2015/06/01(月) - 18:40
ジロ・デ・イタリア最終ステージはさながらマリアローザの祝勝会。嬉しさのあまり髪の毛をピンクに染めてしまったオレグ・ティンコフ氏がチームカーからプロセッコを振りまき、ロシア国旗をもって表彰台に上がった。ミラノに凱旋したジロ最後の1日を振り返ります。
電動アシスト付きバイクで登場したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsuji
明るい笑顔で最終日を迎えた別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji
ピンクのグローブを見せるマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsuji
チームカーから体を乗り出してプロセッコを開けるオレグ・ティンコフ氏 photo:Tim de Waele
ミラノがジロのステージフィニッシュをホストするのはなんと85回目。つまり約87%という高い確率でジロにミラノが登場している。開催者RCSスポルトがミラノに本社を置いていることも関係し、2000年代まではほぼ必ずミラノを訪れていた。ここ数年を振り返っても、2009年には市街地サーキットで第9ステージを開催。2011年と2012年には最終個人TTの舞台となっている。
ミラノの人口は132万人で首都ローマの286万人に劣るが、都市圏に範囲を広げると526万人でイタリア最大。ヨーロッパ有数の大都市であり、その中心地はビジネスマンや観光客でごった返す。さらに現在ミラノ郊外では万国博覧会が開催中で、ミラノの混雑ぶりに輪をかける。
毎回ミラノが登場する度に問題になるのが石畳やトラムの線路などを含む荒れた路面だ。チーム側からの抗議の声を反映したのか、万博の混雑を考慮したのかは定かではないが、第21ステージの市街地周回コースは中心地を外れた市内北西部に敷かれた。コースの周りに観光スポットや目立った建物は無く、RAI(イタリア放送協会)の大きなスタジオと巨大なアンテナがあるぐらい。
フォトグラファーたちが頭を悩ますほどの面白みに欠ける周回コースで、表彰台も通常のものにステージを追加しただけ。昨年までの華々しいフィナーレを想像していると拍子抜けする締めくくりだった。
ミラノ中心部と比べると路面はスムーズだが、トラムの線路をまたぐポイントが2箇所あり、地面から突き出た鋭利なレールによってプロトン内にパンクが続出。レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)らがパンクに遭い、チームが全力で集団に引き戻す姿も見られた。レース前半のスプリントポイントを集団先頭通過し、ミラノ出身のニッツォロのためにリードアウトする予定だった別府史之(トレックファクトリーレーシング)もパンク。フィニッシュまで1周を残して前後輪同時にパンクした別府は、観客から声援を受けながらにこやかに独走でフィニッシュラインを切っている。
マリアローザを着て凱旋するアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsuji
マリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsuji
スピードを上げて最終周回に差し掛かるプロトン photo:Kei Tsuji
フィニッシュ後、地面に座り込むルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
表彰セレモニーの演出に奇抜さはなかったが、紙吹雪の量は例年以上。マリアローザ、マリアロッサ、マリアアッズーラ、マリアビアンカの色に合わせて、ピンク、赤、青、白の紙吹雪が大量にミラノの空に舞った。
最もテンション高く表彰台に上がったのは、前夜に髪の毛をピンクに染めたティンコフ・サクソのオーナー、オレグ・ティンコフ氏だった。朝、モーター疑惑への皮肉を込めて電動アシスト自転車でスタート地点にやってきたコンタドールの後ろを、コンタドールのためにスペシャライズドが用意したスペシャルバイクに乗って登場したティンコフ氏。レース中にはティンコフ・サクソのチームカーから身を乗り出してプロセッコを振り撒いた。
ティンコフ氏はイタリア通として知られており、1年の多くをイタリアで過ごし、イタリア語を流暢に操る。2007年にティンコフチームを立ち上げた頃からの野望であったジロ制覇を果たしたティンコフ氏は「今回はピンクだが、次は黄色に染めたい」と述べる。つまりティンコフ氏はコンタドールのダブルツール達成に期待を込める。表彰台の上でチームメンバー全員とハグし、ティンコフ氏はロシア国旗を風になびかせた。バイオロジカルパスポートに異常な変動が見られ、ドーピング疑惑がかけられるなか出場したロマン・クロイツィゲル(チェコ)も、表彰台の上ではとびっきりの笑顔を見せた。
マリアローザ争いで活躍した選手はスペイン人とイタリア人だが、表彰台ではロシア色とカザフスタン色が強く出た。今大会最強チームと呼ばれたのはカザフスタンのアスタナ。ステージ5勝と総合2位&総合3位、そしてマリアビアンカ獲得。ウィニングチーム賞(チーム総合成績)だけでなく、スーパーチーム(チーム総合ポイント賞)も獲得している。そしてなんとメンバーの6名が総合トップ25に入っている。ウィニングチーム賞の表彰台に上がり、胸を手を当ててカザフスタン国歌を聞いたアレクサンドル・ヴィノクロフGMの表彰は充実感に満ちていた。
