2015/08/26(水) - 07:09
ビッグネームによるアタック合戦の場となったベヘール・デ・ラ・フロンテーラの登り。ステージ2連勝を狙ったサガンを振り切って、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が登りスプリントを制した。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第4ステージに登場するカテゴリー山岳はゼロ。しかしそれがピュアスプリンター向きの平坦コースを意味しているかというと決してそうではない。205kmにわたる長い平坦路をこなした先に、カテゴリーの付いていない登りフィニッシュが待っている。
残り4km地点から急にコースは上昇を開始する。残り2km地点までに高低差280mを駆け上がり、短い下り区間を経て残り400mから再び登り勾配に。クライマーだけでなくパワーで乗り切る軽量スプリンターにチャンスがあるステージであり、前日に平坦スプリントを制したペーター・サガン(スロバキア)擁するティンコフ・サクソがレースの大部分を支配した。
12時36分にスタートが切られるとすぐ、ミカエル・ドラージュ(フランス、FDJ)、ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)、ニコラス・マース(ベルギー、エティックス・クイックステップ)、ジミー・アングルヴァン(フランス、ユーロップカー)、クリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ)、マルケル・イリサール(スペイン、トレックファクトリーレーシング)が先行を開始。今大会最長クラスの平坦ステージだけに、タイム差は最大で13分30秒まで広がった。
レース前半はオリカ・グリーンエッジが集団牽引を受け持ったものの、やがて蛍光イエローのティンコフ・サクソが集団先頭へ。気温33度前後の暑さの中、カテゴリー山岳のない平坦コースでタイム差は刻々と縮まった。
フィニッシュまで60kmを残して4分まで縮まったタイム差は、モビスターの集団牽引合流によって縮小のスピードを上げる。横風を警戒するスペインチームのペースアップによって残り45kmで早くもタイム差は1分を割り込んだ。その後メイン集団ではティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)やアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)が落車に巻き込まれたものの、両者ともに集団復帰を果たしている。
逃げ切りのチャンスが薄れた逃げグループの中からアングルヴァンとイリサールがアタックしたが、ティンコフ・サクソの徹底コントロールによって残り11kmで2人は吸収。熾烈なポジション争いの末、急な右コーナーを経てフィニッシュに至る登りが始まった。
延々と続いた平坦基調の幹線道路が残り4kmで終わりを告げ、誰もがサドルから腰を上げる急勾配の登坂が始まるとトッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・ソウダル)が先制攻撃。しかしファンデルサンドの先行は長続きせず、カウンターアタックを仕掛けたペイオ・ビルバオ(スペイン、カハルーラル)が先頭を奪った。
メイン集団はカチューシャやティンコフ・サクソ、モビスターのコントロール下に置かれ、ビッグネームたちはアシストたちに守られながら最初の登坂を冷静にこなす。白壁の町並みが美しいベヘール・デ・ラ・フロンテーラを抜け、残り2kmで一旦ピークを迎えたところでサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)が動いた。
それまで先頭を逃げていたビルバオを抜き去って、短いダウンヒルを利用してリードを広げたサンチェスにはニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)が合流。そのままサンチェスとロッシュは残り1kmアーチをハイスピードで駆け抜け、残り400mから始まる平均勾配9%の登りに突入する。
サンチェスの失速とともにロッシュが単独先頭に立ったが、後方からアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が矢のように飛んでくる。
残り100mまで先頭を守ったロッシュを勢いよく抜き去って、バルベルデとサガンが競り合いながらフィニッシュへ。「残り400mは悪夢のような苦しさだった。諦めかけた時にクライマーたちが追い抜いていったので、最後の力を振り絞って対抗した。バルベルデに食らいついたものの、追い抜く力は残っていなかった」と振り返るサガンのスプリントは及ばず、登坂力でサガンを抑え込んだバルベルデが先頭でフィニッシュラインを切った。
「インターネットでコースをチェックしていたので、どんな厳しいフィニッシュなのか分かっていた。ボーナスタイムによる総合ジャンプアップではなく、今日はステージ優勝を味わいたかったんだ」と、今シーズン7勝目を飾った35歳のバルベルデ。
アムステルゴールドレース2位、フレーシュ・ワロンヌ優勝、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝、そしてツール・ド・フランスで初総合表彰台という好成績を連発しているバルベルデは、ツールの疲労を感じさせない走りで2度目のブエルタ制覇に向けて順調な仕上がり。しかし「今日ここで勝ったからと言って自分が単独エースになるわけじゃない。ただ単に今日は自分向きのステージであっただけで、ナイロ(キンタナ)も調子は良いし、彼と自分がダブルエースであることに変わりはない。繰り返すけど、毎日様子を見ながら戦っていくよ」と念を押した。
登りで集団は縦に伸びたが、総合有力勢はタイムを失わずに同タイムでフィニッシュ。エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)が総合1位をキープしている。サガンはステージ連勝を逃したもののポイント賞ランキングのトップに立っている。
選手コメントはチーム公式サイトより。
Summary - Stage 4 (Estepona / Vejer de la... 投稿者 la_vuelta
ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第4ステージ結果
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 5h07’30”
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
4位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)
5位 ホセ・ゴンサルヴェス(ポルトガル、カハルーラル)
