2015/08/07(金) - 18:08
ツール・ド・フランスを走った全22チームのバイクを、2チームごとに10回にわけて紹介。第2弾は、クリス・フルーム(イギリス)が2年ぶり2度目の個人総合優勝に輝いた「チームスカイ」と、FSAのプロトタイプコンポーネントや新型エアロバイクVENGE ViAS話題を呼んだ「エティックス・クイックステップ」のチームバイクを紹介します。
チームスカイ【ピナレロ DOGMA F8、DOGMA K8-S、BOLIDE(TTバイク)】
終始安定した強さで、2年ぶり2度目の個人総合優勝を果たしたクリス・フルーム(イギリス)。そして、ゲラント・トーマス(イギリス)ら強力なアシスト勢がメインバイクとして駆ったのが、誕生したピナレロのハイエンドモデル「DOGMA F8」。ジャガーとの共同開発によってエアロダイナミクスを追求したことが特徴の1台だ。
マイヨジョーヌを獲得して以降、自身の生まれ故郷であるアフリカの野生動物保護活動の認知拡大のために描かれたサイのグラフィックが特徴的な「RHINO」など、フルームには3種類の特別カラーが供給された。そして2年連続のイギリス王者に輝いたピーター・ケノーは引き続きナショナルチャンピオンカラーのバイクを使用する。
ペダルを含め、コンポーネントはシマノ DURA-ACE Di2で統一。パワーメーターには左クランクアーム裏側に計測ユニットを装着したステージズパワーを組み合わせており、一部ライダーにはプロトタイプモデルが投入されたされた模様だ。そして、フルームは引き続き非真円チェーンリング「オーシンメトリック」を、ロゴを隠して使用する。
ホイールはコンポーネントと同じくシマノDURA-ACEグレードのWH-9000シリーズ。山岳ステージではC24とC35を、スプリントステージではC50をメインに、コースプロファイルに応じて3種類のリムハイトを使い分けた。タイヤは、サプライヤーが今季よりコンチネンタルとなり、市販品よりもソフトなコンパウンドを使用したプロ供給モデル「COMPETITION PROLTD」としている。
ハンドル及びステムはPRO製。ハンドルはアルミ製のVIBE 7Sをベースとしたチームスカイ専用品を使用する。ステムは4つのボルトでハンドルをクランプする旧型のVIBE 7Sをベースとしたプロ供給専用品で、長さが1mm刻みで揃えられている点も市販品と異なるポイント。レオポルド・ケーニッヒ(チェコ)は124mmをチョイスし、細かくライディングポジションを調整していた。
サドルのサプライヤーはフィジーク。フルーム、ケノー、ケーニッヒはAntares、トーマスは豊富なパッド量が特徴的なトライアスロン向けのArione Tri、リッチー・ポート(オーストラリア)はArioneと各モデルを選手の好みによって使い分けている。
また、石畳が登場した第4ステージでは、春先の北のクラシックで投入された小型軽量サスペンション搭載のエンデュランスモデル「DOGMA K8-S」を使用。セットアップも通常仕様とはやや異なり、タイヤがコットンケーシング採用のFMB Paris Roubaixとされている。なお、幅はパリ~ルーベの歳と同じく27mmであった。
TTバイクは、DOGMAシリーズと同じくジャガーとの共同開発によって誕生した「BOLIDE」。オーストラリアTT王者のポートはグリーンとイエローのストライプがあしらわれたナショナルチャンピオンカラーを使用する。ホイールはPROで、フロントが昨年のツールより開発を進めている3スポーク仕様のバトン、リアがディスクホイールという組み合わせ。なお、素材は前後とも共通で、大きな網目が特徴的なTeXtreamカーボンだ。
ハンドルはピナレロが製造するBOLIDE専用品。ただし、フルームは突き出し量の調整機構を廃し、高さ調整用のスペーサーを一体化したDHバーを使用。恐らく軽量化と空力性能を追求し、フルームのライディングポジションに合わせて作られたワンオフ品だと考えられる。
エティックス・クイックステップ
【スペシャライズド S-WORKS VENGE ViAS、VENGE、TARMAC、ROUBAIX、SHIV TT(TTバイク)】
トニ・マルティン(ドイツ)、ゼネク・スティバル(チェコ)、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)がそれぞれステージ優勝を飾り、マルティンがマイヨジョーヌ獲得とツール序盤で活躍を魅せたエティックス・クイックステップ。今大会では機材面でも大きな注目を集めた。
まずは、スペシャライズドの新型エアロバイク「S-WORKS VENGE ViAS」。ブレーキ、ハンドル、ステムのインテグレーテッド設計によりケーブル類を全てフレーム内に内蔵し、エアロダイナミクスを徹底的に追求した1台で、カヴェンディッシュの第6ステージ優勝に貢献している。
