2016/03/22(火) - 08:25
3月21日、歴史ある第96回ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャがスペインで開幕。グランツールを見据えるオールラウンダーが勢ぞろいする7日間のステージレースの初日は集団スプリントに持ち込まれ、直前のミラノ〜サンレモで辛酸を嘗めたナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)が勝利した。
1911年に第1回大会が開催されたボルタ・ア・カタルーニャ(カタルーニャ一周)は、世界でも有数の歴史を持つ1週間のステージレース。その歴史は、ブエルタ・ア・エスパーニャ(1935年〜)よりも古く、ツール・ド・フランス(1903年〜)とジロ・デ・イタリア(1909年〜)と肩を並べるほど。
独自の文化を持つカタルーニャ地方は、バスク地方同様スペインからの独立を訴える自治州の一つ。州都はスペイン第二の都市バルセロナ。一般的にカタルーニャ語が話されており、レースホームページもカタルーニャ語とカスティーリャ語(スペイン語)の2種類が用意されているほど。レース名の「ボルタ」はカタルーニャ語でスペイン語の「ブエルタ」を意味する。
1週間にわたる戦いのうち、総合争いが決するのはピレネー山脈に分け入る2日間。1級山岳ラ・モリーナにフィニッシュする第3ステージと、超級山岳ポルト・アイネにフィニッシュする第4ステージだ。個人タイムトライアルが設定されないためクライマー有利のステージレースだと言える。最終日の第7ステージは州都バルセロナのモンジュイックの丘にフィニッシュする。
第96回大会にはツール・ド・フランスでマイヨジョーヌ候補に挙がるオールラウンダーが勢揃い。ゲラント・トーマスとタッグを組むクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)の他、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)、ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)、ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)、そしてティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)とリッチー・ポート(オーストラリア)のBMCコンビも出場。
総合優勝経験のあるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)とダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)の他にも、クラシックシーズンに向けて調整を続けるフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)やサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)も顔を揃える。
また、2015年のブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージで大怪我を負ったクリス・ボックマンス(ベルギー、ロット・ソウダル)が165日ぶりにレースに復帰。2月のドバイツアーで鎖骨を骨折したベルンハルト・アイゼル(オーストリア、ディメンションデータ)もこのカタルーニャで復帰している。
初日の第1ステージは州都バルセロナの北に位置するカレーリャを発着する175.8kmの定番コース。内陸部を走る後半にかけて1級山岳コルフォルミク(平均勾配5.2%・登坂距離9km)を含む5つのカテゴリー山岳が設定されているものの、スプリンターでもこなせる難易度だ。
レース序盤に先行を開始したキャメロン・マイヤー(オーストラリア、ディメンションデータ)、ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)、ボリス・ドロン(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)が最大6分リードでエスケープ。
しかしチームスカイやモビスターが積極的にメイン集団を率いたため、逃げグループは1級山岳コルフォルミクの登りでリードを失う。先頭で頂上を通過したマイヤーを含め、フィニッシュまで50kmを残して逃げは捕らえられた。
地中海に面したスタート/フィニッシュ地点カレーリャとは打って変わって内陸部は雨降り。続く急勾配の2級山岳モンセニー峠でルイス・フェルファーク(ベルギー、ロット・ソウダル)らが新たに飛び出して逃げグループを形成する。メイン集団は登りで分裂したが、チームスカイの牽引によって残り30kmで逃げを吸収した。
その後もアタックが続発する展開で、残り5kmからニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)が独走に持ち込むも、残り1.5kmでスプリンターチーム率いる大集団に吸収。オリカ・グリーンエッジがスプリントに向けてトレインを走らせ、ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)とベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)が好位置からスプリントを開始した。
道幅のあるカレーリャの幹線道路は若干の登り基調。ミラノ〜サンレモで2位に入ったばかりのスウィフトが先行するも、その後ろから赤いジャージが勢いよく追い上げる。スプリント中のチェーン落ちによってミラノ〜サンレモ制覇を逃したブアニが圧倒的なスピードで勝利した。
「夢見ていたミラノ〜サンレモでの勝利を目の前にして、生まれて初めてスプリントでチェーンが落ちた。今日の勝利で少しは気が晴れたけど、その記憶は消し去ることができない」と、ブアニは2日前のサンレモでの悪夢を振り返る。今シーズン3勝目を飾った25歳はこの先の平坦ステージでも存在感を見せるだろう。
