2016/04/05(火) - 03:56
サガン、ファンマルク、クヴィアトコウスキーのアタックに乗り遅れたカンチェラーラ。果敢に攻めたサガンは新たなフランドルの王に。ワンデイクラシックの王様と形容される100回目のロンドを振り返る。
ワンデイクラシックの王様と形容されるロンド・ファン・フラーンデレンが開催されるのは毎年14番目の日曜日と決まっている。水の都ブルージュの中心部でのスタートセレモニーはレースの王様にふさわしい荘厳な雰囲気に包まれる。まして今年は100回記念大会。
シンボリックな鐘楼が見下ろすマルクト広場に詰めかける観客たち。しかし街には朝8時の時点で街にはまばらな人出しかいない。「これもテロの影響か?」それとも冴えない天気のせいか。空は暗く、空気は冷たい。
しかし10時のスタートまで1時間を切った頃に急に人々が沸いてきた。テロを恐れる主催者により広場入り口にはセキュリティチェックが設けられ、どうやらそのチェックで人々の流入に手間取ったらしい。
ワンティ・グループグベルトはヘント〜ウェヴェルヘムで事故死したアントワーヌ・デモアティエのためにステージにはお揃いのメッセージ入りの黒いTシャツを着て登壇。観客とともに黙祷した。バイクには「ライド・フォー・アントワーヌ #rideforantoine 」のハッシュタグステッカーが貼られていた。
クリテリウム・アンテルナシオナルではダーン・ミングヘール(ルーベ・リールメトロポール)が心臓発作で亡くなり、この1週間で2人の将来の有る自転車選手を亡くしたベルギー自転車界。この世を去った2人の若者への思いを共有する観客たちは、例年よりもずっと静かで、ロンド独特のお祭りムードは無かった。つまりはファンは自転車競技を芯から理解している。そこがベルギーらしいところだ。
随行する我々モトチームも、昨夜のミーティングから都度で「Safety is priority=安全第一」を再確認しあっている。まして今年はテロへの懸念も有り、100回大会だからと浮かれている面は全く無い。
広場から数百メートル離れているチームバスの駐車場では、準備に忙しいメカニックたちが仕事に追われていた。話題はランプレ・メリダがチーム全員にディスクブレーキを採用した新型スクルトゥーラを揃えたこと。ルームポット・オレンジプロトンは選手の半分がディスクだが、ランプレはメンバーの数人ではなく、全員がディスクだ。
ディスクを採用した初のワールドツアーチームとなったランプレ・メリダ。チームカーのルーフのサブバイクもホイールも、すべてディスク仕様。そしてニュートラルサポートを担当するシマノもノーマルホイールに加えて数本のディスク仕様ホイールをルーフに用意した。両チームともに160mmローターを採用するが、ランプレはフォーカスの開発したRATシステムのスルーアクスルを使う。それがニュートラルカーに用意されたのかは未確認だ。ロンドはサポートがすぐに受けられるレースではないのでリスクは高いと言わざるをえない。果たしてレース後の評価はいかに。
この週末は天気予報によれば両日とも最高の天気に恵まれるはずだった。予想最高気温は土曜は17度、日曜はなんと21度の予報。しかし土曜は雨こそ降らなかったものの晴れ間はなく、最高9度までしか上がらなかった。そして降る予定のない雨が朝まで降り続いた。雲は予報に反して重く垂れ込めた。そもそも「一日のうちに四季がある」というベルギー。今日もまた予報は外れる?