ただし、スポンサードの関係などからアッセンブルは市販品とやや異なる。ホイールはロヴァ―ルで、市販の完成車ではS-WORKS VENGE ViAS用に設計された「Rapide CLX 64」がセットとなっているものの、カヴェンディッシュのバイクには普段から使用する「Rapide CLX 60」が取り付けられていた。クランクはサポートを受けるFSAでも、スペシャライズド純正のS-Works Fact Carbonでもなく、SRMのDURA-ACE4アームタイプを使用。これはスプリント中のチェーン落ちを防ぐための選択であり、カヴェンディッシュのこだわりの1つである。
なお、カヴェンディッシュはVENGE ViASとあわせて従来モデルのVENGEも使用し、主にスプリントステージでは新型を、登りの多いステージでは旧型を選択。また、現世界王者のミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)ら全ライダーが「VENGE」、オールラウンドモデル「TARMAC」や、エンデュランスモデル「ROUBAIX」(石畳が登場した第4ステージのみ)をコースプロファイルに応じて使い分けた。
そして、もう1つの話題が今シーズン序盤より噂され、2回目の休息日にベールを脱いだFSAの電動コンポーネントである。ハンドル周りにブレーキ以外の配線が見当たらないことから、前後のディレーラーを司るジャンクションと変速レバーとの通信を無線化した「セミワイヤレス方式」という説が強力だが、FSAから公式な声明はない。
Fディレーラーのアクチュエーターがむき出しになっていたり、レバーにブラケットが被せられていない点などから察するに、開発途上にあり、市販化はだいぶ先になると考えられる。なお、エティックス・クイックステップのライダーが実際にレースで使用したのかは不明である。
TTバイクはロングランモデルの「S-Works Shiv TT」。今回紹介するスペシャルカラーのトニ・マルティンのマシンには、TTのスペシャリストらしい多くのこだわりが詰まっている。まず、チェーンリングは58Tという大きな歯数としており、FSAのデカールがはられているものの、ラインアップに無いことからワンオフで製造されたものか、社外製であると推測される。
サドルには、廃盤となって久しいスペシャライズド「TTS」を選択。滑り止めのための青いテープを貼ることで安定性を高め、ペダリングロスの低減を図っている。ハンドルのベースバーの突き出し部分には、滑り止め材を塗布している。
ロードとは異なりホイールは前後ともヴィジョン製。マルティンのバイクはフロントが81mmハイトの「METRON 81」、リアがMETRON 81にカーボン製カウルを貼り付けた「METRON Disc」という組み合わせであった。タイヤは恐らく前後ともにクリンチャーで、コットンケーシングの採用により転がり抵抗の低減を図った「S-WORKS TURBO COTTON」だ。
photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
チームスカイ【ピナレロ DOGMA F8、DOGMA K8-S、BOLIDE(TTバイク)】
終始安定した強さで、2年ぶり2度目の個人総合優勝を果たしたクリス・フルーム(イギリス)。そして、ゲラント・トーマス(イギリス)ら強力なアシスト勢がメインバイクとして駆ったのが、誕生したピナレロのハイエンドモデル「DOGMA F8」。ジャガーとの共同開発によってエアロダイナミクスを追求したことが特徴の1台だ。
マイヨジョーヌを獲得して以降、自身の生まれ故郷であるアフリカの野生動物保護活動の認知拡大のために描かれたサイのグラフィックが特徴的な「RHINO」など、フルームには3種類の特別カラーが供給された。そして2年連続のイギリス王者に輝いたピーター・ケノーは引き続きナショナルチャンピオンカラーのバイクを使用する。
ペダルを含め、コンポーネントはシマノ DURA-ACE Di2で統一。パワーメーターには左クランクアーム裏側に計測ユニットを装着したステージズパワーを組み合わせており、一部ライダーにはプロトタイプモデルが投入されたされた模様だ。そして、フルームは引き続き非真円チェーンリング「オーシンメトリック」を、ロゴを隠して使用する。
ホイールはコンポーネントと同じくシマノDURA-ACEグレードのWH-9000シリーズ。山岳ステージではC24とC35を、スプリントステージではC50をメインに、コースプロファイルに応じて3種類のリムハイトを使い分けた。タイヤは、サプライヤーが今季よりコンチネンタルとなり、市販品よりもソフトなコンパウンドを使用したプロ供給モデル「COMPETITION PROLTD」としている。
ハンドル及びステムはPRO製。ハンドルはアルミ製のVIBE 7Sをベースとしたチームスカイ専用品を使用する。ステムは4つのボルトでハンドルをクランプする旧型のVIBE 7Sをベースとしたプロ供給専用品で、長さが1mm刻みで揃えられている点も市販品と異なるポイント。レオポルド・ケーニッヒ(チェコ)は124mmをチョイスし、細かくライディングポジションを調整していた。
サドルのサプライヤーはフィジーク。フルーム、ケノー、ケーニッヒはAntares、トーマスは豊富なパッド量が特徴的なトライアスロン向けのArione Tri、リッチー・ポート(オーストラリア)はArioneと各モデルを選手の好みによって使い分けている。
