2015/07/09(木) - 05:29
雨が降り、風が吹き、落車が多発したツール・ド・フランス第5ステージ。実質的に今大会初めてピュアスプリンターが勢ぞろいした大集団スプリントでアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)が2勝目をマークした。
ツール・ド・フランス第5ステージはフランス北部の丘陵地帯を走る。コースプロフィールは細かく波打っているが、スプリンターが遅れるような登りはゼロ。海風、激坂、石畳が続いたツールは5日目にしてようやく平穏を取り戻す、はずだった。
大集団スプリントに持ち込まれる公算が高いステージだが、総合首位のトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が「雨と風、そして落車の連続で、マイヨジョーヌを楽しむ瞬間は全くなかった」と振り返るほどレースは序盤から荒れた。
気温16度の冷たい雨が降るスタート地点を離れてすぐ、11km地点でこの日最初の大落車が発生する。チームメイト4名とともに落車に巻き込まれたナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)は救急車で搬送され、一度もそのスプリント力を発揮することなくツールを去っている。
点在する第1次世界大戦の戦没者墓地を通過するうちに、先頭ではピエールリュック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)が単独逃げを開始する。大雨と曇りを交互に繰り返し、風が常に吹き付けるフランス北部の丘陵地帯でペリションは90kmにわたって独走した。
集団内では断続的に落車が発生し、グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)やバウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)、ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)、そしてグライペルらが地面に叩きつけられた。いずれの選手も再スタートを切ったものの、ブアニに続いてジャック・バウアー(ニュージーランド、キャノンデール・ガーミン)がリタイアを余儀なくされている。
レース中盤89.5km地点のスプリントポイントはペリション、グライペル、デゲンコルブ、カヴェンディッシュの順に通過。しばらくして先頭ペリションは捕らえられ、再びメイン集団は横風によってナーバスな状態となる。
落車と横風によって集団分断と集団合流を繰り返し、残り25kmで発生した大落車にはティボー・ピノ(フランス、FDJ)を含む30名が巻き込まれた。ピノはチームメイトの力を借りて無事に集団に復帰したが、横風区間で遅れたライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)やウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)、リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)を含む第2集団が復帰することはなかった。
荘厳なノートルダム大聖堂が名物のアミアンに先頭集団内でたどり着いた選手は100名弱。マイヨジョーヌのトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)もカヴェンディッシュのためのリードアウトに加わり、残り3kmを高速で駆け抜ける。
しかしエティックス・クイックステップのトレインは完璧に機能せず、向かい風の中でスプリントが始まる。先行したカヴェンディッシュやアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)、アルノー・デマール(フランス、FDJ)を追撃したのはマイヨヴェールのグライペル。スピードに乗った状態からさらにもう一段加速するスプリントでグライペルが先頭に立ち、マイヨブランを着るペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)を振り切った。
グライペルはこの日と同様に雨と風、落車が目立った第2ステージでも勝利しており、大会5日目にして早くも2勝目。ポイント賞ランキングでトップを快走するグライペルは「今日はどのチームもリードアウトトレインを組めないままスプリントが始まった。残り300mから左のラインでスプリントを仕掛け、幸い最後まで踏み抜く力があった。すでにステージ2勝目でマイヨヴェールもキープ。とても満足しているよ」とコメントしている。
追い込みがわずかに届かなかったサガンは今大会3度目のトップ3フィニッシュ(第2ステージ2位、第4ステージ3位)。「残り200mの時点でかなり後ろだったので、2位という結果は決して悪くない。それにアルベルト(コンタドール)を安全にフィニッシュまで連れて行くことが出来たので満足だ」と結果を前向きに捉えている。
翌日の第6ステージはアブヴィルからル・アーヴルまでの191.5km。英仏海峡に面した海岸線を走る一日で、再び海風が集団にダメージを与える可能性も。残り1.5kmからはアングヴィルの登り(850m/7%)が待ち構えている。
ツール・ド・フランス2015第5ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 4h39’00”
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)
4位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)
6位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
7位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
8位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
9位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)
10位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 12h40’26”
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +12”
3位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +25”
4位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) +38”
5位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) +39”
6位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) +40”
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ) +46”
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) +48”
9位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +1’15”
10位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) +1’16”
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 151pts
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 119pts
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) 89pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 2pts
2位 ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング) 1pt
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) 1pt
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 17h19’59”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +46”
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +1’35”
チーム総合成績
1位 BMCレーシング 51h59’55”
2位 エティックス・クイックステップ +24”
3位 ティンコフ・サクソ +1’44”
ステージ敢闘賞
マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
リタイア
DNF ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
DNF ジャック・バウアー(ニュージーランド、キャノンデール・ガーミン)