2大優勝候補のカンチェラーラとサガン。カンチェラーラは集中しきった様子で、スタート最前列に並ぶと早々にハンドルに突っ伏して自分の世界に入り込む。サガンはいつものようにひょうひょうとやってきて、ぎりぎりまでファンからのサインのリクエストに応じていた。
昨日は一日RVV市民レースを走り、コースとパヴェの下見をしてみたが、コース自体は昨年と変化なく、パヴェの状況も概ね良好。唯一、コッペンベルグは最大勾配部付近に泥が流れこみ、両脇はスリッピーな状況に。これは金曜から試走していたチームに伴走したチームカーがスリップし、両脇の土を切り崩してしまったからだという。レース時は迂回させられるコッペンベルグの通過を試みたスカイとアスタナのチームカーは登り切れず、バックで引き返した。そして転んだオートバイもあったという。
日曜の雨はパヴェにおしめりをもたらしたが、果たしてコッペンベルグの泥は洗い流されただろうか? スタート前まで暗かった空は、鐘楼が出発の時を告げるととも晴れ渡った。ローリングを経てリアルスタートが切られると、アタックが頻発する。そしてなかなか決まらない。フランドルのパヴェの待つ地方へと、いつもよりプロトンの南下速度が早い。通過する主要な街にはプロトンを歓迎するビレッジが設けられるが、そのどれもを足早に通り過ぎてしまった。
■頻発したクラッシュ ベルギーの希望が続々と消えた
序盤からのハイスピードでナーバスな展開に落車が頻発した。BMCレーシングは見通しの良い広い道路を一団となって走っていたが、先頭の誰かがホイールに何かを引っ掛け、それに巻き込まれるかたちでチーム5人が次々に落車した。ロンド制覇に向け期待を担うグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)は鎖骨を折り、パリ〜ルーベまで棒に振った。そしてベルギー期待のホープ、ティエシー・ベノート(ロット・ソウダル)もクラッシュしてリタイア。セプ・ファンマルク(ロットNLユンボ)も地面に投げ出されたが、怪我を免れたのはベルギーにとっての吉報だった。
コッペンベルグは乾いていたものの、やはり昨日までに流れた土の影響を受けたようだ。最大勾配付近のパヴェを薄く覆った土汚れはタイヤのグリップを失わさせるに十分な働きをする。その様子を両側の土手から固唾を呑んで見守る観客たち。バイクを担いで登るシクロクロススタイルの対処法も見られた。
■カンチェラーラの判断ミス? サガンとファンマルクのアタックに乗り遅れる
振り返れば今年のロンドは意外なところで勝負の行方を左右する動きが決まった。残り32km、クヴィアトコウスキーがアタックし、それにサガンが反応。ファンマルクも続いた。マークしないわけにいかない強者3人がメイン集団からアタックしたが、カンチェラーラはそのアタックに反応せず、なぜか待つことを選んだ。反応できる位置にいなかったわけではないようだ。
トレック・セガフレードはそこまでアシストのヤスパー・ストゥイフェンやグレゴリー・ラスト、そしてマイケル・イリサールらにメカトラが頻発。トラブルからリカバリーする姿が何度も見られた。最終局面でのサポートに頼れるステイン・デヴォルデルにすでに大きな負荷がかかっていた。そして集団にはエティックス・クイックステップとチームスカイがメンバーの数を揃え、十分な追走能力を持つと判断してしまったのか。しかし、サガンとファンマルク、クヴィアトコウスキーが揃ったアタックを自ら追う判断をしなかったことは、カンチェラーラにとって大きなミスと言えそうだ。
それでも3度めのオウデクワレモントを圧倒的なスピードで駆け上がったカンチェラーラは、前を走る選手たちを次々と蹴散らして進んだが、勝負どころの最後のパテルベルグの登りまでにサガンとファンマルクに追いつけなかった。
コースが変更を受けてから常に勝負が決する最後の坂となってきたパテルベルグ。先行したサガンは、シッティングのままで最大勾配区間で加速した。3年前のカンチェラーラを思い出させるスピードで。脚の売り切れたファンマルクはうなだれ、失速する。カンチェラーラは追い上げ、ファンマルクに合流するも、サガンのほうが余裕があった。
残り17kmをTTスタイルで逃げたサガン。脚の回転は鈍らず、カンチェラーラとファンマルク2人の追走にも差が縮まることを許さなかった。フィニッシュラインを越えて後方を見やると、得意のウィリーも披露した。ただしカメラマンの放列を通りすぎてからのタイミングで。
ゴール前で失速したファンマルクを気遣ってか、振り返りながら、最後のロンドを2位でフィニッシュするカンチェラーラ。観客の大声援に対して両手を振って応えた。ゴールしてポディウムを待つまでにはベルギービールのKWAREMONTを一本飲み干した。表彰式でも浮かない表情だ。
カンチェラーラは言う。「ハッピーじゃない。集団には未だ何人も強い選手が、スカイとエティックスにはたくさん残って居た。彼らも勝ちたがっていた。あのアタックが早すぎたとは言いたくない。待った理由は、明日になったら話せるかもしれない。
でもあそこで行ったのはペーター(サガン)にとって正しかった。クワレモントとパテルベルグで追いつこうとした。追走はいつもいいものじゃない。フルガス(全開)だった。セプ(ファンマルク)には追いついたけど、ペーターはただ強かった」。
■万年2位の汚名を完全返上したサガン 「モニュメント・ダブル」に期待がかかる
