2015/07/23(木) - 10:00
休息日明けのアルプス難関ステージ。「信じられないほど苦しめられた。今の気持ちを文章にすることはとてもできない」とは、歓喜の勝利を飾ったサイモン・ゲシュケ。リタイアしたヴァンガーデレンや、屈強な強さを見せたフルームらのコメントを紹介します。
独走勝利を飾ったサイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
表彰台に上がるサイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) photo:CorVos
「ジョン(デゲンコルブ)と一緒に逃げたんだ。逃げグループはとても強力だった」 photo:CorVos
独走で2級山岳プラ・ルーにフィニッシュするサイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waele調子は特別良くなかったけれど、ジョン(デゲンコルブ)と一緒に逃げたんだ。逃げグループはとても強力だった。中間スプリントの後にアタックして、アドバンテージを持ちながら最後の山岳を登り始めた。ずっと1分半差をキープできていたから、そのまま後続の様子を見ようと考えていた。下りがとてもテクニカルだと知っていたし、僕はものすごく速く下ることができた。登りでは差をキープするために持てる力の全てを尽くしたし、信じられないほど苦しめられたよ。でも今の気持ちを文章にすることはとてもできない。
15歳のときから夢見ていたことが叶った。本当にやっと、という気分。全く信じることができないよ。もし総合優勝したら髭を剃るつもりだったけれど、ステージ優勝だから今度におあずけだ。
自分はスプリンターでもクライマーでもない。僕は第1週目でアシストとして働き、2、3週目では自分のチャンスを見いだすべくツールメンバーに選出された。石畳や集団スプリントでジョンのために働くことと、総合で10番手を目指すワレン(バーギル)のために働くことはまったく内容が違ってくる。マルセル・キッテルのいないツールでチームが結果を残すのは簡単ではないけど、希望は失わなかった。でもまさか自分がステージ優勝第1号になるとはチームメイトたちは予想していなかったと思う。
仮にポートやピノ、タランスキーと登坂勝負をしたら負けていた。だからアロス峠の登りが本格的に始まる前に仕掛けた。自分が勝つためにはこうするしかなかった。そして勝ったんだ。
体調不良によりリタイアしたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
チームメイトに押されながら走るティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) photo:Tim de Waeleポディウムを狙ってツール・ド・フランスを戦っていた次の瞬間に、チームカーに乗っているというのは本当に辛い。チームメイトには申し訳なさで顔もまともに見れないし、妻には何が起こったかを連絡するのも本当に辛かった。色々な感情がこみあげてきたよ。
13ステージの後に軽い風邪をひいてしまっていたんだ。しばらくはだましだましやってきた。少し鼻水が出たくらいで、大きな問題ではなかったから。でも、だんだんと症状は悪化してきた。昨日の休息日には発熱もあったし、悪寒がするほどだった。今朝起きた時にヤマは越したと感じたんだ。実際、普段通りにレースに出れそうな感覚はあったんだ。
でも、実際走りだしてみると身体はすっからかんで、満足に戦うことが出来なかった。スタートを切ってすぐ、”これは良くない事態だぞ”と感じたけど、出来れば不調を隠したままもしかしたら調子が回復するかもと思って走り続けた。でも、そうはならなかった。心の底から残念だよ。
落車して2分14秒を失ったアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
パンクのロスを取り戻しに掛かるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:CorVos
アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がフルームから2分14秒遅れでフィニッシュ photo:CorVos
アロス峠の下りを攻めるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:CorVosスリップ落車をしてしまった。バイクを修理しようと思ったけれど上手くいかず、ペーター(サガン)のバイクを借りて走り出した。下りではできる限り飛ばしたけれど、下り切ったところで自分のバイクへと再び交換せざるを得なかった。自転車競技とはこんなものだ。上手くいくときもあれば、そうでない時もある。でも今一番に大切なことは、しっかりと休養を取ることだ。
バイクを差し出したペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
表彰台で笑顔を見せるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:CorVosアルベルトがなぜ落車したか良く分からない。後ろからやってくる彼をサポートしようと思い、アロス峠で待っていたんだ。でもニーバリが下りでアタックを開始したせいで集団内の緊張感がとても張りつめていた。その後の2,3kmでアルベルトは落車してしまった。
マイヨジョーヌを堅持したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
