マーティン、ヴァンガーデレン、ブアニ、ボックマンスにリタイアを強いる大規模な落車が発生したブエルタ第8ステージ。サガンもバイクと接触して落車する中、山岳で縮小した50名の集団スプリントでヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)が勝利した。



アンダルシア州からムルシア州にブエルタは移動アンダルシア州からムルシア州にブエルタは移動 photo:Tim de Waele
ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第8ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2015第8ステージ image:Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2015第8ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2015第8ステージ image:Unipublic


逃げグループを率いるイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)逃げグループを率いるイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele開幕から1週間にわたって走り続けたアンダルシア州を離れ、ブエルタはお隣のムルシア州に舞台を移す。前半から単調な下り基調の幹線道路が続き、133km地点でスペイン第7の都市ムルシアを一旦通過。そこから登坂距離4.2km/平均勾配7.5%/高低差315mの3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョを含む周回コースを2周する。

ムルシアの街を見下ろす3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョムルシアの街を見下ろす3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョ photo:Tim de Waele2回目の3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョ通過はフィニッシュの17.3km手前であり、勝負の鍵を握ることは明白だった。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)の故郷であるムルシアから駆けつけた観客に覆われた3級山岳に、プロトンはナーバスな状態のまま突入することになる。

3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョで独走したアレックス・ハウズ(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョで独走したアレックス・ハウズ(アメリカ、キャノンデール・ガーミン) photo:Tim de Waele下り基調も手伝って50km/hオーバーのアタック合戦が繰り広げられたレース序盤。35km地点で逃げをスタートさせたのはイーリョ・ケイセ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)、ジミー・アングルヴァン(フランス、ユーロップカー)、アレックス・ハウズ(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)、トム・ファンアスブロック(ベルギー、ロットNLユンボ)、マティア・カッターネオ(イタリア、ランプレ・メリダ)、アンヘル・マドラソ(スペイン、カハルーラル)の6名だった。

集団前方で3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョをこなすアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)集団前方で3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョをこなすアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waeleいずれもすでに総合で大きくタイムを失っている選手たちによる逃げ。しかしステージ優勝に興味を示すティンコフ・サクソとジャイアント・アルペシンが集団コントロールに徹したため、タイム差は4分30秒(60km地点)を上限に縮小する。フィニッシュまで60kmを切り、3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョが近づくと早くもタイム差は2分台を割り込んだ。

フィニッシュまでおよそ50kmを残して、そして3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョの1回目の登坂を前にして、ムルシアの街中でメイン集団内に大落車が発生する。コースを完全に塞ぐ形でおよそ30名が折り重なるように落車した。

この大落車に巻き込まれた総合3位ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)はいずれも骨折によりリタイア。地面に倒れこんで動きを見せなかったクリス・ボックマンス(ベルギー、ロット・ソウダル)は顔面の外傷と骨折、脳震盪、肋骨骨折と肺の破裂という重傷を負い、同じくリタイア。ボックマンスは病院で人工的な昏睡状態に置かれているが、状態は安定しているとの情報が入っている。

大落車によって総合首位エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)や総合2位トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)がメイン集団から30秒遅れるシーンも見られたものの、重要な局面を迎える前に集団復帰。慌ただしくポジション争いを繰り広げたメイン集団は、逃げグループからわずか20秒遅れで3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョの登坂を開始した。



観客が詰めかけた3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョ観客が詰めかけた3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョ photo:Tim de Waele
並んで登りを走るエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)とクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)並んで登りを走るエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)とクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョでメイン集団を牽引するトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョでメイン集団を牽引するトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waele


3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョの下りで落車したホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョの下りで落車したホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waele荒れた路面の登りを進むうちにハウズが先頭単独に。メイン集団を振り切って頂上をクリアしたハウズだったが、テクニカルな下り区間で落車してしまう。代わって先頭に立ったマドラソも結局はメイン集団に吸収。淡々とペースを刻むメイン集団は2回目の3級山岳アルト・デラ・クレスタ・デル・ガジョに向かった。

レース終盤に逃げるアルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)らレース終盤に逃げるアルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)ら photo:Tim de Waele登りでジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)やティモ・ルーセン(オランダ、ロットNLユンボ)らが相次いでアタックを仕掛け、クリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ)、ホセ・ゴンサルヴェス(ポルトガル、カハルーラル)、セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)、ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)、ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)が合流して7名が先行する。

