本格シーズンインを控え、中国ではUCI公認のシクロクロスレースが現在開催中だ。日本から7選手が参加したQiansen Trophy 第1戦の模様を、現地帯同スタッフによるレポートでお伝えします。



男子エリート5名、女子エリート2名の日本選手団男子エリート5名、女子エリート2名の日本選手団 女子エリートのスタート前女子エリートのスタート前 男子エリート、スタート前男子エリート、スタート前 今回第3回目を迎える千森杯(QIANSEN TROPHY)。昨年までは北京から北へ80kmほどの、万里の長城のある延慶県(Yanqing County)で行われたが、今年はそれに加え、北京から3000km南の海南島のほぼ中央に位置する苗族自治区の瓊中(Qiongzhong)でのレースも組み合わされた2連戦での開催となった。

今回日本から参加したメンバーは、男子が小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)、向山浩司(SNEL CYCLOCROSS TEAM)、金子楓(SNEL CYCLOCROSS TEAM)、松本駿(TEAM SCOTT)、松尾純(MIYATA-MERIDA VIKING TEAM)という5名と、女子がReady Go JAPANから須藤むつみと伊藤千紘の2名。

日本チームの現地入りは8月30日の金曜日。UCI公認レースだけあってヨーロッパからもワイツ・ボスマンス(ベルギー、BKCPパワープラス)やラドミール・シムネク(チェコ、コレンドン・クワドロ)、昨年大会覇者タイス・アル(オランダ、AGU)らも参加した。

そんな中で日本チームは、固くドライな高速コースを前提に、場合によっては雨によるスリッピーな路面も想定し走りこみながらバイクを調整。タイヤの選択を各自行い本番に臨んだ。

男子レースは序盤からボスマンスやコフィディスを離脱し、自身のチームを立ち上げたスティーブ・シェネル(フランス)らが逃げる展開となり、最後はボスマンスが勝利。日本チームは想定以上のハイペースに苦しみ、最上位は小坂の12位。次回海南島のレースに課題を残すこととなった。(中国のTV局によるレースの録画ストリーミングはこちら

また千森杯(QIANSEN TROPHY)の特徴として、万里の長城ツアーが行われたり、食事宿泊旅費の補助やパーティーイベントの開催、十分なボランティアの確保など、充実したホスピタリティも大きな特徴。また大規模かつ高品質なHD WEB中継と配信を前提にしたテレビ中継機材は自転車競技としては圧巻で、サイクリングイベントも併催するなど観客の数もとても多かった。

日本人トップの12位フィニッシュした小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)日本人トップの12位フィニッシュした小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
ヨーロッパや北米から参戦するには費用などで難しい面もあるが、豪州やアジア圏からは現実的な海外遠征範囲であり、実質的なシーズンイン前に効率的にUCIポイントを狙える今大会。今後インセンティブが減ってもポイントを狙う参加者には人気となっていくのではないだろうか。昨年と比較しても、参加選手の質は高くなっていたという。以下に各選手のコメントを紹介しよう。

小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
「シーズン初戦ではありましたが スタッフの皆さんの万全のサポートもあり、リラックスしてレースに臨むことができました。展開としては、スタートもスムーズにいき前半は2人で前のパックを追う形となり、中盤以降に追いついてからは7~11番手のパックになりました。最後はラスト2周で千切れてしまい12位に。

今回のレースは、今年取り組んできたトレーニングの成果を確認する意味でも楽しみにしていたレースだったので、自分の中で納得いく走りができました。しかし上位に入るチャンスがあっただけにかなり悔しい。ドライのハイスピードコースで3分差は大きく、よりパワーを付ける必要を感じます」

金子楓(SNEL CYCLOCROSS TEAM)
「去年獲得したUCIポイントによって2列目という好位置からスタート。パワフルな外国人選手に囲まれ、未体験の1周目のスピードとポジション争いを体験できました。しかし、ハイスピード区間でのパワー不足とオーバースピードのダメージでしだいに順位を下げ後悔の残る結果となりました。次の海南島のレースに向けて準備を整え直し、限界を乗り越える走りを目指したいと思います」

向山浩司(SNEL CYCLOCROSS TEAM)は23位に向山浩司(SNEL CYCLOCROSS TEAM)は23位に 松本駿(TEAM SCOTT)は25位でレースを終えた松本駿(TEAM SCOTT)は25位でレースを終えた