6度目のロンドで勝利した26歳のサガン。ヘルメットを脱ぐとロックスターのようなロングヘアで記者会見に登場した(髪を切った画像がフェイクとして流れていた)。サガンは言う。
「ロンドでの勝利は今年の大きな目標のひとつだったから格別だ。今日は最初から最後まで常にフル・ガスの、スーパー・ハードなレースだった。たぶん10分ぐらいしか流さなかった。クヴィアトコウスキーのアタックはスマートだった。誰もが疲れているタイミングで、集団にはスカイの選手が沢山居たからスカイの選手と抜け出すのは理想的だった。今まで出た6度のロンドでもっとも変なレースだった。
ファビアンが僕らのアタックに加われなかったのは多分ミステイクだ。
[img_assist|nid=195512|title=沿道に居たサガン応援団。もちろんスロバキアからやってきた|desc=photo:Makoto.AYANO|link=node|align=right|width=360|height=]トラブルもあった。100kmで前・後輪ともに交換しなくてはならず、チームメイトに助けてもらった。チームに感謝したい。そしてオレグ・ティンコフ氏にも。僕らは先週亡くなった2人のベルギー人のことを思わなくてはいけない。この勝利は彼らに捧げる。そしてレース直前でケガをしてロンドに出れなかったチームメイトのマチェイ・ボドナールに」。
サガンの虹色のアルカンシェルジャージを着てのロンド制覇は、2006年のトム・ボーネン以来で、史上3人目。万年2位の形容詞がついて回ったこの2年、しかし昨年のリッチモンド世界選での王者獲得と、ロンド前哨戦ヘント〜ウェヴェルヘムの勝利で、その汚名は完全に返上されそうだ。
サガンにとって初のモニュメントレース制覇。スプリントもあり、すべてのレースをこなせるオールラウンダーの26歳の成熟した王者は、この先まだまだモニュメントの勝利数を伸ばすことができるだろう。このロンドの勝利はモニュメント勝利の最初の1つに過ぎないのかもしれない。翌週のパリ〜ルーベで、さっそくの「モニュメント・ダブル」に期待がかかる。
もちろん記者会見ではパリ〜ルーベの勝利の可能性についての質問が飛ぶ。しかしリラックスしたサガンはひと言であっさりと交わした。「来週のことは来週考える。今はこの勝利を味わいたい」。
photo&text:Makoto.AYANO in Belgium
ワンデイクラシックの王様と形容されるロンド・ファン・フラーンデレンが開催されるのは毎年14番目の日曜日と決まっている。水の都ブルージュの中心部でのスタートセレモニーはレースの王様にふさわしい荘厳な雰囲気に包まれる。まして今年は100回記念大会。
シンボリックな鐘楼が見下ろすマルクト広場に詰めかける観客たち。しかし街には朝8時の時点で街にはまばらな人出しかいない。「これもテロの影響か?」それとも冴えない天気のせいか。空は暗く、空気は冷たい。
しかし10時のスタートまで1時間を切った頃に急に人々が沸いてきた。テロを恐れる主催者により広場入り口にはセキュリティチェックが設けられ、どうやらそのチェックで人々の流入に手間取ったらしい。
ワンティ・グループグベルトはヘント〜ウェヴェルヘムで事故死したアントワーヌ・デモアティエのためにステージにはお揃いのメッセージ入りの黒いTシャツを着て登壇。観客とともに黙祷した。バイクには「ライド・フォー・アントワーヌ #rideforantoine 」のハッシュタグステッカーが貼られていた。
クリテリウム・アンテルナシオナルではダーン・ミングヘール(ルーベ・リールメトロポール)が心臓発作で亡くなり、この1週間で2人の将来の有る自転車選手を亡くしたベルギー自転車界。この世を去った2人の若者への思いを共有する観客たちは、例年よりもずっと静かで、ロンド独特のお祭りムードは無かった。つまりはファンは自転車競技を芯から理解している。そこがベルギーらしいところだ。
随行する我々モトチームも、昨夜のミーティングから都度で「Safety is priority=安全第一」を再確認しあっている。まして今年はテロへの懸念も有り、100回大会だからと浮かれている面は全く無い。
広場から数百メートル離れているチームバスの駐車場では、準備に忙しいメカニックたちが仕事に追われていた。話題はランプレ・メリダがチーム全員にディスクブレーキを採用した新型スクルトゥーラを揃えたこと。ルームポット・オレンジプロトンは選手の半分がディスクだが、ランプレはメンバーの数人ではなく、全員がディスクだ。
ディスクを採用した初のワールドツアーチームとなったランプレ・メリダ。チームカーのルーフのサブバイクもホイールも、すべてディスク仕様。そしてニュートラルサポートを担当するシマノもノーマルホイールに加えて数本のディスク仕様ホイールをルーフに用意した。両チームともに160mmローターを採用するが、ランプレはフォーカスの開発したRATシステムのスルーアクスルを使う。それがニュートラルカーに用意されたのかは未確認だ。ロンドはサポートがすぐに受けられるレースではないのでリスクは高いと言わざるをえない。果たしてレース後の評価はいかに。
この週末は天気予報によれば両日とも最高の天気に恵まれるはずだった。予想最高気温は土曜は17度、日曜はなんと21度の予報。しかし土曜は雨こそ降らなかったものの晴れ間はなく、最高9度までしか上がらなかった。そして降る予定のない雨が朝まで降り続いた。雲は予報に反して重く垂れ込めた。そもそも「一日のうちに四季がある」というベルギー。今日もまた予報は外れる?