ティージェイのリタイア、コンタドールの落車、そして様々な作戦。今日はいろいろなことが序盤から起こっていた。総合勢が最初の50〜60kmから動き出していたので、ほぼ全てにおいて全力で走っていたよ。ナイロも自分を試してきたし、挑んできた。特に最終盤ではその意気込みを強く感じた。でも調子が良く、それらの動きに全て対応することができた。残る数日も上手く走り切ることができればと思う。
チームは全員が全力を尽くしてくれたし、彼らに感謝しなければならないね。リッチーは自分のステージ優勝を犠牲にして逃げグループからアシストのために戻ってきてくれた。他のライバル勢には、もっと自分に対して攻撃してくるものと期待しているよ。まだ厳しいステージは残っているし、モビスターは間違いなくしかけてくるだろう。
ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
アロス峠の下りは攻めずに走った。下りでクラッシュするのを見てきたから、バルベルデと僕は出来るだけ安全に下るようにしたんだ。表彰台とチーム総合成績を守るという意味では、今日の結果に満足しているよ。
ゴール前で競り合うナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)とクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos
レース中、コンタドールのアタックを吸収することにしたのは、彼がバルベルデの表彰台を脅かす存在だったから。今日はほとんど100%の力を出し切ったよ。フルームからタイムを奪うことはできなかったけど、もっと自分に合ったステージがいくつか続く。もっと、長くて厳しい登りが僕らを待っている。強烈なアタックを仕掛けるつもりだよ。僕らのチームは強力なんだ。まだマイヨ・ジョーヌを諦めてはいないさ。
アタックが実らなかったヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:CorVos
マティアス・フランク(スイス、IAMサイクリング)と抜け出すティボー・ピノ(フランス、FDJ) photo:CorVos下りでアタックしたヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
フルームは本当に強い。彼は余裕を持って状況をコントロールできていた。自分やキンタナ、バルベルデと代わる代わるアタックをしたけれど、フルームは彼自身や、チームメイトを使って追いかけてきた。彼を倒すのはほぼ不可能に近い。僕らはこれ以上のことができないよ。今日は僕の脚もチームとしてもよく動くことができていた。まだ2日間厳しいステージが残っているのでアタックを続けていきたいと思う。
ゲシュケを追い、落車してしまったティボー・ピノ(フランス、FDJ)
うまくいかない時はうまくいかない。囲まれてしまい落車してしまった。最悪のタイミングで転だのでとても残念に思っている土曜日まで毎日アタックし続ける。脚自体の調子は良いんだ。昨年は上手く立ち回れたけれど、今年は状況がよろしくない。でも自転車競技は美しく、まだチャンスは残っている。フラストレーションが溜まっているけれど、このままパリまで行きたくない。まだまだチャレンジして勝機を狙っていく。
リタイアしたミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)
ツールのような特別なレースから去ることになってしまうのは本当に悲しい。今日は出来れば逃げに乗りたかったん。リゴベルト・ウランと一緒にレース開始直後から何回かアタックを仕掛けた。でも、突然身体中から力が抜けてしまったんだ。最初の登りで集団から遅れてしまった。調子が戻ることを願って戦い続けたんだけど、状況は変わらなかった。
中間スプリントポイントまでは我慢したけれど、そこが限界だった。僕のエネルギー貯蔵庫は空っぽになっていたよ。本当に辛い瞬間だ。ツールをリタイアしたいなんて少しも思わなかった。特にアルカンシェルをまとって走るツールでは。
チームメイト達はこの2週間、僕に素晴らしいサポートを与えてくれた。彼らに感謝を。僕らはみんなで、素晴らしい時間と結果を残すことが出来た。僕は、回復に専念しないといけない。そして、次のレースに向けて準備を始める必要がある。僕を応援してくれた皆にありがとうと言いたいね。チームの皆がベストを尽くして、新たな勝利をこのツールで掴むことを期待しているよ。
各選手のコメントはチーム公式サイト、レース公式サイトより。
text:Naoki YASUOKA,So.Isobe
photo:CorVos,Tim de Waele
独走勝利を飾ったサイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
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15歳のときから夢見ていたことが叶った。本当にやっと、という気分。全く信じることができないよ。もし総合優勝したら髭を剃るつもりだったけれど、ステージ優勝だから今度におあずけだ。
自分はスプリンターでもクライマーでもない。僕は第1週目でアシストとして働き、2、3週目では自分のチャンスを見いだすべくツールメンバーに選出された。石畳や集団スプリントでジョンのために働くことと、総合で10番手を目指すワレン(バーギル)のために働くことはまったく内容が違ってくる。マルセル・キッテルのいないツールでチームが結果を残すのは簡単ではないけど、希望は失わなかった。でもまさか自分がステージ優勝第1号になるとはチームメイトたちは予想していなかったと思う。