MTBで活躍する松尾純(MIYATA-MERIDA VIKING TEAM)は29位MTBで活躍する松尾純(MIYATA-MERIDA VIKING TEAM)は29位 37位でフィニッシュした金子楓(SNEL CYCLOCROSS TEAM)37位でフィニッシュした金子楓(SNEL CYCLOCROSS TEAM)


向山浩司(SNEL CYCLOCROSS TEAM)
「昨年はメカトラで不甲斐ない結果に終わり「今年こそは」と言う気持ちで挑戦しました。後方スタートで前に上がるのに苦労し、UCIポイント圏内のパックにあと一歩で乗り遅れ、単独での厳しいレースになってしまいましたが、ペースを落とさないように前を追いかけながら何とか23位でフィニッシュしました。得意の平坦高速コースで、今自分が持っている力は発揮出来たと思いますが、まだまだ課題も多い。次回高低差のあるテクニカルな海南島では限界まで追い込んで頑張りたいと思います」

松尾純(MIYATA-MERIDA VIKING TEAM)
「今回初めてのシクロクロス遠征となりレースに関しては未知数でした。北京のコースは日本に無い凸凹な路面で最初の試走ではキツくスピードを出すのが難しかったのですが、何度も試走し対応できるようになりました。しかし本番では序盤はうまく攻めて行けたものの踏み過ぎからか中盤以降落ち込み-1Lapで終えました。次回海南島は今回の中盤の修正を行い、まずは完走そしてUCIポイントに絡める走りが目標です」

松本駿(TEAM SCOTT)
「MTBレースシーズンの合間でしたが、UCI C1という滅多に無いチャンスと思い参加。シクロクロスにフォーカスしたトレーニングも積んできました。北京のコースは平坦な印象と裏腹に凸凹が多く、そのため細かなスキルも要求されスピードを上げないと苦しむコースでした。最後尾スタートからうまく競り合いながら順位を上げることができました。今後に繋げられる走りをしたいと思います」

16位フィニッシュの須藤むつみ(Ready Go JAPAN)16位フィニッシュの須藤むつみ(Ready Go JAPAN) -1Lapでレースを終えた伊藤千紘(Ready Go JAPAN)-1Lapでレースを終えた伊藤千紘(Ready Go JAPAN)

会場近くの万里の長城を巡る会場近くの万里の長城を巡る ウェルカムパーティーでの一コマウェルカムパーティーでの一コマ


須藤むつみ(Ready Go JAPAN)
「18年ぶりのシクロクロス海外レース参戦でしたが、その間チームの海外遠征マネージメントを行っていたこともあり、準備万端で臨むことができました。何より中国での大会経験があるスタッフ、選手と参戦しているのも心強いです。それもあって今回の目標はUCIポイント獲得の15位以内でしたが、完走はできたものの目前でポイントを逃してしまい非常に悔しいです。丁寧なバイクコントロールで力を温存していく私のスタイルは、今後日本女子が海外のパワーに勝る選手に近づく手段の一つとして若い選手に伝授したいと思います」

伊藤千紘(Ready Go JAPAN)
「今回初めてのUCIレース参戦にバイクも新調していただき、準備を整えることができました。コースは日本には無いような土の踏み固まった状態なので、スピードのコントロールが大変でしたが、須藤選手に特に下りのラインなどを指導してもらったとおりに走り凌ぐことができました。最後残り1周回を残してタイムアウトになってしまいましたが、次の海南島レースでは完走を目指します」



第3回千森杯(QIANSEN TROPHY)結果
男子エリート

1位 ワイツ・ボスマンス(ベルギー、BKCPパワープラス)
2位 スティーブ・シェネル(フランス)
3位 ラドミール・シムネク(チェコ、コレンドン・クワドロ)
12位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
23位 向山浩司(SNEL CYCLOCROSS TEAM)
25位 松本駿(TEAM SCOTT)
29位 松尾純(MIYATA-MERIDA VIKING TEAM)
37位 金子楓(SNEL CYCLOCROSS TEAM)

女子エリート
1位 カタリーナ・ヤンスラビエテ(ラトビア)
2位 キャサリン・カミング
3位 アーサ・エランドソン(スウェーデン)
16位 須藤むつみ
17位 伊藤千紘 

text: abema
photo : T.YASUDA, abema


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