また、石畳が登場した第4ステージでは、春先の北のクラシックで投入された小型軽量サスペンション搭載のエンデュランスモデル「DOGMA K8-S」を使用。セットアップも通常仕様とはやや異なり、タイヤがコットンケーシング採用のFMB Paris Roubaixとされている。なお、幅はパリ~ルーベの歳と同じく27mmであった。
TTバイクは、DOGMAシリーズと同じくジャガーとの共同開発によって誕生した「BOLIDE」。オーストラリアTT王者のポートはグリーンとイエローのストライプがあしらわれたナショナルチャンピオンカラーを使用する。ホイールはPROで、フロントが昨年のツールより開発を進めている3スポーク仕様のバトン、リアがディスクホイールという組み合わせ。なお、素材は前後とも共通で、大きな網目が特徴的なTeXtreamカーボンだ。
ハンドルはピナレロが製造するBOLIDE専用品。ただし、フルームは突き出し量の調整機構を廃し、高さ調整用のスペーサーを一体化したDHバーを使用。恐らく軽量化と空力性能を追求し、フルームのライディングポジションに合わせて作られたワンオフ品だと考えられる。
エティックス・クイックステップ
【スペシャライズド S-WORKS VENGE ViAS、VENGE、TARMAC、ROUBAIX、SHIV TT(TTバイク)】
トニ・マルティン(ドイツ)、ゼネク・スティバル(チェコ)、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)がそれぞれステージ優勝を飾り、マルティンがマイヨジョーヌ獲得とツール序盤で活躍を魅せたエティックス・クイックステップ。今大会では機材面でも大きな注目を集めた。
まずは、スペシャライズドの新型エアロバイク「S-WORKS VENGE ViAS」。ブレーキ、ハンドル、ステムのインテグレーテッド設計によりケーブル類を全てフレーム内に内蔵し、エアロダイナミクスを徹底的に追求した1台で、カヴェンディッシュの第6ステージ優勝に貢献している。
ただし、スポンサードの関係などからアッセンブルは市販品とやや異なる。ホイールはロヴァ―ルで、市販の完成車ではS-WORKS VENGE ViAS用に設計された「Rapide CLX 64」がセットとなっているものの、カヴェンディッシュのバイクには普段から使用する「Rapide CLX 60」が取り付けられていた。クランクはサポートを受けるFSAでも、スペシャライズド純正のS-Works Fact Carbonでもなく、SRMのDURA-ACE4アームタイプを使用。これはスプリント中のチェーン落ちを防ぐための選択であり、カヴェンディッシュのこだわりの1つである。
なお、カヴェンディッシュはVENGE ViASとあわせて従来モデルのVENGEも使用し、主にスプリントステージでは新型を、登りの多いステージでは旧型を選択。また、現世界王者のミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)ら全ライダーが「VENGE」、オールラウンドモデル「TARMAC」や、エンデュランスモデル「ROUBAIX」(石畳が登場した第4ステージのみ)をコースプロファイルに応じて使い分けた。
そして、もう1つの話題が今シーズン序盤より噂され、2回目の休息日にベールを脱いだFSAの電動コンポーネントである。ハンドル周りにブレーキ以外の配線が見当たらないことから、前後のディレーラーを司るジャンクションと変速レバーとの通信を無線化した「セミワイヤレス方式」という説が強力だが、FSAから公式な声明はない。
Fディレーラーのアクチュエーターがむき出しになっていたり、レバーにブラケットが被せられていない点などから察するに、開発途上にあり、市販化はだいぶ先になると考えられる。なお、エティックス・クイックステップのライダーが実際にレースで使用したのかは不明である。
TTバイクはロングランモデルの「S-Works Shiv TT」。今回紹介するスペシャルカラーのトニ・マルティンのマシンには、TTのスペシャリストらしい多くのこだわりが詰まっている。まず、チェーンリングは58Tという大きな歯数としており、FSAのデカールがはられているものの、ラインアップに無いことからワンオフで製造されたものか、社外製であると推測される。
サドルには、廃盤となって久しいスペシャライズド「TTS」を選択。滑り止めのための青いテープを貼ることで安定性を高め、ペダリングロスの低減を図っている。ハンドルのベースバーの突き出し部分には、滑り止め材を塗布している。
ロードとは異なりホイールは前後ともヴィジョン製。マルティンのバイクはフロントが81mmハイトの「METRON 81」、リアがMETRON 81にカーボン製カウルを貼り付けた「METRON Disc」という組み合わせであった。タイヤは恐らく前後ともにクリンチャーで、コットンケーシングの採用により転がり抵抗の低減を図った「S-WORKS TURBO COTTON」だ。
photo:Makoto.AYANO
text:Yuya.Yamamoto
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