フルームやコンタドールをはじめとするトップレーサーがブアニと同タイム集団でフィニッシュした一方で、病明けのトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)やライダー・ヘシェダル(カナダ、トレック・セガフレード)は6分43秒遅れでフィニッシュしている。
選手コメントはチーム公式サイトより。
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2016第1ステージ結果
1位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) 4h28’51”
2位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
3位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
4位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト)
5位 アレクセイ・ツァテヴィッチ(ロシア、カチューシャ)
6位 カルロス・バルベーロ(スペイン、カハルーラル)
7位 ヨルディ・シモン(スペイン、ベルバ・アクティブジェット)
8位 ケヴィン・レザ(フランス、FDJ)
9位 エドゥアルド・プラデス(スペイン、カハルーラル)
10位 ゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、ジャイアント・アルペシン)
個人総合成績
1位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) 4h28’41”
2位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ) +04”
3位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ) +06”
4位 ルイス・フェルファーク(ベルギー、ロット・ソウダル) +07”
5位 ハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター) +08”
6位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター) +09”
7位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、ディメンションデータ)
8位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト) +10”
9位 アレクセイ・ツァテヴィッチ(ロシア、カチューシャ)
10位 カルロス・バルベーロ(スペイン、カハルーラル)
山岳賞
1位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、ディメンションデータ)
スプリント賞
1位 ルイス・フェルファーク(ベルギー、ロット・ソウダル)
ヤングライダー賞
1位 ルイス・フェルファーク(ベルギー、ロット・ソウダル)
チーム総合成績
1位 ジャイアント・アルペシン
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
1911年に第1回大会が開催されたボルタ・ア・カタルーニャ(カタルーニャ一周)は、世界でも有数の歴史を持つ1週間のステージレース。その歴史は、ブエルタ・ア・エスパーニャ(1935年〜)よりも古く、ツール・ド・フランス(1903年〜)とジロ・デ・イタリア(1909年〜)と肩を並べるほど。
独自の文化を持つカタルーニャ地方は、バスク地方同様スペインからの独立を訴える自治州の一つ。州都はスペイン第二の都市バルセロナ。一般的にカタルーニャ語が話されており、レースホームページもカタルーニャ語とカスティーリャ語(スペイン語)の2種類が用意されているほど。レース名の「ボルタ」はカタルーニャ語でスペイン語の「ブエルタ」を意味する。
1週間にわたる戦いのうち、総合争いが決するのはピレネー山脈に分け入る2日間。1級山岳ラ・モリーナにフィニッシュする第3ステージと、超級山岳ポルト・アイネにフィニッシュする第4ステージだ。個人タイムトライアルが設定されないためクライマー有利のステージレースだと言える。最終日の第7ステージは州都バルセロナのモンジュイックの丘にフィニッシュする。
第96回大会にはツール・ド・フランスでマイヨジョーヌ候補に挙がるオールラウンダーが勢揃い。ゲラント・トーマスとタッグを組むクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)の他、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)、ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)、ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)、そしてティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)とリッチー・ポート(オーストラリア)のBMCコンビも出場。
総合優勝経験のあるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)とダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)の他にも、クラシックシーズンに向けて調整を続けるフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)やサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)も顔を揃える。
また、2015年のブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージで大怪我を負ったクリス・ボックマンス(ベルギー、ロット・ソウダル)が165日ぶりにレースに復帰。2月のドバイツアーで鎖骨を骨折したベルンハルト・アイゼル(オーストリア、ディメンションデータ)もこのカタルーニャで復帰している。
