ)、トムイェルテ・スラグテル(キャノンデール)らの名前が挙がる。オランダ最大のレースだけに地元出身者のモチベーションは高いはず。しかしオランダ人によるアムステル制覇は2001年のエリック・デッケルを最後に14年間果たされていない。
2010年、2011年、2014年の優勝者フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)は大会10日前のトレーニング中に自動車の運転手と口論になり、もみ合いになった際に左手の中指を骨折。手術を受けてレース出場は可能な状態となったが、走りに影響する場合はサムエル・サンチェス(スペイン)にエースを託す可能性も考えられる。
パリ〜ルーベ4位のエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)や、ブラバンツペイル2位のエンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト)も出場。2004年にアルデンヌハットトリック(3連勝)の偉業を果たしたダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCスプランディポルコウィチェ)は自身18回目の出場だ。
トレック・セガフレードからは別府史之が2年連続4度目のアムステル出場。別府はアムステルだけでなくアルデンヌ3連戦への出場が決まっている。トレック・セガフレードは2006年の優勝者フランク・シュレク(ルクセンブルク)、2015年ジャパンカップ覇者バウク・モレマ(オランダ)、ライダー・ヘシェダル(カナダ)という強力な布陣を揃える。
トラック競技のリオ五輪代表候補に選出された窪木一茂や小石祐馬(NIPPOヴィーニファンティーニ)は2008年の優勝者ダミアーノ・クネゴ(イタリア)のアシストとしてアムステルに初挑戦する。
アムステルゴールド・レースの模様はJ SPORTS4にて4月17日(日)21時からライブ放映される。詳しくは番組ホームページへ。
text:Kei Tsuji
Amazon.co.jp