2大優勝候補のカンチェラーラとサガン。カンチェラーラは集中しきった様子で、スタート最前列に並ぶと早々にハンドルに突っ伏して自分の世界に入り込む。サガンはいつものようにひょうひょうとやってきて、ぎりぎりまでファンからのサインのリクエストに応じていた。
昨日は一日RVV市民レースを走り、コースとパヴェの下見をしてみたが、コース自体は昨年と変化なく、パヴェの状況も概ね良好。唯一、コッペンベルグは最大勾配部付近に泥が流れこみ、両脇はスリッピーな状況に。これは金曜から試走していたチームに伴走したチームカーがスリップし、両脇の土を切り崩してしまったからだという。レース時は迂回させられるコッペンベルグの通過を試みたスカイとアスタナのチームカーは登り切れず、バックで引き返した。そして転んだオートバイもあったという。
日曜の雨はパヴェにおしめりをもたらしたが、果たしてコッペンベルグの泥は洗い流されただろうか? スタート前まで暗かった空は、鐘楼が出発の時を告げるととも晴れ渡った。ローリングを経てリアルスタートが切られると、アタックが頻発する。そしてなかなか決まらない。フランドルのパヴェの待つ地方へと、いつもよりプロトンの南下速度が早い。通過する主要な街にはプロトンを歓迎するビレッジが設けられるが、そのどれもを足早に通り過ぎてしまった。
■頻発したクラッシュ ベルギーの希望が続々と消えた
序盤からのハイスピードでナーバスな展開に落車が頻発した。BMCレーシングは見通しの良い広い道路を一団となって走っていたが、先頭の誰かがホイールに何かを引っ掛け、それに巻き込まれるかたちでチーム5人が次々に落車した。ロンド制覇に向け期待を担うグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)は鎖骨を折り、パリ〜ルーベまで棒に振った。そしてベルギー期待のホープ、ティエシー・ベノート(ロット・ソウダル)もクラッシュしてリタイア。セプ・ファンマルク(ロットNLユンボ)も地面に投げ出されたが、怪我を免れたのはベルギーにとっての吉報だった。
コッペンベルグは乾いていたものの、やはり昨日までに流れた土の影響を受けたようだ。最大勾配付近のパヴェを薄く覆った土汚れはタイヤのグリップを失わさせるに十分な働きをする。その様子を両側の土手から固唾を呑んで見守る観客たち。バイクを担いで登るシクロクロススタイルの対処法も見られた。
■カンチェラーラの判断ミス? サガンとファンマルクのアタックに乗り遅れる
振り返れば今年のロンドは意外なところで勝負の行方を左右する動きが決まった。残り32km、クヴィアトコウスキーがアタックし、それにサガンが反応。ファンマルクも続いた。マークしないわけにいかない強者3人がメイン集団からアタックしたが、カンチェラーラはそのアタックに反応せず、なぜか待つことを選んだ。反応できる位置にいなかったわけではないようだ。
トレック・セガフレードはそこまでアシストのヤスパー・ストゥイフェンやグレゴリー・ラスト、そしてマイケル・イリサールらにメカトラが頻発。トラブルからリカバリーする姿が何度も見られた。最終局面でのサポートに頼れるステイン・デヴォルデルにすでに大きな負荷がかかっていた。そして集団にはエティックス・クイックステップとチームスカイがメンバーの数を揃え、十分な追走能力を持つと判断してしまったのか。しかし、サガンとファンマルク、クヴィアトコウスキーが揃ったアタックを自ら追う判断をしなかったことは、カンチェラーラにとって大きなミスと言えそうだ。
それでも3度めのオウデクワレモントを圧倒的なスピードで駆け上がったカンチェラーラは、前を走る選手たちを次々と蹴散らして進んだが、勝負どころの最後のパテルベルグの登りまでにサガンとファンマルクに追いつけなかった。