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
7位 ジュリアン・シモン(フランス、コフィディス)
8位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
9位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
10位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
61位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +1’39”
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) 13h11’31”
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +05”
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) +15”
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン) +24”
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +28”
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +35”
7位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +36”
8位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
9位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +40”
10位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +47”
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 45pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 35pts
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) 31pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル) 13pts
2位 ワルテル・ペドラサ(コロンビア、コロンビア) 7pts
3位 ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、MTNキュベカ) 7pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) 9pts
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) 13pts
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) 15pts
チーム総合成績
1位 チームスカイ 39h45’44”
2位 アスタナ +21”
3位 モビスター +2’24”
ステージ敢闘賞
マルケル・イリサール(スペイン、トレックファクトリーレーシング)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
ブエルタ・ア・エスパーニャ第4ステージに登場するカテゴリー山岳はゼロ。しかしそれがピュアスプリンター向きの平坦コースを意味しているかというと決してそうではない。205kmにわたる長い平坦路をこなした先に、カテゴリーの付いていない登りフィニッシュが待っている。
残り4km地点から急にコースは上昇を開始する。残り2km地点までに高低差280mを駆け上がり、短い下り区間を経て残り400mから再び登り勾配に。クライマーだけでなくパワーで乗り切る軽量スプリンターにチャンスがあるステージであり、前日に平坦スプリントを制したペーター・サガン(スロバキア)擁するティンコフ・サクソがレースの大部分を支配した。
12時36分にスタートが切られるとすぐ、ミカエル・ドラージュ(フランス、FDJ)、ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)、ニコラス・マース(ベルギー、エティックス・クイックステップ)、ジミー・アングルヴァン(フランス、ユーロップカー)、クリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ)、マルケル・イリサール(スペイン、トレックファクトリーレーシング)が先行を開始。今大会最長クラスの平坦ステージだけに、タイム差は最大で13分30秒まで広がった。
レース前半はオリカ・グリーンエッジが集団牽引を受け持ったものの、やがて蛍光イエローのティンコフ・サクソが集団先頭へ。気温33度前後の暑さの中、カテゴリー山岳のない平坦コースでタイム差は刻々と縮まった。
フィニッシュまで60kmを残して4分まで縮まったタイム差は、モビスターの集団牽引合流によって縮小のスピードを上げる。横風を警戒するスペインチームのペースアップによって残り45kmで早くもタイム差は1分を割り込んだ。その後メイン集団ではティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)やアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)が落車に巻き込まれたものの、両者ともに集団復帰を果たしている。
逃げ切りのチャンスが薄れた逃げグループの中からアングルヴァンとイリサールがアタックしたが、ティンコフ・サクソの徹底コントロールによって残り11kmで2人は吸収。熾烈なポジション争いの末、急な右コーナーを経てフィニッシュに至る登りが始まった。
延々と続いた平坦基調の幹線道路が残り4kmで終わりを告げ、誰もがサドルから腰を上げる急勾配の登坂が始まるとトッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・ソウダル)が先制攻撃。しかしファンデルサンドの先行は長続きせず、カウンターアタックを仕掛けたペイオ・ビルバオ(スペイン、カハルーラル)が先頭を奪った。
メイン集団はカチューシャやティンコフ・サクソ、モビスターのコントロール下に置かれ、ビッグネームたちはアシストたちに守られながら最初の登坂を冷静にこなす。白壁の町並みが美しいベヘール・デ・ラ・フロンテーラを抜け、残り2kmで一旦ピークを迎えたところでサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)が動いた。