ジロを走り終えた163名の選手たちとレース関係者(登録ジャーナリストは合計1380名、フォトグラファーは合計663名)はミラノの夜を楽しみ、翌日それぞれの目的地に向かう。ジロが終わるとシーズンは折り返し地点。いよいよツール・ド・フランスの足音が聞こえてくる。
4度目のジロ・デ・イタリアを走り終えた別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji
紙吹雪に覆われた表彰台にマリアローザが立つ photo:Kei Tsuji
トロフェオセンツァフィーネを手にしたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsuji
マリアロッサを獲得したジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji
表彰台でカザフスタン国歌を聞くアスタナのアレクサンドル・ヴィノクロフGM photo:Kei Tsuji
text&photo:Kei Tsuji in Milano, Italy
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ミラノがジロのステージフィニッシュをホストするのはなんと85回目。つまり約87%という高い確率でジロにミラノが登場している。開催者RCSスポルトがミラノに本社を置いていることも関係し、2000年代まではほぼ必ずミラノを訪れていた。ここ数年を振り返っても、2009年には市街地サーキットで第9ステージを開催。2011年と2012年には最終個人TTの舞台となっている。
ミラノの人口は132万人で首都ローマの286万人に劣るが、都市圏に範囲を広げると526万人でイタリア最大。ヨーロッパ有数の大都市であり、その中心地はビジネスマンや観光客でごった返す。さらに現在ミラノ郊外では万国博覧会が開催中で、ミラノの混雑ぶりに輪をかける。
毎回ミラノが登場する度に問題になるのが石畳やトラムの線路などを含む荒れた路面だ。チーム側からの抗議の声を反映したのか、万博の混雑を考慮したのかは定かではないが、第21ステージの市街地周回コースは中心地を外れた市内北西部に敷かれた。コースの周りに観光スポットや目立った建物は無く、RAI(イタリア放送協会)の大きなスタジオと巨大なアンテナがあるぐらい。
フォトグラファーたちが頭を悩ますほどの面白みに欠ける周回コースで、表彰台も通常のものにステージを追加しただけ。昨年までの華々しいフィナーレを想像していると拍子抜けする締めくくりだった。
ミラノ中心部と比べると路面はスムーズだが、トラムの線路をまたぐポイントが2箇所あり、地面から突き出た鋭利なレールによってプロトン内にパンクが続出。レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)らがパンクに遭い、チームが全力で集団に引き戻す姿も見られた。レース前半のスプリントポイントを集団先頭通過し、ミラノ出身のニッツォロのためにリードアウトする予定だった別府史之(トレックファクトリーレーシング)もパンク。フィニッシュまで1周を残して前後輪同時にパンクした別府は、観客から声援を受けながらにこやかに独走でフィニッシュラインを切っている。
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最もテンション高く表彰台に上がったのは、前夜に髪の毛をピンクに染めたティンコフ・サクソのオーナー、オレグ・ティンコフ氏だった。朝、モーター疑惑への皮肉を込めて電動アシスト自転車でスタート地点にやってきたコンタドールの後ろを、コンタドールのためにスペシャライズドが用意したスペシャルバイクに乗って登場したティンコフ氏。レース中にはティンコフ・サクソのチームカーから身を乗り出してプロセッコを振り撒いた。
ティンコフ氏はイタリア通として知られており、1年の多くをイタリアで過ごし、イタリア語を流暢に操る。2007年にティンコフチームを立ち上げた頃からの野望であったジロ制覇を果たしたティンコフ氏は「今回はピンクだが、次は黄色に染めたい」と述べる。つまりティンコフ氏はコンタドールのダブルツール達成に期待を込める。表彰台の上でチームメンバー全員とハグし、ティンコフ氏はロシア国旗を風になびかせた。バイオロジカルパスポートに異常な変動が見られ、ドーピング疑惑がかけられるなか出場したロマン・クロイツィゲル(チェコ)も、表彰台の上ではとびっきりの笑顔を見せた。
マリアローザ争いで活躍した選手はスペイン人とイタリア人だが、表彰台ではロシア色とカザフスタン色が強く出た。今大会最強チームと呼ばれたのはカザフスタンのアスタナ。ステージ5勝と総合2位&総合3位、そしてマリアビアンカ獲得。ウィニングチーム賞(チーム総合成績)だけでなく、スーパーチーム(チーム総合ポイント賞)も獲得している。そしてなんとメンバーの6名が総合トップ25に入っている。ウィニングチーム賞の表彰台に上がり、胸を手を当ててカザフスタン国歌を聞いたアレクサンドル・ヴィノクロフGMの表彰は充実感に満ちていた。
ジロを走り終えた163名の選手たちとレース関係者(登録ジャーナリストは合計1380名、フォトグラファーは合計663名)はミラノの夜を楽しみ、翌日それぞれの目的地に向かう。ジロが終わるとシーズンは折り返し地点。いよいよツール・ド・フランスの足音が聞こえてくる。
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text&photo:Kei Tsuji in Milano, Italy
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