コースが変更を受けてから常に勝負が決する最後の坂となってきたパテルベルグ。先行したサガンは、シッティングのままで最大勾配区間で加速した。3年前のカンチェラーラを思い出させるスピードで。脚の売り切れたファンマルクはうなだれ、失速する。カンチェラーラは追い上げ、ファンマルクに合流するも、サガンのほうが余裕があった。
残り17kmをTTスタイルで逃げたサガン。脚の回転は鈍らず、カンチェラーラとファンマルク2人の追走にも差が縮まることを許さなかった。フィニッシュラインを越えて後方を見やると、得意のウィリーも披露した。ただしカメラマンの放列を通りすぎてからのタイミングで。
ゴール前で失速したファンマルクを気遣ってか、振り返りながら、最後のロンドを2位でフィニッシュするカンチェラーラ。観客の大声援に対して両手を振って応えた。ゴールしてポディウムを待つまでにはベルギービールのKWAREMONTを一本飲み干した。表彰式でも浮かない表情だ。
カンチェラーラは言う。「ハッピーじゃない。集団には未だ何人も強い選手が、スカイとエティックスにはたくさん残って居た。彼らも勝ちたがっていた。あのアタックが早すぎたとは言いたくない。待った理由は、明日になったら話せるかもしれない。
でもあそこで行ったのはペーター(サガン)にとって正しかった。クワレモントとパテルベルグで追いつこうとした。追走はいつもいいものじゃない。フルガス(全開)だった。セプ(ファンマルク)には追いついたけど、ペーターはただ強かった」。
■万年2位の汚名を完全返上したサガン 「モニュメント・ダブル」に期待がかかる
6度目のロンドで勝利した26歳のサガン。ヘルメットを脱ぐとロックスターのようなロングヘアで記者会見に登場した(髪を切った画像がフェイクとして流れていた)。サガンは言う。
「ロンドでの勝利は今年の大きな目標のひとつだったから格別だ。今日は最初から最後まで常にフル・ガスの、スーパー・ハードなレースだった。たぶん10分ぐらいしか流さなかった。クヴィアトコウスキーのアタックはスマートだった。誰もが疲れているタイミングで、集団にはスカイの選手が沢山居たからスカイの選手と抜け出すのは理想的だった。今まで出た6度のロンドでもっとも変なレースだった。
ファビアンが僕らのアタックに加われなかったのは多分ミステイクだ。
[img_assist|nid=195512|title=沿道に居たサガン応援団。もちろんスロバキアからやってきた|desc=photo:Makoto.AYANO|link=node|align=right|width=360|height=]トラブルもあった。100kmで前・後輪ともに交換しなくてはならず、チームメイトに助けてもらった。チームに感謝したい。そしてオレグ・ティンコフ氏にも。僕らは先週亡くなった2人のベルギー人のことを思わなくてはいけない。この勝利は彼らに捧げる。そしてレース直前でケガをしてロンドに出れなかったチームメイトのマチェイ・ボドナールに」。
サガンの虹色のアルカンシェルジャージを着てのロンド制覇は、2006年のトム・ボーネン以来で、史上3人目。万年2位の形容詞がついて回ったこの2年、しかし昨年のリッチモンド世界選での王者獲得と、ロンド前哨戦ヘント〜ウェヴェルヘムの勝利で、その汚名は完全に返上されそうだ。
サガンにとって初のモニュメントレース制覇。スプリントもあり、すべてのレースをこなせるオールラウンダーの26歳の成熟した王者は、この先まだまだモニュメントの勝利数を伸ばすことができるだろう。このロンドの勝利はモニュメント勝利の最初の1つに過ぎないのかもしれない。翌週のパリ〜ルーベで、さっそくの「モニュメント・ダブル」に期待がかかる。
もちろん記者会見ではパリ〜ルーベの勝利の可能性についての質問が飛ぶ。しかしリラックスしたサガンはひと言であっさりと交わした。「来週のことは来週考える。今はこの勝利を味わいたい」。
photo&text:Makoto.AYANO in Belgium
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