初日の第1ステージは州都バルセロナの北に位置するカレーリャを発着する175.8kmの定番コース。内陸部を走る後半にかけて1級山岳コルフォルミク(平均勾配5.2%・登坂距離9km)を含む5つのカテゴリー山岳が設定されているものの、スプリンターでもこなせる難易度だ。
レース序盤に先行を開始したキャメロン・マイヤー(オーストラリア、ディメンションデータ)、ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)、ボリス・ドロン(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)が最大6分リードでエスケープ。
しかしチームスカイやモビスターが積極的にメイン集団を率いたため、逃げグループは1級山岳コルフォルミクの登りでリードを失う。先頭で頂上を通過したマイヤーを含め、フィニッシュまで50kmを残して逃げは捕らえられた。
地中海に面したスタート/フィニッシュ地点カレーリャとは打って変わって内陸部は雨降り。続く急勾配の2級山岳モンセニー峠でルイス・フェルファーク(ベルギー、ロット・ソウダル)らが新たに飛び出して逃げグループを形成する。メイン集団は登りで分裂したが、チームスカイの牽引によって残り30kmで逃げを吸収した。
その後もアタックが続発する展開で、残り5kmからニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)が独走に持ち込むも、残り1.5kmでスプリンターチーム率いる大集団に吸収。オリカ・グリーンエッジがスプリントに向けてトレインを走らせ、ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)とベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)が好位置からスプリントを開始した。
道幅のあるカレーリャの幹線道路は若干の登り基調。ミラノ〜サンレモで2位に入ったばかりのスウィフトが先行するも、その後ろから赤いジャージが勢いよく追い上げる。スプリント中のチェーン落ちによってミラノ〜サンレモ制覇を逃したブアニが圧倒的なスピードで勝利した。
「夢見ていたミラノ〜サンレモでの勝利を目の前にして、生まれて初めてスプリントでチェーンが落ちた。今日の勝利で少しは気が晴れたけど、その記憶は消し去ることができない」と、ブアニは2日前のサンレモでの悪夢を振り返る。今シーズン3勝目を飾った25歳はこの先の平坦ステージでも存在感を見せるだろう。
フルームやコンタドールをはじめとするトップレーサーがブアニと同タイム集団でフィニッシュした一方で、病明けのトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)やライダー・ヘシェダル(カナダ、トレック・セガフレード)は6分43秒遅れでフィニッシュしている。
選手コメントはチーム公式サイトより。
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2016第1ステージ結果
1位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) 4h28’51”
2位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
3位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
4位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト)
5位 アレクセイ・ツァテヴィッチ(ロシア、カチューシャ)
6位 カルロス・バルベーロ(スペイン、カハルーラル)
7位 ヨルディ・シモン(スペイン、ベルバ・アクティブジェット)
8位 ケヴィン・レザ(フランス、FDJ)
9位 エドゥアルド・プラデス(スペイン、カハルーラル)
10位 ゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、ジャイアント・アルペシン)
個人総合成績
1位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス) 4h28’41”
2位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ) +04”
3位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ) +06”
4位 ルイス・フェルファーク(ベルギー、ロット・ソウダル) +07”
5位 ハビエル・モレーノ(スペイン、モビスター) +08”
6位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター) +09”
7位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、ディメンションデータ)
8位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト) +10”
9位 アレクセイ・ツァテヴィッチ(ロシア、カチューシャ)
10位 カルロス・バルベーロ(スペイン、カハルーラル)
山岳賞
1位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、ディメンションデータ)
スプリント賞
1位 ルイス・フェルファーク(ベルギー、ロット・ソウダル)
ヤングライダー賞
1位 ルイス・フェルファーク(ベルギー、ロット・ソウダル)
チーム総合成績
1位 ジャイアント・アルペシン
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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