それまで先頭を逃げていたビルバオを抜き去って、短いダウンヒルを利用してリードを広げたサンチェスにはニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)が合流。そのままサンチェスとロッシュは残り1kmアーチをハイスピードで駆け抜け、残り400mから始まる平均勾配9%の登りに突入する。
サンチェスの失速とともにロッシュが単独先頭に立ったが、後方からアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が矢のように飛んでくる。
残り100mまで先頭を守ったロッシュを勢いよく抜き去って、バルベルデとサガンが競り合いながらフィニッシュへ。「残り400mは悪夢のような苦しさだった。諦めかけた時にクライマーたちが追い抜いていったので、最後の力を振り絞って対抗した。バルベルデに食らいついたものの、追い抜く力は残っていなかった」と振り返るサガンのスプリントは及ばず、登坂力でサガンを抑え込んだバルベルデが先頭でフィニッシュラインを切った。
「インターネットでコースをチェックしていたので、どんな厳しいフィニッシュなのか分かっていた。ボーナスタイムによる総合ジャンプアップではなく、今日はステージ優勝を味わいたかったんだ」と、今シーズン7勝目を飾った35歳のバルベルデ。
アムステルゴールドレース2位、フレーシュ・ワロンヌ優勝、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝、そしてツール・ド・フランスで初総合表彰台という好成績を連発しているバルベルデは、ツールの疲労を感じさせない走りで2度目のブエルタ制覇に向けて順調な仕上がり。しかし「今日ここで勝ったからと言って自分が単独エースになるわけじゃない。ただ単に今日は自分向きのステージであっただけで、ナイロ(キンタナ)も調子は良いし、彼と自分がダブルエースであることに変わりはない。繰り返すけど、毎日様子を見ながら戦っていくよ」と念を押した。
登りで集団は縦に伸びたが、総合有力勢はタイムを失わずに同タイムでフィニッシュ。エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)が総合1位をキープしている。サガンはステージ連勝を逃したもののポイント賞ランキングのトップに立っている。
選手コメントはチーム公式サイトより。
Summary - Stage 4 (Estepona / Vejer de la... 投稿者 la_vuelta
ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第4ステージ結果
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 5h07’30”
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
4位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)
5位 ホセ・ゴンサルヴェス(ポルトガル、カハルーラル)
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
7位 ジュリアン・シモン(フランス、コフィディス)
8位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
9位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
10位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
61位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +1’39”
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) 13h11’31”
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) +05”
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) +15”
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン) +24”
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +28”
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +35”
7位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +36”
8位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
9位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +40”
10位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +47”
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 45pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 35pts
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) 31pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル) 13pts
2位 ワルテル・ペドラサ(コロンビア、コロンビア) 7pts
3位 ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、MTNキュベカ) 7pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) 9pts
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) 13pts
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) 15pts
チーム総合成績
1位 チームスカイ 39h45’44”
2位 アスタナ +21”
3位 モビスター +2’24”
ステージ敢闘賞
マルケル・イリサール(スペイン、トレックファクトリーレーシング)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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