text:Kei Tsuji in Amiens, France
ツール・ド・フランス第5ステージはフランス北部の丘陵地帯を走る。コースプロフィールは細かく波打っているが、スプリンターが遅れるような登りはゼロ。海風、激坂、石畳が続いたツールは5日目にしてようやく平穏を取り戻す、はずだった。
大集団スプリントに持ち込まれる公算が高いステージだが、総合首位のトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が「雨と風、そして落車の連続で、マイヨジョーヌを楽しむ瞬間は全くなかった」と振り返るほどレースは序盤から荒れた。
気温16度の冷たい雨が降るスタート地点を離れてすぐ、11km地点でこの日最初の大落車が発生する。チームメイト4名とともに落車に巻き込まれたナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)は救急車で搬送され、一度もそのスプリント力を発揮することなくツールを去っている。
点在する第1次世界大戦の戦没者墓地を通過するうちに、先頭ではピエールリュック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)が単独逃げを開始する。大雨と曇りを交互に繰り返し、風が常に吹き付けるフランス北部の丘陵地帯でペリションは90kmにわたって独走した。
集団内では断続的に落車が発生し、グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)やバウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)、ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)、そしてグライペルらが地面に叩きつけられた。いずれの選手も再スタートを切ったものの、ブアニに続いてジャック・バウアー(ニュージーランド、キャノンデール・ガーミン)がリタイアを余儀なくされている。
レース中盤89.5km地点のスプリントポイントはペリション、グライペル、デゲンコルブ、カヴェンディッシュの順に通過。しばらくして先頭ペリションは捕らえられ、再びメイン集団は横風によってナーバスな状態となる。
落車と横風によって集団分断と集団合流を繰り返し、残り25kmで発生した大落車にはティボー・ピノ(フランス、FDJ)を含む30名が巻き込まれた。ピノはチームメイトの力を借りて無事に集団に復帰したが、横風区間で遅れたライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)やウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)、リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)を含む第2集団が復帰することはなかった。
荘厳なノートルダム大聖堂が名物のアミアンに先頭集団内でたどり着いた選手は100名弱。マイヨジョーヌのトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)もカヴェンディッシュのためのリードアウトに加わり、残り3kmを高速で駆け抜ける。
しかしエティックス・クイックステップのトレインは完璧に機能せず、向かい風の中でスプリントが始まる。先行したカヴェンディッシュやアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)、アルノー・デマール(フランス、FDJ)を追撃したのはマイヨヴェールのグライペル。スピードに乗った状態からさらにもう一段加速するスプリントでグライペルが先頭に立ち、マイヨブランを着るペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)を振り切った。
グライペルはこの日と同様に雨と風、落車が目立った第2ステージでも勝利しており、大会5日目にして早くも2勝目。ポイント賞ランキングでトップを快走するグライペルは「今日はどのチームもリードアウトトレインを組めないままスプリントが始まった。残り300mから左のラインでスプリントを仕掛け、幸い最後まで踏み抜く力があった。すでにステージ2勝目でマイヨヴェールもキープ。とても満足しているよ」とコメントしている。
追い込みがわずかに届かなかったサガンは今大会3度目のトップ3フィニッシュ(第2ステージ2位、第4ステージ3位)。「残り200mの時点でかなり後ろだったので、2位という結果は決して悪くない。それにアルベルト(コンタドール)を安全にフィニッシュまで連れて行くことが出来たので満足だ」と結果を前向きに捉えている。
翌日の第6ステージはアブヴィルからル・アーヴルまでの191.5km。英仏海峡に面した海岸線を走る一日で、再び海風が集団にダメージを与える可能性も。残り1.5kmからはアングヴィルの登り(850m/7%)が待ち構えている。
ツール・ド・フランス2015第5ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 4h39’00”
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)
4位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)
6位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
7位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
8位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
9位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)
10位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 12h40’26”
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +12”
3位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) +25”
4位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) +38”
5位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) +39”
6位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) +40”
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ) +46”
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) +48”
9位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +1’15”
10位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) +1’16”
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 151pts
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 119pts
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) 89pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 2pts
2位 ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング) 1pt
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) 1pt
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 17h19’59”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +46”
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) +1’35”
チーム総合成績
1位 BMCレーシング 51h59’55”
2位 エティックス・クイックステップ +24”
3位 ティンコフ・サクソ +1’44”
ステージ敢闘賞
マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
リタイア
DNF ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
DNF ジャック・バウアー(ニュージーランド、キャノンデール・ガーミン)
text:Kei Tsuji in Amiens, France
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