ティンコフ・サクソとトレックファクトリーレーシングが50名のメイン集団を率いるティンコフ・サクソとトレックファクトリーレーシングが50名のメイン集団を率いる photo:Tim de Waeleムルシア出身のロハスを先頭に頂上をクリアしたものの、1回目の下りでハウズが落車したコーナーでロハスもオーバーラン。ロハスを失った先頭グループにはメイン集団の選手たちが続々と合流し、下り区間を終えた時点で先頭は50名にまで膨れ上がっていた。

レース終盤にアタックするアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)レース終盤にアタックするアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル) photo:Tim de Waele集団スプリントに持ち込みたくないゴンサルヴェス、アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)、ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)が続いて飛び出して20秒のリード。組織的な追撃が見られないメイン集団からは断続的にカウンターアタックがかかる。

スプリントで先頭に立つヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)スプリントで先頭に立つヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレックファクトリーレーシング) photo:Tim de Waeleスプリンターとして唯一メイン集団に残り、自らがアタックする積極性も見せたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)だったが、残り10km地点で集団を追い越すニュートラルサポートのモーターバイクと接触して落車してしまう。太ももから臀部にかけて外傷を負ったサガンのチャンスは潰えた。

先頭ゴンサルヴェス、ロサダ、エリッソンドの3名は、トレックファクトリーレーシングやティンコフ・サクソ、ロット・ソウダルの集団牽引によって残り3.5kmで吸収。続くアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)によるハイスピードアタックもメイン集団を振りきれずに残り500mを切ってから吸収される。

混戦状態のまま迎えた集団スプリントで、カハルーラルのトレインの後ろから仕掛けたヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)が伸びる。2度目のブエルタ挑戦中の23歳ストゥイフェンが金星を飾った。

2009年にジュニア世界チャンピオンに輝き、ボントレガーチームから2014年にトレックファクトリーレーシングに移籍したストゥイフェン。この日の大落車に巻き込まれて手首を負傷したというが、2回の登りをなんとかこなし、チームメイトたちの働きに勝利で報いた。

「苦しい登りを何とか集団最後尾でクリア。そこからアイマル(スベルディア)とリカルド(ゾイドル)が素晴らしい働きを見せてくれた。追い風が吹いていたので、自信をもって残り350mからスプリント。カハルーラルの選手(ビルバオ)が競り合ってきたけど、さらにペダルにパワーを込め、『いけるぞ』と自分に言い聞かせてプッシュし続けたんだ」。クラシックレースも得意とするストゥイフェンがキャリア最大の勝利。トレックファクトリーレーシングに2015年のグランツール初勝利をもたらした。

総合上位陣は落車リタイアしたマーティンを除いて脱落者を出さずにフィニッシュ。チャベスがマイヨロホを守り、マーティンの従兄弟にあたるニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)が総合3位に浮上している。

選手コメントはチーム公式サイトより。



集団スプリントを制したヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)集団スプリントを制したヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレックファクトリーレーシング) photo:Tim de Waele
怒りに包まれながらフィニッシュするペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)怒りに包まれながらフィニッシュするペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleコロンビア国旗を掲げるエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)コロンビア国旗を掲げるエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waele

Summary - Stage 8 (Puebla de Don Fadrique... 投稿者 la_vuelta


ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第8ステージ結果
1位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレックファクトリーレーシング) 4h06’05”
2位 ペイオ・ビルバオ(スペイン、カハルーラル)
3位 ケヴィン・レザ(フランス、FDJ)
4位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)
5位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、MTNキュベカ)
6位 トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・ソウダル)
7位 ジュリアン・シモン(フランス、コフィディス)
8位 ピーター・セリー(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
9位 ホアホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)

65位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                   +8’01”
DNF ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)
DNF クリス・ボックマンス(ベルギー、ロット・ソウダル)
DNF ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
DNF ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)

マイヨロホ(個人総合成績)
1位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)     31h12’18”
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)         +10”
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)            +36”
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)            +49”
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)             +56”
6位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)               +57”
7位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
8位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)             +1’18”
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)   +1’19”
10位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)              +1’21”

マイヨプントス(ポイント賞)
1位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)      70pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)           61pts
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)          61pts

マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル)             13pts
2位 ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)          13pts
2位 ワルテル・ペドラサ(コロンビア、コロンビア)             7pts

マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)      8pts
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)        20pts
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)           27pts

チーム総合成績
1位 チームスカイ                           93h49’38”
2位 モビスター                             +3’59”
3位 アスタナ                              +4’04”

ステージ敢闘賞
アンヘル・マドラソ(スペイン、カハルーラル)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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