仮にポートやピノ、タランスキーと登坂勝負をしたら負けていた。だからアロス峠の登りが本格的に始まる前に仕掛けた。自分が勝つためにはこうするしかなかった。そして勝ったんだ。
体調不良によりリタイアしたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
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13ステージの後に軽い風邪をひいてしまっていたんだ。しばらくはだましだましやってきた。少し鼻水が出たくらいで、大きな問題ではなかったから。でも、だんだんと症状は悪化してきた。昨日の休息日には発熱もあったし、悪寒がするほどだった。今朝起きた時にヤマは越したと感じたんだ。実際、普段通りにレースに出れそうな感覚はあったんだ。
でも、実際走りだしてみると身体はすっからかんで、満足に戦うことが出来なかった。スタートを切ってすぐ、”これは良くない事態だぞ”と感じたけど、出来れば不調を隠したままもしかしたら調子が回復するかもと思って走り続けた。でも、そうはならなかった。心の底から残念だよ。
落車して2分14秒を失ったアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
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バイクを差し出したペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
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マイヨジョーヌを堅持したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
ティージェイのリタイア、コンタドールの落車、そして様々な作戦。今日はいろいろなことが序盤から起こっていた。総合勢が最初の50〜60kmから動き出していたので、ほぼ全てにおいて全力で走っていたよ。ナイロも自分を試してきたし、挑んできた。特に最終盤ではその意気込みを強く感じた。でも調子が良く、それらの動きに全て対応することができた。残る数日も上手く走り切ることができればと思う。
チームは全員が全力を尽くしてくれたし、彼らに感謝しなければならないね。リッチーは自分のステージ優勝を犠牲にして逃げグループからアシストのために戻ってきてくれた。他のライバル勢には、もっと自分に対して攻撃してくるものと期待しているよ。まだ厳しいステージは残っているし、モビスターは間違いなくしかけてくるだろう。
ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
アロス峠の下りは攻めずに走った。下りでクラッシュするのを見てきたから、バルベルデと僕は出来るだけ安全に下るようにしたんだ。表彰台とチーム総合成績を守るという意味では、今日の結果に満足しているよ。
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フルームは本当に強い。彼は余裕を持って状況をコントロールできていた。自分やキンタナ、バルベルデと代わる代わるアタックをしたけれど、フルームは彼自身や、チームメイトを使って追いかけてきた。彼を倒すのはほぼ不可能に近い。僕らはこれ以上のことができないよ。今日は僕の脚もチームとしてもよく動くことができていた。まだ2日間厳しいステージが残っているのでアタックを続けていきたいと思う。
ゲシュケを追い、落車してしまったティボー・ピノ(フランス、FDJ)
うまくいかない時はうまくいかない。囲まれてしまい落車してしまった。最悪のタイミングで転だのでとても残念に思っている土曜日まで毎日アタックし続ける。脚自体の調子は良いんだ。昨年は上手く立ち回れたけれど、今年は状況がよろしくない。でも自転車競技は美しく、まだチャンスは残っている。フラストレーションが溜まっているけれど、このままパリまで行きたくない。まだまだチャレンジして勝機を狙っていく。
リタイアしたミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)
ツールのような特別なレースから去ることになってしまうのは本当に悲しい。今日は出来れば逃げに乗りたかったん。リゴベルト・ウランと一緒にレース開始直後から何回かアタックを仕掛けた。でも、突然身体中から力が抜けてしまったんだ。最初の登りで集団から遅れてしまった。調子が戻ることを願って戦い続けたんだけど、状況は変わらなかった。
中間スプリントポイントまでは我慢したけれど、そこが限界だった。僕のエネルギー貯蔵庫は空っぽになっていたよ。本当に辛い瞬間だ。ツールをリタイアしたいなんて少しも思わなかった。特にアルカンシェルをまとって走るツールでは。
チームメイト達はこの2週間、僕に素晴らしいサポートを与えてくれた。彼らに感謝を。僕らはみんなで、素晴らしい時間と結果を残すことが出来た。僕は、回復に専念しないといけない。そして、次のレースに向けて準備を始める必要がある。僕を応援してくれた皆にありがとうと言いたいね。チームの皆がベストを尽くして、新たな勝利をこのツールで掴むことを期待しているよ。
各選手のコメントはチーム公式サイト、レース公式サイトより。
text:Naoki YASUOKA,So.Isobe
photo:CorVos,Tim de Waele
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